【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
203 / 1,325
こぼれ話

新婚旅行のすすめ  緋椀

しおりを挟む
 何を言ってるのかな、成人なるひとは。

「え?緋椀ひまりは結婚してないの?なんで?」
「なんでって。え?誰と?」
三雲みくもでしょ?」
「いやいやいや、ちょっと待って。」

 きょとんと首を傾げる成人なるひと。本気で言ってるな、これ。
 成人なるひととしっかり話をしなければいけないが、昼の食堂は人が多い。俺たちの声が聞こえて、すでに何人も振り返っている。

「ご飯は食べた?」

 と聞くと頷いたので、大急ぎで自分の昼飯をかきこんで、部屋へと連れていった。
 作治さくじさんとの二人部屋は、寝室と居間が分かれていて広い。普段、来客がある訳じゃないがソファも置いているので、そこに成人なるひとを座らせる。

「なんで、俺と作治さくじさんが結婚してると思ったの?」
「してないの?」
「うん。してない。」

 成人なるひとは、んー?と首を捻っている。

成人なるひと、結婚って分かってる?」
「一番好きな人と、これから先の人生を一緒に生きる誓い。」
「……そ、そうか。あー、うん。そうだな。」

 なかなか良い結婚の定義だな。って感心している場合ではない。成人なるひとは、俺の一番好きな人が作治さくじさんだと思ってるってこと?

「あのな、成人なるひと。俺と作治さくじさんがどう見えてるのか知らないけど、」

 その時、部屋の扉が開いて作治さくじさんが入ってきた。

「おや、お客様でしたか。」
「こんにちは。えーと、おじゃま、おじゃまして、ます?」
「お、よくできました。」

 作治さくじさんが褒めると、にぱっと成人なるひとが笑う。ずいぶんと人間らしくなったもんだ。その上、何をすすめて回ってるかと言えば……。

「で、わざわざ部屋でお話とは、どんな内緒話?」
 
 作治さくじさんが悪戯っぽい笑顔でウインクする。こういうとこ、格好いいんだよな。
 いや、俺は何を考えてるんだ?

「あのね。新婚旅行いいよって教えてた。」
「うんうん。」
緋椀ひまりも行ってきてって。」
「うんうん。」
「そしたら、結婚してないって。」
「そうか、そうか。」

 作治さくじさんは、にこにこと成人なるひとから話を聞いている。

斑鹿乃むらかのは行こうかなって言ってた。」
「旅行?」
「新婚旅行は、温泉と動物園行くんだよ。楽しいよ。」
「それは、小さい子どもがいても楽しそうだね。」
緋椀ひまりは行かないの?」

 話が、振りだしに戻ってないか?

「………だから、俺は結婚してないから新婚旅行は行けないの。」
「新婚じゃなくても旅行はできるじゃないか。」

 にやにやと作治さくじさんが笑う。

「そうなの?」
「そうだよー。仲良し同士で行ってもいいんだよ。家族で行ってもいいし。」
「そっか。じゃ、行けるね。緋椀ひまり三雲みくもは一番仲良しだから、結婚してると思ってた。」
成人なるひとくんは、見る目があるね。」
「ん?」
「一番仲良しって知ってた?」
「うん。知ってる。」

 俺は、ただただ熱がこもっていく顔を右手で覆って溜め息を吐いた。

しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

処理中です...