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第五章 それは日々の話
5 怖くてもいい 成人
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「まあ!まあまあまあ、なる!」
元気になった赤璃さまがこちらを振り返って大きな声を出す。
なになに?
病気じゃないけどしんどくてちょっと痩せちゃうのは、赤ちゃんが、お腹にいるよってお知らせしてるんだよね?斑鹿乃が言ってたよ。
それで末良が出てきた。
あの時は、びっくりしたよ。本当にお腹に人がいてさ。斑鹿乃のお腹が膨れすぎて、破裂しちゃうんじゃないかと心配だった。末良が生まれたらまた、斑鹿乃のお腹はぺったんこになったけど、あれは怖かったなあ。赤璃さまもあんなお腹になるの?ちょっと想像できない。
おいでおいでと手招かれるままに、赤璃さまの隣に座った。俺のお茶がそこに置いてあるしね。
赤璃さまが俺に、ぎゅっと抱きつく。
仄かに、髪の毛の良い匂いが俺の鼻をくすぐった。
「なる。すごいね。」
何が?
「私ね、ちょっと怖い。初めてだから。」
「うん。」
「ご飯を食べると吐きそうになるし、体がずっと怠くて思い通りに動けないし、こんなこと初めてで、このまま赤ちゃんに体を取られちゃうような気がして、怖かった。」
「うん。」
赤璃さまだから、何でも楽しんじゃいそうな気がするけど、怖いときもあるんだね。誰でもあるよ、きっと。
「赤ちゃんがお腹にできたことはまだ、発表してないし、自分から言ってもいない。それでも身近な人には分かっちゃうでしょ?知った人はみんな、おめでとう、良かったねって喜んでくれるから、笑ってありがとうって言わなきゃいけなくて、怖いって言えなくて……。」
「うん。」
「今から懐妊を発表したら、もっともっとたくさんの人が、おめでとうばっかりを言ってくるんだと思ったら、怖くて怖くて。」
「うん。」
「私、笑えるかなと思って。」
「うん。」
「でもね。なるは今、心配そうな顔してくれた。」
「うん。斑鹿乃のお腹が膨らむの、怖かったから。」
「おんなじこと思ってくれて、ありがとう。」
「…………?」
何で、ありがとうなのか分からなくて首を傾げる。赤璃さまは、抱きしめていた腕を緩めて少し離れた。俺を見て、くすくす笑った。
「いいの。分からなくてもいいの。私の元気が出たから。」
「ふーん。」
「美容液も最高に素敵!なるは髪の毛の美容液を塗るのが、城で一番上手よ。」
え、そう?そうかな?
そうだったら嬉しいな。
「ね、明日も来てね。また髪の毛に美容液をつけて頂戴。」
「うん、いいよ。お土産持ってくるね。」
嬉しそうに笑った赤璃さまは、しばらく俺を抱きしめてくまのお洋服を撫で回していた。
緋色が迎えに来るまで離してもらえず、雫石さんと赤璃さまがゆっくりとしゃべっているのを聞きながら、うとうとしていた。
「ああ、このくまの服は手触りがいいわー。可愛いし。ね、なる。衣装部に寄るなら、私の寝間着やお部屋着をこの生地で作ってほしいですって、伝えてきて頂戴。」
赤璃さまが元気になったみたいで良かった!
元気になった赤璃さまがこちらを振り返って大きな声を出す。
なになに?
病気じゃないけどしんどくてちょっと痩せちゃうのは、赤ちゃんが、お腹にいるよってお知らせしてるんだよね?斑鹿乃が言ってたよ。
それで末良が出てきた。
あの時は、びっくりしたよ。本当にお腹に人がいてさ。斑鹿乃のお腹が膨れすぎて、破裂しちゃうんじゃないかと心配だった。末良が生まれたらまた、斑鹿乃のお腹はぺったんこになったけど、あれは怖かったなあ。赤璃さまもあんなお腹になるの?ちょっと想像できない。
おいでおいでと手招かれるままに、赤璃さまの隣に座った。俺のお茶がそこに置いてあるしね。
赤璃さまが俺に、ぎゅっと抱きつく。
仄かに、髪の毛の良い匂いが俺の鼻をくすぐった。
「なる。すごいね。」
何が?
「私ね、ちょっと怖い。初めてだから。」
「うん。」
「ご飯を食べると吐きそうになるし、体がずっと怠くて思い通りに動けないし、こんなこと初めてで、このまま赤ちゃんに体を取られちゃうような気がして、怖かった。」
「うん。」
赤璃さまだから、何でも楽しんじゃいそうな気がするけど、怖いときもあるんだね。誰でもあるよ、きっと。
「赤ちゃんがお腹にできたことはまだ、発表してないし、自分から言ってもいない。それでも身近な人には分かっちゃうでしょ?知った人はみんな、おめでとう、良かったねって喜んでくれるから、笑ってありがとうって言わなきゃいけなくて、怖いって言えなくて……。」
「うん。」
「今から懐妊を発表したら、もっともっとたくさんの人が、おめでとうばっかりを言ってくるんだと思ったら、怖くて怖くて。」
「うん。」
「私、笑えるかなと思って。」
「うん。」
「でもね。なるは今、心配そうな顔してくれた。」
「うん。斑鹿乃のお腹が膨らむの、怖かったから。」
「おんなじこと思ってくれて、ありがとう。」
「…………?」
何で、ありがとうなのか分からなくて首を傾げる。赤璃さまは、抱きしめていた腕を緩めて少し離れた。俺を見て、くすくす笑った。
「いいの。分からなくてもいいの。私の元気が出たから。」
「ふーん。」
「美容液も最高に素敵!なるは髪の毛の美容液を塗るのが、城で一番上手よ。」
え、そう?そうかな?
そうだったら嬉しいな。
「ね、明日も来てね。また髪の毛に美容液をつけて頂戴。」
「うん、いいよ。お土産持ってくるね。」
嬉しそうに笑った赤璃さまは、しばらく俺を抱きしめてくまのお洋服を撫で回していた。
緋色が迎えに来るまで離してもらえず、雫石さんと赤璃さまがゆっくりとしゃべっているのを聞きながら、うとうとしていた。
「ああ、このくまの服は手触りがいいわー。可愛いし。ね、なる。衣装部に寄るなら、私の寝間着やお部屋着をこの生地で作ってほしいですって、伝えてきて頂戴。」
赤璃さまが元気になったみたいで良かった!
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