あなた方の愛が「真実の愛」だと、証明してください

こじまき

文字の大きさ
1 / 3

あなた方の愛が「真実の愛」だと証明していただけますか

しおりを挟む
婚約者であるハーコート公爵令息レオポルド様とのティータイム。いつものことながら、レオポルド様は遅刻している。だから私は、気をつかって同席してくださる彼の弟、アレクシス様とお茶を楽しんでいた。

すかすかの砂糖菓子のようなレオポルド様より、スパイスたっぷりのジンジャークッキーのようなアレクシス様と飲むお茶のほうが、ずっと美味しい。

二人分の足音。レオポルド様とピンクの髪をした可愛らしい令嬢が並んで歩いてくる。

「レオポルド様、そちらの可愛らしいご令嬢はどなた?」
「ツェツィーリア、こちらはカスト男爵令嬢のローゼマリアだ」
「ローゼマリア様、ごきげんよう。ストラングウェイズ公爵家のツェツィーリアでございます」
「あ…カスト男爵家のローゼマリアです」

ローゼマリア様のお父上はつい最近爵位を賜ったばかり。その令嬢であるローゼマリア様は、ぎこちない様子で礼をする。仕方はないが、まるでなってない。

「ときにレオポルド様。婚約者同士の定例のお茶会に、どうしてローゼマリア様がご同席を?」

レオポルド様は顔を赤くして咳払いをし、息を吸い込んだ。

「ツェツィーリア、すまない。僕は、真実の愛を見つけてしまった。つまり、このローゼマリアとの愛が、僕にとっての運命なんだ」
「あら」
「だから僕と君の婚約を、破棄してほしい」
「まあ」

あっけにとられるという一言に尽きる。

国内でも屈指の権力を持つ公爵家の嫡男が、この上なく曖昧な「真実の愛」などという理由で、長年の婚約者との婚約を破棄しようとしているとは。しかもこの様子では、お父上である公爵閣下に相談すらしていないのだろう。

私だって、ジンジャークッキーを口にしたいと思いつつ、必死に我慢してきたのに。

アレクシス様が「兄上…!」と声を上げるのを、私は手で制した。

「ひとつお伺いいたしますが、レオポルド様のおっしゃる真実の愛とは、どのようなものでございましょう?」
「それは…身分も立場も関係なく惹かれ合ってしまい、どうしようもなく運命だと感じて、どんな困難も二人でなら乗り越えられると信じるに足る愛だ」

なるほど。いかにもレオポルド様らしい。甘ったるくて、紅茶に入れたら儚く溶けてしまいそうな愛だ。

私はできるだけ優雅な笑みを浮かべる。

「レオポルド様にそう言われては、私は身を引くしかありませんわね」

緊張していたレオポルド様とローゼマリア様の顔が、ぱっと明るくなる。けれどもちろん、ただでは引かない。

「ただし最低限の礼儀として、あなた方の愛が本当に真実の愛だと証明していただけますか?」

私がそう聞くと、レオポルド様はどんと胸を叩いた。

「もちろんだよ、ツェツィーリア」

私はにっこりと頷いて、アレクシス様に手を差し出す。はっとしたアレクシス様が、手を差し伸べ、私を優しく立たせてくれる。優しいけれど、力強い手に、こんなときでも私は安心できてしまう。

「では私は公爵夫人にご挨拶をしてから、失礼いたしますわ」

私は公爵夫人に庭での顛末を簡単に説明する。公爵夫人は額に手を当てた。

「ごめんなさい、ツェツィーリア。どうお詫びすればよいのかわからないわ。レオポルドにはあなたとの婚約は絶対だと言い含めていたし、カスト男爵家にもローゼマリア嬢の行動について警告していたのに…」
「いいのです、公爵夫人…いえ、おば様。所詮レオポルド様にとって、私がその程度の存在であったということでございましょう」

ハーコート公爵夫人と私の母は従姉妹同士だ。そのため義母というよりは気心の知れた親戚という接し方ができる。

「公爵家と私にとってあなたは大切な存在よ、ツェツィーリア」

私はおば様に「わかっています」と伝えたくて、にっこりと微笑み返した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

愛はリンゴと同じ

turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。 夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。 ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。 幾つもあるなど考えられない。

婿入り条件はちゃんと確認してください。

もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。

断罪された薔薇の話

倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。  ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。  とても切ない物語です。  この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。   

公爵令嬢ローズは悪役か?

瑞多美音
恋愛
「婚約を解消してくれ。貴方もわかっているだろう?」 公爵令嬢のローズは皇太子であるテオドール殿下に婚約解消を申し込まれた。 隣に令嬢をくっつけていなければそれなりの対応をしただろう。しかし、馬鹿にされて黙っているローズではない。目には目を歯には歯を。  「うちの影、優秀でしてよ?」 転ばぬ先の杖……ならぬ影。 婚約解消と貴族と平民と……どこでどう繋がっているかなんて誰にもわからないという話。 独自設定を含みます。

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

もう無理だ…婚約を解消して欲しい

山葵
恋愛
「アリアナ、すまない。私にはもう無理だ…。婚約を解消して欲しい」 突然のランセル様の呼び出しに、急いで訪ねてみれば、謝りの言葉からの婚約解消!?

嘘つき

金峯蓮華
恋愛
辺境伯令嬢のマリアリリーは先見の異能を持っている。幼い頃、見えたことをうっかり喋ってしまったばかりに、貴族学校で5年もの間「嘘つき」と言われイジメを受けることになった。そんなマリアリリーのざまぁなお話。 独自の世界観の緩いお話しです。

僕の我儘で傲慢な婚約者

雨野千潤
恋愛
僕の婚約者は我儘で傲慢だ。 一日に一度は「わたくしに五分…いいえ三分でいいから時間を頂戴」と僕の執務室に乗り込んでくる。 大事な話かと思えばどうでも良さそうなくだらない話。 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

処理中です...