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7代目デュロック辺境伯爵編
歩く仕事人間
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夏期休暇返上の特別授業期間も気がつけば半分以上が終わり、あと半月もすれば例年より短いが夏休みとなる。
領地経営科は、この日課外授業でコンラッド領へ社会見学へ来ていた。
「じゃ、各班に分かれて好きなギルドへ向かってくれ。ある程度話は通してあるから、加工現場や流通関係なんかよく見て来いよ?後で別の授業でレポート書かされるらしいからな。」
「服飾ギルドってあっち?」
「林業はどこの括りだっけ?」
「水運はないんだね。」
「食品加工は肉と農作物で分かれるの?」
「冒険者ギルド行こう!」
賑やかに分かれて行く生徒達の様子を見ながら、デイビッドもあちこちのギルドに顔を出し、生徒の事を頼みながら声を掛けてまわっていると、馬鹿でかい声に呼び止められた。
「おーーい!!シルバーの兄ちゃんよぉ!!」
「げぇっ!!」
「げぇってこたぁねぇだろ!?ちっと面貸せよ!大事な話があるんだからよ!」
それを見て生徒達が不安げな顔をした。
「先生…あの人は…?」
「不審者にしか見えないが、あれでも冒険者ギルドのマスターだ。」
「なんだなんだ?今日はあのお嬢ちゃんじゃなくて他の若いの連れて選り取り見取りか?」
「前言撤回。ただの不審者だ。」
「オイオイ!そんな事言わねぇで、こっち来いよ!銀級指定で依頼が入ってんだからよ!?」
「よし、逃げるぞ!」
「あっ!ちょっ…待てコラ!クッソ逃げ足速えなチクショウ!!」
生徒を連れてギルドマスターを撒くと、デイビッドは当初の予定通り生徒達を連れてギルドの見学を終わらせた。
各ギルドに散った生徒達は真剣に話を聞き、中間管理職の難しさや、ノウハウについて学ぶ良い機会となった。
授業後、生徒達を簡易の転移門を用意して待っていたエリックに預けると、デイビッドは改めて冒険者ギルドへと向かう。
「よぉ、なんか用があるって言うから来てやったぞ?」
「なんだよ!仕事中ならそう言えって!ありゃ学園の生徒か?隠すなよ、冒険者の中にも副業で教鞭を取るヤツはけっこういるぞ?」
「本業だよ!悪かったな見えなくてよぉ!?!」
下らないやり取りをしてから、デイビッドは奥に通され改めて指定の依頼とやらを聞くことになった。
「で?シルバー如きに何の依頼だって?」
「そう言うなよ。ここにクリスタル以上の冒険者が来たのなんてもう10年は前の話だ。今このギルドで一番実績が上がってんのはお前ぇさんなんだから諦めろ。」
「さっさと捨てちまえば良かったこんなもん…」
「そう言ってくれるな、こっちは大助かりなんだからよ。」
ギルドマスターはデイビッドの前に貴族家から出されたと見える依頼書を出すと、金貨の入った小袋を取り出した。
依頼書を読んだデイビッドは思わず声を上げた。
「グリフォンの捕獲ぅ?!」
「でかい声出すなよ!聞いてねぇのか?少し前に魔物の密輸組織の末端が捕まった話!貴族まで巻き込む大騒動になりかけたんだけどよ…」
「トカゲの尻尾切りか…?」
「そうなんだよ…運び人と仲介の商人まではお縄にできたらしいが、黒幕には逃げられちまってそれ切りよ。」
「で?なんでそっからグリフォンの捕獲依頼が入るんだ?」
「どうやら運び屋を追いかけて来た保護対象のグリフォンがこの近隣に潜んでるらしい!空を飛ぶ姿を見た奴が何人もいてよ、このままじゃ人を襲う可能性もあるとかで元の場所に帰ってもらわにゃ安心して道も通れねぇってな…依頼元は何を隠そう公爵家だ。」
「どこの?」
「ルミネラ…」
「…ソイツが黒幕なんじゃねぇの?!」
「馬鹿な事言うな!王族直系の名家だぞ?!」
(超絶胡散臭い上に今現在その王家の信頼が地に落ちたけどな…)
「それで…なるべく傷付けず生きたまま捕獲して欲しいんだとよ。」
デイビッドはしばらく難しい顔で考込むと、部屋の外に向かって貴族用の便箋とペンを要求した。
「なんだ?遺書でも書くのか?」
「んな訳あるか!依頼の差し戻しだよ!少し待ってな、アンタにだけは本当の事を話してやっからよ…」
書面には、グリフォンは既に有資格者の元で保護を受けている事、怪我の治癒が済み、保護の必要性が無くなれば元いた場所へ還される事、所在は私有の領地で周囲への被害もなく、土地の精霊の許可も得ている事などを書き込み、サインと当主印を押した。
「はぁっ?!おいおいおい!嘘だろ?!お前ぇさんどっかのお貴族様だったのかよ!?」
「メンドクセェ肩書だけな。だが、こういう時に使える手札になるから重宝もしてる。」
「名前は…デュロック!?デュロックっていや、あの「黒豚」って有名な嫌われ者の跡取りがいるってウワサの…」
「………」
「確かに色々黒いなぁ!!」
「その目は節穴か!?」
大袈裟に驚くマスターを無視して従業員を呼んで封蝋を頼み、そこへも印を押し付けるとまたマスターに向き合った。
「いやぁ、なんつうか…もっとこう…石炭みたいに真っ黒くってまん丸に太ったデカいオークみてぇな野郎なのかと思ってたからよ…」
「それ人間か?!」
「新聞でも見たんだけどよ…後ろのヒポグリフにしか目がいかなくて…ってこたぁあのヒポグリフ!アレもお前ぇさんの従魔なのか!?」
「魔法的な契約はしてねぇよ。でも登録はしてあるから括りはな。」
「そんな事あるのか!?じゃ、じゃぁさっきのグリフォンを保護してるってのは…」
「俺だよ。押し付けられた領地に連れてって養生させてるとこだ。」
「こ、この土地のナンタラってのは…?」
「そこは聞かねぇ方が身のためだな。」
それを聞いて、ギルドマスターは力が抜けたようにドサッと椅子に座り込んでしまった。
「嘘だろ…そんな事ってあるのか?!」
「だからここだけのハナシにしてくれよ?他の貴族に目ぇ付けられると厄介だからよ。」
「…お前ぇさん本当に貴族なのか?」
「今判押すトコ見てたろがよ!!」
デイビッドは、うるさいギルドマスターよりも手元の依頼書が気になり、手に取って睨みつけた。
ルミネラは本当にグリフォンを保護し開放するつもりで捕獲の依頼をしてきたのだろうか?
(グリフォンは…何に効くんだっけな…)
羽が魔道具や魔法薬の素材になる事は知っているが、他の部位はどうなのか…
これほど大きく強靭で魔力に満ちた魔物の素材が羽だけなはずはない。
(依頼の差し戻しで引いてくれる…ワケねぇか…精々時間稼ぎだな…)
元より格下の貴族の話など聞かないだろう。
これはいよいよ王家の権威を傘に着る必要がありそうだ。
こちらの名前を出した以上、向こうの狙いはデイビッドに絞られる事になるだろう。
正面からやり合うにしても、公爵とは言え今のルミネラにならば勝機もある。
「なぁなぁお前ぇさんが貴族ってんならよ?どっかで名前借りたりできねぇか?」
「オイ!タカるな!今まで名乗らなった理由も分かってんだろ?!そういう輩が鬱陶しかったからだよ!」
「堅ぇコト言うなよ!俺とお前ぇさんの仲だろ?」
「良いように使おうとすんじゃねぇよ!用があるなら依頼で寄越せ!!」
デイビッドの正体を知るや否やしつこく絡み付いてきたギルドマスターを振り切り、デイビッドは久々に乗合馬車でコンラッド領を後にした。
馬車の中では、乗り合わせた移民の家族がデイビッドを見るなり身を小さくして隅に寄る。
気を遣わせないよう、なるべく愛想良くしようとすると、子供が咳き込み、母親がそれを隠すように薄羽織りの下へ庇い、父親が申し訳なさそうに会釈した。
「…風邪ですか?」
「あ!イエ…生まれツキ、喉ヨワくて…タイヘンもうしワケありません!」
「お気になさらず。坊や、胸は苦しくないか?」
「うん…でもおノドがずっとイタくてカサカサするんダ…」
「良いモノやるよ。手を出してみな。」
「わ!アメダマだ!オジさんありがとう!」
「……少しは楽になると思うぞ?」
「アリガトございマス!」
「薬草の成分を入れてあるので、喉の炎症には効くはずですよ。」
やや片言の母親に代わり、今度は父親が頭を下げる。
「申し訳ありません…我々はエルムの砂漠地帯にいたのデスが、息子の身体が弱く、砂塵の少ナイこちらへ越してきたばかりで医者にも通わせてやれなくて…」
「失礼ですが、お仕事は何を?」
「コレまでは農場で子飼いの畑仕事をしておりましたが、こちらへ来てからは日雇いの荷運びなどを…」
「お住まいは壁沿いの居住区ですか?」
「はい、先日一区画空いたので、そこへ移るところです。」
「もし、ご迷惑でなければこちらへ声を掛けてみて下さい。農作業のご経験があるなら、郊外の菜園で人手が足りなくて募っているので、よろしければ…」
デイビッドはポケットから出したメモ紙に、簡単な地図と菜園の名前を記して渡した。
「そんな…行きずりの移民にナゼここまで…」
「なぁに、こう見えて商人なもので、空いている手があれば声を掛けるのがクセなんですよ。」
郊外の市場の前で親子と別れ、また屋台の間をぶらぶらしていると、また毛色の変わった商品が多く入っていることに気が付き、足が勝手に向いて行く。
すると露天の中に一際違和感を感じる店を見つけた。
(ずいぶん粗悪な焼き物だな…なのにこの絵柄はなかなか人を惹きつけるモノがある…)
それは絵付けをした素焼きの器の店で、少女が売り声を掛けていた。
領地経営科は、この日課外授業でコンラッド領へ社会見学へ来ていた。
「じゃ、各班に分かれて好きなギルドへ向かってくれ。ある程度話は通してあるから、加工現場や流通関係なんかよく見て来いよ?後で別の授業でレポート書かされるらしいからな。」
「服飾ギルドってあっち?」
「林業はどこの括りだっけ?」
「水運はないんだね。」
「食品加工は肉と農作物で分かれるの?」
「冒険者ギルド行こう!」
賑やかに分かれて行く生徒達の様子を見ながら、デイビッドもあちこちのギルドに顔を出し、生徒の事を頼みながら声を掛けてまわっていると、馬鹿でかい声に呼び止められた。
「おーーい!!シルバーの兄ちゃんよぉ!!」
「げぇっ!!」
「げぇってこたぁねぇだろ!?ちっと面貸せよ!大事な話があるんだからよ!」
それを見て生徒達が不安げな顔をした。
「先生…あの人は…?」
「不審者にしか見えないが、あれでも冒険者ギルドのマスターだ。」
「なんだなんだ?今日はあのお嬢ちゃんじゃなくて他の若いの連れて選り取り見取りか?」
「前言撤回。ただの不審者だ。」
「オイオイ!そんな事言わねぇで、こっち来いよ!銀級指定で依頼が入ってんだからよ!?」
「よし、逃げるぞ!」
「あっ!ちょっ…待てコラ!クッソ逃げ足速えなチクショウ!!」
生徒を連れてギルドマスターを撒くと、デイビッドは当初の予定通り生徒達を連れてギルドの見学を終わらせた。
各ギルドに散った生徒達は真剣に話を聞き、中間管理職の難しさや、ノウハウについて学ぶ良い機会となった。
授業後、生徒達を簡易の転移門を用意して待っていたエリックに預けると、デイビッドは改めて冒険者ギルドへと向かう。
「よぉ、なんか用があるって言うから来てやったぞ?」
「なんだよ!仕事中ならそう言えって!ありゃ学園の生徒か?隠すなよ、冒険者の中にも副業で教鞭を取るヤツはけっこういるぞ?」
「本業だよ!悪かったな見えなくてよぉ!?!」
下らないやり取りをしてから、デイビッドは奥に通され改めて指定の依頼とやらを聞くことになった。
「で?シルバー如きに何の依頼だって?」
「そう言うなよ。ここにクリスタル以上の冒険者が来たのなんてもう10年は前の話だ。今このギルドで一番実績が上がってんのはお前ぇさんなんだから諦めろ。」
「さっさと捨てちまえば良かったこんなもん…」
「そう言ってくれるな、こっちは大助かりなんだからよ。」
ギルドマスターはデイビッドの前に貴族家から出されたと見える依頼書を出すと、金貨の入った小袋を取り出した。
依頼書を読んだデイビッドは思わず声を上げた。
「グリフォンの捕獲ぅ?!」
「でかい声出すなよ!聞いてねぇのか?少し前に魔物の密輸組織の末端が捕まった話!貴族まで巻き込む大騒動になりかけたんだけどよ…」
「トカゲの尻尾切りか…?」
「そうなんだよ…運び人と仲介の商人まではお縄にできたらしいが、黒幕には逃げられちまってそれ切りよ。」
「で?なんでそっからグリフォンの捕獲依頼が入るんだ?」
「どうやら運び屋を追いかけて来た保護対象のグリフォンがこの近隣に潜んでるらしい!空を飛ぶ姿を見た奴が何人もいてよ、このままじゃ人を襲う可能性もあるとかで元の場所に帰ってもらわにゃ安心して道も通れねぇってな…依頼元は何を隠そう公爵家だ。」
「どこの?」
「ルミネラ…」
「…ソイツが黒幕なんじゃねぇの?!」
「馬鹿な事言うな!王族直系の名家だぞ?!」
(超絶胡散臭い上に今現在その王家の信頼が地に落ちたけどな…)
「それで…なるべく傷付けず生きたまま捕獲して欲しいんだとよ。」
デイビッドはしばらく難しい顔で考込むと、部屋の外に向かって貴族用の便箋とペンを要求した。
「なんだ?遺書でも書くのか?」
「んな訳あるか!依頼の差し戻しだよ!少し待ってな、アンタにだけは本当の事を話してやっからよ…」
書面には、グリフォンは既に有資格者の元で保護を受けている事、怪我の治癒が済み、保護の必要性が無くなれば元いた場所へ還される事、所在は私有の領地で周囲への被害もなく、土地の精霊の許可も得ている事などを書き込み、サインと当主印を押した。
「はぁっ?!おいおいおい!嘘だろ?!お前ぇさんどっかのお貴族様だったのかよ!?」
「メンドクセェ肩書だけな。だが、こういう時に使える手札になるから重宝もしてる。」
「名前は…デュロック!?デュロックっていや、あの「黒豚」って有名な嫌われ者の跡取りがいるってウワサの…」
「………」
「確かに色々黒いなぁ!!」
「その目は節穴か!?」
大袈裟に驚くマスターを無視して従業員を呼んで封蝋を頼み、そこへも印を押し付けるとまたマスターに向き合った。
「いやぁ、なんつうか…もっとこう…石炭みたいに真っ黒くってまん丸に太ったデカいオークみてぇな野郎なのかと思ってたからよ…」
「それ人間か?!」
「新聞でも見たんだけどよ…後ろのヒポグリフにしか目がいかなくて…ってこたぁあのヒポグリフ!アレもお前ぇさんの従魔なのか!?」
「魔法的な契約はしてねぇよ。でも登録はしてあるから括りはな。」
「そんな事あるのか!?じゃ、じゃぁさっきのグリフォンを保護してるってのは…」
「俺だよ。押し付けられた領地に連れてって養生させてるとこだ。」
「こ、この土地のナンタラってのは…?」
「そこは聞かねぇ方が身のためだな。」
それを聞いて、ギルドマスターは力が抜けたようにドサッと椅子に座り込んでしまった。
「嘘だろ…そんな事ってあるのか?!」
「だからここだけのハナシにしてくれよ?他の貴族に目ぇ付けられると厄介だからよ。」
「…お前ぇさん本当に貴族なのか?」
「今判押すトコ見てたろがよ!!」
デイビッドは、うるさいギルドマスターよりも手元の依頼書が気になり、手に取って睨みつけた。
ルミネラは本当にグリフォンを保護し開放するつもりで捕獲の依頼をしてきたのだろうか?
(グリフォンは…何に効くんだっけな…)
羽が魔道具や魔法薬の素材になる事は知っているが、他の部位はどうなのか…
これほど大きく強靭で魔力に満ちた魔物の素材が羽だけなはずはない。
(依頼の差し戻しで引いてくれる…ワケねぇか…精々時間稼ぎだな…)
元より格下の貴族の話など聞かないだろう。
これはいよいよ王家の権威を傘に着る必要がありそうだ。
こちらの名前を出した以上、向こうの狙いはデイビッドに絞られる事になるだろう。
正面からやり合うにしても、公爵とは言え今のルミネラにならば勝機もある。
「なぁなぁお前ぇさんが貴族ってんならよ?どっかで名前借りたりできねぇか?」
「オイ!タカるな!今まで名乗らなった理由も分かってんだろ?!そういう輩が鬱陶しかったからだよ!」
「堅ぇコト言うなよ!俺とお前ぇさんの仲だろ?」
「良いように使おうとすんじゃねぇよ!用があるなら依頼で寄越せ!!」
デイビッドの正体を知るや否やしつこく絡み付いてきたギルドマスターを振り切り、デイビッドは久々に乗合馬車でコンラッド領を後にした。
馬車の中では、乗り合わせた移民の家族がデイビッドを見るなり身を小さくして隅に寄る。
気を遣わせないよう、なるべく愛想良くしようとすると、子供が咳き込み、母親がそれを隠すように薄羽織りの下へ庇い、父親が申し訳なさそうに会釈した。
「…風邪ですか?」
「あ!イエ…生まれツキ、喉ヨワくて…タイヘンもうしワケありません!」
「お気になさらず。坊や、胸は苦しくないか?」
「うん…でもおノドがずっとイタくてカサカサするんダ…」
「良いモノやるよ。手を出してみな。」
「わ!アメダマだ!オジさんありがとう!」
「……少しは楽になると思うぞ?」
「アリガトございマス!」
「薬草の成分を入れてあるので、喉の炎症には効くはずですよ。」
やや片言の母親に代わり、今度は父親が頭を下げる。
「申し訳ありません…我々はエルムの砂漠地帯にいたのデスが、息子の身体が弱く、砂塵の少ナイこちらへ越してきたばかりで医者にも通わせてやれなくて…」
「失礼ですが、お仕事は何を?」
「コレまでは農場で子飼いの畑仕事をしておりましたが、こちらへ来てからは日雇いの荷運びなどを…」
「お住まいは壁沿いの居住区ですか?」
「はい、先日一区画空いたので、そこへ移るところです。」
「もし、ご迷惑でなければこちらへ声を掛けてみて下さい。農作業のご経験があるなら、郊外の菜園で人手が足りなくて募っているので、よろしければ…」
デイビッドはポケットから出したメモ紙に、簡単な地図と菜園の名前を記して渡した。
「そんな…行きずりの移民にナゼここまで…」
「なぁに、こう見えて商人なもので、空いている手があれば声を掛けるのがクセなんですよ。」
郊外の市場の前で親子と別れ、また屋台の間をぶらぶらしていると、また毛色の変わった商品が多く入っていることに気が付き、足が勝手に向いて行く。
すると露天の中に一際違和感を感じる店を見つけた。
(ずいぶん粗悪な焼き物だな…なのにこの絵柄はなかなか人を惹きつけるモノがある…)
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