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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
反省会
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妖精の箱庭の周りには、大勢の生徒や教員達が集まり、大騒ぎになっていた。
およそ半世紀ぶりに開いた異界の入口は、厳重な結界で守られ、精霊魔法の使える者達が、実力の大小にかかわらず、全員集まって中の様子を探っている。
「シェルリアーナ様とエリック先生が中へ入ったというのは本当ですか?」
「どうやら、デイビッド先生を探しに行かれたようで…」
「学園長先生は明後日までお帰りにならない…その間に道が閉じてしまえば、取り返しがつかなくなりますぞ?!」
皆が心配していると、一陣の風が吹いて、ひょっこりと3人が入り口から顔を出した。
「は?なんでもう夜?!」
「中と外では時間の流れが違いますからね。」
「帰って来られた…良かったですわぁぁ!!」
「シェルリアーナ様!ご無事で!?」
「エリック先生もデイビッド先生も…良くお戻りになられましたなぁ…肝が冷えましたぞ?!」
大勢の教員と生徒に出迎えられ、シェルリアーナは安堵からその場にしゃがみ込んでしまい、エリックも魔力を消耗してどっと疲れた顔をしている。
デイビッドだけは、何が起きているのか飲み込めず、オロオロしていた。
振り返ると、もう茂みの入り口は閉じていて、どこから入ったかなど、少しも分からなくなっている。
「え…?なんだったんだ…?」
「アンタ、妖精の森で迷子になってたんですよ…」
「いやいや、なわけないだろ?!一本道で迷子になるかよ!ちょっと昼寝してて遅くなったのは謝るけどよ…」
「はぁ?!昼寝した!?妖精に囲まれて?!それ自殺行為よ?!二度と目が覚めないか、魂を取られて何かに成り代わられてもおかしくないのよ?!これだから無知な魔力無しは厄介なのよ!!」
さっきまで口を噤むより他無く、言いたいことが言えなかったシェルリアーナとエリックは、人前でも遠慮せず、デイビッドをがんがん責めた。
「そんなにおっかない所なのか?!すげぇ良く眠れて、体が軽くなった気がしたのに…」
「それ、魂がどっか飛んでってません?よく生きて戻って来たなこの人…」
「まぁ、半日もいなけりゃ心配掛けるよな…」
「半日じゃありません。丸一日と半日です。」
「え…?」
「デイビッド様が部屋を出てから、既に1日半経ってるんです。散々探しても見つからなくて、寿命がちょっと縮みましたからね?!」
「そんなに……?」
「なにか言う事は?」
「…す…すみませんでした…」
デイビッドが大きな鳥にもらった木の実は、魔法学棟へ納められた。
赤い木の実を見せられた教員達は、先程までの緊迫した空気から一転、お祭り騒ぎとなった。
「アレって…やっぱりアレですわよね…?」
「はい。世の理の外れからもたらされる禁断の蜜実。精霊樹、またの名を世界樹の果実です。」
「どうすんのよ…1個もらっちゃったわよ…」
「僕もいくつか…すごいですね、それひとつで城が建ちますよ。」
「ホントにどうするのよ!!」
「巷に聞く、賢者の石の代用品になるそうですよ?それにすごく美味しいって話です。」
「恐ろしくて食べられないわよこんなもん!!」
その後、何をしても恐ろしいツヤツヤ真っ赤な可愛らしい木の実を、シェルリアーナは自身の持てる全ての術式を使って封印したそうだ。
その夜、デイビッドは研究室で、眉間に皺を寄せて手元を睨んでいた。
「なぁ…やっぱ、コレ…しないと駄目か…」
「はい、もちろん!ほら早く。一息にお願いします。」
ためらいがちに火を点け、口元にくわえたそれは一本の葉巻。
慣れない手付きで嫌々一息吸い込むが、すぐにむせてしまう。
「ゲホッゲホッ!ゲホッゴホッゲホッ!うえぇっ…まじぃ!ダメだ!舌がジリジリする!喉が焼けそうだ!!」
「…ったく仕方ないですねぇ…」
エリックはデイビッドの手から火の点いた葉巻を取り上げると、手慣れた仕草で指を絡ませ、平然と吸って見せた。
「葉巻の煙は吸い込むのではなく、燻らせるんですよ。口の中で煙を転がして、舌で味わうんです。って言ってる意味わかります?」
「ゲホッゲホッ知るかよ!!」
「フーーー…そういうトコはまだまだ子供ですねぇ…そろそろ悪い遊びの一つも覚えていい歳なのに。付き合う相手次第で、嗜むくらいはできないと、ねぇ?」
長い脚を組んで正面のソファに腰掛け、葉巻を燻らすエリックは、確かに様にはなっている。
「知るか!煙!ゲホッこっちに吹きかけんな!!ゲホゲホッ日頃の恨みか?!」
「違いますよ。妖精避けの葉巻なんですから、吸えないんだったら、煙くらいちゃんと浴びといて下さい。気がついたらとんでもない数連れてきちゃってまぁ、モテる男は大変ですね?!」
目の前のお騒がせ野郎を、なんとか箱庭から引っ張り出せはしたものの、背中にどっちゃり妖精が張り付いたまま離れないので、エリックは強硬手段に出た。
特別調合の妖精避けと、妖精の嫌う煙草の葉を混ぜて葉巻にし、その煙で今正に、妖精を追い払っているところだ。
本来は吸うことで効果を得るものだが、デイビッドには無理と言うことで、しかたなく…そう、しかたなくこの方法を取っている。
(子供や女性向きに、お香なんかもありますけど、この方が
確実で手っ取り早いんですよねぇ…)
かなりの数が付いて来ていたが、虫除けから逃れる羽虫のように、葉巻の煙に当たると、デイビッドの背中からポロポロ剥がれて元の住処へ帰って行く。
ソファでうずくまるデイビッドには相当きついようだが…
「うぇっ、ゲホッゲホッカハッ…ゴホッゲホゲホッ…」
「ほらほら、逃げないで!まだ背中についてますよ!」
「ゲホゲホッ!何がいるか見えねぇし…この匂いは苦手なんだよ!鼻がバカになりそうだ…」
涙目でむせこみながら妖精と一緒に苦しむデイビッドを眺めている内に、エリックはふと、ある事に気がついた。
(これだけ煙が効いてるのに、まだ妖精が諦めずにしがみついてる…あれ?これ、もしかして、仲間と思われてるのでは…?だとしたら、あれは連れて行こうとしてたんじゃなくて、一緒に帰ろうとしてたのか!なるほど……人外の思考回路ってホント謎過ぎる…。)
「ケホッ…ハァハァ…まだ終わんねぇのかよ!!いい加減、部屋ん中煙だらけだ!!」
「窓は開けてんですから、大人しくしてて下さいよ。結構しぶといんですよね、誰かさんみたいに…」
煙の中でも、必死にしがみつく何匹かがなかなか離れない。
2~3匹程度なら、放っておいてもそこまで害はないだろうが、念の為。
(そろそろいいのかも知れないけど、まぁ、今回はもう少し反省させないと…どんだけ気を揉んだ事か!それが本人に全っ然伝わってないの、やっぱ腹立つな…)
いつになく殊勝な態度のデイビッドだが、おそらく明日にはケロッと忘れる事だろう。
エリックは、今回ばかりはそれが許せない。
平素を装い葉巻を吹かしているが、本人のためといいつつ、間違いなく、半分くらい恨みも入っていそうだ。
およそ半世紀ぶりに開いた異界の入口は、厳重な結界で守られ、精霊魔法の使える者達が、実力の大小にかかわらず、全員集まって中の様子を探っている。
「シェルリアーナ様とエリック先生が中へ入ったというのは本当ですか?」
「どうやら、デイビッド先生を探しに行かれたようで…」
「学園長先生は明後日までお帰りにならない…その間に道が閉じてしまえば、取り返しがつかなくなりますぞ?!」
皆が心配していると、一陣の風が吹いて、ひょっこりと3人が入り口から顔を出した。
「は?なんでもう夜?!」
「中と外では時間の流れが違いますからね。」
「帰って来られた…良かったですわぁぁ!!」
「シェルリアーナ様!ご無事で!?」
「エリック先生もデイビッド先生も…良くお戻りになられましたなぁ…肝が冷えましたぞ?!」
大勢の教員と生徒に出迎えられ、シェルリアーナは安堵からその場にしゃがみ込んでしまい、エリックも魔力を消耗してどっと疲れた顔をしている。
デイビッドだけは、何が起きているのか飲み込めず、オロオロしていた。
振り返ると、もう茂みの入り口は閉じていて、どこから入ったかなど、少しも分からなくなっている。
「え…?なんだったんだ…?」
「アンタ、妖精の森で迷子になってたんですよ…」
「いやいや、なわけないだろ?!一本道で迷子になるかよ!ちょっと昼寝してて遅くなったのは謝るけどよ…」
「はぁ?!昼寝した!?妖精に囲まれて?!それ自殺行為よ?!二度と目が覚めないか、魂を取られて何かに成り代わられてもおかしくないのよ?!これだから無知な魔力無しは厄介なのよ!!」
さっきまで口を噤むより他無く、言いたいことが言えなかったシェルリアーナとエリックは、人前でも遠慮せず、デイビッドをがんがん責めた。
「そんなにおっかない所なのか?!すげぇ良く眠れて、体が軽くなった気がしたのに…」
「それ、魂がどっか飛んでってません?よく生きて戻って来たなこの人…」
「まぁ、半日もいなけりゃ心配掛けるよな…」
「半日じゃありません。丸一日と半日です。」
「え…?」
「デイビッド様が部屋を出てから、既に1日半経ってるんです。散々探しても見つからなくて、寿命がちょっと縮みましたからね?!」
「そんなに……?」
「なにか言う事は?」
「…す…すみませんでした…」
デイビッドが大きな鳥にもらった木の実は、魔法学棟へ納められた。
赤い木の実を見せられた教員達は、先程までの緊迫した空気から一転、お祭り騒ぎとなった。
「アレって…やっぱりアレですわよね…?」
「はい。世の理の外れからもたらされる禁断の蜜実。精霊樹、またの名を世界樹の果実です。」
「どうすんのよ…1個もらっちゃったわよ…」
「僕もいくつか…すごいですね、それひとつで城が建ちますよ。」
「ホントにどうするのよ!!」
「巷に聞く、賢者の石の代用品になるそうですよ?それにすごく美味しいって話です。」
「恐ろしくて食べられないわよこんなもん!!」
その後、何をしても恐ろしいツヤツヤ真っ赤な可愛らしい木の実を、シェルリアーナは自身の持てる全ての術式を使って封印したそうだ。
その夜、デイビッドは研究室で、眉間に皺を寄せて手元を睨んでいた。
「なぁ…やっぱ、コレ…しないと駄目か…」
「はい、もちろん!ほら早く。一息にお願いします。」
ためらいがちに火を点け、口元にくわえたそれは一本の葉巻。
慣れない手付きで嫌々一息吸い込むが、すぐにむせてしまう。
「ゲホッゲホッ!ゲホッゴホッゲホッ!うえぇっ…まじぃ!ダメだ!舌がジリジリする!喉が焼けそうだ!!」
「…ったく仕方ないですねぇ…」
エリックはデイビッドの手から火の点いた葉巻を取り上げると、手慣れた仕草で指を絡ませ、平然と吸って見せた。
「葉巻の煙は吸い込むのではなく、燻らせるんですよ。口の中で煙を転がして、舌で味わうんです。って言ってる意味わかります?」
「ゲホッゲホッ知るかよ!!」
「フーーー…そういうトコはまだまだ子供ですねぇ…そろそろ悪い遊びの一つも覚えていい歳なのに。付き合う相手次第で、嗜むくらいはできないと、ねぇ?」
長い脚を組んで正面のソファに腰掛け、葉巻を燻らすエリックは、確かに様にはなっている。
「知るか!煙!ゲホッこっちに吹きかけんな!!ゲホゲホッ日頃の恨みか?!」
「違いますよ。妖精避けの葉巻なんですから、吸えないんだったら、煙くらいちゃんと浴びといて下さい。気がついたらとんでもない数連れてきちゃってまぁ、モテる男は大変ですね?!」
目の前のお騒がせ野郎を、なんとか箱庭から引っ張り出せはしたものの、背中にどっちゃり妖精が張り付いたまま離れないので、エリックは強硬手段に出た。
特別調合の妖精避けと、妖精の嫌う煙草の葉を混ぜて葉巻にし、その煙で今正に、妖精を追い払っているところだ。
本来は吸うことで効果を得るものだが、デイビッドには無理と言うことで、しかたなく…そう、しかたなくこの方法を取っている。
(子供や女性向きに、お香なんかもありますけど、この方が
確実で手っ取り早いんですよねぇ…)
かなりの数が付いて来ていたが、虫除けから逃れる羽虫のように、葉巻の煙に当たると、デイビッドの背中からポロポロ剥がれて元の住処へ帰って行く。
ソファでうずくまるデイビッドには相当きついようだが…
「うぇっ、ゲホッゲホッカハッ…ゴホッゲホゲホッ…」
「ほらほら、逃げないで!まだ背中についてますよ!」
「ゲホゲホッ!何がいるか見えねぇし…この匂いは苦手なんだよ!鼻がバカになりそうだ…」
涙目でむせこみながら妖精と一緒に苦しむデイビッドを眺めている内に、エリックはふと、ある事に気がついた。
(これだけ煙が効いてるのに、まだ妖精が諦めずにしがみついてる…あれ?これ、もしかして、仲間と思われてるのでは…?だとしたら、あれは連れて行こうとしてたんじゃなくて、一緒に帰ろうとしてたのか!なるほど……人外の思考回路ってホント謎過ぎる…。)
「ケホッ…ハァハァ…まだ終わんねぇのかよ!!いい加減、部屋ん中煙だらけだ!!」
「窓は開けてんですから、大人しくしてて下さいよ。結構しぶといんですよね、誰かさんみたいに…」
煙の中でも、必死にしがみつく何匹かがなかなか離れない。
2~3匹程度なら、放っておいてもそこまで害はないだろうが、念の為。
(そろそろいいのかも知れないけど、まぁ、今回はもう少し反省させないと…どんだけ気を揉んだ事か!それが本人に全っ然伝わってないの、やっぱ腹立つな…)
いつになく殊勝な態度のデイビッドだが、おそらく明日にはケロッと忘れる事だろう。
エリックは、今回ばかりはそれが許せない。
平素を装い葉巻を吹かしているが、本人のためといいつつ、間違いなく、半分くらい恨みも入っていそうだ。
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
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