復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第6章 魔王視点

第4話:鎖を断つ決意

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逃亡生活は、日を追うごとに緊迫感を増していた。

セレは、外での探索から帰るたびに、結界を強化する作業に時間を費やすようになった。彼の顔には、隠しきれない焦燥が見える。

「王城の追跡隊が、この山脈に入ってきた。以前の騎士団長が率いる、強力な光の魔導師団だ。彼らは、俺の聖炎を打ち破るための、特別製の魔道具を持っている」

セレは、そう報告しながらも、俺への支配を緩めることはなかった。むしろ、俺の首の鎖を握る力は、ますます強くなった。俺を失うことへの恐怖が、彼を駆動させている。

「彼らがお前を見つけることはない。俺が絶対に守る」

彼はそう言うが、その言葉には、以前のような傲慢な自信はなかった。彼の光の魔力は強力だが、王城が本気で、制御不能な勇者を排除しにかかった今、彼の単独での抵抗には限界がある。

俺は、鎖に繋がれたまま、冷静に状況を分析した。

(僕がこの鎖に繋がれている限り、セレは僕を守るためにこの場所に留まり続ける。そして、王城と戦い、彼の光のすべてを使い果たしてしまうだろう)

彼の孤独は満たされたかもしれない。しかし、彼の命は、俺という排他的な獲物を守るために、危険に晒され続けている。これは、俺の贖罪ではない。俺の罪が、さらにセレの未来を奪っているだけだ。

夜になり、セレが深い眠りについた時、俺は静かに、彼のそばの鎖に繋がれた手元に意識を集中させた。

俺の闇の魔力は、首の銀色の鎖によって完全に抑制されている。しかし、俺が以前、騎士団長に向けて放った警告の波動のように、特定の目的と強い意志をもって、ごく微細な闇の力を絞り出すことは可能だ。

俺の目的は、セレを王城の罠から、そして俺との共依存の鎖から解放することだ。

「セレ。君が僕を支配下に置くことで得た偽りの平穏は、ここで終わらせる」

俺は、鎖に繋がれた手のひらに、全意識を集中させた。目標は、セレの聖炎が生み出した、洞窟の入り口の結界だ。

闇の力は、光の魔力を打ち消し、歪ませる。

俺が、セレの光の結界を内部から歪ませ、弱体化させれば、王城の追跡隊が、結界を破って侵入してくるだろう。そして、セレは、俺を守るという目的を失い、逃亡するか、王城と正面から対峙するかを選択することになる。

(僕が、この鎖を断つ。それが、僕の最後の贖罪だ)

俺は、痛みを伴うほどに、全身の魔力をかき集めた。微細な闇の粒子が、鎖から漏れ出し、洞窟の結界へ向けて、ゆっくりと、しかし確実に侵食を開始した。

セレは、俺の首の鎖を強く握りしめているが、俺の魔力の微細な動きには、気づいていない。

俺は、静かな闇の中で、セレの顔を見つめた。彼を傷つけることになるが、このままでは、彼は光に殺される。

「目を覚ましてくれ、セレ。君は、僕の獲物じゃない。君は、君自身の人生の主だ」
俺の闇の侵食は、着実にセレの結界を削り取り始めた。夜明けまでに、この結界は崩壊するだろう。そして、俺たちは、最後の対峙を迎えることになる。
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