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こぼれ話
真っ直ぐな気持ち 緋椀
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こんこん、と扉がノックされる。はい、と作治さんが返事をしながら開けにいくと、緋色殿下が立っていた。
「成人、いるか。」
「はーい。」
中に入りながら殿下が言うと、成人が返事をする。
「今日は昼寝しろ。」
「えー。今から雫石さんと父さまにまんじゅう渡しに行く。」
「明日か、昼寝の後にしろ。」
「眠くない。」
「いいや、駄目だ。まだ休みをもらっているから一緒にいてやる。」
殿下はそう言いながら、ひょいと成人をソファから抱き上げた。口では、眠くないと言いながら、成人は簡単に殿下の腕の中に収まる。
「あ、話は終わったか?」
殿下も相変わらずだな。
「まだー。」
殿下は成人を抱いたままソファに座った。
「何の話?」
「成人くんが、俺たちに新婚旅行を勧めてくれていたのですよ。」
「はは。斑鹿乃も言ってたな。今度の広末の休みの日に、とりあえず動物園に行くそうだ。皆に勧めるほど楽しかったか、成人。」
成人は、うんうんと頷いている。
「行ってきたらいいぞ、温泉。俺の休みが終わってから交代な。」
殿下の言葉に、作治さんが笑みを深めた。
「お外のお風呂は、いいよー。」
「おや、露天風呂?部屋に?」
「高いぞ。」
殿下がにやりと笑う。
「ちょっと頑張ってみますか。」
「大人の余裕だなー。」
この二人は、何だかんだ仲が良い。もしかしてあっという間に……。
「温泉行こうか、緋椀。」
「………はい?」
「楽しみだなー。」
温泉旅行が決定してる?
「だから、俺は新婚じゃない。」
「新婚って何?」
「え?知らずに勧めてたの?」
「結婚したての人のことだよ。」
「結婚してる人が行く旅行じゃないの?したてじゃないとダメ?」
「いいや。」
殿下は楽しそうに笑って、首を捻っている成人の頬にキスをする。ひゃ、と嬉しそうな顔をした成人が振り返って殿下の口に口を押し付けた。
まともに見てしまって、俺が照れる。二人はただ、機嫌良くそこにいるだけなのに。
殿下がこちらを見て、にやぁと笑った。どことなく姉上に似たその笑いは、嫌な予感しかしない。
「真っ赤だな。」
「なんでー?」
「そういうことは、人前でしないものなんだよ。」
「緋椀はどこでするの?」
「どこって、そりゃ、部屋とか人の見てないとこで……。」
「するんだな。」
しまった。
「あ、いや……。」
「ちゅーは気持ちいいよねえ。」
もう俺は顔を手で覆ってうつむくしかできない。乙羽さん、殿下と成人を止めに来てくれ。
「楽しみだな、露天風呂。」
いつの間にか作治さんに肩を抱かれていたことに気付いたのは、殿下と成人が部屋から出ていってからだった。
「成人、いるか。」
「はーい。」
中に入りながら殿下が言うと、成人が返事をする。
「今日は昼寝しろ。」
「えー。今から雫石さんと父さまにまんじゅう渡しに行く。」
「明日か、昼寝の後にしろ。」
「眠くない。」
「いいや、駄目だ。まだ休みをもらっているから一緒にいてやる。」
殿下はそう言いながら、ひょいと成人をソファから抱き上げた。口では、眠くないと言いながら、成人は簡単に殿下の腕の中に収まる。
「あ、話は終わったか?」
殿下も相変わらずだな。
「まだー。」
殿下は成人を抱いたままソファに座った。
「何の話?」
「成人くんが、俺たちに新婚旅行を勧めてくれていたのですよ。」
「はは。斑鹿乃も言ってたな。今度の広末の休みの日に、とりあえず動物園に行くそうだ。皆に勧めるほど楽しかったか、成人。」
成人は、うんうんと頷いている。
「行ってきたらいいぞ、温泉。俺の休みが終わってから交代な。」
殿下の言葉に、作治さんが笑みを深めた。
「お外のお風呂は、いいよー。」
「おや、露天風呂?部屋に?」
「高いぞ。」
殿下がにやりと笑う。
「ちょっと頑張ってみますか。」
「大人の余裕だなー。」
この二人は、何だかんだ仲が良い。もしかしてあっという間に……。
「温泉行こうか、緋椀。」
「………はい?」
「楽しみだなー。」
温泉旅行が決定してる?
「だから、俺は新婚じゃない。」
「新婚って何?」
「え?知らずに勧めてたの?」
「結婚したての人のことだよ。」
「結婚してる人が行く旅行じゃないの?したてじゃないとダメ?」
「いいや。」
殿下は楽しそうに笑って、首を捻っている成人の頬にキスをする。ひゃ、と嬉しそうな顔をした成人が振り返って殿下の口に口を押し付けた。
まともに見てしまって、俺が照れる。二人はただ、機嫌良くそこにいるだけなのに。
殿下がこちらを見て、にやぁと笑った。どことなく姉上に似たその笑いは、嫌な予感しかしない。
「真っ赤だな。」
「なんでー?」
「そういうことは、人前でしないものなんだよ。」
「緋椀はどこでするの?」
「どこって、そりゃ、部屋とか人の見てないとこで……。」
「するんだな。」
しまった。
「あ、いや……。」
「ちゅーは気持ちいいよねえ。」
もう俺は顔を手で覆ってうつむくしかできない。乙羽さん、殿下と成人を止めに来てくれ。
「楽しみだな、露天風呂。」
いつの間にか作治さんに肩を抱かれていたことに気付いたのは、殿下と成人が部屋から出ていってからだった。
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