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第五章 それは日々の話
6 衣装部屋より 4
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仕事にならなくなった。
いらっしゃったのだ。成人さまが!くまのパーカーを着て!
ど、ど、ど、どうしましょう。
似合ってる、似合ってるわ。可愛い。作っておいて自分で言うけど、可愛いわ!
「あの。あの、こんにちは。」
衣装部の扉を開いたまま固まる私に、成人さまが話しかけてくださった。くまの帽子をひょいと脱いで頭を下げてくださる。
「あああああ。はい。はい、こんにちは。」
あまりに私が挙動不審だったのだろう。先輩が様子を見に来られて、まあ!と大きめの声を上げた。
ですよね?
おかしな声も出ますよね?
「お願いがあってきました。」
「は、は、は、はいー。」
成人さまの少し掠れた高めの声で仰られる言葉にも、上手く返事ができずに首を縦にこくこくしてしまう。
こちらの挙動不審に、ん?と首を傾げられるのも可愛らしい。私、どうしたら……。
「お客様?」
ああ、涼乃絵部長。我らが女神さま。助かりましたあ。
「まあ、成人さま。緋色殿下も。どうぞお入りくださいまし。」
来客用のソファに座って頂いてお茶をお出しすると、ようやく少し落ち着いてきた。……私が。
涼乃絵さまが対面のソファに座ってお話を伺う体勢に入られたので、ほっとしてソファの後ろに立つ。何となく、お茶をお出しした後のお盆を抱えたままだ。緋色殿下と成人さまの後ろには常陸丸さまが立たれている。
絵になる三人組に見惚れていると、あなたもこちらにお座りなさい、と涼乃絵さまが自分の隣を示された。
えええええ。
私は立ったままで結構ですのに。
もちろん、断ることなんてできずにかちこちに緊張して座る。
「え、と。いつもお洋服を作ってくれてありがとう。」
成人さまが礼儀正しく、頭を下げられた。緋色殿下は隣で優しい顔で見守っていらっしゃる。お話は成人さまにお任せされるようだ。殿下の貴重な緩んだお顔。うつ向いている場合じゃないわ。
「まあ。わざわざありがとうございます。」
「あの、くまの、これが好きで、でも洗ってたら着れなくて。だから、もう一個欲しいです。」
「あら。あらまあまあ。気に入って頂けたのね。良かったわ。」
涼乃絵さまが手を打ちならし、嬉しそうなお声を上げられた。
成人さまが、こくこく頷いていらっしゃる。真剣なお顔も可愛いです。
「実はもう一枚、あるのよ。ね?」
涼乃絵さまがこちらを向いて合図されるので、私は成人さまと同じようにこくこく頷いた。慌てて口も開く。
「白いのも作ってました。白くまです。あと、垂れ耳うさぎも。」
「うさぎ?」
「はい。その形のも試しに作ってあります。」
「うーん。俺ね、くまがいい。」
「はい。白くまをお持ちしますね。」
成人さまがゆる、と表情を崩された。
少しだけ、少しだけお待ちください、と私は倉庫に走った。
いらっしゃったのだ。成人さまが!くまのパーカーを着て!
ど、ど、ど、どうしましょう。
似合ってる、似合ってるわ。可愛い。作っておいて自分で言うけど、可愛いわ!
「あの。あの、こんにちは。」
衣装部の扉を開いたまま固まる私に、成人さまが話しかけてくださった。くまの帽子をひょいと脱いで頭を下げてくださる。
「あああああ。はい。はい、こんにちは。」
あまりに私が挙動不審だったのだろう。先輩が様子を見に来られて、まあ!と大きめの声を上げた。
ですよね?
おかしな声も出ますよね?
「お願いがあってきました。」
「は、は、は、はいー。」
成人さまの少し掠れた高めの声で仰られる言葉にも、上手く返事ができずに首を縦にこくこくしてしまう。
こちらの挙動不審に、ん?と首を傾げられるのも可愛らしい。私、どうしたら……。
「お客様?」
ああ、涼乃絵部長。我らが女神さま。助かりましたあ。
「まあ、成人さま。緋色殿下も。どうぞお入りくださいまし。」
来客用のソファに座って頂いてお茶をお出しすると、ようやく少し落ち着いてきた。……私が。
涼乃絵さまが対面のソファに座ってお話を伺う体勢に入られたので、ほっとしてソファの後ろに立つ。何となく、お茶をお出しした後のお盆を抱えたままだ。緋色殿下と成人さまの後ろには常陸丸さまが立たれている。
絵になる三人組に見惚れていると、あなたもこちらにお座りなさい、と涼乃絵さまが自分の隣を示された。
えええええ。
私は立ったままで結構ですのに。
もちろん、断ることなんてできずにかちこちに緊張して座る。
「え、と。いつもお洋服を作ってくれてありがとう。」
成人さまが礼儀正しく、頭を下げられた。緋色殿下は隣で優しい顔で見守っていらっしゃる。お話は成人さまにお任せされるようだ。殿下の貴重な緩んだお顔。うつ向いている場合じゃないわ。
「まあ。わざわざありがとうございます。」
「あの、くまの、これが好きで、でも洗ってたら着れなくて。だから、もう一個欲しいです。」
「あら。あらまあまあ。気に入って頂けたのね。良かったわ。」
涼乃絵さまが手を打ちならし、嬉しそうなお声を上げられた。
成人さまが、こくこく頷いていらっしゃる。真剣なお顔も可愛いです。
「実はもう一枚、あるのよ。ね?」
涼乃絵さまがこちらを向いて合図されるので、私は成人さまと同じようにこくこく頷いた。慌てて口も開く。
「白いのも作ってました。白くまです。あと、垂れ耳うさぎも。」
「うさぎ?」
「はい。その形のも試しに作ってあります。」
「うーん。俺ね、くまがいい。」
「はい。白くまをお持ちしますね。」
成人さまがゆる、と表情を崩された。
少しだけ、少しだけお待ちください、と私は倉庫に走った。
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