【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
1,022 / 1,325
第八章 郷に入っては郷に従え

146 晩餐を共に  成人

しおりを挟む
「結婚式はどうだった?」

 少しずつ並ぶ料理を食べながら、父さまが話す。

「一緒だった」

 最初に机に並んだお刺身を食べながら答えた。
 何のお刺身かな?よく分かんないけど、たことか貝みたいな硬いのは入ってない。全部食べれそう。

「一緒とは?」

 ん、美味しい。ご飯欲しいな。ないなあ。ご飯はまた後から?お汁も?俺は、全部いっぺんに出てきてあっちこっち食べる方が好きなんだけど。上等な料理は順番のことが多いから困る。ご飯とお汁が出てくるのが遅くて、出てくる頃にはお腹いっぱいになっちゃってることが多い。

成人なるひと
「ふあい!」

 父さまに、名前呼ばれてびっくりした。
 くっくっく、って緋色ひいろが笑ってる。

「ああ、悪かった。ご飯を真剣に食べていたのか」
「ご飯、無いよ」

 ぶっ、と緋色ひいろが吹き出す。朱実あけみ殿下もくすくす笑い出した。

「ご飯が欲しかった?」
「あ、うん。えーと、お汁も」
「持ってきてあげて。緋色ひいろもかな」
「ああ」

 朱実あけみ殿下が後ろを向いて注文してくれた。良かった。
 緋色ひいろも、全部出てる方が好きだよね。

「なるほど。少しいつもと食事の形式が違ったか。まあ、好きに出してもらえ」

 父さまも言ってくれたから大丈夫みたいだ。
 良かった。周りでばたばた動いてるから、すぐ出してもらえそう。

「それで?一緒というのはどういう意味だ」
「ん?」

 ふう、と父さまは一度息を吐いたけど、俺には笑った顔を見せた。別に、無理に笑わなくてもいいのに。

「結婚式が一緒とは?」
「あ、うん。ええっと、神様への誓いが一緒」
「ああ、なるほど。結婚式と言ったからか。そうだな、ふむ。披露宴はどんな感じだったのだ?」

 披露宴。ああ、それは全然違った。

「ええっと、踊ったり歌ったりして、楽しい。鶴丸つるまるの剣舞が一番綺麗!」

 ふふっ。あれは凄かった。俺、あんな綺麗なの初めて見たよ。今度、衣装も着て、松吉まつきちと二人でやってくれるんだって。楽しみ。

し物が楽しかったのかな?」

 そうそう。あ、ご飯出てきた。炊き込みご飯だ。やった。ああ、でも湯気がすごい。絶対熱い。お汁も湯気だなあ。氷入れたら駄目かな。

「食事中に成人なるひとと話すのは至難の業だな」

 ん?しなんのわざって何?

「何かを聞き出そうと目論んでいるからそうなるんだ」
「人聞きの悪いことを言うな、緋色ひいろ。ならお前が答えろ。鶴丸つるまるとは?」

 父さまが緋色ひいろに答えろって言ってるけど、それ俺が答えちゃ駄目かな。それ、俺のお話じゃない?緋色ひいろと父さまを順番に見てると、緋色ひいろが笑って頷いた。
 俺が言っていいってことだな。

「友だち」
「ほう」
「今度、松吉まつきちと子どもと一緒に遊びに来るって」
松吉まつきち?」
鶴丸つるまるの伴侶。仲良し」
「……そうか」

 父さまも、そうかって言うんだね。
 あ、ご飯とお汁の湯気が少なくなってきた。ふーふーしたら食べられるかも。

「そのお友だちは、離宮に遊びに来るのかい?私も会いに行ってもいいかな」
「私も会いたいわ」

 朱実あけみ殿下が、綺麗な仕草でご飯を食べながら言う。赤璃あかりさまも、にこにこして言った。

「いいよー」
「あ、馬鹿、成人なるひと
「え、なに?」

 緋色ひいろが何か言ったけれど、お汁をふーふーしてたからあんまり聞いていなかった。ごめん。

言質げんちは取ったからね」

 朱実あけみ殿下が嬉しそうに笑ってるから、まあいっか。

しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした

鳥居之イチ
BL
———————————————————— 受:久遠 酵汰《くおん こうた》 攻:金城 桜花《かねしろ おうか》 ———————————————————— あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。 その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。 上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。 それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。 お呪いのルールはたったの二つ。  ■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。  ■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。 つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。 久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、 金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが… ———————————————————— この作品は他サイトでも投稿しております。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

処理中です...