30 / 57
番外編
番外編3
しおりを挟む
「でもわたくし、最初はまったく出来ませんでしたわよね」
「そうね。でもみんな最初はそんなものよ。シャーリーは熱心で、一度教えたことはきちんと習得していたわ」
「それは、先生が録画魔法をすぐに教えて下さったからですわ」
わたくしは必死で学びましたが、なかなか身につきませんでした。そんな時、わたくしの必死な様子を察した先生が、録画魔法を教えて下さったの。
「今日は授業の前に、簡単な魔法をお教えしますわ。このような魔力の球を出して、映像と音声を記録しますの。これで、授業の復習も簡単にできますわ」
「こんなのなんの役に立つのよ!」
「アイリーン様、約束事は口約束だとトラブルの元です。この魔法で記録して証拠としますの。記録玉という魔道具がありまして、記録玉を介して録画したものは改ざんが出来ないのですわ。複製も出来ますから便利なのです。今は録画魔法だけですから、こんな風に録画したものを改ざんできます」
先生は、わたくしとお姉様を録画し、周りに花びらを散らす。とっても奇麗だわ。
「すごい! 奇麗ね!」
「そうでしょう? しかしこれを記録玉に記録すると……」
「あら、お花が消えたわ」
「このように、記録玉に記録すると改ざんできないのです。録画魔法は各々の魔力量によって記録できる時間が変わりますから、長く残したい記録などは記録玉を使うとよろしいですわ。記録玉を使って録画をすると、魔力の球は出ませんから、相手にも気づかれません。ただし、全てを録画をするのはマナー違反です。記録玉を使えなくする魔道具もありますので、内緒話などをする時には必須ですわね。貴族の寝室には大抵備えてありますわ」
「そうなのですね、どのような時ならば記録して良いのですか?」
「許可が取れれば問題ありません。アイリーン様、シャーリー様、録画魔法を使ってみてください」
「「はい、できましたわ」」
「完璧ですわ! アイリーン様とシャーリー様が、わたくしの授業を録画する事を承認しました。記録できましたか? これでわたくしの授業は全て録画して構いませんわ」
「許可が要るのですね」
「そうですね、貴族とのやりとりの場合は、許可を取ったところから記録すると安心ですね。もちろん犯罪に巻き込まれた時などの非常時は記録玉を使って問題ありませんわ。むしろそのような時は必ず記録するようにしてください。記録は、記録した本人しか取り出せませんから、記録玉が見つかっても、記録などしていないと誤魔化せばよろしいですわ。非常時以外は、こっそり録画しても証拠とはなりえませんし、卑怯な者として信頼を無くすのでご注意下さいませ」
「わかりましたわ!」
「そうだわ! シャーリーはわたくしと居る時はわたくしの事を全て記録しなさい!」
「アイリーン様、記録玉がないと全てを記録するのは難しいですわ。魔力も消費しますし、毎日記録していたらシャーリー様が倒れてしまわれます」
「シャーリーなら大丈夫よ! 先日も先生に褒められていたでしょう?」
出来るわけない。姉の顔にそう書いてあった。だけど、出来ないとまた意地悪される。
「分かりました、お姉様のご希望通りに致しますわ」
この頃のわたくしは、姉に気に入られようと必死だった。だって姉が優しくしてくれれば、両親や使用人も優しくしてくれたから。
だけど、一度姉の怒りを買うと大変だった。部屋に閉じ込められたり、食事抜きなんてこともしょっちゅうあったわ。
わたくしは、この日から姉とのやりとりを全て記録するようになった。姉は、そんな指示をした事すらすぐに忘れてしまったけれど、いつ思い出すか分からない。そんな恐怖があって、記録を止める事は出来なかった。
「そうね。でもみんな最初はそんなものよ。シャーリーは熱心で、一度教えたことはきちんと習得していたわ」
「それは、先生が録画魔法をすぐに教えて下さったからですわ」
わたくしは必死で学びましたが、なかなか身につきませんでした。そんな時、わたくしの必死な様子を察した先生が、録画魔法を教えて下さったの。
「今日は授業の前に、簡単な魔法をお教えしますわ。このような魔力の球を出して、映像と音声を記録しますの。これで、授業の復習も簡単にできますわ」
「こんなのなんの役に立つのよ!」
「アイリーン様、約束事は口約束だとトラブルの元です。この魔法で記録して証拠としますの。記録玉という魔道具がありまして、記録玉を介して録画したものは改ざんが出来ないのですわ。複製も出来ますから便利なのです。今は録画魔法だけですから、こんな風に録画したものを改ざんできます」
先生は、わたくしとお姉様を録画し、周りに花びらを散らす。とっても奇麗だわ。
「すごい! 奇麗ね!」
「そうでしょう? しかしこれを記録玉に記録すると……」
「あら、お花が消えたわ」
「このように、記録玉に記録すると改ざんできないのです。録画魔法は各々の魔力量によって記録できる時間が変わりますから、長く残したい記録などは記録玉を使うとよろしいですわ。記録玉を使って録画をすると、魔力の球は出ませんから、相手にも気づかれません。ただし、全てを録画をするのはマナー違反です。記録玉を使えなくする魔道具もありますので、内緒話などをする時には必須ですわね。貴族の寝室には大抵備えてありますわ」
「そうなのですね、どのような時ならば記録して良いのですか?」
「許可が取れれば問題ありません。アイリーン様、シャーリー様、録画魔法を使ってみてください」
「「はい、できましたわ」」
「完璧ですわ! アイリーン様とシャーリー様が、わたくしの授業を録画する事を承認しました。記録できましたか? これでわたくしの授業は全て録画して構いませんわ」
「許可が要るのですね」
「そうですね、貴族とのやりとりの場合は、許可を取ったところから記録すると安心ですね。もちろん犯罪に巻き込まれた時などの非常時は記録玉を使って問題ありませんわ。むしろそのような時は必ず記録するようにしてください。記録は、記録した本人しか取り出せませんから、記録玉が見つかっても、記録などしていないと誤魔化せばよろしいですわ。非常時以外は、こっそり録画しても証拠とはなりえませんし、卑怯な者として信頼を無くすのでご注意下さいませ」
「わかりましたわ!」
「そうだわ! シャーリーはわたくしと居る時はわたくしの事を全て記録しなさい!」
「アイリーン様、記録玉がないと全てを記録するのは難しいですわ。魔力も消費しますし、毎日記録していたらシャーリー様が倒れてしまわれます」
「シャーリーなら大丈夫よ! 先日も先生に褒められていたでしょう?」
出来るわけない。姉の顔にそう書いてあった。だけど、出来ないとまた意地悪される。
「分かりました、お姉様のご希望通りに致しますわ」
この頃のわたくしは、姉に気に入られようと必死だった。だって姉が優しくしてくれれば、両親や使用人も優しくしてくれたから。
だけど、一度姉の怒りを買うと大変だった。部屋に閉じ込められたり、食事抜きなんてこともしょっちゅうあったわ。
わたくしは、この日から姉とのやりとりを全て記録するようになった。姉は、そんな指示をした事すらすぐに忘れてしまったけれど、いつ思い出すか分からない。そんな恐怖があって、記録を止める事は出来なかった。
81
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
真実の愛がどうなろうと関係ありません。
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。
婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。
「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」
サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。
それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。
サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。
一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。
若きバラクロフ侯爵レジナルド。
「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」
フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。
「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」
互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。
その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは……
(予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
「帰ったら、結婚しよう」と言った幼馴染みの勇者は、私ではなく王女と結婚するようです
しーしび
恋愛
「結婚しよう」
アリーチェにそう約束したアリーチェの幼馴染みで勇者のルッツ。
しかし、彼は旅の途中、激しい戦闘の中でアリーチェの記憶を失ってしまう。
それでも、アリーチェはルッツに会いたくて魔王討伐を果たした彼の帰還を祝う席に忍び込むも、そこでは彼と王女の婚約が発表されていた・・・
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる