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第2章 海を目指して
第22話 2人の朝
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「ん……、おはよぉ」
「おはよ、ルミツ」
「……!? リア!?」
「またそんな驚いて……」
「あぁ、ごめんごめん」
朝、私たちは同じ部屋の別々の布団で寝た。
よく分からないがリアは気配が私と馴染んでしまうせいで分かりにくい。
いっつも心臓に悪いんだから……。
「昨日はありがとう、ルミツ」
「?」
「模擬戦に付き合ってくれて。ちょっと、ルミツの何かを求めていたみたいだ」
「ふーん」
なんかよく分からないけど、役に立てたなら良かった。昨日の曇った眼も見受けられない。何か吹っ切れたのかな……?
「それじゃあ借宿だし、そろそろ出ようか」
「そうだね。モースたちの事も気になるし」
そうしてドアノブに手をかけるリア。
……本当にこれでいいのかな。
私はリアの友人として、何か欠けてるんじゃないか。
そんな想いが脳裏をよぎった。
そうして私はふと、言葉を漏らした。
「……リアっ」
その呼び声に、リアの手が止まる。
「なんだい、ルミツ?」
言っちゃいけない。だけど、言わないといけない。
「私は、暗殺者なの」
こんな事を口走っては、いけない。いけないと分かっている。ましてやあって1日の相手だ。ここまで心を許していいはずがない。
それでも、言わなきゃいけないと思った。
「ルミツが……、暗殺者?」
「隠しててごめん。でもここまで私に良くしてもらってるリアには、言わなきゃいけないと思って。リアは勇者としてじゃなくて、一人の人間として人々に接している。そんな姿に私は……」
私は……
「ごめん、なんでもない。やっぱり忘れて? 今のことは……」
「ルミツ」
リアとは思えない低い声に私は肩を震わせた。だがしかしその声にはキツいドスの効いた声ではなく、リア特有の優しさが籠った声であった。
「僕を信用していないのかい?」
「いや、別にそんなわけじゃ……」
「じゃあ僕の目を見て。僕が信用に値する以上の観念を見出して」
肩を掴まれ、目線を合わせられる。
「えぅ……」
「ごめん、朝からこんな話しちゃって。さ、出ようか! みんな待ってると思うからさ!」
「う、うん……!」
こうして私たちは個室を出る。
廊下にて、歩きながらリアは私に話しかける。
「ルミツ、僕は嬉しかったんだ。君から重要な事を言ってもらえて。本当に欲しかった言葉を僕にかけてくれる人に、信用されて」
「……うん」
どうしても、私はリアの目を見ることができなかった。それは恋がとかそういうものじゃない。
自分が情けなかった。信用されて嬉しいと。そう言ってくれたリアを私は信用しきれなかった。
だから私は、……私は
「ルミツ」
「っ、なに?」
「ルミツは時々闇に犯されているよね」
「──!!」
「何かは分からないけど、過去のトラウマのようなものが君を縛り付けている。出会って1日、されど何十時間も君を見た。美しい瞳の君は、時々ドス黒く汚れる」
「……」
「何があったかは聞かない。そういうのは僕を本当に信用してくれた時でいいから」
「……!! ……うん」
情けない。本当に私は情けなかった。
前世の最後は……、仲間に刺されたんだったか。
詳しい経緯は思い出せない。脳がそれを拒否しているのだろう。自身の死だ。自分の意思と関係ない事が起こっても不思議じゃない。
だが仲間に刺された事実が、必要以上に私を人間不信にしてくる。
人の目を見る自信はあった。あの時の仲間もまた、敵意の気配は無かった。
それなのに、最期は刺されて……。
「……ごめん。ごめんね、リア」
「謝らなくていいよ。ルミツには色々あるんだ」
「……ごめん」
私は完全に俯いてしまう。情けなくて、情けなくて、仕方がなかった。
「ルミツ、これをあげるよ」
そんな私を見かねたのか、リアが何かを懐から取り出した。
見ればそれは、翡翠色に輝く勾玉の片割れであった。
「これはなに?」
「神社に2人で行っただろう? あそこで昔売っていた御守りのようなものだよ。これを受け取って欲しい」
「……うん」
そうして私はその勾玉を受け取る。
「これでお揃いだね」
「?」
見るとリアの首には私と同じ勾玉の片割れを着けていた。
ふと、私の手にある勾玉から熱を感じた。
それは勾玉だけではない。顔から頭、顔の芯まで火照って仕方がない。心臓の鼓動もうるさい。
でも今は、それが心地よかった。
「ありがと、リア!」
私は満面の笑みで、感謝を述べた。
「っ……!」
「えへへっ」
「……良かったよ」
用意って顔を背けたリアの耳は、赤く染っていた。
「おはよ、ルミツ」
「……!? リア!?」
「またそんな驚いて……」
「あぁ、ごめんごめん」
朝、私たちは同じ部屋の別々の布団で寝た。
よく分からないがリアは気配が私と馴染んでしまうせいで分かりにくい。
いっつも心臓に悪いんだから……。
「昨日はありがとう、ルミツ」
「?」
「模擬戦に付き合ってくれて。ちょっと、ルミツの何かを求めていたみたいだ」
「ふーん」
なんかよく分からないけど、役に立てたなら良かった。昨日の曇った眼も見受けられない。何か吹っ切れたのかな……?
「それじゃあ借宿だし、そろそろ出ようか」
「そうだね。モースたちの事も気になるし」
そうしてドアノブに手をかけるリア。
……本当にこれでいいのかな。
私はリアの友人として、何か欠けてるんじゃないか。
そんな想いが脳裏をよぎった。
そうして私はふと、言葉を漏らした。
「……リアっ」
その呼び声に、リアの手が止まる。
「なんだい、ルミツ?」
言っちゃいけない。だけど、言わないといけない。
「私は、暗殺者なの」
こんな事を口走っては、いけない。いけないと分かっている。ましてやあって1日の相手だ。ここまで心を許していいはずがない。
それでも、言わなきゃいけないと思った。
「ルミツが……、暗殺者?」
「隠しててごめん。でもここまで私に良くしてもらってるリアには、言わなきゃいけないと思って。リアは勇者としてじゃなくて、一人の人間として人々に接している。そんな姿に私は……」
私は……
「ごめん、なんでもない。やっぱり忘れて? 今のことは……」
「ルミツ」
リアとは思えない低い声に私は肩を震わせた。だがしかしその声にはキツいドスの効いた声ではなく、リア特有の優しさが籠った声であった。
「僕を信用していないのかい?」
「いや、別にそんなわけじゃ……」
「じゃあ僕の目を見て。僕が信用に値する以上の観念を見出して」
肩を掴まれ、目線を合わせられる。
「えぅ……」
「ごめん、朝からこんな話しちゃって。さ、出ようか! みんな待ってると思うからさ!」
「う、うん……!」
こうして私たちは個室を出る。
廊下にて、歩きながらリアは私に話しかける。
「ルミツ、僕は嬉しかったんだ。君から重要な事を言ってもらえて。本当に欲しかった言葉を僕にかけてくれる人に、信用されて」
「……うん」
どうしても、私はリアの目を見ることができなかった。それは恋がとかそういうものじゃない。
自分が情けなかった。信用されて嬉しいと。そう言ってくれたリアを私は信用しきれなかった。
だから私は、……私は
「ルミツ」
「っ、なに?」
「ルミツは時々闇に犯されているよね」
「──!!」
「何かは分からないけど、過去のトラウマのようなものが君を縛り付けている。出会って1日、されど何十時間も君を見た。美しい瞳の君は、時々ドス黒く汚れる」
「……」
「何があったかは聞かない。そういうのは僕を本当に信用してくれた時でいいから」
「……!! ……うん」
情けない。本当に私は情けなかった。
前世の最後は……、仲間に刺されたんだったか。
詳しい経緯は思い出せない。脳がそれを拒否しているのだろう。自身の死だ。自分の意思と関係ない事が起こっても不思議じゃない。
だが仲間に刺された事実が、必要以上に私を人間不信にしてくる。
人の目を見る自信はあった。あの時の仲間もまた、敵意の気配は無かった。
それなのに、最期は刺されて……。
「……ごめん。ごめんね、リア」
「謝らなくていいよ。ルミツには色々あるんだ」
「……ごめん」
私は完全に俯いてしまう。情けなくて、情けなくて、仕方がなかった。
「ルミツ、これをあげるよ」
そんな私を見かねたのか、リアが何かを懐から取り出した。
見ればそれは、翡翠色に輝く勾玉の片割れであった。
「これはなに?」
「神社に2人で行っただろう? あそこで昔売っていた御守りのようなものだよ。これを受け取って欲しい」
「……うん」
そうして私はその勾玉を受け取る。
「これでお揃いだね」
「?」
見るとリアの首には私と同じ勾玉の片割れを着けていた。
ふと、私の手にある勾玉から熱を感じた。
それは勾玉だけではない。顔から頭、顔の芯まで火照って仕方がない。心臓の鼓動もうるさい。
でも今は、それが心地よかった。
「ありがと、リア!」
私は満面の笑みで、感謝を述べた。
「っ……!」
「えへへっ」
「……良かったよ」
用意って顔を背けたリアの耳は、赤く染っていた。
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