復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第7章 勇者視点

第2話:失われた鎖と空虚な自由

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洞窟の裏側の抜け道から山脈を降り、数日後、俺は王城の追跡が及ばない、辺境の小さな町に潜んでいた。

身体から魔力抑制の効力が抜け、聖炎は再び以前の強さを取り戻している。俺の力は自由になった。王城の命令も、騎士団の監視もない。

しかし、俺の心は、空虚だった。

いつも俺の首に巻き付いていたはずのノアールの鎖は、今、俺の胸に痛いほど食い込んでいる。

(鎖が……ない)

俺は、自分の首の銀の鎖を無意識に握りしめた。ノアールが俺につけた鎖ではない。俺が、彼との関係の証として、肌身離さず身につけていた、俺自身の鎖だ。

ノアールが俺のそばにいた時、俺の復讐心は、満たされていた。彼の存在が、俺の孤独を埋めていた。彼を支配下に置くことで、俺は自己の存在価値を確認していた。

だが、彼が王城に連れ去られた今、俺の復讐は、ターゲットを失った。

「ノアール……お前は、俺の復讐の完結を望んだのか?」

彼の「愛は終わった」という言葉が、俺の耳から離れない。

俺が彼を愛していた3年間は、偽りだったのだろうか?俺が彼を鎖で繋いだのは、自己満足だったのだろうか?

俺が王城で受けた孤独と苦痛は、すべて彼の裏切りの代償だと信じていた。だが、彼を失った今、俺に残されたのは、以前よりも深い、絶望的な孤独だけだった。

俺は、ノアールを滅却させるわけにはいかない。彼は、俺の復讐の唯一の燃料だ。

俺は、すぐに王城の情報を集め始めた。ノアールがどこに拘束されているのか、そして、彼が本当に滅却されていないかを確かめる必要がある。

辺境の町の酒場で、俺は王城から来た商人の会話を耳にした。

「勇者セレが、魔王を王城の追跡隊に引き渡したそうだ。これで、勇者の裏切りはなかったことになり、魔王は厳重な監視下に置かれているとか」

王城は、俺を裏切り者ではなく、光の英雄として処理したのだ。ノアールを引き渡した行為を、王城への忠誠心の証として利用したに違いない。

(ふざけるな。俺は、お前たちに忠誠を誓ったわけではない)

ノアールは生きている。厳重な監視下にあるという。

俺の胸に、新たな憎悪の炎が燃え上がった。

王城への憎しみ、俺を孤独にした世界への憎しみ、そして、俺の鎖から逃れようとしたノアールへの裏切りの憎しみ。
俺の復讐のターゲットは、再び明確になった。

ノアールを取り戻す。そして、彼を支配する。

そのために、俺はまず、王城のすべてを支配下に置く必要がある。

俺は立ち上がり、辺境の町を後にした。俺の瞳の金色は、以前の復讐の炎よりも、さらに強く、すべてを焼き尽くす光の怪物のように輝いていた。
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