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第十章 されど幸せな日々
100 それぞれの守るもの 成人
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「ほな、準備してこよ。利胤さま、すこーしだけ、待っとってくださいね。おせちはすぐ出せるんで、摘んどいてください」
「了解した」
壱臣は、料理に関することだけ動きが早い。
「三郎は? 三郎もお腹空いたやろ? 雑煮にお餅入れたげる。お餅、何個食べる? 二個? 三個?」
「あ、ええっと。あの、に、二個?」
「足りる? 遠慮せんでええんよ?」
「はい。あの、お手間かけてすんません、あに、あ、いや、」
三郎は、ちらりと源さんの方を見た。それから、背筋を伸ばして。すごく綺麗な仕草で深く頭を下げた。
「源之進さま。一度、きちんとお話をせなあかんと思うとりました。私は、一二三です」
源さんの目が、大きく見開かれる。
「九鬼一二三と、名乗っとった者です。今は九条三郎と名乗っとります。その、私は、あなたに、謝罪と感謝を伝えなくては、と」
顔を上げた三郎に向かって、思わずといった様子で掴みかかろうとした源さんは、じいじに腕を取られて動きを止めた。
「は。未だ護衛付きか」
「孫の身を守るは道理」
「俺ぁ息子を守ろうとしただけだ」
「奇遇じゃな、わしは孫を守ったまで」
「お祖父さま! 私の身を守る必要はありません。私は、この方や兄上に、何されても仕方のないような仕打ちを致しました。罰を、罰を受けるんは当然。この方がうちへ来てから私は、ずっと、ずっと、こうして頭を下げられる日を待っとりました。この方が、私に何をされたとしてもそれは正当な理由のある事です。せやから。せやから、その手を離して、」
「あかんよ」
ぽかんとしていた壱臣が、慌てて三郎に前から抱きつく。隠そうとするように、きゅっと。壱臣の方が少しだけ三郎より背が低くて横幅もないから、あちこち見えちゃってるんだけど。
俺の後ろの半助の気配が、ゆらゆらと不安定に揺れている。じいじに先を越されちゃった? 仕方ないよ、半助。じいじが本気出したら、常陸丸でも敵わない。
「あかんよ、三郎」
「あに、あにうえ……」
「臣。お前、なんで」
「源さん。弟です。三郎です。よろしく」
「けど、臣。お前、お前は、これの。これの所為で……」
「三郎は何もしてへん。うちと同じ。同じや。家族を失って、ここへ逃げてきて、緋色殿下に仕事をもろた。ここで家族をみつけた。そんだけ」
「なんで。なんでわざわざ、同じとこ……」
「そんなん知らん。けど、うちは、兄上って呼んでもろて嬉しい、て思ってるよ?」
壱臣は、三郎から手を離して源さんの方を向いた。三郎の目の前にきりっと立って。
「……すぐに言わんかったくせに」
じいじに手を離された源さんが、掴まれていた腕を振りながらぼそりと言う。痛い? じいじがあまり手加減できずに掴むくらい、源さんは速かったって事だ。
「うん。そやな。言わんかった」
壱臣はうつむいて、一回止まって、そして顔を上げた。
「三郎はもう三郎やし、それでええかって思とった。けど。それじゃあかんかったな。あかんかった。ごめん。ごめんな、源さん」
三郎は、壱臣のこと兄上って呼んでるんだから、源さんは知ってたんじゃないかな。
知らんけど。
「了解した」
壱臣は、料理に関することだけ動きが早い。
「三郎は? 三郎もお腹空いたやろ? 雑煮にお餅入れたげる。お餅、何個食べる? 二個? 三個?」
「あ、ええっと。あの、に、二個?」
「足りる? 遠慮せんでええんよ?」
「はい。あの、お手間かけてすんません、あに、あ、いや、」
三郎は、ちらりと源さんの方を見た。それから、背筋を伸ばして。すごく綺麗な仕草で深く頭を下げた。
「源之進さま。一度、きちんとお話をせなあかんと思うとりました。私は、一二三です」
源さんの目が、大きく見開かれる。
「九鬼一二三と、名乗っとった者です。今は九条三郎と名乗っとります。その、私は、あなたに、謝罪と感謝を伝えなくては、と」
顔を上げた三郎に向かって、思わずといった様子で掴みかかろうとした源さんは、じいじに腕を取られて動きを止めた。
「は。未だ護衛付きか」
「孫の身を守るは道理」
「俺ぁ息子を守ろうとしただけだ」
「奇遇じゃな、わしは孫を守ったまで」
「お祖父さま! 私の身を守る必要はありません。私は、この方や兄上に、何されても仕方のないような仕打ちを致しました。罰を、罰を受けるんは当然。この方がうちへ来てから私は、ずっと、ずっと、こうして頭を下げられる日を待っとりました。この方が、私に何をされたとしてもそれは正当な理由のある事です。せやから。せやから、その手を離して、」
「あかんよ」
ぽかんとしていた壱臣が、慌てて三郎に前から抱きつく。隠そうとするように、きゅっと。壱臣の方が少しだけ三郎より背が低くて横幅もないから、あちこち見えちゃってるんだけど。
俺の後ろの半助の気配が、ゆらゆらと不安定に揺れている。じいじに先を越されちゃった? 仕方ないよ、半助。じいじが本気出したら、常陸丸でも敵わない。
「あかんよ、三郎」
「あに、あにうえ……」
「臣。お前、なんで」
「源さん。弟です。三郎です。よろしく」
「けど、臣。お前、お前は、これの。これの所為で……」
「三郎は何もしてへん。うちと同じ。同じや。家族を失って、ここへ逃げてきて、緋色殿下に仕事をもろた。ここで家族をみつけた。そんだけ」
「なんで。なんでわざわざ、同じとこ……」
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壱臣は、三郎から手を離して源さんの方を向いた。三郎の目の前にきりっと立って。
「……すぐに言わんかったくせに」
じいじに手を離された源さんが、掴まれていた腕を振りながらぼそりと言う。痛い? じいじがあまり手加減できずに掴むくらい、源さんは速かったって事だ。
「うん。そやな。言わんかった」
壱臣はうつむいて、一回止まって、そして顔を上げた。
「三郎はもう三郎やし、それでええかって思とった。けど。それじゃあかんかったな。あかんかった。ごめん。ごめんな、源さん」
三郎は、壱臣のこと兄上って呼んでるんだから、源さんは知ってたんじゃないかな。
知らんけど。
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