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第五章 それは日々の話
117 免許の笑い話 成人
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「五条の元当主も、ずいぶん楽しそうに通っていたな」
緋色が、くつくつと笑いながら口を挟む。
「ええ、とても助かりました。もう本当に、驚くようなことばかりでしたから。座学の後の筆記試験が不合格と告げられた後、間違えた問題を知りたいから答案を返して欲しいと言ったら、無くしたと言われまして。では点数は?と聞いたら、答案を無くしたから分からない、と」
「は、ははははは」
「うわあ。雑だなあ」
緋色が大笑いして、常陸丸が呆れたように言った。
「でしょう?筆記試験なんて、はっきり証拠が残るものに不正のしようもないだろうと思っていたら、不合格と告げて終わりにしようとするんですよ。呆れて、開いた口が塞がりませんでした」
「で?どうなったんだ?」
「ふふ。凉乃絵さまにも同じように告げたものですから、五条さまが探せ、と命じられました」
「出てきたのか?」
「ええ。だって、筆記試験は選択問題ですし、結果は一時間もしないうちに出るのですよ?実技の練習の予約を入れて帰る方が多いのですから、同じように試験を受けた方はほとんど残って待っておりました。実際は、無くす時間も無かったようです」
「ぶっ」
睦峯が吹き出した。笑いながら青葉に声をかける。
「お二人の答案だけ、無くしたと言ったんですか?」
「はい!」
あはははははは、と部屋の中が笑い声で溢れる。真面目に書類と向き合っていた三郎も、控えめに笑ってる。
「二人とも満点でした」
「で?」
緋色が続きを促す。
「あの五条さまが、額に青筋を立てていらっしゃったので後のことはお任せ致しまして、合格の通知はしっかりと頂き、運転実技の練習へと移りました」
「成る程なあ。今は笑い話だが、これが慣例だったかと思うと笑えんな」
「実技も、五条さまが後ろ座席に付き添いで乗ってくださった時しか合格しませんでしたよ」
「そうか……。これからどんどん女性も免許を取りに行けと言うには、見張りの人手が足りんか……」
「知り合いに入学希望者はたくさんおりますので、大勢で一斉に行ってみればどうでしょう。不正のしようが無くなるかもしれませんよ?」
「ああ。声をかけてみてくれ。あきらかな不正には、学校側に罰金を払わせるような法を作ろう」
「失礼致します」
じいやが姿を現し、頭を下げながら口を挟んだ。
「うちの者をその学校へ通わせてもよろしいでしょうか」
「おお、もちろん。業務の合間に行ってきたらいい。ははは。これはいいぞ。一ノ瀬相手にどう出るか見ものだな」
「いや。殿下には申し訳ございませんが、学校側の糾弾のためではなく、単純に良い案だと思ったまで。車の運転ができる者が増えれば、更に仕事がしやすくなります。半分もの人間を最初から除外していたとは、なんと勿体ないことを。何故、今まで思い付かなかったのか、不思議なくらいです」
「先入観ってのは厄介だ。俺も戦場で、誰より手際の良い医者だった生松に医師の免許が無いことを知った時は驚いた。城で、うちの広末が厨房に入れないなんて馬鹿馬鹿しい事態が起こった時に、名字が無いと試験も受けられないなんてとんでもない損失だと、ようやく気付いたからな」
「そういえば、医師や調理師も女性がいませんね」
「確かに……」
難しい話をしてる。
でも、皆楽しそうで、何かが良いようになっていこうとしているんだということは分かった。
いいな。
俺もいつか、車の運転免許を取りたいな。
緋色が、くつくつと笑いながら口を挟む。
「ええ、とても助かりました。もう本当に、驚くようなことばかりでしたから。座学の後の筆記試験が不合格と告げられた後、間違えた問題を知りたいから答案を返して欲しいと言ったら、無くしたと言われまして。では点数は?と聞いたら、答案を無くしたから分からない、と」
「は、ははははは」
「うわあ。雑だなあ」
緋色が大笑いして、常陸丸が呆れたように言った。
「でしょう?筆記試験なんて、はっきり証拠が残るものに不正のしようもないだろうと思っていたら、不合格と告げて終わりにしようとするんですよ。呆れて、開いた口が塞がりませんでした」
「で?どうなったんだ?」
「ふふ。凉乃絵さまにも同じように告げたものですから、五条さまが探せ、と命じられました」
「出てきたのか?」
「ええ。だって、筆記試験は選択問題ですし、結果は一時間もしないうちに出るのですよ?実技の練習の予約を入れて帰る方が多いのですから、同じように試験を受けた方はほとんど残って待っておりました。実際は、無くす時間も無かったようです」
「ぶっ」
睦峯が吹き出した。笑いながら青葉に声をかける。
「お二人の答案だけ、無くしたと言ったんですか?」
「はい!」
あはははははは、と部屋の中が笑い声で溢れる。真面目に書類と向き合っていた三郎も、控えめに笑ってる。
「二人とも満点でした」
「で?」
緋色が続きを促す。
「あの五条さまが、額に青筋を立てていらっしゃったので後のことはお任せ致しまして、合格の通知はしっかりと頂き、運転実技の練習へと移りました」
「成る程なあ。今は笑い話だが、これが慣例だったかと思うと笑えんな」
「実技も、五条さまが後ろ座席に付き添いで乗ってくださった時しか合格しませんでしたよ」
「そうか……。これからどんどん女性も免許を取りに行けと言うには、見張りの人手が足りんか……」
「知り合いに入学希望者はたくさんおりますので、大勢で一斉に行ってみればどうでしょう。不正のしようが無くなるかもしれませんよ?」
「ああ。声をかけてみてくれ。あきらかな不正には、学校側に罰金を払わせるような法を作ろう」
「失礼致します」
じいやが姿を現し、頭を下げながら口を挟んだ。
「うちの者をその学校へ通わせてもよろしいでしょうか」
「おお、もちろん。業務の合間に行ってきたらいい。ははは。これはいいぞ。一ノ瀬相手にどう出るか見ものだな」
「いや。殿下には申し訳ございませんが、学校側の糾弾のためではなく、単純に良い案だと思ったまで。車の運転ができる者が増えれば、更に仕事がしやすくなります。半分もの人間を最初から除外していたとは、なんと勿体ないことを。何故、今まで思い付かなかったのか、不思議なくらいです」
「先入観ってのは厄介だ。俺も戦場で、誰より手際の良い医者だった生松に医師の免許が無いことを知った時は驚いた。城で、うちの広末が厨房に入れないなんて馬鹿馬鹿しい事態が起こった時に、名字が無いと試験も受けられないなんてとんでもない損失だと、ようやく気付いたからな」
「そういえば、医師や調理師も女性がいませんね」
「確かに……」
難しい話をしてる。
でも、皆楽しそうで、何かが良いようになっていこうとしているんだということは分かった。
いいな。
俺もいつか、車の運転免許を取りたいな。
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本当にありがたく思います。
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