1,277 / 1,325
第十章 されど幸せな日々
68 お化けは色んな姿をしている 成人
しおりを挟む
「ただいまー」
「たーいまー」
執務室の戸を開けると、亀吉が元気に飛び込んでいった。
「おーちゃ。ちゅももいおった」
まっすぐにおーちゃんの元へ向かう。
部屋の色んな所から、おかえりなさい、と声がした。
はーい、ただいま。
緋色は……。いないな。竹光と鶴丸もいない。謁見かな。玉鶴、松吉もいなかった。まあ、玉鶴と松吉は、普段から書類の部屋にはあんまり居ない。
「おかえりなさいませ、若様。……ええっと。もう一回言うてもらえますか?」
「ちゅももいおった」
「ちゅも……? あっ、晦! 晦、お前! 待っとったで。そこにもう、二人待たせとるんや。四人て聞いとるけど、ほんまに四人で来たか? これで全部なんやろな? まずは、そこに座れ。到着の挨拶をせえ。お前らは、ほんまにもう、なんで先にちゃんと挨拶しに来んのや。挨拶も無しにふらふらふらふらしとったら、不審者や思われるやろ。今、この城は、緋色殿下んとこの精鋭部隊が守ってくださっとるんや。見つかったら、どんな怖い目ぇに合うことか。あの二人みたいに捕まるだけで済んだらまだええものの、」
「あー、兄上。兄上」
「なんや!」
「捕まるだけで済みました。怖い目ぇにも合うたけど」
あは、と晦は横を向いたけど、じいやの姿はもうなかった。佐鳥も、もういない。
「うええ。おらんし」
「あああ。見失うたぁ。もう無理ぃ」
晦と小望が二人で頭を抱えている。
「何を言うとんや、何を」
じいや達に会っていないおーちゃんには、何のことか分からないよね。俺と亀吉と香月でこの二人を捕まえられるわけないし。ていうか、おーちゃんの近くでぴしっと正座している、見たことない二人も晦の仲間か。誰に捕まったんだろ?
「隊長と小望も捕まったんか。ほな、俺らが捕まってもしゃあないよな」
「ほんまや、しゃあない。厨房で料理人に捕まったんが間抜けやけど」
村次か。二人とも捕まえたのかな。捕まえそうだな。
「そやけど、なあ? あれ、ほんまに料理人かな」
「そんなわけないやろ。絶対、料理人の振りしとる兵士やて」
「料理人だよ」
つい口を挟むと、ひえと二人は口を閉じた。俺の方を見て、慌てて正座したまま包拳礼をする。おお、西賀国の人は皆、俺のことを知ってくれているなあ。西中国の人は、知っていても知らないふりをしたり本当に知らなかったりして、俺に挨拶をしない人が多かったのに。
ふふ、嬉しい。
緋色の伴侶って知ってくれているのが嬉しい。
今、この部屋に緋色がいなくても、ちゃんと緋色の伴侶への挨拶をしてくれるのが嬉しい。
「こんにちは。村次はねえ、料理人なんだよ。美味しいよ」
「あれが、料理人……」
「お化け屋敷やん……」
前にも、誰かが離宮のことをそう言っていたな。才蔵だったっけ?
俺たちが家族で来たら、ここもお化け屋敷になっちゃったか。そうかあ。
晦は、先に座っていた二人の隣に座って背筋を伸ばす。小望もいつの間にか、ちゃんとその横に座っていた。
「各務原晦以下四名。到着致しました」
「挨拶が遅い! ええか! 到着したらまずは、」
「兄上。説教は殿たちへの挨拶の後でええかな」
このままでは、殿や緋色殿下に挨拶せんうちに日が暮れる、っていうのはぼそって呟いていた。
まだ朝だから、流石に日は暮れないと思うよ?
「挨拶の段取りつけてくる。逃げるなよ」
「はいはい」
「はい、は一回でええ」
「はーい」
何度もこちらを振り返りながら、朧は部屋を出て行った。
「はあ。説教長そうやな」
「かなんな……」
「どーじょ」
「え? あ、どーも?」
「あ、ありがとう、ございます?」
「ん」
あっという間に足を崩した四人の前に、末良が玩具の湯のみを運んできて置いていった。
上手になってきたなあ。
「たーいまー」
執務室の戸を開けると、亀吉が元気に飛び込んでいった。
「おーちゃ。ちゅももいおった」
まっすぐにおーちゃんの元へ向かう。
部屋の色んな所から、おかえりなさい、と声がした。
はーい、ただいま。
緋色は……。いないな。竹光と鶴丸もいない。謁見かな。玉鶴、松吉もいなかった。まあ、玉鶴と松吉は、普段から書類の部屋にはあんまり居ない。
「おかえりなさいませ、若様。……ええっと。もう一回言うてもらえますか?」
「ちゅももいおった」
「ちゅも……? あっ、晦! 晦、お前! 待っとったで。そこにもう、二人待たせとるんや。四人て聞いとるけど、ほんまに四人で来たか? これで全部なんやろな? まずは、そこに座れ。到着の挨拶をせえ。お前らは、ほんまにもう、なんで先にちゃんと挨拶しに来んのや。挨拶も無しにふらふらふらふらしとったら、不審者や思われるやろ。今、この城は、緋色殿下んとこの精鋭部隊が守ってくださっとるんや。見つかったら、どんな怖い目ぇに合うことか。あの二人みたいに捕まるだけで済んだらまだええものの、」
「あー、兄上。兄上」
「なんや!」
「捕まるだけで済みました。怖い目ぇにも合うたけど」
あは、と晦は横を向いたけど、じいやの姿はもうなかった。佐鳥も、もういない。
「うええ。おらんし」
「あああ。見失うたぁ。もう無理ぃ」
晦と小望が二人で頭を抱えている。
「何を言うとんや、何を」
じいや達に会っていないおーちゃんには、何のことか分からないよね。俺と亀吉と香月でこの二人を捕まえられるわけないし。ていうか、おーちゃんの近くでぴしっと正座している、見たことない二人も晦の仲間か。誰に捕まったんだろ?
「隊長と小望も捕まったんか。ほな、俺らが捕まってもしゃあないよな」
「ほんまや、しゃあない。厨房で料理人に捕まったんが間抜けやけど」
村次か。二人とも捕まえたのかな。捕まえそうだな。
「そやけど、なあ? あれ、ほんまに料理人かな」
「そんなわけないやろ。絶対、料理人の振りしとる兵士やて」
「料理人だよ」
つい口を挟むと、ひえと二人は口を閉じた。俺の方を見て、慌てて正座したまま包拳礼をする。おお、西賀国の人は皆、俺のことを知ってくれているなあ。西中国の人は、知っていても知らないふりをしたり本当に知らなかったりして、俺に挨拶をしない人が多かったのに。
ふふ、嬉しい。
緋色の伴侶って知ってくれているのが嬉しい。
今、この部屋に緋色がいなくても、ちゃんと緋色の伴侶への挨拶をしてくれるのが嬉しい。
「こんにちは。村次はねえ、料理人なんだよ。美味しいよ」
「あれが、料理人……」
「お化け屋敷やん……」
前にも、誰かが離宮のことをそう言っていたな。才蔵だったっけ?
俺たちが家族で来たら、ここもお化け屋敷になっちゃったか。そうかあ。
晦は、先に座っていた二人の隣に座って背筋を伸ばす。小望もいつの間にか、ちゃんとその横に座っていた。
「各務原晦以下四名。到着致しました」
「挨拶が遅い! ええか! 到着したらまずは、」
「兄上。説教は殿たちへの挨拶の後でええかな」
このままでは、殿や緋色殿下に挨拶せんうちに日が暮れる、っていうのはぼそって呟いていた。
まだ朝だから、流石に日は暮れないと思うよ?
「挨拶の段取りつけてくる。逃げるなよ」
「はいはい」
「はい、は一回でええ」
「はーい」
何度もこちらを振り返りながら、朧は部屋を出て行った。
「はあ。説教長そうやな」
「かなんな……」
「どーじょ」
「え? あ、どーも?」
「あ、ありがとう、ございます?」
「ん」
あっという間に足を崩した四人の前に、末良が玩具の湯のみを運んできて置いていった。
上手になってきたなあ。
1,999
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる