【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第五章 それは日々の話

116 男女の違いと免許の話  成人

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 わっと盛り上がるさいと、今日もその隣で仕事をしていた睦峯むつみね緋色ひいろも満足って顔で笑っている。

「なに?」
「なるちゃん。私は今日、自分で車を運転してここまで来たんだよ」 
「え?格好いい……」

 車の運転は、俺の夢。いつか絶対やってみたい。運転してる力丸りきまるは、格好いいんだよ。もちろん、常陸丸ひたちまるもじいやも。緋色ひいろは運転しない。運転免許は持ってるけれど、運転席は危険だから外では運転しないんだって。皇子様だから。
 城の敷地内では運転してることもあるらしいけど、俺は見たことない。だって、俺と一緒に車に乗るときは、ほんの少しの間でも、絶対に隣に座ってくっつくもんね。

「一人で来たのか?」
「いえ。心配だからと旦那が隣に乗って来ましたよ。私より緊張してました」

 あっはっは、と笑う青葉あおばに、常陸丸ひたちまるが、うわあ、と言った。

「父上、かわいそうに……」
「何がだい、常陸丸ひたちまる。私は、筋が良いと五条様にも褒められてるんだからね」
「それは、あれだ。凉乃絵すずのえさまが、あまりにもあれだから……」

 あれってなに?凉乃絵すずのえさまがどうしたの?お洋服を作ってくれるお部屋にいる、優しい綺麗な女の人だよね?
 失礼します、と俺の横に座った青葉あおばは、にこにこと説明してくれた。

「車の免許ってのは、男しか取得できない、っていう暗黙の了解があってね」
「あんもくの了解?」
「言わなくても分かるだろっていう圧力だよ。もし、車の免許を取る学校に入学しても、女に車の免許は取らせないって学校が決めてたみたいで、今まで合格した女性はいなかったんだ」
「変なの」

 うん、と青葉あおばが笑った。

「なるちゃんは、それがどうして変だと思う?」
「車の運転に、強い力がいるとは思えないから」

 男と女という性別の違いもよく分かっていなかった俺に、青葉あおばが教えてくれたこと。まず、体の作りが違う。子どもを生んで育てる時に、それぞれ必要な部位があるから違うらしい。男だけ、女だけだと子どもが生まれなくて、滅んでしまう。動物も植物も、雄や雌に分かれているものが多い。中には性別が無い生き物もいて、分裂して増えたりするらしいけど、大体は分かれている。
 体の作りが違う他にも、どちらかというと男の方が力が強かったり、速く動けたりするらしい。だから、表に見える兵士や護衛などは男ばかりなんだって。
 もう少し個人を見て、向いている仕事につけるようにしたらいいと私は思うんだよ、と青葉あおばは言う。
 一ノ瀬いちのせたちかくしは、それぞれの性別の特性を生かした上で、できる仕事を分担してるから、よほど賢いって。
 で、車の運転は男の人だけ、と決まっているとして、それが何でかなって思う。運転するときに、すごく力がいるようには思えないし、素早く動かなければいけないようにも思えない。車は、ものすごく速く動くから、素早い判断は必要かもしれないけど、男の方が判断が早いってことは無いと思う。男の人と女の人を、服装以外ではっきり見分けられていない俺が言うのもなんだけど、どちらが運転してもいいんじゃないかなあ。

「そうだよね?車の運転は女にはできない、と言ってしまうのはおかしいよね?同じように勉強して、練習して、試験も受けた上で不合格なら仕方ないけど、そこに性別は関係無いよね?」
「うん」
「やっぱりなるちゃんも、話が分かるね」

 青葉あおばは俺の背中をぽんぽんと優しく叩いた。最近、頭を撫でられるのが苦手になった俺を褒めるときの仕草だ。

「車の運転をしたい女性は多かったんだよ。特に、学校の先生なんてのは、生徒の家庭に訪問したりしなくてはいけないときがあるからね。学校の先生の免許だけは、女性も割りと対等な扱いで取得できるから、女性の仕事人が多くてね。そんな話を緋色ひいろ殿下との雑談で話したら、よし、免許を取りに行けって言ってくださったんだ。そこで、私だけじゃ門前払いだろうからと、興味を示してくださった凉乃絵すずのえさまが一緒に通ってくださってね。心配した凉乃絵すずのえさまの旦那様も一緒に通ってくださったんだよ」
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