【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

147 悪知恵?  成人

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 最後にはアイスクリームが出てきた。おかずは少し残してたけど、アイスクリームは食べる。絶対食べる。

「入るんだな?」
「入る」

 自信満々に頷く。
 アイスクリームが来るんじゃないかなって思ってたから、後から出てきたおかずは食べずに待ってた。入るならおかずを食べろって緋色ひいろには言われそうだから、お腹いっぱいのふりしてた。ふふふ。本当はあと少し、お腹に隙間が残ってたんだ。

「だんだん悪知恵が働くようになってきやがって」
「わるぢえ」
「良くない方に頭が回ることだ」
「ふーん」

 朱実あけみ殿下みたいに?あ、でも朱実あけみ殿下、そればっかりじゃないか。朱実あけみ殿下は、良い方にも良くない方にもたくさん頭が回る。
 ん?俺のは悪知恵じゃないよ?

「お腹と相談した」
「ほう?」
「アイスクリームを食べるんなら、こっちのおかずは入らないよってお腹が言ってた」
「あーそう」
「うんそう」

 だから悪知恵じゃない。
 アイスクリームが出てこなかったら、置いておいたおかずを食べてたかもしれないし。あ、でも違うデザートが出てきたらそっち食べてたから、やっぱりあのおかずは食べれなかったかなあ。
 アイスクリームを口に入れて、んーってしてたら緋色ひいろが俺の額をぴん、と弾いた。
 ええー?これ、力丸りきまるが何か悪いことした時とか、いたずらした時にされるやつだ。俺、悪いことしてないよ?いたずらもしてない。なんで弾かれたんだろ。痛くないけど。

「食べる?」

 緋色ひいろの前にはデザートは置いてなくて、熱いお茶が湯気を立てているだけ。前は、食べなくてもアイスクリームが緋色ひいろの前に出てたけど、今日は出てない。溶けるだけだからもったいないもんね。何回か一緒にご飯を食べたから、緋色ひいろがアイスクリームを食べないってお城の料理人も気付いたのかもしれない。気付くの遅かったけど、賢くなったなあ。
 スプーンでアイスクリームをほんのちょっとすくって緋色ひいろの口のとこに近付けたら、ぱくって食べた。

「あま」

 言うと思った。こんなに美味しいのに。アイスクリームは、そんなにものすごく甘いって訳じゃないと思う。冷たくて、ちょうどいいくらいに甘くて、口に入れたらとろって溶けるんだ。松吉まつきちが食べてみたいって言うの分かる。早く来ないかな。喜んでくれるかな。

「またいつでもご飯を食べにいらっしゃい。毎日来てもいいのよ?」

 雫石しずく母さまが、アイスクリームをにこにこで食べながら言った。
 ん?毎日?

「毎日は来ない」
「そう?」
「うん」
「どうして?」

 どうしてって?うーん。
 正装して、ちゃんと食べなきゃって気にして、どれを残そうかなって考えたりするのを毎日は嫌、かな。

「いつもの服で、いつものご飯食べるのが好き」

 くくって緋色ひいろが笑う。緋色ひいろもそう思う?

「父さまたちは、いつもの服が正装で大変だね」

 俺、くまの服とか着れるおうちの人で良かったよ。
 
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