【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

63 成人 68

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 団子をいっぱい食べたから、夜ご飯は入らない。でも、いっぱい食べたなあって、生松いくまつ広末ひろすえも褒めてくれた。ちょっと食べ過ぎたので、動けずにごろごろと転がっていた。
 楽しかった。
 美味しかった。
 幸せだなあ。
 部屋の扉が、乱暴に開く。緋色ひいろが帰ってきた。
 
「おかえり。」
「ただいま。」

 俺を抱き上げて、ソファに座る。ぎゅうっと抱きついて離れない。何か、いつもと違う匂い。

「お風呂は?」
成人なるひとが一緒に入ってくれるなら、入る。」
「行くー。」

 ほっとしたように、そうか、と緋色ひいろが言った。

「久しぶりに大汗かいた。」
「何してたの?」
常陸丸ひたちまると組手。」

 ふーん。
 もう、お風呂の順番は予約してあったのか、すぐに立ち上がって着替えを準備している。

「お風呂、入るんだよな。」

 もう一回、確認してきた。うん、入るよ。俺が頷くのを見てからお風呂に向かう。
 お風呂に着いてからも、服を脱ぐ俺をじっと見てる。
 なんだ?
 首を傾げると、何でもない、と風呂に入って行った。
 たぶん、何でもなくないんだろう。
 よほど汗をかいたのか、緋色ひいろが自分の体を先に流している。俺は、体を洗うタオルを床に置いて石鹸をこすり付けた。石鹸を自分で使ったのは初めてかも。拾われる前は、そんなもの使ったこと無かったし、拾われてからは、緋色ひいろが洗ってくれていたから。もこもこと泡が立つのが楽しい。しばらく遊んでいたけど、やろうとしていたことを思い出した。
 緋色ひいろの背中を、泡だらけのタオルでこする。大きい背中だねえ。

「もっと、力入れろ。」
「うん。」

 ごしごしとこする。

「痛くない?」
「気持ちいいよ。」
「俺、お風呂で何かあった?」
「……いや?」
「頭壊れてるから、忘れてる?」
「壊れてない。壊れるって言うな。」

 緋色ひいろは、こちらを向いて背中を擦っていた俺の手を掴む。そのまま、前に引っ張って抱きついてきた。

「あわあわだ。」
「人は、壊れるって言わない。いいな。」
「うん。」
「貸せ。洗ってやる。」

 あわあわのタオルを緋色ひいろに渡す。

「昨日、何があったか知りたい。」
「………。」
「知らないと、ずっとそのまま。」
「…力丸りきまるに、風呂に誘われたことは覚えているか?」

 記憶にない。首を横に振った。緋色ひいろは、俺の体を優しくこすりながら、そうか、と言った。

「風呂に誘われた時に、パニックを起こした、らしい。」

 たまに、布団から落ちてるやつ?あれも、よく覚えてない。寝てるのに疲れて、体も痛い。だから、今日は仕事ができなかった。
 それで、何回も確認してたの?風呂に入るかって。

「風呂は、好きになったんだよな?」
「うん。」
「前は、嫌だった?」
「うん。」
「なんで?」
「うーん。体洗うとヤらなきゃならないから。痛いし、気持ち悪いし。次の日に動くのが大変になるし。」
「そうか……。」

 あ、ヤるのが嫌だと思われたかな?

緋色ひいろだけ好き。」
「え?」
緋色ひいろとヤるのは気持ちいい。」

 緋色ひいろは、あー、と言いながら天を仰いだ。

「俺は、久しぶりの全力戦闘訓練で興奮状態だ。煽るな。」
「気持ちいいの、する。」

 口を食べられる勢いで、ちゅーされた。その後は、気持ち良すぎて、よく覚えてない。
 とっても気持ち良かったことだけ覚えてて、幸せだったし、いっぱい寝た。
 でも、次の日、生松いくまつに、嫌いな点滴に繋がれて、仕事はもちろん、休むことになった。
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