復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

文字の大きさ
32 / 45
第6章 魔王視点

第5話:決別

しおりを挟む
夜明け前、俺の闇の侵食は、セレが張り巡らせた結界を限界まで弱体化させた。

ピシッ

微かな亀裂音が、洞窟の静寂を破った。

鎖を握り眠っていたセレが、その音に敏感に反応し、飛び起きた。彼の瞳の金色は、一瞬で警戒の色に変わる。

「ノアール!今、何をした!」

彼は激しく俺の鎖を引っ張り、怒鳴った。彼は結界の異変を、俺の闇の仕業だと瞬時に察知したのだ。

「君の聖炎の結界が、外部からの力ではない、内部の闇によって歪んでいる。なぜだ!お前、まさか――」

セレは言葉を失い、俺の顔を凝視した。俺は、鎖に繋がれたまま、静かに彼を見つめ返した。

「セレ。君が僕を支配下に置くことで得た平穏は、君自身の命を危険に晒している。君は、王城に利用される勇者という道具から逃れたが、今度は、僕という復讐の道具に縛られている」

俺は、静かな声で、この共依存の真実を突きつけた。

「僕は、君の鎖でいるわけにはいかない。君を、君自身の人生に戻す。それが、僕の最後の贖罪だ」

セレの瞳が大きく見開かれた。その時、外部から強烈な光の魔力が洞窟全体を揺らした。

ドォォォン!

俺が弱体化させた結界は、王城の騎士団が放った一撃の光の奔流によって、呆気なく崩壊した。

騎士団長が、十数人の騎士と魔導師を引き連れ、洞窟の入り口に立っている。その背後には、セレの聖炎を打ち消すための、巨大な魔力抑制装置が設置されていた。

「勇者セレ!ついに居場所を突き止めたぞ!魔王を匿った罪、そして王城への反逆罪、覚悟しろ!」

騎士団長の声が響き渡る中、セレは俺の鎖を放し、剣を構えた。彼は、騎士団長への憎悪を隠そうともしない。

「お前たちが、俺を裏切った代償を、ここで払わせる!」

セレが聖炎を放とうとした瞬間、俺は叫んだ。

「セレ!戦うな!彼らの狙いは君だ!君の聖炎を封じる罠が、すでに仕掛けられている!」

俺は、鎖に繋がれたまま、セレの背後から強く訴えかけた。

「君は、ここで僕を置き去りにして逃げろ!僕の闇は、彼らが始末する。君の復讐の獲物は、ここで消える。君の復讐は、完結するんだ!」

俺の言葉は、彼の心の最も脆弱な部分を直撃した。

「何を言っている!俺が、お前を置いて逃げるとでも思ったか!」

セレは俺に背を向けたまま、怒りに満ちた声で叫んだ。

「俺は、お前を誰にも渡さない!お前は俺の獲物だ!」

彼は、俺の所有権を主張する。しかし、その声は、怯えている少年の響きを帯びていた。彼は、俺という鎖を失うことを、何よりも恐れている。

俺は、最後の手段に出た。鎖に繋がれた自分の腕を、渾身の力で鎖から引き離そうとした。もちろん、銀色の鎖はびくともしない。しかし、その瞬間、俺の身体から、抑圧されていた闇の魔力が、暴走したかのように噴き出した。

「僕は、君を愛していた!でも、それはもう終わったんだ!」

俺は、彼に憎まれることで、彼を救おうとした。

俺の言葉と、突然の闇の奔流に、セレは動揺し、動きを止めた。

「終わった……?」

彼が動揺している隙に、騎士団長の命令が飛んだ。

「今だ!魔力抑制装置を起動させろ!勇者と魔王を、同時に封鎖する!」

強烈な光の魔力、そして闇を打ち消す特殊な波長が、洞窟を満たした。俺は、その光に意識が遠のくのを感じながら、セレに最後の言葉を届けた。

「逃げろ、セレ!君の鎖は、僕が断つ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宮本くんと事故チューした結果

たっぷりチョコ
BL
 女子に人気の宮本くんと事故チューしてしまった主人公の話。  読み切り。

【8話完結】勇者召喚の魔法使いに選ばれた俺は、勇者が嫌い。

キノア9g
BL
勇者召喚の犠牲となった家族—— 魔法使いだった両親を失い、憎しみに染まった少年は、人を疑いながら生きてきた。 そんな彼が、魔法使いとして勇者召喚の儀に参加させられることになる。 召喚の儀——それは、多くの魔法使いの命を消費する狂気の儀式。 瀕死になりながら迎えた召喚の瞬間、現れたのは——スーツ姿の日本人だった。 勇者を嫌わなければならない。 それなのに、彼の孤独に共感し、手を差し伸べてしまう。 許されない関係。揺れる想い。 憎しみと運命の狭間で、二人は何を選ぶのか——。 「だけど俺は勇者が嫌いだ。嫌いでなければならない。」 運命に翻弄される勇者と魔法使いの、切ない恋の物語。 全8話。2025/07/28加筆修正済み。

腐男子完全計画!

葉津緒
BL
『王道脇役平凡・嫌われ→総受け』を見たい腐男子主人公が、全寮制学園で王道転入生役を演じつつ舞台を整えていく……? そんな、よくあるお話。 BLコメディ。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

高貴なる生徒会長は、今日も副会長を慈しむ  ~学園の貴公子と没落貴族のすれ違い救済ライフ~

夕凪ゆな
BL
「来週の木曜日、少しだけ僕に時間をくれないか」  学園の太陽と慕われるセオドリックは、副会長レイモンドに告げた。  というのも、来たる木曜日はレイモンドの誕生日。セオドリックは、密かに、彼を祝うサプライズを画策していたのだ。  しかし、レイモンドはあっさりと断る。 「……木曜は、予定がある」  レイモンドをどうしても祝いたいセオドリックと、独りで過ごしたいレイモンド。  果たして、セオドリックのサプライズは成功するのか――? 【オムニバス形式の作品です】 ※小説家になろう、エブリスタでも連載中 ※全28話完結済み

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

処理中です...