293 / 411
黒豚令息の領地開拓編
本格始動
しおりを挟む
「お腹がいっぱいにならなければいいのに…」
「またそんな事言ってんのか!?」
「だってどれも美味しくて…デイビッド様の作るお菓子に少し似てました!」
「お聞きになりました?!若旦那の作るものに“少し似てる”ですって!やっぱりオリジナルのレシピには敵いませんねぇ~。」
「まだまだ精進しませんとね!事業主の腕に追いつけない内は一番の座は遠いものと思いませんと!」
「ヴィオラ様!またいつでもいらして下さいませ!」
「一同心からお待ちしております!」
工房から出ると、外の風が心地良い。
鶏小屋の横を通り抜け、畑の間を見ながらぶらぶらムスタの所まで戻ると、牧場の方から乳搾りをしていた男がミルクの缶を手にやって来た。
「若旦那!こちら、本日最も機嫌良く体調の良い牛から採れました極上のミルクでございます。ミセス・フォルティシモのミルクは濃厚でバター向きな程ですので、あまり冷やさずお早めにお召し上がり下さい。」
「わかった、いつも悪いな。」
「いえいえ、またいつでもお越し下さいませ。」
ムスタの縄を解くと、大勢の人影が後ろからこっそりこちらを見ているのが見えた。
ヴィオラはニッコリと手を振って牧場を後にした。
「すごかったです…デイビッド様の秘密の工場…」
「別に秘密じゃねぇよ。」
「でもあのボンボンは衝撃でした…」
「まぁ、いきなりじゃ驚くよな…」
「壁一面のボンボン!」
「ボンボンしか見えてない感じ…?」
ムスタはそんな2人が寄り添うのを、つまらんと言う顔で鼻を鳴らしながら市場まで戻って行った。
「お帰りなさ~い!いかがでした、デイビッド様の工場見学は?」
「とっても素敵でした!見て下さい!私だけの特別なボンボンの瓶詰めですよ!?」
「この様子だと、怖がったりはしなかったみたいですね。良かったじゃないですか。」
「好奇心とボンボンが勝って、何も見えてない感じがしたな…でも、嫌がられなかったから良かった。」
「だから言ったでしょ?ヴィオラ様が彼を怖がるはずないって。でもいきなり連れて行こうなんて言い出すから驚きはしましたね。だんだん手の内明かしてって、核心に引き込むつもりですか?」
「いつかは話す内容だろ?!」
「パン屑で小鳥誘い込むみたいにジリジリ距離詰めて、最後はパッと捕まえちゃうつもりですか?!」
「なんでそういう言い方しかできねぇんだよお前は!!」
買い物を再開したヴィオラと別れたデイビッドは、金物や瓶を集める回収業者に不用品を渡しに行った帰り、肉屋の前で足を止め考え込んだ。
(肉…買うかな…でもそろそろだと思うんだよな…)
迷った末、日持ちのするソーセージやベーコンだけ買うと、ムスタに詰め込み、ヴィオラとエリックを待った。
(何買ってくるかな…?)
やがて紙袋を両手に抱えた2人が戻って来た。
「ただいま戻りました~!いやぁー何買おうか迷っちゃって!」
「けっこうな荷物の割に自分の食い物で終了してねぇか!?」
2人は紙袋いっぱいに屋台の串焼きに見慣れない麺類、甘味から肉類から酒の肴まで買い込み、ホクホクしていた。
デイビッドはと言うと、荷車に大量の杭と木の板、縄紐、野営箱には入れていなかった大工道具を積んで、本を何冊も買っていた。
「おや、やっと開拓作業ですか?」
「まぁな、そろそろなんかしらの目処は付けとかねぇと、滑り出しがうまく行かねぇからよ。」
「何かお考えが?」
「農具の開発をしてる企業に声掛けて、新式農具を試用させてもらえないか打診中。うまく行ったら領地経営科の授業で生徒に使わせてみる。使い心地によっちゃそのまま購入まで繋げられるから悪い話じゃねぇだろ。」
「生徒に開拓させるつもりなんですか?!」
「実践経験がないと、領民に無謀な要求や無理を強いる事にもなる可能性もある。そうならないためにも、しっかり基礎は教えときたい。」
「うわぁ真面目な先生みたいな事を…」
「俺が真面目に教員やったら悪いかよ!?」
更にあちこちへ手紙を出し、資材の調達もしているらしい。
いよいよデイビッドの新領地に開拓の手が入るようだ。
なだらかな道から草地に入り、領の境界はこの辺りか…という場所まで来ると、デイビッドはようやく目印に杭を3本ほど打ち込み、縄をかけた。
今後は道なども作って入口の案内も立てなければなるまい。
それならば!と、ヴィオラはムスタの行く手を風魔法で払い、背の高い草を一掃していった。
「おお!これだけでずいぶん道らしくなるなぁ!」
「何度も通れば本格的に道になりますよ。」
「なんでも言って下さい!お手伝いします!」
「それじゃ明日は測量を少し手伝って欲しい。1人じゃ難しくてよ。」
「任せて下さい!」
ウキウキするヴィオラは、拠点の近くまで来ると御者台から飛び下りて走って行ってしまった。
(本当にウサギみたいだな…)
微笑ましくヴィオラ後ろ姿を見ていると、すぐにまた走って戻って来てしまう。
「デイビッド様、ファルコとアリーちゃんがすごいもの獲って来てました!」
「すごいもの…?」
「こーなにでっかいウサギの魔物!」
「肉、買わなくて良かった…」
家馬車の前には大きなチャージラビットが4体も倒れており、ベルダが腹を抱えて笑っていた。
「何があったんだ?」
「あ、デイビッド君お帰り!実はさっきまでアリーがファルコと喧嘩してて…」
「喧嘩?!」
「チャージラビットの群れがこっちの草原まで入り込んできてね。彼らは群れに近づくものには見境なく猪みたいに頭から突っ込んで来るから危なくて。討伐の必要があるか悩んでたら、歩き草を片っ端から食べ始めたんでアリーが怒って一匹倒したんだ。そしたら、今度はグランドシェーブルの仔山羊に向かってった奴をファルコが仕留めてね。で、どっちが大きかったかで喧嘩になってもう一匹ずつ獲って今決着がついた所。」
そして軍配はアリーに上がったらしい。
ファルコは既に興味を失って餌のバケツをついばんでいる。
「こんなにどうしろってんだ!!」
「デイビッド様、私お手伝いします!!」
意気込むヴィオラに急かされ、デイビッドは荷物から解体用具を取り出した。
チャージラビットを拠点から少し離れた水辺に近いクルミの木の下まで運ぶと、人ひとり分はある巨体を縄で吊るし、まずは内臓を抜いていく。
新鮮な心臓、腎臓、肝臓、肺は食用になるので、今回は丁寧に取り出し、よく洗って下処理を回す。
毛皮を剥がしたら水で洗うのだが、桶に汲みに行こうとしたらヴィオラが水魔法を展開させ、空き家を掃除した要領で肉全体を綺麗に水に晒してくれたので、こちらが汚れることもなく短時間で肉の血抜きと洗浄が終わってしまった。
「すげぇ…こんなに早く終わるなんて思いもしなかった!ありがとう、やっぱりヴィオラの魔法は最高だ!」
「お役に立てて嬉しいです!!」
そこらの令嬢なら悲鳴を上げて逃げてしまう様な光景でも、ヴィオラは楽しそうに婚約者に寄り添っている。
頭を切り落とし、脳を取り出しても全く動じない辺り、はっきり言ってデイビッドにこれほど相応しい相手は居ないだろう。
(お似合い過ぎよ!色んな意味で!!)
シェルリアーナは、まだ起きないエリザベスの横で魔工学のテキスト片手におさらいをしながら悪態をついていた。
「こんなに食べ切れませんね…」
「よし、2頭捌いたらギルドへ運んじまおう。」
「ギルド!?」
「ここからそんな離れてねぇから、大丈夫だろ。このまま乗せて持ってくよ。」
荷車に再びムスタを繋ぎ、角の大きな方と毛皮が綺麗な方を乗せ、獲物が痛む前に近隣のコンラッド領のギルド“トレビス”へ運んでしまう。
サッと行って帰ってくるつもりだったが、隣にちょこんとヴィオラも乗り込み、手が塞がっているデイビッドにくっついていた。
「人通りのあるとこでは離れろよ…?」
「なんでですか?」
「あんま見られたくねぇんだよ!学園関係者だっているだろうし、また変な噂が流れてもいいのか?!」
「デイビッド様との噂なら幾らでも流れていいと思ってます!」
「良くねぇだろ!ヘタに下衆な連中に餌を与えることもねぇしよ。もっと自分を大事にしろよ!」
「してますよ?自分の気持ちに一番正直に行動しようって決めたんです私。だから、デイビッド様と一緒に居たい時は、いつでも側にいることにしたんです。周りに何と言われようと構いません。ダメですか…?」
デイビッドが黙ったまま動かなくなったのを見て、ヴィオラは内心勝ったと拳を握った。
「またそんな事言ってんのか!?」
「だってどれも美味しくて…デイビッド様の作るお菓子に少し似てました!」
「お聞きになりました?!若旦那の作るものに“少し似てる”ですって!やっぱりオリジナルのレシピには敵いませんねぇ~。」
「まだまだ精進しませんとね!事業主の腕に追いつけない内は一番の座は遠いものと思いませんと!」
「ヴィオラ様!またいつでもいらして下さいませ!」
「一同心からお待ちしております!」
工房から出ると、外の風が心地良い。
鶏小屋の横を通り抜け、畑の間を見ながらぶらぶらムスタの所まで戻ると、牧場の方から乳搾りをしていた男がミルクの缶を手にやって来た。
「若旦那!こちら、本日最も機嫌良く体調の良い牛から採れました極上のミルクでございます。ミセス・フォルティシモのミルクは濃厚でバター向きな程ですので、あまり冷やさずお早めにお召し上がり下さい。」
「わかった、いつも悪いな。」
「いえいえ、またいつでもお越し下さいませ。」
ムスタの縄を解くと、大勢の人影が後ろからこっそりこちらを見ているのが見えた。
ヴィオラはニッコリと手を振って牧場を後にした。
「すごかったです…デイビッド様の秘密の工場…」
「別に秘密じゃねぇよ。」
「でもあのボンボンは衝撃でした…」
「まぁ、いきなりじゃ驚くよな…」
「壁一面のボンボン!」
「ボンボンしか見えてない感じ…?」
ムスタはそんな2人が寄り添うのを、つまらんと言う顔で鼻を鳴らしながら市場まで戻って行った。
「お帰りなさ~い!いかがでした、デイビッド様の工場見学は?」
「とっても素敵でした!見て下さい!私だけの特別なボンボンの瓶詰めですよ!?」
「この様子だと、怖がったりはしなかったみたいですね。良かったじゃないですか。」
「好奇心とボンボンが勝って、何も見えてない感じがしたな…でも、嫌がられなかったから良かった。」
「だから言ったでしょ?ヴィオラ様が彼を怖がるはずないって。でもいきなり連れて行こうなんて言い出すから驚きはしましたね。だんだん手の内明かしてって、核心に引き込むつもりですか?」
「いつかは話す内容だろ?!」
「パン屑で小鳥誘い込むみたいにジリジリ距離詰めて、最後はパッと捕まえちゃうつもりですか?!」
「なんでそういう言い方しかできねぇんだよお前は!!」
買い物を再開したヴィオラと別れたデイビッドは、金物や瓶を集める回収業者に不用品を渡しに行った帰り、肉屋の前で足を止め考え込んだ。
(肉…買うかな…でもそろそろだと思うんだよな…)
迷った末、日持ちのするソーセージやベーコンだけ買うと、ムスタに詰め込み、ヴィオラとエリックを待った。
(何買ってくるかな…?)
やがて紙袋を両手に抱えた2人が戻って来た。
「ただいま戻りました~!いやぁー何買おうか迷っちゃって!」
「けっこうな荷物の割に自分の食い物で終了してねぇか!?」
2人は紙袋いっぱいに屋台の串焼きに見慣れない麺類、甘味から肉類から酒の肴まで買い込み、ホクホクしていた。
デイビッドはと言うと、荷車に大量の杭と木の板、縄紐、野営箱には入れていなかった大工道具を積んで、本を何冊も買っていた。
「おや、やっと開拓作業ですか?」
「まぁな、そろそろなんかしらの目処は付けとかねぇと、滑り出しがうまく行かねぇからよ。」
「何かお考えが?」
「農具の開発をしてる企業に声掛けて、新式農具を試用させてもらえないか打診中。うまく行ったら領地経営科の授業で生徒に使わせてみる。使い心地によっちゃそのまま購入まで繋げられるから悪い話じゃねぇだろ。」
「生徒に開拓させるつもりなんですか?!」
「実践経験がないと、領民に無謀な要求や無理を強いる事にもなる可能性もある。そうならないためにも、しっかり基礎は教えときたい。」
「うわぁ真面目な先生みたいな事を…」
「俺が真面目に教員やったら悪いかよ!?」
更にあちこちへ手紙を出し、資材の調達もしているらしい。
いよいよデイビッドの新領地に開拓の手が入るようだ。
なだらかな道から草地に入り、領の境界はこの辺りか…という場所まで来ると、デイビッドはようやく目印に杭を3本ほど打ち込み、縄をかけた。
今後は道なども作って入口の案内も立てなければなるまい。
それならば!と、ヴィオラはムスタの行く手を風魔法で払い、背の高い草を一掃していった。
「おお!これだけでずいぶん道らしくなるなぁ!」
「何度も通れば本格的に道になりますよ。」
「なんでも言って下さい!お手伝いします!」
「それじゃ明日は測量を少し手伝って欲しい。1人じゃ難しくてよ。」
「任せて下さい!」
ウキウキするヴィオラは、拠点の近くまで来ると御者台から飛び下りて走って行ってしまった。
(本当にウサギみたいだな…)
微笑ましくヴィオラ後ろ姿を見ていると、すぐにまた走って戻って来てしまう。
「デイビッド様、ファルコとアリーちゃんがすごいもの獲って来てました!」
「すごいもの…?」
「こーなにでっかいウサギの魔物!」
「肉、買わなくて良かった…」
家馬車の前には大きなチャージラビットが4体も倒れており、ベルダが腹を抱えて笑っていた。
「何があったんだ?」
「あ、デイビッド君お帰り!実はさっきまでアリーがファルコと喧嘩してて…」
「喧嘩?!」
「チャージラビットの群れがこっちの草原まで入り込んできてね。彼らは群れに近づくものには見境なく猪みたいに頭から突っ込んで来るから危なくて。討伐の必要があるか悩んでたら、歩き草を片っ端から食べ始めたんでアリーが怒って一匹倒したんだ。そしたら、今度はグランドシェーブルの仔山羊に向かってった奴をファルコが仕留めてね。で、どっちが大きかったかで喧嘩になってもう一匹ずつ獲って今決着がついた所。」
そして軍配はアリーに上がったらしい。
ファルコは既に興味を失って餌のバケツをついばんでいる。
「こんなにどうしろってんだ!!」
「デイビッド様、私お手伝いします!!」
意気込むヴィオラに急かされ、デイビッドは荷物から解体用具を取り出した。
チャージラビットを拠点から少し離れた水辺に近いクルミの木の下まで運ぶと、人ひとり分はある巨体を縄で吊るし、まずは内臓を抜いていく。
新鮮な心臓、腎臓、肝臓、肺は食用になるので、今回は丁寧に取り出し、よく洗って下処理を回す。
毛皮を剥がしたら水で洗うのだが、桶に汲みに行こうとしたらヴィオラが水魔法を展開させ、空き家を掃除した要領で肉全体を綺麗に水に晒してくれたので、こちらが汚れることもなく短時間で肉の血抜きと洗浄が終わってしまった。
「すげぇ…こんなに早く終わるなんて思いもしなかった!ありがとう、やっぱりヴィオラの魔法は最高だ!」
「お役に立てて嬉しいです!!」
そこらの令嬢なら悲鳴を上げて逃げてしまう様な光景でも、ヴィオラは楽しそうに婚約者に寄り添っている。
頭を切り落とし、脳を取り出しても全く動じない辺り、はっきり言ってデイビッドにこれほど相応しい相手は居ないだろう。
(お似合い過ぎよ!色んな意味で!!)
シェルリアーナは、まだ起きないエリザベスの横で魔工学のテキスト片手におさらいをしながら悪態をついていた。
「こんなに食べ切れませんね…」
「よし、2頭捌いたらギルドへ運んじまおう。」
「ギルド!?」
「ここからそんな離れてねぇから、大丈夫だろ。このまま乗せて持ってくよ。」
荷車に再びムスタを繋ぎ、角の大きな方と毛皮が綺麗な方を乗せ、獲物が痛む前に近隣のコンラッド領のギルド“トレビス”へ運んでしまう。
サッと行って帰ってくるつもりだったが、隣にちょこんとヴィオラも乗り込み、手が塞がっているデイビッドにくっついていた。
「人通りのあるとこでは離れろよ…?」
「なんでですか?」
「あんま見られたくねぇんだよ!学園関係者だっているだろうし、また変な噂が流れてもいいのか?!」
「デイビッド様との噂なら幾らでも流れていいと思ってます!」
「良くねぇだろ!ヘタに下衆な連中に餌を与えることもねぇしよ。もっと自分を大事にしろよ!」
「してますよ?自分の気持ちに一番正直に行動しようって決めたんです私。だから、デイビッド様と一緒に居たい時は、いつでも側にいることにしたんです。周りに何と言われようと構いません。ダメですか…?」
デイビッドが黙ったまま動かなくなったのを見て、ヴィオラは内心勝ったと拳を握った。
65
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています
鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。
伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。
愛のない契約、形式だけの夫婦生活。
それで十分だと、彼女は思っていた。
しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。
襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、
ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。
「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」
財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、
やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。
契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。
白い結婚の裏で繰り広げられる、
“ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる