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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ガールズトーク
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夏休み明けて、最初のテスト期間。
ヴィオラはまだ短い学園生活の中で、早くも友人ができた。
今日から午後の空いた食堂に集まって、テストに向けて勉強会をする。
「えー!ヴィオラすごい!頭良いんだね!!」
「ううん、家庭教室の先生がすごかったのと、夏休み中講習受けてたから…」
「努力の賜物系才女か…これは手強いわね!」
「でもさぁ、今回の夜会巻きメガネの出題範囲、完全に高位貴族向けじゃん?やる意味ないよ私達…」
「数学の範囲は一学期の内容からって、広すぎよ!」
領地経営科のチェルシー。
商業科のローラとミランダ。
淑女科のアニスとソフィア。
そしてヴィオラ。
テーブルにノートと教科書を並べてやる気は満々!
ペンと紙の擦れる音だけが静かに聞こえてくる…
カリカリカリカリ…シャッ…ペラ…カリカリカリ…
「ところでさぁ。次の授業、デイビッド先生のコマ、自習になったの、なんでか知ってる?」
「え?自己都合としか聞いてないよ。」
「昨日資料運んでたら、腕に包帯巻いて歩いてんの見たのよ。」
「マジ?例のヒポグリフにでも噛まれたのかな?」
「え…心配…だね…」
「元気そうだったし大丈夫じゃない?」
「…アタシさぁ、昔飼ってた豚にデイビッドって名前つけてたから、もう名前聞くだけで豚の顔しか出て来ないんだよね。」
「本人見ても豚しか出て来ないんだから同じじゃない?」
「こないだ髪型変えたよね。」
「そこは切らないんだ?!って思った。」
「男子にからかわれてたよね。項がセクシーとか言われて。」
「めちゃキレてたよね。アタシ、その時のモノマネできるよ?!確かこうやって…『ほ~ぅ面白い冗談だ!豚に項があるたぁ初耳だなぁ?黙って話聞けアホが!!』どう?」
「似てる!!」
「ウケる!!」
「アハハハ!もう!笑わせないでよチェルシー!」
「いっつも眉間にしわ寄せててさぁ!なんであんな枯れたオッサンみたいな顔して授業するのかしらね?!あれでカイン様と同い年とか、信じられる??」
「え?本当に18なの?!嘘かと思ってた!」
「あの顔でエリック先生より年下なんだよ?!もう訳わかんないよね!?」
「あ。ねぇ、この問3の公式教えて!」
カリカリカリカリ…カリカリカリカリ…
「そういえば、ローラが前言ってた、小説の新人賞の応募ってもうしたの?」
「もちろん!一次選考、通過したよ!?」
「え?すごいね!おめでとう!」
「さすが作家志望!」
「上位5作に入ったらまとめて製本してもらえるのよ!もうすごい楽しみなの~!」
「三次選考まであるんでしょ?」
「でも手応えあったよ!」
「この子ね、エリック先生をモデルに小説書いてるのよ。」
「ちょっとミラ!いいじゃないカッコイイんだから!」
「どんなお話なの…?」
「んーとね、ドラゴンの呪いを受けて竜人になった孤高の剣士と、その従者になった主人公の禁断のラブロマンス。私達下宿先が同室だから毎晩読まされてたのよ。」
「まさかのそっち?!」
「別にいいでしょ?!テーマが「今までになかったラブロマンス」だったんだもの!」
「そこそこ読めたし、面白かったわよ?ただ、剣士のやり取りに、ちょいちょいデイビッド先生っぽさ出すのはどうかと思ったわ…」
「うわぁ…」
「仕方ないでしょ?!あの2人いつもセットでいるんだから!イメージしやすかったの!!」
「もうドラゴンじゃなくて豚の呪いでいいんじゃない?」
「もうっ!やめてよぉ!!」
「ねぇ誰かぁ、帝国語の文法教えてぇ~!」
カリカリカリカリ…シャッ…カリカリカリカリ…
「呪いって言えばさぁ…デイビッド先生の研究室に行くと呪われるってホント?」
「あ!それ!!実は私、一度呪われた事があるの…」
「ステラが?何があったの?」
「夏休み前にうっかり研究室訪ねたら、焼きたてのデニッシュくれてさ…もうそこからデニッシュの事しか考えらんなくなって、しばらくどこ行ってもデニッシュ食べてた…でもあの日食べたデニッシュには出会えなくて!!気づいたら前ボタンひとつずらすことになってた!」
「私はお姉ちゃんが3年にいるんだけど、2人でわかんないとこ聞きに行ったらプリン出されてさ…それからお姉ちゃん…毎日プリン買いに行ってて…そしたらスカートやばくなったって…」
「なにそれ…怖い。そうやって仲間増やそうとしてんのかな…」
「あ、政治のプリント持ってる人いない?見せてー。」
カリカリカリカリカリカリカリカリ…
「話変わるけど、最近テレンス先輩見かけなくない?あの長い睫毛、目の保養にしてたのに。」
「ちょっとローラ!知らないの?アイツ、夏休み中にヴィオラの恋人名乗ろうとして消されたんだって!」
「なにそれ!消されたって誰に?」
「知らないけど、ヴィオラも迷惑してたでしょ?変な噂流されそうになったりしてさ、大丈夫だった?」
「あ、うん…近くに来ないならそれでいいかな…って」
「甘いわねぇ!次顔見たら蹴飛ばしてやんなさいよ!!」
「ふふ…同じこと言われたわ。」
「誰に?」
「淑女科の先輩。すごく心配してくれたの。」
「テレンス先輩なんだけど…夏休み半ばくらいに、血相変えて馬車で帰るとこ見ちゃったのよねアタシ。丁度親がうるさいから寮に帰ってきたとこで。馬車から降りたら、大慌てで何かから逃げるみたいに先輩が走って来てさ「急げ、早くしないとアイツに捕まる」って言いながら帰ってったのよ。」
「怖ーい!それもうホラーじゃない!」
「天罰よ。女の子ホイホイ引っ掛けてプレイボーイ気取ってるから!」
「この歴史の文章問題って答えなんだっけ?!」
カリカリカリカリ…ペラ…カリカリカリ
「…ねぇ、ヴィオラ…私、貴女にひとつ聞きたいことがあるんだけど、いいかな…」
「どうしたの?アニス。深刻な顔して…」
「あのさ……ヴィオラの婚約者がデイビッド先生って…本当…?」
「「「えええええっ???」」」
「え…えへへ…まだあんまり公言はできないんだけど…ほ…ホントだよ…」
「ウソ…」
「そんなことある??」
「ごめん…アタシ、結構酷い事言っちゃった…」
「ううん、いつも自分で言ってるし、気にしないと思う。」
「…そう言えば…ヴィオラ、夏休み中にオシャレしてたでしょ?あの時、何色の服にも必ず黒のポイントが入ってたじゃない?きっと黒髪か黒い瞳の素敵な人が婚約者なんだろうなって、ずっと思ってたのよ…確かに色々黒いわ!!」
「よく見てるね。」
「じゃ、じゃあその指輪、もしかして!!?」
「う…うん…婚約指輪…えへへ…」
「うっわ!!待って待って!頭がキャパオーバー!!」
「すごいキレイ…見た事ない宝石ね…コレ店なんかじゃ絶対売ってないヤツ!!」
「想像つかない…どうやって選んだんだろ…」
「でも…なんだろう…すごく大事にされてる感は伝わるわ…」
「「「それよ!!」」」
「あ、ありがとう…」
「さ!気持ち切り替えて勉強するわよ!!」
カリカリカリカリカリカリカリ…
「ねぇねぇところでさぁ……」
ーーーーーーー
女子達の後ろでは、男子達も勉強していた。
「女の子たち、デイビッド先生の話しテた?なんて言ってたか聞き取れなかったンだけど。クレイグ君わかった?」
「ノール…世の中知らない方が良いこともあるんだよ…」
明日はテスト。
学生達に幸あれ。
ヴィオラはまだ短い学園生活の中で、早くも友人ができた。
今日から午後の空いた食堂に集まって、テストに向けて勉強会をする。
「えー!ヴィオラすごい!頭良いんだね!!」
「ううん、家庭教室の先生がすごかったのと、夏休み中講習受けてたから…」
「努力の賜物系才女か…これは手強いわね!」
「でもさぁ、今回の夜会巻きメガネの出題範囲、完全に高位貴族向けじゃん?やる意味ないよ私達…」
「数学の範囲は一学期の内容からって、広すぎよ!」
領地経営科のチェルシー。
商業科のローラとミランダ。
淑女科のアニスとソフィア。
そしてヴィオラ。
テーブルにノートと教科書を並べてやる気は満々!
ペンと紙の擦れる音だけが静かに聞こえてくる…
カリカリカリカリ…シャッ…ペラ…カリカリカリ…
「ところでさぁ。次の授業、デイビッド先生のコマ、自習になったの、なんでか知ってる?」
「え?自己都合としか聞いてないよ。」
「昨日資料運んでたら、腕に包帯巻いて歩いてんの見たのよ。」
「マジ?例のヒポグリフにでも噛まれたのかな?」
「え…心配…だね…」
「元気そうだったし大丈夫じゃない?」
「…アタシさぁ、昔飼ってた豚にデイビッドって名前つけてたから、もう名前聞くだけで豚の顔しか出て来ないんだよね。」
「本人見ても豚しか出て来ないんだから同じじゃない?」
「こないだ髪型変えたよね。」
「そこは切らないんだ?!って思った。」
「男子にからかわれてたよね。項がセクシーとか言われて。」
「めちゃキレてたよね。アタシ、その時のモノマネできるよ?!確かこうやって…『ほ~ぅ面白い冗談だ!豚に項があるたぁ初耳だなぁ?黙って話聞けアホが!!』どう?」
「似てる!!」
「ウケる!!」
「アハハハ!もう!笑わせないでよチェルシー!」
「いっつも眉間にしわ寄せててさぁ!なんであんな枯れたオッサンみたいな顔して授業するのかしらね?!あれでカイン様と同い年とか、信じられる??」
「え?本当に18なの?!嘘かと思ってた!」
「あの顔でエリック先生より年下なんだよ?!もう訳わかんないよね!?」
「あ。ねぇ、この問3の公式教えて!」
カリカリカリカリ…カリカリカリカリ…
「そういえば、ローラが前言ってた、小説の新人賞の応募ってもうしたの?」
「もちろん!一次選考、通過したよ!?」
「え?すごいね!おめでとう!」
「さすが作家志望!」
「上位5作に入ったらまとめて製本してもらえるのよ!もうすごい楽しみなの~!」
「三次選考まであるんでしょ?」
「でも手応えあったよ!」
「この子ね、エリック先生をモデルに小説書いてるのよ。」
「ちょっとミラ!いいじゃないカッコイイんだから!」
「どんなお話なの…?」
「んーとね、ドラゴンの呪いを受けて竜人になった孤高の剣士と、その従者になった主人公の禁断のラブロマンス。私達下宿先が同室だから毎晩読まされてたのよ。」
「まさかのそっち?!」
「別にいいでしょ?!テーマが「今までになかったラブロマンス」だったんだもの!」
「そこそこ読めたし、面白かったわよ?ただ、剣士のやり取りに、ちょいちょいデイビッド先生っぽさ出すのはどうかと思ったわ…」
「うわぁ…」
「仕方ないでしょ?!あの2人いつもセットでいるんだから!イメージしやすかったの!!」
「もうドラゴンじゃなくて豚の呪いでいいんじゃない?」
「もうっ!やめてよぉ!!」
「ねぇ誰かぁ、帝国語の文法教えてぇ~!」
カリカリカリカリ…シャッ…カリカリカリカリ…
「呪いって言えばさぁ…デイビッド先生の研究室に行くと呪われるってホント?」
「あ!それ!!実は私、一度呪われた事があるの…」
「ステラが?何があったの?」
「夏休み前にうっかり研究室訪ねたら、焼きたてのデニッシュくれてさ…もうそこからデニッシュの事しか考えらんなくなって、しばらくどこ行ってもデニッシュ食べてた…でもあの日食べたデニッシュには出会えなくて!!気づいたら前ボタンひとつずらすことになってた!」
「私はお姉ちゃんが3年にいるんだけど、2人でわかんないとこ聞きに行ったらプリン出されてさ…それからお姉ちゃん…毎日プリン買いに行ってて…そしたらスカートやばくなったって…」
「なにそれ…怖い。そうやって仲間増やそうとしてんのかな…」
「あ、政治のプリント持ってる人いない?見せてー。」
カリカリカリカリカリカリカリカリ…
「話変わるけど、最近テレンス先輩見かけなくない?あの長い睫毛、目の保養にしてたのに。」
「ちょっとローラ!知らないの?アイツ、夏休み中にヴィオラの恋人名乗ろうとして消されたんだって!」
「なにそれ!消されたって誰に?」
「知らないけど、ヴィオラも迷惑してたでしょ?変な噂流されそうになったりしてさ、大丈夫だった?」
「あ、うん…近くに来ないならそれでいいかな…って」
「甘いわねぇ!次顔見たら蹴飛ばしてやんなさいよ!!」
「ふふ…同じこと言われたわ。」
「誰に?」
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「怖ーい!それもうホラーじゃない!」
「天罰よ。女の子ホイホイ引っ掛けてプレイボーイ気取ってるから!」
「この歴史の文章問題って答えなんだっけ?!」
カリカリカリカリ…ペラ…カリカリカリ
「…ねぇ、ヴィオラ…私、貴女にひとつ聞きたいことがあるんだけど、いいかな…」
「どうしたの?アニス。深刻な顔して…」
「あのさ……ヴィオラの婚約者がデイビッド先生って…本当…?」
「「「えええええっ???」」」
「え…えへへ…まだあんまり公言はできないんだけど…ほ…ホントだよ…」
「ウソ…」
「そんなことある??」
「ごめん…アタシ、結構酷い事言っちゃった…」
「ううん、いつも自分で言ってるし、気にしないと思う。」
「…そう言えば…ヴィオラ、夏休み中にオシャレしてたでしょ?あの時、何色の服にも必ず黒のポイントが入ってたじゃない?きっと黒髪か黒い瞳の素敵な人が婚約者なんだろうなって、ずっと思ってたのよ…確かに色々黒いわ!!」
「よく見てるね。」
「じゃ、じゃあその指輪、もしかして!!?」
「う…うん…婚約指輪…えへへ…」
「うっわ!!待って待って!頭がキャパオーバー!!」
「すごいキレイ…見た事ない宝石ね…コレ店なんかじゃ絶対売ってないヤツ!!」
「想像つかない…どうやって選んだんだろ…」
「でも…なんだろう…すごく大事にされてる感は伝わるわ…」
「「「それよ!!」」」
「あ、ありがとう…」
「さ!気持ち切り替えて勉強するわよ!!」
カリカリカリカリカリカリカリ…
「ねぇねぇところでさぁ……」
ーーーーーーー
女子達の後ろでは、男子達も勉強していた。
「女の子たち、デイビッド先生の話しテた?なんて言ってたか聞き取れなかったンだけど。クレイグ君わかった?」
「ノール…世の中知らない方が良いこともあるんだよ…」
明日はテスト。
学生達に幸あれ。
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