【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

102 今年はそんなお正月  成人

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「ほれほれ泣くな。高い高ーい」
「ひくっ」

 じいじの高すぎる高い高いをしてもらった朱音あかね殿下は、一度泣き止んで。

「やややぁ。ぎゃぁぁぁーん」

 もっと大きな声で泣いた。

「ありゃ、おかしいのう。亀吉かめきち殿などは大喜びできゃあきゃあ笑うて、もう一度、もう一度とせがんできよったものじゃが」
「うえっ。うええぇ。ひくっ、ひくっ」
「や、やや。やややっ、うえぇぇっ」

 玉乃井たまのいが、泣いている朱音あかね殿下をじいじから受け取って抱っこしたら、今度は玉乃井たまのいにしがみついていた栄喜さかきが泣き出した。うーん、ごめんね。亀吉かめきちはじいじが大好きでたくさん遊んでもらっているし、末良すえよしも、そんな亀吉かめきちと一緒にいるからじいじのことは怖がらない。亀吉かめきちがきゃあきゃあって喜んでいたら、一緒にしてもらいたくなって遊んでるんだよね。最初は怖がって、ひゃゃゃやって聞いたことないような声を出してたんだけど、だんだん慣れて、今では亀吉かめきちと一緒にきゃあきゃあ言っている。
 俺も好き。
 飛び上がれなくなった今では見られない景色を見られるから。じいじの高い高いは、とても高くて気持ちいい。肩車も楽しい。

「おじさま。急にそんな高い場所に持ち上げられたら、小さな子でなくても怖いです」
「なんと。そうであったか」
「え? そう?」

 俺と亀吉かめきち末良すえよしはとても楽しんでるんだけど。

「そうよ。なるや亀吉かめきちさまは激しい動きやとんでもない高さも平気なんでしょうけれど、普通は怖いわよ」

 乙羽おとわがしゃがんで、栄喜さかきをよしよしと抱きしめながら言う。

乙羽おとわも怖い?」
「私は、まあ、その、抱き上げられるくらいなら、急にでも全然平気だけど。でも、高く持ち上げられるのは怖いんじゃない?」
「あ、そっか。常陸丸ひたちまるも同じくらい大きいもんね」

 常陸丸ひたちまる緋色ひいろより大きい。その常陸丸ひたちまるによく抱き上げられている乙羽おとわは、じいじの抱っこも怖くない。

「も、もう、なる! 言わなくていいのよ、そういうことは!」
「ん?」
「もう!」

 そんなことを乙羽おとわと話していたら、ひょいと俺がじいじに持ち上げられた。

「あは」

 すい、と上がっていく景色の中、泣き止んだ朱音あかね殿下が玉乃井たまのいの腕の中で俺を見上げる。

「ふふ。ふふふ」
「ほれ、見てみい。成人なるひとはこんなに楽しんでおるぞ?」

 朱音あかね殿下も栄喜さかきもきっと、これが楽しいってなるからね。きっとすぐなるから。
 すぐにおせちと熱いお酒が届いて、俺たちは俺の部屋に移動した。
 朱音あかね殿下と栄喜さかきは、階段を一つずつ自分で上って移動したのですっかりご機嫌になった。俺の部屋で、ふかふかの絨毯の上にころころしている内に、ねんねした。
 その二人を、可愛いなと見ているうちに俺と乙羽おとわも寝てしまっていたみたいだ。
 目を覚ましたら、そんな俺たちを緋色ひいろ常陸丸ひたちまるがお酒を飲みながら見ていた。
 なんだかご機嫌だった。
 
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