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第三章 幸せの行方
65 緋色 56
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会議場へ来るのは、随分と久しぶりだ。
一年半前であったか。戦争に、ようやくけりがつきそうだということで、皇族か、それに準じる者が大将として戦場へ行って、最後の処理をする事になり、誰が行くかを決めねばならない、という議題の会議に参加して以来だ。
あの時は、大将で出陣するのは赤虎、ということで内定していたのに、なんだかんだと言い合っているうちに俺になっていた。兄上に嵌められた、と薄々気付いていたが、拒否するほど嫌な役目でも無かったので引き受けた。そのまま、戦場へ行って、帰ってきてからも、従軍兵士の休暇制度を目一杯使って欠席していた。
もう二度と出なくても良かったのだが。
そんなことを思いながら会議場に入った。ほとんど揃っていて、様々な思惑の眼差しがこちらをじっとりと見てくる。
一条、二条がいないため、上座に座った三条の当主が睨み付けてきたのは、何となく心当たりがある。五条は赤虎が来ていたので、こちらも目付きが悪いのはいつも通りだ。七条灯夜さんの優しい眼差しに、戦場から帰ってきた後、挨拶をしていないことに気付いた。
「灯夜さん、無傷で帰って来ました。」
「はい。おかえりなさい、殿下。」
「挨拶が遅れて、申し訳ない。」
「無事なら、いいのです。」
もう、いい年齢だろうに、美しい顔に衰えは見えない。笑うと深くなる笑い皺が、ますますいい味を出しているくらいだ。優しいこの人は、俺が戦場へ行くことに最後まで反対して、それなら自分が行く、とまで言ってくれたのだった。
帰国の挨拶をしていなかったなど、不義理をしてしまった。
ペコリと頭を下げる。
「色々とあったことは、聞いております。よろしければ、殿下から直接聞けたら嬉しいです。」
「ああ。」
自分の席へ着くと、父と兄がやってくる。俺の姿を見て、父は驚き、兄は満足そうに少し笑った。
免許制度についての改革案は、名字無しに、名字持ちの保証人があれば身分保証料を無しとする、受験料は一律同じ、ということで提案された。反対したのは、三条と五条のみ。曰く、賎しい者が免許を取るような高等教育を受けることなどできず、無駄である。これには、九条利胤の反論が痛快であった。
「昨年の医師免許試験で合格したのは二人。一人は、儂が養子とした元孤児である。もう一人も、確か医者の家系である薬師司家の養子であったな。あちらも、優秀な孤児を引き取って育てたと聞く。さて、高等教育を受けた筈の名字持ち達の不甲斐なさよ。うちの生松は、まさに寝る間も惜しんで勉強しておったからなあ。何と素晴らしいことか。奨学金制度も拡充して、優秀な人材に高等教育を受けさせてやれるように見直しせねばならぬ、と提案しようと思っておった。」
「そちらの提案もいずれ検討したいと思っております。今は、免許の件で。」
「ふむ。努力する者には、それなりの報酬があって然るべきだ。今回の提案は、優秀な人材を国が確保できるという利点もある。素晴らしい!」
朱実の司会で進んだ議会は、医者不足、料理人不足、運転手不足の解消にも繋がると、更に利点が追加され、賛成多数で可決された。
一年半前であったか。戦争に、ようやくけりがつきそうだということで、皇族か、それに準じる者が大将として戦場へ行って、最後の処理をする事になり、誰が行くかを決めねばならない、という議題の会議に参加して以来だ。
あの時は、大将で出陣するのは赤虎、ということで内定していたのに、なんだかんだと言い合っているうちに俺になっていた。兄上に嵌められた、と薄々気付いていたが、拒否するほど嫌な役目でも無かったので引き受けた。そのまま、戦場へ行って、帰ってきてからも、従軍兵士の休暇制度を目一杯使って欠席していた。
もう二度と出なくても良かったのだが。
そんなことを思いながら会議場に入った。ほとんど揃っていて、様々な思惑の眼差しがこちらをじっとりと見てくる。
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「灯夜さん、無傷で帰って来ました。」
「はい。おかえりなさい、殿下。」
「挨拶が遅れて、申し訳ない。」
「無事なら、いいのです。」
もう、いい年齢だろうに、美しい顔に衰えは見えない。笑うと深くなる笑い皺が、ますますいい味を出しているくらいだ。優しいこの人は、俺が戦場へ行くことに最後まで反対して、それなら自分が行く、とまで言ってくれたのだった。
帰国の挨拶をしていなかったなど、不義理をしてしまった。
ペコリと頭を下げる。
「色々とあったことは、聞いております。よろしければ、殿下から直接聞けたら嬉しいです。」
「ああ。」
自分の席へ着くと、父と兄がやってくる。俺の姿を見て、父は驚き、兄は満足そうに少し笑った。
免許制度についての改革案は、名字無しに、名字持ちの保証人があれば身分保証料を無しとする、受験料は一律同じ、ということで提案された。反対したのは、三条と五条のみ。曰く、賎しい者が免許を取るような高等教育を受けることなどできず、無駄である。これには、九条利胤の反論が痛快であった。
「昨年の医師免許試験で合格したのは二人。一人は、儂が養子とした元孤児である。もう一人も、確か医者の家系である薬師司家の養子であったな。あちらも、優秀な孤児を引き取って育てたと聞く。さて、高等教育を受けた筈の名字持ち達の不甲斐なさよ。うちの生松は、まさに寝る間も惜しんで勉強しておったからなあ。何と素晴らしいことか。奨学金制度も拡充して、優秀な人材に高等教育を受けさせてやれるように見直しせねばならぬ、と提案しようと思っておった。」
「そちらの提案もいずれ検討したいと思っております。今は、免許の件で。」
「ふむ。努力する者には、それなりの報酬があって然るべきだ。今回の提案は、優秀な人材を国が確保できるという利点もある。素晴らしい!」
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