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第6章 魔王視点
第3話:幸福な支配
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逃亡生活が始まって数週間が経った。俺たちは、外界から完全に隔絶された洞窟の中で、異様な静けさの中にいた。
セレは、以前にも増して神経質になっていた。王城からの追跡を恐れ、彼は毎日、夜明け前に洞窟を出ては、食料の調達と結界の点検を行った。その間、俺は鎖に繋がれたまま、洞窟の中で彼を待つ。
彼が戻るまで、俺は常に不安を感じていた。彼が王城の騎士に見つかったのではないか、あるいは、強力な魔物と遭遇したのではないか。俺の不安は、彼を失うことへの恐怖であり、同時に、この逃亡生活を失うことへの恐怖でもあった。
(僕もまた、この鎖に依存し始めている)
彼が帰ってくると、俺は心の底から安堵する。その安堵は、彼が俺の鎖を強く握り、俺に支配の命令を下す瞬間に、最も強くなる。彼の支配がある限り、彼は俺のそばを離れない。俺の贖罪の道は続く。
ある日、セレは外での任務の代わりに、洞窟の奥の空間を整理し始めた。彼は、俺が以前住んでいた屋敷の書庫から持ってきた古い本を広げ、読み始めた。それは、俺がかつて彼に読み聞かせたことのある、古い世界の物語だった。
「セレ。その本、覚えているのか?」
俺が優しく尋ねると、彼は顔を上げる代わりに、冷たい声で答えた。
「これは、俺がお前を支配下に置くための道具だ。お前との過去を忘れていないことを、お前は毎日確認しろ」
しかし、彼の指がページの端に触れる動きは、どこか懐かしむような優しさを帯びていた。
その日の夜、セレは俺の隣で横になった。彼は眠っている時も、無意識に俺の首の鎖を握りしめている。
俺は、彼の静かな寝息を聞きながら、彼の顔をそっと見つめた。復讐心で燃えていた瞳は閉じられ、彼の横顔は、三年前の、あの純粋な少年の面影を取り戻しているかのようだった。
そして、俺は気づいた。彼の孤独は、俺を支配することで、初めて満たされているのだと。
彼は、王城から与えられた偽りの称賛や、騎士団からの冷たい敬意ではなく、俺という排他的な獲物を所有し、支配下に置くことで、初めて心の平穏を得ている。
彼の支配は、俺にとっての贖罪であり、彼にとっての幸福になりつつあった。
「君の幸福が、僕の鎖の上にあるのなら……僕は、このまま君の鎖になり続けるよ、セレ」
俺は、彼の寝顔にそう囁いた。しかし、その時、俺の心に、以前の自己嫌悪が再び湧き上がった。
(僕の闇が、彼の光を歪ませたのではない。僕の存在そのものが、彼にとっての歪んだ光になっている)
彼がこのまま俺を支配し続ければ、彼は二度と外の世界の幸福を見つけることができなくなる。俺は、彼の孤独を終わらせるために、彼の支配から解放される必要がある。
しかし、彼を解放すれば、彼は再び孤独な憎悪に囚われるだろう。
俺は、自分の贖罪と、セレの真の救済の板挟みで、深く苦しみ始めた。
セレは、以前にも増して神経質になっていた。王城からの追跡を恐れ、彼は毎日、夜明け前に洞窟を出ては、食料の調達と結界の点検を行った。その間、俺は鎖に繋がれたまま、洞窟の中で彼を待つ。
彼が戻るまで、俺は常に不安を感じていた。彼が王城の騎士に見つかったのではないか、あるいは、強力な魔物と遭遇したのではないか。俺の不安は、彼を失うことへの恐怖であり、同時に、この逃亡生活を失うことへの恐怖でもあった。
(僕もまた、この鎖に依存し始めている)
彼が帰ってくると、俺は心の底から安堵する。その安堵は、彼が俺の鎖を強く握り、俺に支配の命令を下す瞬間に、最も強くなる。彼の支配がある限り、彼は俺のそばを離れない。俺の贖罪の道は続く。
ある日、セレは外での任務の代わりに、洞窟の奥の空間を整理し始めた。彼は、俺が以前住んでいた屋敷の書庫から持ってきた古い本を広げ、読み始めた。それは、俺がかつて彼に読み聞かせたことのある、古い世界の物語だった。
「セレ。その本、覚えているのか?」
俺が優しく尋ねると、彼は顔を上げる代わりに、冷たい声で答えた。
「これは、俺がお前を支配下に置くための道具だ。お前との過去を忘れていないことを、お前は毎日確認しろ」
しかし、彼の指がページの端に触れる動きは、どこか懐かしむような優しさを帯びていた。
その日の夜、セレは俺の隣で横になった。彼は眠っている時も、無意識に俺の首の鎖を握りしめている。
俺は、彼の静かな寝息を聞きながら、彼の顔をそっと見つめた。復讐心で燃えていた瞳は閉じられ、彼の横顔は、三年前の、あの純粋な少年の面影を取り戻しているかのようだった。
そして、俺は気づいた。彼の孤独は、俺を支配することで、初めて満たされているのだと。
彼は、王城から与えられた偽りの称賛や、騎士団からの冷たい敬意ではなく、俺という排他的な獲物を所有し、支配下に置くことで、初めて心の平穏を得ている。
彼の支配は、俺にとっての贖罪であり、彼にとっての幸福になりつつあった。
「君の幸福が、僕の鎖の上にあるのなら……僕は、このまま君の鎖になり続けるよ、セレ」
俺は、彼の寝顔にそう囁いた。しかし、その時、俺の心に、以前の自己嫌悪が再び湧き上がった。
(僕の闇が、彼の光を歪ませたのではない。僕の存在そのものが、彼にとっての歪んだ光になっている)
彼がこのまま俺を支配し続ければ、彼は二度と外の世界の幸福を見つけることができなくなる。俺は、彼の孤独を終わらせるために、彼の支配から解放される必要がある。
しかし、彼を解放すれば、彼は再び孤独な憎悪に囚われるだろう。
俺は、自分の贖罪と、セレの真の救済の板挟みで、深く苦しみ始めた。
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