復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第3章 勇者視点

第2話:森の再訪

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馬車が森の入り口に差し掛かると、空気の色が変わった。

三年前は、ただの暗い森だった。しかし、今は違う。森全体が、重く、淀んだ「闇の魔力」に覆われていた。木々の葉は黒く変色し、地面に落ちているはずの光が、どこかへ吸い込まれて消えている。まるで、森全体が巨大な影の塊となり、外界との接触を拒んでいるようだった。

「間違いない。ノアール殿下の覚醒は、我々の予想を上回る速度で進んでいる」

馬車を護衛していた騎士団長が、顔を引きつらせて呟いた。彼らの顔には、この闇の深さへの恐怖が滲んでいる。

しかし、俺の心は驚くほど平静だった。この闇の波動は、むしろ俺を安堵させた。

――ノアールは、まだここにいる。

三年間、俺を支えてきた憎しみと執着の対象が、確かにこの先にいる。俺の存在が彼を魔王へと加速させたという事実は、彼が俺に強く依存している証拠であり、俺の「特別な存在」であるという証明でもあった。

馬車は、森の闇の中に沈むように、徐々に速度を落としていった。

ついに、懐かしい石造りの屋敷が見えてきた。

三年前は、周囲の木々に埋もれるように建っていた屋敷だったが、今は違う。屋敷の周囲の木々は、まるで枯れ果てた墓標のように立ち尽くし、屋敷自体は黒い霧のような魔力に包まれていた。かつての豪華絢爛な装飾は、闇の侵食によって侵され、屋敷全体が異形の城へと変貌していた。

玄関の扉は、三年前、騎士団長たちが乱暴に開けた時のまま、半開きになっている。そこからは、冷たい風と共に、深淵の闇が漏れ出しているようだった。

「セレ勇者。単独で侵入してください。君の光の力だけが、彼の結界を破れる」

「もし抵抗するようなら、即座に滅却を」

騎士団長は俺に、王城で鍛えられたばかりの、光を纏う細身の剣を渡した。その剣の重みが、俺の三年間を象徴している。

俺は頷き、闇の結界を纏う屋敷の門をくぐった。

結界を破るための特別な魔法陣も、詠唱も必要なかった。俺の瞳の奥から放たれる金色の光が、闇の結界に触れた瞬間、ジジジ……と、まるで紙が焼けるような音を立てて、闇が後退した。

俺の光は、ノアールの闇を、本能的に、そして圧倒的な力で拒絶していた。
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