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第一章 幼少期編
第三十話 主宣言
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ひとしきり泣いた後、ローランは何やら、私に仕えたいと言い出す。
(いや、仕えたいも何も、子供に仕事をさせる気は……ん? 子供?)
「ろーらん、なんしゃい? (ローラン、何歳?)」
「俺か? そうだな……十五歳の時に封印されて、それからどれだけの年月が流れたか分からないから、不明だな」
「うーん? でも、あそこが魔境と呼ばれるようになったのは僕が生まれるずっと前らしいから、五十年以上は経ってるんじゃない?」
「みゅ!?」
自分と同い年くらいの男の子という認識が、今、完全に覆されて、私は大きく目を見開く。
「この姿は、魔力を節約するために、防衛本能で取った姿だから、魔力が戻れば元の姿には戻れるぞ」
「……りゅーじんって、ちょーめい? (……竜人って、長命?)」
「あぁ、基本的に、五百年は生きるな。だから、もし俺が六十くらいだとしたら、人間では十歳くらいの感覚か? ただ、精神の成長は竜人ごとに様々な速度がある。俺は早熟タイプで大人と変わらないだろうけどな」
「ふぇー」
「で、だ。俺は、ユミリアに救われた。その恩返しのために、ユミリアに仕えさせてもらいたい……ダメか?」
相手が大人ということであれば、文句はない。ない、のだが……。
「ちゅかえりゅって、ぐたいてちにどうしゅりゅちゅもり? (仕えるって、具体的にどうするつもり?)」
もし、この屋敷で雇ってほしいとかなら、私に決定権はない。何せ、まだまだ一歳児。しかも、黒目黒髪で獣つきの嫌われ者。たまたま前世の記憶があるからここまで行動できているものの、普通の一歳児ならば衰弱して死んでもおかしくない環境だ。
「あぁ、そうか、知らないよな。竜人は、ただ一人の主を求める種族でもあるんだ。んで、主を決めると、そいつに忠誠を誓って、魔法による制約を課す。基本的には、裏切らないとか、主の不利益になることをしない、とかの制約だな。まぁ、それは竜人ごとにある程度アレンジも効く。そこに、金銭のやり取りが発生する場合もあるにはあるが、そうならない場合も多い。今回は、後者だな」
つまり、ローランは無償で私に仕えようとしてくれているわけで……。
「めっ、にゃにょ! しょれじゃあ、ろーらんがちゃいへんにゃにょっ(メッ、なの! それじゃあ、ローランが大変なのっ)」
そんなの、ローランに何の得もない。そう思って反論するが、そうすると、途端にローランの表情は絶望したものになる。
「そうか……死のう」
「みゅうぅぅうっ!? しんじゃ、めーっ!! (みゅうぅぅうっ!? 死んじゃあ、メーッ!!)」
虚ろな目で、どこから取り出したのか分からないサバイバルナイフを首元に当てたローランに、私は必死にすがる。
「……ユミリア、竜人は、主を得られなければ、自殺する」
「うん、そういえば、そんな馬鹿げた性質もあったねぇ」
そして、鋼とセイの言葉で何となく状況を理解した私は、主になると宣言するのだった。
(いや、仕えたいも何も、子供に仕事をさせる気は……ん? 子供?)
「ろーらん、なんしゃい? (ローラン、何歳?)」
「俺か? そうだな……十五歳の時に封印されて、それからどれだけの年月が流れたか分からないから、不明だな」
「うーん? でも、あそこが魔境と呼ばれるようになったのは僕が生まれるずっと前らしいから、五十年以上は経ってるんじゃない?」
「みゅ!?」
自分と同い年くらいの男の子という認識が、今、完全に覆されて、私は大きく目を見開く。
「この姿は、魔力を節約するために、防衛本能で取った姿だから、魔力が戻れば元の姿には戻れるぞ」
「……りゅーじんって、ちょーめい? (……竜人って、長命?)」
「あぁ、基本的に、五百年は生きるな。だから、もし俺が六十くらいだとしたら、人間では十歳くらいの感覚か? ただ、精神の成長は竜人ごとに様々な速度がある。俺は早熟タイプで大人と変わらないだろうけどな」
「ふぇー」
「で、だ。俺は、ユミリアに救われた。その恩返しのために、ユミリアに仕えさせてもらいたい……ダメか?」
相手が大人ということであれば、文句はない。ない、のだが……。
「ちゅかえりゅって、ぐたいてちにどうしゅりゅちゅもり? (仕えるって、具体的にどうするつもり?)」
もし、この屋敷で雇ってほしいとかなら、私に決定権はない。何せ、まだまだ一歳児。しかも、黒目黒髪で獣つきの嫌われ者。たまたま前世の記憶があるからここまで行動できているものの、普通の一歳児ならば衰弱して死んでもおかしくない環境だ。
「あぁ、そうか、知らないよな。竜人は、ただ一人の主を求める種族でもあるんだ。んで、主を決めると、そいつに忠誠を誓って、魔法による制約を課す。基本的には、裏切らないとか、主の不利益になることをしない、とかの制約だな。まぁ、それは竜人ごとにある程度アレンジも効く。そこに、金銭のやり取りが発生する場合もあるにはあるが、そうならない場合も多い。今回は、後者だな」
つまり、ローランは無償で私に仕えようとしてくれているわけで……。
「めっ、にゃにょ! しょれじゃあ、ろーらんがちゃいへんにゃにょっ(メッ、なの! それじゃあ、ローランが大変なのっ)」
そんなの、ローランに何の得もない。そう思って反論するが、そうすると、途端にローランの表情は絶望したものになる。
「そうか……死のう」
「みゅうぅぅうっ!? しんじゃ、めーっ!! (みゅうぅぅうっ!? 死んじゃあ、メーッ!!)」
虚ろな目で、どこから取り出したのか分からないサバイバルナイフを首元に当てたローランに、私は必死にすがる。
「……ユミリア、竜人は、主を得られなければ、自殺する」
「うん、そういえば、そんな馬鹿げた性質もあったねぇ」
そして、鋼とセイの言葉で何となく状況を理解した私は、主になると宣言するのだった。
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