【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

83 緋色 59

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 ガラスの金魚を持って、にひゃにひゃと成人なるひとが笑う。絶対に俺が買うと、譲らなかった甲斐があったというものだ。
 プレゼントの山をワゴンに乗せて部屋へ運んだ。成人なるひとが一番に手に取ったのは、やはりガラスの金魚だった。
 雑貨屋で、何に興味を引かれているのかを見ていたのは俺だけじゃない。成人なるひとの欲しいものなんて飴しか思い当たらなかった俺たちは、初めての雑貨屋で成人なるひとが何を見ているのかを、息をつめて観察していたのだ。色鉛筆、オルゴール、ガラスの金魚。ガラスのコーナーで長いこと見惚れていたのは、皆で見ていた。
 手に持って、光にかざしている。きらきらするのが、好きなのだろうか。荘重むらしげのガラスのコップは、してやられた。金魚の絵柄とは、完璧だ。毎日、あれで飲み物を飲むと思うと、それも俺が買ってやりたかったと悔しい。プレゼントは全て、俺が買ってやりたい。けれど、積み上がったプレゼントは愛されている証。それも、嬉しい気がするのは不思議なものだ。
 生まれて初めての誕生日祝い。
 喜んでくれたようで、良かった。
 母上の掟破りのアイスクリームも、盛り上がったな。斑鹿乃むらかのが食べられたのも良かった。
 悪阻つわりで、ほとんど食べ物を受け付けず、食べても吐いてしまうとは聞いていたが、すっかりやつれていた。いくら病気ではないと言っても、大変なものだな。
 広末ひろすえは多分もう、作れるのだろう。実物を見て、一口食べた。あれは、名字無しの平民から、自分の舌と手先の器用さでだけで俺の料理人になった男だ。その辺の凡人とは舌の感度が違う。
 作っていい、と言ってやろう。
 このうちの中だけなら、何も問題はない。ここも、皇家なのだから。

「次は、誰が誕生日かなあ。」

 成人なるひとが、ガラスの金魚をうっとりと眺めながら呟いた。
 全員の誕生日を今日のように祝うのは、なかなか大変そうだ。その月の誕生日の者を集めて、月に一度、パーティーをすることにしたら良いかもしれないな。成人なるひとを抱き寄せながら、考える。
 こんなに穏やかな日々が来るなんて、予想もしなかった。

「幸せだね。」
「ああ。」
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