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第八章 郷に入っては郷に従え
148 よそではない? 成人
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「大変、か」
父さまが、目を大きく開いて言った。
「うん」
「この服が?」
「うん」
「そういうものか?」
「うん」
「……これはな、成人。全くの正装ではなく、謁見の際のものより少し楽な格好であるのだが」
「ええ?」
少し考えた父さまが口を開いた。父さまは、アイスクリームをあっという間に食べ終わっている。冷たいアイスクリームを食べて、すぐに熱いお茶をもらっていた。朱実殿下は緋色と一緒でアイスクリームを食べてない。朱実殿下も、緋色と一緒で甘いのはあんまり食べないのかな?知らなかった。兄弟だから似てるとか?じゃあ朱実殿下も、アイスクリームを食べたら、あまって言うのかな。言うのかもな。想像はできないけど。
少し楽な格好と聞いても、謁見の時の正装と、今父さまが着ている服の見分けがつかなくて、俺は、ええって言ってしまった。二つの絵を見比べて間違いを探す遊びみたいに、さっきの格好の父さまを今の父さまの横に並べてくれないと困る。
俺たちは謁見の時と同じ服を着てきたから、父さまと朱実殿下もおんなじかと思ってた。謁見の時にいなかったけれど、母さまと赤璃さまは着物を着ている。着物って正装だよね?普段、お部屋で着物は着ていなかったはず。お部屋にたくさん行ったことがある訳じゃないけど、行った時はいつも、二人とも着物ではなかった。着物はお腹がグッと締まって苦しいって、結婚式の白い着物を着た時に俺は思ったから、いつも着てたら苦しいんじゃないかな。知らないけどさ。
「ふむ。では成人は、どんな格好で食事をしているんだ?」
「くまとか。仕事の服とか」
「くま?」
「くまの。好きなやつ。緋色とお揃いも好き」
「ふむ。くまは分からぬが、仕事の服で食べることはあるのだろう?私のこれも、仕事の服だ。一緒じゃないか?」
「そっか」
仕事の服のままなのか。なら、仕方ない。仕事から帰ってきて、着替えずそのままご飯を食べてる人はいる。俺も緋色も、そのままのこともある。昼はいつもそう。納得。
俺は、アイスクリームを口に入れた。見てたら溶けちゃうことはもう知ってるから、ぱくぱく食べる。食べて無くなってもまた作ってもらえるから、美味しいうちにちゃんと食べる。
「ふふ」
「一口ごとに、溶けそうな顔して食うな、まったく」
緋色の手が伸びてきて、俺の口の端をきゅっと擦った。擦った指を舐めて、あまって言う。
甘いって知ってるのに舐めるんだよね。そしてお茶を飲むんだ。そして俺を見てにこにこする。それを見てた乙羽が、お行儀が悪いって言ったりする。家だからいいだろって緋色が言うと、よそでやっちゃ駄目よって乙羽が言うんだ。
あれ?ここよそかな。よそでやっちゃったかな?
「緋色。よそでやっちゃ駄目」
「ん?ああ。ふはっ。はいはい」
「よそではない」
父さまが言う。
「そうなの?」
「ああ。家族の食事だと言ったろう?仕事でもなく、よそでもないぞ?」
確かに父さまは、謁見の時にそう言っていた。でも、正装に着替えてから来た俺たちには、ここは家じゃない。
「うーん?家でもないけど、よそでもない?」
難しいな。
父さまが、目を大きく開いて言った。
「うん」
「この服が?」
「うん」
「そういうものか?」
「うん」
「……これはな、成人。全くの正装ではなく、謁見の際のものより少し楽な格好であるのだが」
「ええ?」
少し考えた父さまが口を開いた。父さまは、アイスクリームをあっという間に食べ終わっている。冷たいアイスクリームを食べて、すぐに熱いお茶をもらっていた。朱実殿下は緋色と一緒でアイスクリームを食べてない。朱実殿下も、緋色と一緒で甘いのはあんまり食べないのかな?知らなかった。兄弟だから似てるとか?じゃあ朱実殿下も、アイスクリームを食べたら、あまって言うのかな。言うのかもな。想像はできないけど。
少し楽な格好と聞いても、謁見の時の正装と、今父さまが着ている服の見分けがつかなくて、俺は、ええって言ってしまった。二つの絵を見比べて間違いを探す遊びみたいに、さっきの格好の父さまを今の父さまの横に並べてくれないと困る。
俺たちは謁見の時と同じ服を着てきたから、父さまと朱実殿下もおんなじかと思ってた。謁見の時にいなかったけれど、母さまと赤璃さまは着物を着ている。着物って正装だよね?普段、お部屋で着物は着ていなかったはず。お部屋にたくさん行ったことがある訳じゃないけど、行った時はいつも、二人とも着物ではなかった。着物はお腹がグッと締まって苦しいって、結婚式の白い着物を着た時に俺は思ったから、いつも着てたら苦しいんじゃないかな。知らないけどさ。
「ふむ。では成人は、どんな格好で食事をしているんだ?」
「くまとか。仕事の服とか」
「くま?」
「くまの。好きなやつ。緋色とお揃いも好き」
「ふむ。くまは分からぬが、仕事の服で食べることはあるのだろう?私のこれも、仕事の服だ。一緒じゃないか?」
「そっか」
仕事の服のままなのか。なら、仕方ない。仕事から帰ってきて、着替えずそのままご飯を食べてる人はいる。俺も緋色も、そのままのこともある。昼はいつもそう。納得。
俺は、アイスクリームを口に入れた。見てたら溶けちゃうことはもう知ってるから、ぱくぱく食べる。食べて無くなってもまた作ってもらえるから、美味しいうちにちゃんと食べる。
「ふふ」
「一口ごとに、溶けそうな顔して食うな、まったく」
緋色の手が伸びてきて、俺の口の端をきゅっと擦った。擦った指を舐めて、あまって言う。
甘いって知ってるのに舐めるんだよね。そしてお茶を飲むんだ。そして俺を見てにこにこする。それを見てた乙羽が、お行儀が悪いって言ったりする。家だからいいだろって緋色が言うと、よそでやっちゃ駄目よって乙羽が言うんだ。
あれ?ここよそかな。よそでやっちゃったかな?
「緋色。よそでやっちゃ駄目」
「ん?ああ。ふはっ。はいはい」
「よそではない」
父さまが言う。
「そうなの?」
「ああ。家族の食事だと言ったろう?仕事でもなく、よそでもないぞ?」
確かに父さまは、謁見の時にそう言っていた。でも、正装に着替えてから来た俺たちには、ここは家じゃない。
「うーん?家でもないけど、よそでもない?」
難しいな。
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