【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
1,278 / 1,325
第十章 されど幸せな日々

69 いいような気がしないでもない?  成人

 本物のお茶が出てくる前にすぐ謁見に呼ばれたつごもりたちは、殿たち歓迎してくれて良かったな、と笑顔で執務室に戻ってきた。竹光たけみつ鶴丸つるまるに、四人がこちらに来たことを喜んでもらったんだな。うん、分かる。信頼できる人が城の中に増えるのは心強い。皆強いしね。もう少し経験を積めば、その辺の一ノ瀬はかわせる気がする。
 にこにこで戻ってきた四人は、でも、執務室で待ち構えていたおーちゃんにまた正座させられた。そのまま、お説教開始。お説教って何か知らなかったけど、見ていたら、これがお説教か、ってすぐ分かった。叱られるやつね。口でたくさん説明されながら叱られるやつ。
 おーちゃんのお説教は、お昼ご飯まで続いた。おーちゃん、よく喋るなあ。俺が本物のお茶を差し入れると、恐縮です、と言いながらごくごく飲んだ。つごもりたちも、びっくりした顔をしながら受け取ってごくごく飲んだ。末良すえよしのくれるお茶や食べ物は、飲めないし食べられないからね。あんなに喋っていたら喉が渇くから、お茶を飲んでおかないと。
 お昼ご飯ですよー、って、廊下から声がかかると、皆ほっとした顔をした。乙羽おとわの声だ。
 お説教を受けていた人だけじゃなく、部屋にいた人皆、ほっ。聞こえるもんね、お説教の声。同じ部屋にいたらさ。仕事したり、末良すえよし亀吉かめきちの遊びに付き合っていても、ずっと何だか気になる。
 おーちゃん、お説教は、ほどほどがいいと思うよ。ほどほどって大事。
 そんなに喋ることがあるのか、すごいって思ってちょっと耳を澄ませて聞いてみた。……同じ話を色んな言い方で繰り返してた。それ、さっき聞いたからもういいや、って途中で聞くのをやめた。きっと、つごもりたちもそう思っていると思う。そんな顔してる。でも、おーちゃんは気づかずに一生懸命喋っていた。
 お説教って、短いとお説教にならないのかな? ここが駄目だったから直しなさい、って簡単に伝えたんじゃ駄目なのかな? そっちの方がちゃんと言いたい事が伝わりそうだけどな。ま、いっか。とりあえず今度から、お説教する時は別の部屋でしてもらおう。
 俺、お説教、あんまり好きじゃない。

「ありがと、乙羽おとわ
「はーい」
「ありがとうございます! 頂きます!」

 つごもりが大きな声で返事をして足を崩した。

「あ、足が痺れた」
「うちも」
「俺もです……」
「……うぅ」

 ええ? 今、襲撃されたら大変だ。お説教の時は正座って決まりがあるならそれも良くないよ、おーちゃん。すぐに動けないような状態になる姿勢は駄目だ。つごもりたちは、動くのが仕事なんだから。

「こら。まだええ言うとらん」
「ご飯は食べなきゃ駄目だよ?」

 まだ何か言おうとするおーちゃんに声をかける。おーちゃんはまだ正座のままで、背筋を伸ばしていた。お説教する側も正座なんだ? 大変だね。おーちゃんは、足は痺れてないの?

「あ、は。そうでした。すみません、成人なるひと殿下。食事と休息をしっかり取ることが、ここで仕事をする者たちの決まり事でしたね」

 そうそう。ご飯を食べなきゃ力は出ない。ちゃんと寝ないと頭は働かない。

「お説教はもう終わり」
「おお、天使がおる」
「あ、隊長にも見えますか? うちにも見えとります」
「優しい。ここ、ええとこや」
「ご飯いっぱい食べます。いっぱい寝ますー」
「お昼からは、仕事あるし」

 お説教してたら、お仕事できない。

「え?」
「じいやがね、引き継ぎするって」
「あ、引き継ぎ。了解です」
「鍛錬所に集合だって」

 つごもり小望こもちが、がくっと崩れ落ちた。

「鍛錬所……」
「引き継ぎが鍛錬所……?」
「引き継ぎってなんやっけ……?」

 横の二人は顔を見合わせる。

「あの、じいやさん、って?」
「隊長を捕まえた成人なるひと殿下の護衛さんです」

 小望こもちの言葉に二人は、ひええ、と仰け反った。

「座ってお話よりいいよね?」

 鍛えながらお話。二ついっぺんにできていい。正座してお話を聞いて足が痺れたって、何にもいい事ないからね。

「いい、ような気がしないでもないような……?」

 ん? それは、どっち?
 
感想 2,501

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。