11 / 411
黒豚辺境伯爵令息
栗色の髪の乙女
しおりを挟む
馬車の揺れに合わせて弾む肉の塊を、エリックは何とも言えない気持ちで眺めていた。
手紙を読んだ時よりも更に顔色を失くし、死にそうな顔をしたデイビッドが、若草色の小箱を手に乗せ、ひたすら何か喋っている。
「…まずは謝罪して…謝罪して……謝って…駄目なら…相手の要望を全て飲んで…何ができる…俺なんかに…何が……」
「デイビッド様って、恋愛問題になった瞬間、即自信失くして逃げ出しますよね。外交とか留学中は、男女問わずガンガン交流できてるのに。なんで蔑まれるのは平気で、好かれるのは駄目なんですかねぇ…聞いてます?!」
「無理だろ…所詮は豚が夢を見た所で、虚しいだけなんだよ…」
「本物の豚だって相手を見つけてるのに?!」
「それは豚同士だからだろ…俺の隣りに並んだら、どんな美女も豚と同類にされる。豚にされて喜ぶ女なんているわけないんだよ……」
僅かにデイビッドの手が震えて見えるのは、馬車の揺れのせいではない。
「豚…脱却しないんですか?」
「海で遭難して無人島で一ヶ月過ごしてもミリもへっこまかった……」
「あれは貴方の食料を見つける能力が単に高過ぎただけでは…?」
「政略結婚で致し方なく、貴族の務めとして諦めて来てくれる方が割り切れたのに…」
「貴族の結婚に愛はいらないって考え方、アレどうかと思うんですけどねぇ?!」
「嫌われるのはいい…貶されても罵られても、俺は何とも思わない…でもな…好いた振りをされるのだけは、これでも傷つくんだよ…」
金払いの良いデイビッドは、あちこち渡り歩く中で、詐欺や美人局のような相手にも何度も会ってきた。
そういった悪意や金目当ての甘い言葉には、今までも一切引っ掛かった事は無い。
ただ幼い頃、王都の貴族令嬢達にわざと気のある振りをされて、大勢の前で笑い者された記憶がトラウマらしい。
所詮は黒豚。人間と恋愛はできない。
心の奥にそう刻んでしまった故に、恋愛に関する全てを諦め、切り捨てて生きてきた。
「彼女の幸せを考えていない訳じゃない…確かに、嘘にも王族から弾劾を受けて豚に抱えられて貴族の集まる中、視線を集めちまったら…普通の貴族令嬢なら生きて行けない…責任は取ろうと思う……死ぬ以外の事なら、それこそ何でもするつもりだよ…」
せめて彼女の要望は全て叶え、二度と顔を見せるなと言われたらそうするつもりだ。
「ただ…面と向かって謝罪以外の言葉が見つからない…婚約者になれと言われて、養父が乗り気で断れずに受けて、影で悲しむ姿は絶対に見たくない!どう関わればいいのか全くわからない……」
「…友達じゃ駄目なんですか?」
「え…?」
「いきなり婚約者になれって難しいでしょう?普通は幼い頃から友人として過ごしたり、そうでなくても手紙のやり取りや、プレゼントを贈り合って、時々出掛けたりして徐々に親交を深めてお互いの気持ちを擦り合わせていくものでしょう?!」
「そうなのか?!」
「ダメだコイツ、完全に恋愛の流れがわかってねぇ…」
「今、全部口に出たよな?!」
「あのですねぇ!カップルってなにも必ず好き同士がくっつくばかりじゃないんですよ?!片方が誠意を見せて、相手が受け入れて、友愛や親愛からゆっくり育てていくものなんです!その上貴族は政略結婚も多いでしょう?例え恋愛に傾かなくても、互いを信頼し合い、親友のように付き合っている夫婦はたくさんいますよ!ってすんごい目からウロコみたいな顔しないで下さいよ!!」
「…そうか…好かれる必要は無いのか…」
「そうは言ってない!!」
「そうか…少し気持ちが楽になったよ…流石だなエリック…」
「なんであんなデカい商売担げる人が、こんな些細なことに気づかないのか不思議で仕方ありませんけどね?!」
不意に馬車が止まり、到着を知らせる御者の声がした。
「ほら!デイビッド様!行きましょう!」
エリックに急かされ、ガチガチになりながら馬車の戸を開けたデイビッドは、正面にふと人影を見つけてしまい、足を踏み外してそのまま地面に落っこちた。
「うわっ!!何やってんですか?!デイビッド様、しっかりして下さい!」
若草色の小箱がコロコロと転がって行く。
「う…すまん…」
よろよろ起き上がろうとすると、頭の上から天使のような声が降ってきた。
「お怪我はありませんか?」
さっきの人影が走って来て、転げ落ちたデイビッドを心配そうに見ている。
デイビッドが顔を上げると、栗色の髪の少女がそこに立っていた。
そして目が合うと、スッとしゃがみ込み、同じ目線でにっこり微笑んだ。
「デイビッド・デュロック伯爵令息様ですね。私、ヴィオラ・ローベルと申します!」
キラキラ光る小粒のチョコレートの様な瞳が、デイビッドを映している。
「お嬢様!まだ走ってはいけません!」
侍女が慌てて追いかけて来て、ヴィオラの身体を支えようとする。
「私は大丈夫よ。それより、お客様を早く中へご案内して。」
ヴィオラは立ち上がろうとして、草むらに小箱が落ちていることに気がついた。
「あら、これは?」
「あ………!」
細い指で小箱を拾い上げ、デイビッドの前に差し出す。
「デュロック令息様の物ですか?」
「あ…貴女に…受け取って頂きたくて!お持ちしました!!」
精一杯絞り出した一声に、ヴィオラがぽかんとした顔でデイビッドを見つめた。
「いいから早く立ち上がりなさいよ!!いつまでひっくり返ってるつもりですか?!はぁーもうっ!せっかくご令嬢の前なのに土まみれ草まみれで!!大変失礼致しました、少々お待ち下さい。仕切り直させますので…」
エリックに引き起こされ、服についた汚れを乱暴にはたき落とされると、デイビッドは改めてヴィオラに向き合った。
「大変お見苦しい所をお見せしまして…デイビッド・デュロックと申します。」
手紙を読んだ時よりも更に顔色を失くし、死にそうな顔をしたデイビッドが、若草色の小箱を手に乗せ、ひたすら何か喋っている。
「…まずは謝罪して…謝罪して……謝って…駄目なら…相手の要望を全て飲んで…何ができる…俺なんかに…何が……」
「デイビッド様って、恋愛問題になった瞬間、即自信失くして逃げ出しますよね。外交とか留学中は、男女問わずガンガン交流できてるのに。なんで蔑まれるのは平気で、好かれるのは駄目なんですかねぇ…聞いてます?!」
「無理だろ…所詮は豚が夢を見た所で、虚しいだけなんだよ…」
「本物の豚だって相手を見つけてるのに?!」
「それは豚同士だからだろ…俺の隣りに並んだら、どんな美女も豚と同類にされる。豚にされて喜ぶ女なんているわけないんだよ……」
僅かにデイビッドの手が震えて見えるのは、馬車の揺れのせいではない。
「豚…脱却しないんですか?」
「海で遭難して無人島で一ヶ月過ごしてもミリもへっこまかった……」
「あれは貴方の食料を見つける能力が単に高過ぎただけでは…?」
「政略結婚で致し方なく、貴族の務めとして諦めて来てくれる方が割り切れたのに…」
「貴族の結婚に愛はいらないって考え方、アレどうかと思うんですけどねぇ?!」
「嫌われるのはいい…貶されても罵られても、俺は何とも思わない…でもな…好いた振りをされるのだけは、これでも傷つくんだよ…」
金払いの良いデイビッドは、あちこち渡り歩く中で、詐欺や美人局のような相手にも何度も会ってきた。
そういった悪意や金目当ての甘い言葉には、今までも一切引っ掛かった事は無い。
ただ幼い頃、王都の貴族令嬢達にわざと気のある振りをされて、大勢の前で笑い者された記憶がトラウマらしい。
所詮は黒豚。人間と恋愛はできない。
心の奥にそう刻んでしまった故に、恋愛に関する全てを諦め、切り捨てて生きてきた。
「彼女の幸せを考えていない訳じゃない…確かに、嘘にも王族から弾劾を受けて豚に抱えられて貴族の集まる中、視線を集めちまったら…普通の貴族令嬢なら生きて行けない…責任は取ろうと思う……死ぬ以外の事なら、それこそ何でもするつもりだよ…」
せめて彼女の要望は全て叶え、二度と顔を見せるなと言われたらそうするつもりだ。
「ただ…面と向かって謝罪以外の言葉が見つからない…婚約者になれと言われて、養父が乗り気で断れずに受けて、影で悲しむ姿は絶対に見たくない!どう関わればいいのか全くわからない……」
「…友達じゃ駄目なんですか?」
「え…?」
「いきなり婚約者になれって難しいでしょう?普通は幼い頃から友人として過ごしたり、そうでなくても手紙のやり取りや、プレゼントを贈り合って、時々出掛けたりして徐々に親交を深めてお互いの気持ちを擦り合わせていくものでしょう?!」
「そうなのか?!」
「ダメだコイツ、完全に恋愛の流れがわかってねぇ…」
「今、全部口に出たよな?!」
「あのですねぇ!カップルってなにも必ず好き同士がくっつくばかりじゃないんですよ?!片方が誠意を見せて、相手が受け入れて、友愛や親愛からゆっくり育てていくものなんです!その上貴族は政略結婚も多いでしょう?例え恋愛に傾かなくても、互いを信頼し合い、親友のように付き合っている夫婦はたくさんいますよ!ってすんごい目からウロコみたいな顔しないで下さいよ!!」
「…そうか…好かれる必要は無いのか…」
「そうは言ってない!!」
「そうか…少し気持ちが楽になったよ…流石だなエリック…」
「なんであんなデカい商売担げる人が、こんな些細なことに気づかないのか不思議で仕方ありませんけどね?!」
不意に馬車が止まり、到着を知らせる御者の声がした。
「ほら!デイビッド様!行きましょう!」
エリックに急かされ、ガチガチになりながら馬車の戸を開けたデイビッドは、正面にふと人影を見つけてしまい、足を踏み外してそのまま地面に落っこちた。
「うわっ!!何やってんですか?!デイビッド様、しっかりして下さい!」
若草色の小箱がコロコロと転がって行く。
「う…すまん…」
よろよろ起き上がろうとすると、頭の上から天使のような声が降ってきた。
「お怪我はありませんか?」
さっきの人影が走って来て、転げ落ちたデイビッドを心配そうに見ている。
デイビッドが顔を上げると、栗色の髪の少女がそこに立っていた。
そして目が合うと、スッとしゃがみ込み、同じ目線でにっこり微笑んだ。
「デイビッド・デュロック伯爵令息様ですね。私、ヴィオラ・ローベルと申します!」
キラキラ光る小粒のチョコレートの様な瞳が、デイビッドを映している。
「お嬢様!まだ走ってはいけません!」
侍女が慌てて追いかけて来て、ヴィオラの身体を支えようとする。
「私は大丈夫よ。それより、お客様を早く中へご案内して。」
ヴィオラは立ち上がろうとして、草むらに小箱が落ちていることに気がついた。
「あら、これは?」
「あ………!」
細い指で小箱を拾い上げ、デイビッドの前に差し出す。
「デュロック令息様の物ですか?」
「あ…貴女に…受け取って頂きたくて!お持ちしました!!」
精一杯絞り出した一声に、ヴィオラがぽかんとした顔でデイビッドを見つめた。
「いいから早く立ち上がりなさいよ!!いつまでひっくり返ってるつもりですか?!はぁーもうっ!せっかくご令嬢の前なのに土まみれ草まみれで!!大変失礼致しました、少々お待ち下さい。仕切り直させますので…」
エリックに引き起こされ、服についた汚れを乱暴にはたき落とされると、デイビッドは改めてヴィオラに向き合った。
「大変お見苦しい所をお見せしまして…デイビッド・デュロックと申します。」
41
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています
鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。
伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。
愛のない契約、形式だけの夫婦生活。
それで十分だと、彼女は思っていた。
しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。
襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、
ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。
「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」
財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、
やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。
契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。
白い結婚の裏で繰り広げられる、
“ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる