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第二部(アレク編)
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※sideアレク
強い衝撃を受け、気が付くと王国騎士団の訓練場で倒れていた。
愛娘のチェルシーが馬車が走る道へ走り出して、それを追い、馬車に轢かれる寸前に突き飛ばして自分が馬に蹴られたはず。
チェルシーはどうなったのだろう。もし、右腕があったなら……突き飛ばしたりせず抱き留めて守れただろうに。
アニーはどうなったのか。何も分からない。チェルシーの名を叫んでいたことは覚えているが、俺はとにかくチェルシーに向かって走り出していたから、後ろにいたであろうアニーのことは分からない。
チェルシーのことも、分からない。
「おい、アレク大丈夫か!? 頭でも打ったのか!?」
倒れてから動かない俺を心配した他の騎士が顔を覗き込んでくる。見覚えがある。従騎士時代によく一緒に訓練をした……名は、カーティス。3歳ほど年上だったはずだが、どう見ても10代に見える。
「どうやら頭を打ったらしい。医療班を呼ぶぞ!」
別の騎士もいる。彼も記憶より若い。つまり……俺もか……?
混乱している内に、担架に乗せられて医務室へ運ばれた。目に光を当てられたり、身体中を触られたりして、様子がおかしいこと以外は大丈夫だと判断された後、簡単な質問を受ける。
「名前は?」
「アレキサンダー・ノヴァックです」
「歳は?」
「…………」
分からない。
「今日は何日?」
「……分かりません」
「さっき何をしていた?」
「訓練をしていたと思われます」
「打ち合いの相手の名は?」
「カーティスです」
「ふむ……なぜ年齢と日付だけ答えられないんだ?」
王国騎士団には医療知識を持つ騎士が医療班として存在する。普通の医師だけでは戦地や被災地で困る場合があるかららしいが、もう100年以上他国との戦はなく、内乱もなく、天災もない。そういう意味では非常に平和な国だ。
その医療班所属の騎士が不思議そうに俺を観察している。
「今日が何年の何月何日か、教えていただけますか」
「632年3月12日だ」
「…………では、私の年齢は……15歳です」
「うーん、まぁ問題ないだろう。今日はもう帰れ。上官には言っておく。もうすぐ正騎士試験だから万全にしておけよ」
「ありがとうございます」
ノロノロと立ち上がり、胸に拳を当てて礼をしてから退室する。
15歳? 15歳だと? 30年近くも年月が戻っているじゃないか。
15歳ということは、俺が戻るべきは公爵邸ではなく、貴族学校の寮の自室か。と思ったが、3月であれば春期休暇中でやはり公爵邸に戻らなければならないと気付けたのはよかった。
願わくば父が不在であれば良いのだが……。
公爵邸まで辻馬車に乗って戻った。公爵家の馬車はおそらく夕方にならなければ訓練場まで来ないだろう。
早く戻ったことを家令が驚いていたが、少し体調が悪いことと入浴がしたいことを伝えて自室に戻った。
自室で少ししばらく待つとメイドが入浴の準備が整ったと伝えに来てくれたので、軽く身体を清めて、ベッドに横になった。
何をするにも右腕がある感覚に戸惑う。15歳の3月12日ということは、3日後が正騎士試験だ。記憶の中では失格だったが、さすがに今の俺であれば……身体は未熟だが、知識だけはある。
だけど、右腕で剣を振れるだろうか。その感覚を掴めるだろうか。
いや、そんなことは一先ずどうでもいい。あとで試してみればいいだけだ。
そうじゃなくて。……アニーは、今頃どうしているだろう。
強い衝撃を受け、気が付くと王国騎士団の訓練場で倒れていた。
愛娘のチェルシーが馬車が走る道へ走り出して、それを追い、馬車に轢かれる寸前に突き飛ばして自分が馬に蹴られたはず。
チェルシーはどうなったのだろう。もし、右腕があったなら……突き飛ばしたりせず抱き留めて守れただろうに。
アニーはどうなったのか。何も分からない。チェルシーの名を叫んでいたことは覚えているが、俺はとにかくチェルシーに向かって走り出していたから、後ろにいたであろうアニーのことは分からない。
チェルシーのことも、分からない。
「おい、アレク大丈夫か!? 頭でも打ったのか!?」
倒れてから動かない俺を心配した他の騎士が顔を覗き込んでくる。見覚えがある。従騎士時代によく一緒に訓練をした……名は、カーティス。3歳ほど年上だったはずだが、どう見ても10代に見える。
「どうやら頭を打ったらしい。医療班を呼ぶぞ!」
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混乱している内に、担架に乗せられて医務室へ運ばれた。目に光を当てられたり、身体中を触られたりして、様子がおかしいこと以外は大丈夫だと判断された後、簡単な質問を受ける。
「名前は?」
「アレキサンダー・ノヴァックです」
「歳は?」
「…………」
分からない。
「今日は何日?」
「……分かりません」
「さっき何をしていた?」
「訓練をしていたと思われます」
「打ち合いの相手の名は?」
「カーティスです」
「ふむ……なぜ年齢と日付だけ答えられないんだ?」
王国騎士団には医療知識を持つ騎士が医療班として存在する。普通の医師だけでは戦地や被災地で困る場合があるかららしいが、もう100年以上他国との戦はなく、内乱もなく、天災もない。そういう意味では非常に平和な国だ。
その医療班所属の騎士が不思議そうに俺を観察している。
「今日が何年の何月何日か、教えていただけますか」
「632年3月12日だ」
「…………では、私の年齢は……15歳です」
「うーん、まぁ問題ないだろう。今日はもう帰れ。上官には言っておく。もうすぐ正騎士試験だから万全にしておけよ」
「ありがとうございます」
ノロノロと立ち上がり、胸に拳を当てて礼をしてから退室する。
15歳? 15歳だと? 30年近くも年月が戻っているじゃないか。
15歳ということは、俺が戻るべきは公爵邸ではなく、貴族学校の寮の自室か。と思ったが、3月であれば春期休暇中でやはり公爵邸に戻らなければならないと気付けたのはよかった。
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何をするにも右腕がある感覚に戸惑う。15歳の3月12日ということは、3日後が正騎士試験だ。記憶の中では失格だったが、さすがに今の俺であれば……身体は未熟だが、知識だけはある。
だけど、右腕で剣を振れるだろうか。その感覚を掴めるだろうか。
いや、そんなことは一先ずどうでもいい。あとで試してみればいいだけだ。
そうじゃなくて。……アニーは、今頃どうしているだろう。
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