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第3章 勇者視点
第1話:完成した刃
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王城の訓練所を出る際、俺は鏡に映る自分を見た。そこにいたのは、三年前、ノアールに縋りついていた、泣き虫の8歳の少年ではなかった。
俺は11歳になっていた。
顔の幼さは残っているものの、瞳の奥に宿る金色の光は、冷たく、深く、周囲の光を吸い込むような威圧感を放っていた。訓練により引き締まった身体には、不必要な脂肪は一切なく、剣術と光魔法を極めるためだけに鍛え上げられた、研ぎ澄まされた刃そのものだった。
「セレ。君の聖炎の力は、我々の予想を遥かに上回った。3年間で、これほどの完成度に至るとは」
老魔導師は、俺の瞳を見つめ、満足げに微笑んだ。その笑みには、俺への愛情など微塵もない。あるのは、「優れた道具」を手に入れたことへの、純粋な喜びだけだった。
「ノアール殿下との因縁、そして、君の個人的な復讐心が、君の力を短期間でここまで増幅させたのだろう」
老魔導師の言葉は、図星だった。俺は、ノアールを討つという目的を、訓練の唯一のエネルギー源としていた。しかし、その動機は、討伐という大義名分よりも、俺を裏切ったノアールへの執着、そして彼の鎖を燃やした世界への怒りだった。
「いつでも、出立できます」
俺は感情を排した声で答えた。この三年、俺は感情を殺す訓練を徹底してきた。ノアールとの記憶に縋りつく時以外は、常に冷静で、冷徹でなければならなかった。それが、勇者であるための唯一の道だと教えられてきたからだ。
出立の直前、騎士団長が俺に近づいてきた。彼は、三年前、俺の首輪を燃やし、ノアールを辱めた張本人だ。
「セレ勇者。君の役割は、確認と滅却だ。ノアール殿下は君が奪われた鎖を再び手に入れようと、三年間、闇の力を増幅させているはずだ」
騎士団長は、冷酷な目で俺に忠告した。
「彼の闇の力は、君の光の力に呼応し、増幅する。それは、君を失った孤独から、完全に魔王へと覚醒した兆候だろう。もし彼が、君に再び甘い言葉をかけてきても、絶対に惑わされるな。彼は、君を再び愛玩品として鎖に繋ぎたいだけだ」
ノアールが俺を愛玩品として扱っていたという言葉は、俺の心を深く突き刺した。それは、ノアールへの憎しみを呼び覚ます、最も有効な呪文だった。
『愛玩品』……。
あの温かかった日々は、彼の孤独を埋めるための、ただの暇つぶしだったのか。
俺は、ノアールとの温かい記憶に縋る自分を、この言葉で強く叱責した。俺はもう、誰かの孤独を埋めるための道具ではない。
「承知しています。俺は、勇者として彼の闇を滅ぼすために、彼の元へ戻るのです」
俺の答えは、大人たちが望む完璧なものだった。彼らの目的を遂行する道具として、俺は完成したのだ。
俺は、王城の堅固な石造りの門をくぐり抜けた。外の光は眩しかったが、俺の心は氷のように冷たかった。
ノアール。俺の鎖を解いた罪、そして、俺に与えた幸福の代償を、俺自身が取り立てに行く。
俺を森へ運ぶ馬車に揺られながら、俺は再び、彼が幽閉されている、あの古びた屋敷へと向かった。あの場所は、俺にとって、人生で最も幸福な場所であり、最も深く裏切られた、愛と憎しみの交差点だった。
俺は11歳になっていた。
顔の幼さは残っているものの、瞳の奥に宿る金色の光は、冷たく、深く、周囲の光を吸い込むような威圧感を放っていた。訓練により引き締まった身体には、不必要な脂肪は一切なく、剣術と光魔法を極めるためだけに鍛え上げられた、研ぎ澄まされた刃そのものだった。
「セレ。君の聖炎の力は、我々の予想を遥かに上回った。3年間で、これほどの完成度に至るとは」
老魔導師は、俺の瞳を見つめ、満足げに微笑んだ。その笑みには、俺への愛情など微塵もない。あるのは、「優れた道具」を手に入れたことへの、純粋な喜びだけだった。
「ノアール殿下との因縁、そして、君の個人的な復讐心が、君の力を短期間でここまで増幅させたのだろう」
老魔導師の言葉は、図星だった。俺は、ノアールを討つという目的を、訓練の唯一のエネルギー源としていた。しかし、その動機は、討伐という大義名分よりも、俺を裏切ったノアールへの執着、そして彼の鎖を燃やした世界への怒りだった。
「いつでも、出立できます」
俺は感情を排した声で答えた。この三年、俺は感情を殺す訓練を徹底してきた。ノアールとの記憶に縋りつく時以外は、常に冷静で、冷徹でなければならなかった。それが、勇者であるための唯一の道だと教えられてきたからだ。
出立の直前、騎士団長が俺に近づいてきた。彼は、三年前、俺の首輪を燃やし、ノアールを辱めた張本人だ。
「セレ勇者。君の役割は、確認と滅却だ。ノアール殿下は君が奪われた鎖を再び手に入れようと、三年間、闇の力を増幅させているはずだ」
騎士団長は、冷酷な目で俺に忠告した。
「彼の闇の力は、君の光の力に呼応し、増幅する。それは、君を失った孤独から、完全に魔王へと覚醒した兆候だろう。もし彼が、君に再び甘い言葉をかけてきても、絶対に惑わされるな。彼は、君を再び愛玩品として鎖に繋ぎたいだけだ」
ノアールが俺を愛玩品として扱っていたという言葉は、俺の心を深く突き刺した。それは、ノアールへの憎しみを呼び覚ます、最も有効な呪文だった。
『愛玩品』……。
あの温かかった日々は、彼の孤独を埋めるための、ただの暇つぶしだったのか。
俺は、ノアールとの温かい記憶に縋る自分を、この言葉で強く叱責した。俺はもう、誰かの孤独を埋めるための道具ではない。
「承知しています。俺は、勇者として彼の闇を滅ぼすために、彼の元へ戻るのです」
俺の答えは、大人たちが望む完璧なものだった。彼らの目的を遂行する道具として、俺は完成したのだ。
俺は、王城の堅固な石造りの門をくぐり抜けた。外の光は眩しかったが、俺の心は氷のように冷たかった。
ノアール。俺の鎖を解いた罪、そして、俺に与えた幸福の代償を、俺自身が取り立てに行く。
俺を森へ運ぶ馬車に揺られながら、俺は再び、彼が幽閉されている、あの古びた屋敷へと向かった。あの場所は、俺にとって、人生で最も幸福な場所であり、最も深く裏切られた、愛と憎しみの交差点だった。
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