グーグルVeo 3.1 vs OpenAI Sora2、“AI映像の主導権争い”激化…文章が映像になる時代

 一方のOpenAIは、ChatGPTを軸とした『AI制作スタジオ構想』を進めています。Sora2は、ChatGPTで書いた脚本やナレーションをそのまま映像化し、DALL?Eで作った素材を組み込むといった、創作の一体化を目指しています。OpenAIが描くのは、“文章生成の延長線上にある映像表現”です」(同)

 どちらの陣営も、映像を「新しい知的言語」として再定義しようとしているといえる。

市場の潮流──“生成映像”がビジネス現場を変える

 AIによる動画生成市場は、急速に拡大している。米Allied Market Researchによると、2024年時点で約17億ドルだった市場規模は、2030年には120億ドル超に達すると予測されている。

 牽引するのは以下の分野だ。

 広告・マーケティング:AIが短時間でブランド動画を量産。特に中小企業が恩恵を受ける。
 教育・研修:教材や社内研修動画を自動生成し、社員教育を効率化。
 Eコマース:商品画像から自動で360度動画を生成し、購買体験を強化。
 メディア・ニュース:テキスト記事を動画ニュース化。SNSでの拡散力を高める。

 すでにAdobe、Runway、Pika、Synthesiaなどがこの領域に参入しており、AI映像生成は「生成AIの第2波」と位置づけられている。経営者にとっての最大の学びは、「動画制作は専門家の領域ではなくなる」という現実だ。マーケティング、採用、社内広報──すべてがAIによる動画生成で自動化・高速化しつつある。動画が“社内言語”になる時代が、目前に迫っている。

AI動画生成が生む新しい創造の形

 AIが映像を作り出すことは、人間の創造を奪うのではなく、「創造の余白を拡張する」行為だ。

 実際、VeoやSoraを使ったクリエイターたちは、従来の映像制作とは異なるプロセスを歩み始めている。

 ・構想段階からAIと会話しながら企画を練る
 ・撮影せずにプロトタイプ映像を作る
 ・音声AIと組み合わせて多言語展開
 ・AIアバターによるグローバル配信

 これらはすでに、スタートアップのプロモーションや投資家向けピッチ動画で活用され始めている。Veo 3.1の「自然対話+即時生成」機能は、こうした新しい制作スタイルを後押しする。

 ただし、映像生成の民主化にはリスクも伴う。ディープフェイク、著作権侵害、虚偽広告など、AI動画特有の課題が急増している。

 グーグルはVeoで「AI生成ラベル」や「メタデータ署名」の義務化を検討しており、OpenAIもSora2で同様の透明性フレームを導入している。これらの動きは、AI映像の“信頼インフラ”構築競争でもある。誰が最初に「安心して使える動画生成AI」を社会実装できるかが、次の焦点だ。

 Veo 3.1とSora2の対決は、単なる技術競争ではなく「映像を誰が語るのか」を問う文化的な戦いでもある。グーグルは「誰もが動画で表現できる時代」をつくろうとしている。OpenAIは「人間とAIが共に物語を紡ぐ時代」を描いている。どちらの未来を選ぶかは、私たち次第だ。

 確かなのは、これからの企業にとって“動画はテキストの次の言語”になるということ。そして、AIがその翻訳者になるのだ。


(文=BUSINESS JOURNAL編集部)