あなた方の愛が「真実の愛」だと、証明してください

こじまき

文字の大きさ
2 / 3

「真実の愛」なら、このくらいの困難は乗り越えられますわよね?

しおりを挟む
正式な婚約破棄を前に、私は完全に「レオポルド様の婚約者」としての仕事を完全に手放した。ハーコート公爵夫人とのお茶会や、「未来の公爵夫人」として顔を出す社交の場、そういったものから遠ざかったのだ。

もちろんそれは、「真実の愛」の力の片鱗を見せていただくためだ。

現在の楽しみは、私からそれらの仕事を譲り受けたローゼマリア様の奮闘ぶりを聞くこと。ハーコート公爵夫人付きの侍女ハンナが、ストラングウェイズ公爵邸へのお使いのたびに、彼女の最新の失敗談を聞かせてくれるのだ。

ハーコート公爵夫人とのお茶会に出席したローゼマリア様はマナー違反を連発し、ハーコート公爵夫人や同席した貴婦人や令嬢方から厳しく指摘され、涙目になって途中で退席したとか。

公爵家主催の舞踏会では、大酒を飲んでレオポルド様以外の男性と踊り回り、痴話げんかの末に会場中のひんしゅくを買ったとか。

王太子殿下のお茶会では、「殿下の学友の恋人」に過ぎない立場で殿下に馴れ馴れしく話しかけて、出禁になりかけたとか。

二人の評判はどんどん悪くなっている。

「けれどきっと真実の愛で解決できるはず」

思ってもいないことを小さく口に出して、つい「ふふ」と笑ってしまうと、ハンナがため息をつく。

「ツェツィーリア様、笑っておられる場合ではございません。これはハーコート公爵家の一大事でございます。ツェツィーリア様に何とか戻ってきていただきたいと、ハーコート公爵家の全員が切望しております」
「レオポルド様以外は、ね」

侍女は口をつぐむ。

「ごめんなさい、ハンナ。あなたをやり込めたいわけじゃないのよ」

そう、私がやり込めたい相手はあの二人なのだから。真実の愛がどんな困難も乗り越えられるというのなら、まだまだ試して差し上げなければ。

「あの女…いえ、ローゼマリア様がレオポルド様のパートナーとして建国祭に出席するなど、考えただけで寒気がいたします。どうかツェツィーリア様、お願いいたします。レオポルド様もいい加減、ローゼマリア様には無理だと気づいておられるころかと…」
「残念ね。私の建国祭のパートナーは、もう決まっているのよ」

そう、私はアレクシス様のパートナーとして建国祭に出席した。ハーコート公爵家がお金に糸目をかけずに用意した、完璧なペアルックで。

私とアレクシス様が並んで出席しているのを見たレオポルド様の顔と言ったら。でもまだ驚くのは早いわ。もっと見て。

見るのよ、私の胸元に光る宝石を。

私が期待したよりも随分遅く、そして周囲が「ねえ、あれ」とざわめき始めて随分経ってから、レオポルド様は目を見開いた。

私の胸元で光っているのは、サフィール・デュ・ヴォウ。

「ハーコート公爵が愛を誓うため、妻に贈る宝石」として代々受け継がれている大きなサファイア。

今の持ち主は公爵夫人であり、公爵夫人が私にサフィール・デュ・ヴォウを身につけさせたということは、「次期公爵の妻はツェツィーリアである」という宣言に他ならない。

そして私とペアルックを着ているのがアレクシス様だということは、私の夫…次期公爵になるのはアレクシス様ということだ。

ーーー

私がレオポルド様から「真実の愛を見つけたので婚約破棄してくれ」と言われたと報告したとき、公爵夫人はこう言った。

「公爵家と私にとってあなたは大切な存在よ、ツェツィーリア。あなたをハーコート公爵家に迎えるという意思は変わらないわ」

そして私が「わかっています」と微笑むと、夫人はアレクシス様に向かって「準備なさい」と告げたのだ。

あのとき公爵位を誰が継ぐかは変わった。真実の愛にのめり込む砂糖菓子から、いつだってサクッと香ばしいジンジャークッキーに。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

愛はリンゴと同じ

turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。 夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。 ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。 幾つもあるなど考えられない。

【完結済】婚約破棄から始まる物語~真実の愛と言う茶番で、私の至福のティータイムを邪魔しないでくださいな

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
恋愛
 約束の時間に遅れ、さらには腕に女性を貼り付けて登場したアレックス殿下。  彼は悪びれることすらなく、ドヤ顔でこう仰いました。 「レティシア。君との婚約は破棄させてもらう」  婚約者の義務としての定例のお茶会。まずは遅れたことに謝罪するのが筋なのでは? 1時間も待たせたあげく、開口一番それですか? しかも腕に他の女を張り付けて? うーん……おバカさんなのかしら? 婚約破棄の正当な理由はあるのですか? 1話完結です。 定番の婚約破棄から始まるザマァを書いてみました。

公爵令嬢ローズは悪役か?

瑞多美音
恋愛
「婚約を解消してくれ。貴方もわかっているだろう?」 公爵令嬢のローズは皇太子であるテオドール殿下に婚約解消を申し込まれた。 隣に令嬢をくっつけていなければそれなりの対応をしただろう。しかし、馬鹿にされて黙っているローズではない。目には目を歯には歯を。  「うちの影、優秀でしてよ?」 転ばぬ先の杖……ならぬ影。 婚約解消と貴族と平民と……どこでどう繋がっているかなんて誰にもわからないという話。 独自設定を含みます。

[完結]婚約破棄したいので愛など今更、結構です

シマ
恋愛
私はリリーナ・アインシュタインは、皇太子の婚約者ですが、皇太子アイザック様は他にもお好きな方がいるようです。 人前でキスするくらいお好きな様ですし、婚約破棄して頂けますか? え?勘違い?私の事を愛してる?そんなの今更、結構です。

【完結】婚約破棄?勘当?私を嘲笑う人達は私が不幸になる事を望んでいましたが、残念ながら不幸になるのは貴方達ですよ♪

山葵
恋愛
「シンシア、君との婚約は破棄させてもらう。君の代わりにマリアーナと婚約する。これはジラルダ侯爵も了承している。姉妹での婚約者の交代、慰謝料は無しだ。」 「マリアーナとランバルド殿下が婚約するのだ。お前は不要、勘当とする。」 「国王陛下は承諾されているのですか?本当に良いのですか?」 「別に姉から妹に婚約者が変わっただけでジラルダ侯爵家との縁が切れたわけではない。父上も承諾するさっ。」 「お前がジラルダ侯爵家に居る事が、婿入りされるランバルド殿下を不快にするのだ。」 そう言うとお父様、いえジラルダ侯爵は、除籍届けと婚約解消届け、そしてマリアーナとランバルド殿下の婚約届けにサインした。 私を嘲笑って喜んでいる4人の声が可笑しくて笑いを堪えた。 さぁて貴方達はいつまで笑っていられるのかしらね♪

僕の我儘で傲慢な婚約者

雨野千潤
恋愛
僕の婚約者は我儘で傲慢だ。 一日に一度は「わたくしに五分…いいえ三分でいいから時間を頂戴」と僕の執務室に乗り込んでくる。 大事な話かと思えばどうでも良さそうなくだらない話。 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

処理中です...