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5.何かがおかしい Side アヴィス
しおりを挟むノアリスとの生活は順調だ。
執務もグレゴリーと問題なくこなしているし、使用人とも上手くやっている。
忙しくて、たまにしか会えない筈の父や母にも可愛がられているようだ。
そんなふうに暮らしていると、結婚してまだ数日なのに、ついタチアナを忘れてしまう瞬間がある。
タチアナから『次はいつ来ますか?』と手紙をもらって思い出した位だ。
今日から三日、仕事帰りにタチアナに借りてやった住まいを訪ね、一緒に過ごすことにした。
「もう、私のこと忘れちゃったかと思ってました!」
俺の顔を見るなり、タチアナは抱き付いてきた。
田舎の男爵令嬢のタチアナは、俺より二歳年上だが、自由で奔放なところがある。
亡くなった兄も俺も、一人にしておけないようなタチアナを好ましく思っていた。
「忘れるわけないだろう?愛しいタチアナを。」
「嬉しい!!」
抱き寄せて口付けると、タチアナは潤んだ目で強請ってくる。
「アヴィス、お願い…」
しとどに濡れた秘所は、俺を誘って狂わせる。
「タチアナっ!もう挿れたい!!」
壁に手を付かせ、立ったまま後ろから挿れると、タチアナの腰がうねる。
「んあっ、アヴィス!もっと、もっと奥まで突いて!!」
「ああ、タチアナ!濡れてる、ぐちゃぐちゃだっ!!」
締め付けよりも、ぬるぬるに包まれる感じがする。
(ノアリスのは狭いのに…)
(ノアリスなら締め付けるのに…)
(ノアリスなら巻き付いてくるのに…)
(ノアリスなら…)
(ノアリスなら…)
「うっ、出るっっ!!」
「あはん、イくっ、いくうーーー!!」
派手にいくタチアナを冷静に見ている自分が居た。
(何だ?この気持ちは…俺が愛しているのはタチアナだ。)
床にへたり込むタチアナを抱き上げ、ベッドに移動する。
いつもなら二回目に突入するのに、タチアナが触れても勃たない。
「どうしたの?疲れてんの?」
「ああ、忙しかったからな。すまないな。」
タチアナは不満そうだったが、そのまま背を向けて寝てしまった。
それを確認し、俺はベッドを抜け出して、居間で酒を飲むことにした。
(おかしい…何だ、この違和感は…)
ワインをボトル半分飲んでも、全く酔えない。
それどころか、ノアリスのことを考えてしまう。
(ノアリスは寝ただろうか。抱き締めるとふわっとスミレの匂いがするんだよな…香水は付けていないと言ってたけど…)
不意に匂いで違和感を感じた。
今日のタチアナは、香水ではない匂いがした。
あれは何だろう。嗅いだことのない匂いだ。
次の日、俺は早速タチアナを調べることにした。
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