【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

84 成人の日記より抜粋

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 四月。緋椀ひまりが、住み込みで雇って欲しいとやって来た。厨房には、料理人見習いの男の子が入った。俺が十六歳だと言ったら、嘘だろ、年上かよ、と言った。力丸りきまるはお仕事をし始めた。

 五月。三雲みくもが、住み込みで雇って欲しいとやって来た。

 六月。朱実あけみ殿下と赤璃あかりさまの結婚式があった。結婚式を初めて見た。赤璃あかりさまは、とてもとても綺麗だった。俺たちもしよう、と緋色ひいろが言ったので、俺たちも離宮の仲間の前で結婚式をした。おめでとう、と言われて嬉しかった。白い着物は重たかった。

 七月。緋椀ひまり三雲みくもが同じ部屋で暮らし始めた。

 八月。夏祭りに初めて行った。お城の横で色んな屋台が並んで、皆は浴衣を着て、俺は甚平を着て歩いた。小さな金魚がたくさん泳いでいてびっくりした。金魚すくいは難しかった。射的では、缶入りの飴を落とした。いちご飴は、とんでもなく美味しかった。りんご飴も食べてみたかったけど、硬すぎた……。花火は、音が苦手。耳をふさいで見たら、きれい。
 
 九月。斑鹿乃むらかののお腹は、破れそうなほどにふくらんでいる。大丈夫なのかな。触れると、中からぽこぽこと蹴っているのが分かる。本当に中に何かがいるらしい。びっくりだ。

 十月。斑鹿乃むらかののお腹から、小さい人間が出てきた。本当に出てきた……。おぎゃあおぎゃあと大きな声で泣いた。元気な男の子だった。広末ひろすえが泣いていた。嬉しくても人は泣くらしい。嬉しい日だった。おめでとうがあふれていた。誕生日に、何故おめでとうと言うのか分かったような気がした。

 十一月。末良すえよしは、小さくて柔らかくて可愛い。泣いておっぱい飲んでねんねする。

 十二月。末良すえよしは、少し大きくなった。ぐーに握った手をじっと見て、口に入れちゃう。たまに笑う。

 一月。末良すえよしは、うつぶせで頭を上げる。喜んで笑う。疲れてつぶれたら、泣いちゃう。

 二月。末良すえよしは、ころんと自分でひっくり返れるようになった。でも、戻れなくて泣いちゃう。何でも口に入れる。べろべろ舐める。飴はまだ、食べれない。

 三月。二回目の誕生日。俺は、十七歳になった。末良すえよしばかり構うと拗ねた緋色ひいろに、一番好きだよって言って、ちゅーをした。


終わり
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