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第一章 幼少期編
第二十九話 守るべきもの(ローラン視点)
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竜人の国を追放された俺を温かく迎え入れてくれたのは、竜人達が下等生物だと差別していた人間だった。
当時、まだ十歳のガキだった俺は、優しい人間達に囲まれて、幸せだった。だから、その二年後、魔王の脅威が迫った国に、少しでも貢献できないかと勇者に志願したのは当然のことだった。
人間でも竜人でも、まだ子供といえる十二歳。それでも、俺の力は類をみないほど強力なもので、俺は晴れて、国に認められる勇者として、魔王討伐の旅に出発したのだ。
(まさか、人間が裏切るなんて、あの頃は思ってもみなかったからな……)
何もかもが順調だったはずなのに、いったい、俺はどこで選択を間違ったのだろうかと、今でも考えてしまう。
俺に施された封印は、実にいやらしいものだった。当時、仲間であった聖女は、どうやら俺のことが好きだったらしい。そして、同じく仲間であった魔導師は、その聖女のことが好きで……俺が国を追われる身となった途端、魔導師は執拗に俺を殺そうとしてきた。しかし、結局封印という形になってしまったのは、ひとえに、やつが俺を苦しめたかったからなのだろう。
(ご丁寧に、魔の実をばら蒔いていったからなぁ……)
俺の封印は、俺の意識までは封じてくれなかった。魔族に襲撃され、荒れ果てた大地。そこへ、俺は身動きを封じられ、意識だけを残され、ずっと、ずっと、芽吹いた魔の実の栄養として存在していた。魔力が徐々に奪われる恐怖。元の肉体のままではすぐに死んでしまうと、防衛本能から幼い姿になったものの、それは苦痛を長引かせる結果にしかならないはずだった。自殺することも許されず、ただただ、ゆっくり、じわじわと、自分が死んでいくのを感じるしかない。そんな、発狂ものの恐怖を味わう中……ユミリアが来たのだ。
(天使かと、思った……)
あまりにも愛らしいその姿に、俺は、もしかしたら気づかないうちに死んでしまって、天国に来たのかと思った。もちろんそれは、蒼月狼と星妖精を見ることによって否定されたが。
(蒼月狼に星妖精を従える幼女って何だよっ。本当に、殺されるかと思ったぞ!?)
ユミリアは気づいていなかったが、あの二人は確実に、俺へ殺気を飛ばしていた。さすがの俺も、あの二人を相手に戦って生き残れるなんて思えない。
そうして、いつの間にか意識を失っていた俺は、事情を話して……なぜか、ユミリアに泣かれていた。
「ふぇっ、ぐずっ……」
「あ、あぁっ、もう、泣くなって……」
体は小さいが、割としっかりしていることから考えると、ユミリアは五歳くらいなのだろうか? 竜人の子供はもちろん、人間の子供ともあまり関わってこなかったため、そこら辺の認識が甘い自覚はある。そして、子供と関わってこなかったということは、当然、泣かれた時の対処法なんかも知らないということで、俺は盛大に慌てる。しかし……。
(俺のために、泣いてくれる子、か……)
竜人の国では差別され、人間の国では強いから大丈夫だと、俺に配慮する人間など居なかったように思える。人間達は優しくもあったが、俺の内面に踏み込んでくることはなかった。それは、俺自身が強くあろうとしていたから当然なのかもしれないが、それでも、寂しくなかったわけではない。
(何だか……暖かい、な……)
胸に灯った小さな明かり。それは、きっと俺がずっと求めてやまなかったもの……。
「みゅうぅっ、いちゃいにょいちゃいにょとんでゆけーっ(みゅうぅっ、痛いの痛いの飛んでゆけーっ)」
何の呪文かは不明だが、そんな言葉をかけてくれたユミリアに、俺は自然と笑みがこぼれる。
(あぁ、本当に、暖かい)
この幼い少女は、自分が何をしたのか、分かっていないのだろう。ぐずぐずと泣きながら、俺の服を必死で握るこの少女を、俺はどうしても守りたくなった。
(蒼月狼や星妖精と比べれば足下にも及ばないかもしれない。それでも……)
側に居たい。だから、俺は、ユミリアをそっと抱き締めて、力を取り戻す決意をする。今度こそ、自分を諦めたりしない。今度は、ユミリアのために、この力を使うのだから。
俺と同じ黒髪を、さらりと撫でて、俺は、ユミリアをしっかりとなだめるのだった。
当時、まだ十歳のガキだった俺は、優しい人間達に囲まれて、幸せだった。だから、その二年後、魔王の脅威が迫った国に、少しでも貢献できないかと勇者に志願したのは当然のことだった。
人間でも竜人でも、まだ子供といえる十二歳。それでも、俺の力は類をみないほど強力なもので、俺は晴れて、国に認められる勇者として、魔王討伐の旅に出発したのだ。
(まさか、人間が裏切るなんて、あの頃は思ってもみなかったからな……)
何もかもが順調だったはずなのに、いったい、俺はどこで選択を間違ったのだろうかと、今でも考えてしまう。
俺に施された封印は、実にいやらしいものだった。当時、仲間であった聖女は、どうやら俺のことが好きだったらしい。そして、同じく仲間であった魔導師は、その聖女のことが好きで……俺が国を追われる身となった途端、魔導師は執拗に俺を殺そうとしてきた。しかし、結局封印という形になってしまったのは、ひとえに、やつが俺を苦しめたかったからなのだろう。
(ご丁寧に、魔の実をばら蒔いていったからなぁ……)
俺の封印は、俺の意識までは封じてくれなかった。魔族に襲撃され、荒れ果てた大地。そこへ、俺は身動きを封じられ、意識だけを残され、ずっと、ずっと、芽吹いた魔の実の栄養として存在していた。魔力が徐々に奪われる恐怖。元の肉体のままではすぐに死んでしまうと、防衛本能から幼い姿になったものの、それは苦痛を長引かせる結果にしかならないはずだった。自殺することも許されず、ただただ、ゆっくり、じわじわと、自分が死んでいくのを感じるしかない。そんな、発狂ものの恐怖を味わう中……ユミリアが来たのだ。
(天使かと、思った……)
あまりにも愛らしいその姿に、俺は、もしかしたら気づかないうちに死んでしまって、天国に来たのかと思った。もちろんそれは、蒼月狼と星妖精を見ることによって否定されたが。
(蒼月狼に星妖精を従える幼女って何だよっ。本当に、殺されるかと思ったぞ!?)
ユミリアは気づいていなかったが、あの二人は確実に、俺へ殺気を飛ばしていた。さすがの俺も、あの二人を相手に戦って生き残れるなんて思えない。
そうして、いつの間にか意識を失っていた俺は、事情を話して……なぜか、ユミリアに泣かれていた。
「ふぇっ、ぐずっ……」
「あ、あぁっ、もう、泣くなって……」
体は小さいが、割としっかりしていることから考えると、ユミリアは五歳くらいなのだろうか? 竜人の子供はもちろん、人間の子供ともあまり関わってこなかったため、そこら辺の認識が甘い自覚はある。そして、子供と関わってこなかったということは、当然、泣かれた時の対処法なんかも知らないということで、俺は盛大に慌てる。しかし……。
(俺のために、泣いてくれる子、か……)
竜人の国では差別され、人間の国では強いから大丈夫だと、俺に配慮する人間など居なかったように思える。人間達は優しくもあったが、俺の内面に踏み込んでくることはなかった。それは、俺自身が強くあろうとしていたから当然なのかもしれないが、それでも、寂しくなかったわけではない。
(何だか……暖かい、な……)
胸に灯った小さな明かり。それは、きっと俺がずっと求めてやまなかったもの……。
「みゅうぅっ、いちゃいにょいちゃいにょとんでゆけーっ(みゅうぅっ、痛いの痛いの飛んでゆけーっ)」
何の呪文かは不明だが、そんな言葉をかけてくれたユミリアに、俺は自然と笑みがこぼれる。
(あぁ、本当に、暖かい)
この幼い少女は、自分が何をしたのか、分かっていないのだろう。ぐずぐずと泣きながら、俺の服を必死で握るこの少女を、俺はどうしても守りたくなった。
(蒼月狼や星妖精と比べれば足下にも及ばないかもしれない。それでも……)
側に居たい。だから、俺は、ユミリアをそっと抱き締めて、力を取り戻す決意をする。今度こそ、自分を諦めたりしない。今度は、ユミリアのために、この力を使うのだから。
俺と同じ黒髪を、さらりと撫でて、俺は、ユミリアをしっかりとなだめるのだった。
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