121 / 411
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ノエルパーティー
しおりを挟む
赤い房飾りの金のバッヂは、アリスティアが特別に作ってくれた物。
何かあった時に役に立てて欲しいと、害虫避けにヴィオラに贈ったらしい。
アリスティアの見越した通り、早速素晴らしい効果を発揮した訳だ。
青い廊下側はやはり居心地は良くない。
ヴィオラを毛嫌いする者も居れば、デイビッドを嫌悪する者も大勢居る。
それでも、折れないヴィオラの強かさに感心していると、本棚の影で袖を軽くを引かれた。
(来てくれて嬉しかった…助けてくれてありがとうございます。)
伏せ目がちにそう言って、ヴィオラはさっと図書室の奥へ行ってしまう。
「あはは~。撃退したの僕なのに~!?」
「お前、ちょっと引っ込んどけ…」
魔法植物についての論文や資料を探し、魔法薬についても少し本を集めていると、どこかから視線を感じて顔を上げる。
誰かは分からないが敵意は無く、時々感じる謎の違和感。
気にしないようにして本を借り、図書室を後にすると、エリックが追いかけて来た。
「いやー!聞いて下さいよ!あのメルヘン聖女様、既にご自分の信奉者と教会関係者集めて派閥作ってました。あんな性悪でも顔が良いとコロッと行く男の多い事ったら。大丈夫ですかねこの国の次世代!」
「下世話でイキイキすんな!!」
エリックは相変わらずどこで何をしようとブレない。
それが逆に不安を煽る。
いよいよ明後日はノエルパーティー。
デイビッド達教員は授業が終わるってからも忙しく、部屋に戻る暇すら無かった。
鍵はいつでも開けてあるからと言われ、ヴィオラは1人研究室の戸を開けた。
いつも必ず誰か居るはずの研究室はしんと静まり返り、部屋の中に座っていると不思議な気持ちになって来る。
いつもデイビッドが立っているオーブンの前には、使い込まれた鍋と良く研がれたナイフがキレイに収まっている。
ヴィオラは何気なく足元の野菜かごを覗き込んだ。
玉ねぎ、ニンジン、じゃが芋に、キャベツとカボチャと大小のトマト。
(シチューなら作れるかも知れない!)
ヴィオラはデイビッドのマネをしてエプロンをかけると、張り切ってオーブンに火を入れた。
まずは材料の皮を剥き、鍋に入れていく。
何度もナイフが滑り、皮も分厚く細切れになってしまうが、懸命に手を動かした。
(じゃが芋は芽と青い所を切って…ニンジンは撫でるように皮を削いで…)
ひとつひとつ手順を思い出し、野菜を切り終えたら冷蔵庫にあったパンチェッタを切って香草と一緒に鍋に加え火にかける。
肉と根菜に火が通ったら、火を弱くして隣のフライパンにバターを溶かし、一度火から下ろしたら小麦粉を少しずつ加えて滑らかになるまで馴染ませ、そこへ牛乳を注ぐ。
ゆっくり火に当てながら絶え間なく混ぜていると、底の方からとろみがついて来るので塩と砂糖で味を整えたら鍋に移し、良く煮込む。
(味がもう少し欲しい…そうだ、あの瓶!)
デイビッドが夏から色々試行錯誤していた調味料。
ところが、上の棚に置かれた瓶に手を伸ばし、背伸びをしたら手が滑って瓶が落ちてしまった。
「あっ!落ちちゃう!」
「おっと!」
瓶を受け止めようと後ろに仰け反ると、ヴィオラより先にデイビッドの手が瓶を捕まえ、後ろに倒れそうになったヴィオラを体ごと支える。
「わぁ!デイビッド様!」
「これ使うのか?」
「か、勝手にごめんなさい…」
「いいや、後ろから見てたよ。一生懸命作ってるとこ。」
「内緒で作って驚かせようと思って…」
「充分驚いたし、嬉しかった。幸せ過ぎてどうにかなりそうだ。」
いつもとは逆の立ち位置にドキドキしたヴィオラが何か言おうとした時、更に後ろから声がした。
「じゃぁもう少し幸せそうにしたらどうですか?!」
「全然表情に出ないからつまらないわ!」
「お前等が居なかったらな!!」
エリックとシェルリアーナが当然のように部屋にいて、ヴィオラの言葉も引っ込んでしまう。
鍋の味を整え、仕上げに胡椒を挽いたら、ホワイトシチューの完成。
「できました!」
今朝焼いたパンを添えてテーブルに運び、切ったトマトを並べてヴィオラお手製の夕飯の出来上がり。
「美味しいですね。旨味もたっぷりで優しい味がします」
「すごいわヴィオラ!魔法を使うよりずっと素晴らしいことよ?!」
「食うのが早いっつの!なんで人に給仕させて座ってんだ!!」
「う~ん…デイビッド様が作った方がずっと美味しいです…」
「プロの味は流石に再現できませんよ。」
「そうよ。料理人になるワケじゃないんだから、家庭の味だっていいじゃない?」
「なぁ、俺の立場足元から崩そうとしてないか?」
ヴィオラの作った初めてのシチューは好評で、デイビッドが2杯目を食べようとする前に残る事なく鍋はカラになった。
「嘘だろ…?」
「たくさん作ったつもりだったのに、もうなくなっちゃいましたね。」
「ご馳走様!とても美味しかったわ!ついついたくさん食べてしまったの!」
「僕も何度もおかわりしちゃいました!また作って下さいね!」
「いや、嘘だろ?!」
その後はすっかり暗くなったので、シェルリアーナとヴィオラを送りがてら学舎の中を見回り、居残りの生徒がいないか声をかけて回った。
寮の門限はとっくに過ぎていたが、ノエルの前に時間に忠実な生徒も少ない事は寮母も承知で、2人はお咎めもなく無事自室に帰ることができた。
「明日かぁ…」
「ついに明日ですねぇ。」
明日は朝から馬車の迎えが来て、寮生達を乗せて礼拝堂へ向かう手筈になっている。
その前に着替えと化粧とヘアセットを学園が特別に雇ったプロが手掛けてくれるらしい。
デイビッドの元へはウイニー・メイから男性用の衣装が届いたが、今まで着たこともないような凝った意匠にげんなりしてしまう。
「裏方って伝えたはずなんだけどなぁ…」
「いいじゃないですか。ついでに僕のまで用意してもらっちゃってありがたいです!」
何を着てもモデル並みに似合うエリックの隣に並ぶと、更に自信がなくなって気持ちが卑屈になっていく。
エリックは明日の支度を終えるとすぐに眠ってしまった。
その様子を見て、夜中にデイビッドが部屋をそっと出た事には気が付かないまま…
「本当にびっくりしたんですからね?!また逃げ出したのかとか、どっかに連れ去られたのかとか、色々考えちゃって朝ご飯半分も食べられませんでしたよ?!」
「半分は食ってんじゃねぇかよ!?」
「どこ行ってたんですかもーっ!」
「温室にちょっと用があって行ってただけだって!」
「じゃあなんで部屋にいなかったんですか?!」
「…温室で寝てた…」
「もーーーっ!!」
朝早くデイビッドがいないことに気が付き、気が気ではなかったエリックは、デイビッドが戻るなり大騒ぎした。
更に困ったことに、急いで身支度を整えさせ、鏡の前に立たせてはみたが、いまひとつパーティーの雰囲気が出ない。
「ダメだ…どう整えても裏社会の関係者みたいになってしまう…」
「もうなんとでも言え!」
教員用の乗り合い馬車は生徒達の後に出発する。
馬車停めには既にたくさんのドレス姿の令嬢と、エスコートの男性達が集まっていた。
その中からきつい視線がいくつかこちらに向いているのがわかる。
学園の中にいると忘れがちになるが、デイビッドは王都中の貴族から嫌われ、笑い者にされている存在だ。
今日の会場は、正しく敵陣のど真ん中。
気を引き締めないといけない。
何かあった時に役に立てて欲しいと、害虫避けにヴィオラに贈ったらしい。
アリスティアの見越した通り、早速素晴らしい効果を発揮した訳だ。
青い廊下側はやはり居心地は良くない。
ヴィオラを毛嫌いする者も居れば、デイビッドを嫌悪する者も大勢居る。
それでも、折れないヴィオラの強かさに感心していると、本棚の影で袖を軽くを引かれた。
(来てくれて嬉しかった…助けてくれてありがとうございます。)
伏せ目がちにそう言って、ヴィオラはさっと図書室の奥へ行ってしまう。
「あはは~。撃退したの僕なのに~!?」
「お前、ちょっと引っ込んどけ…」
魔法植物についての論文や資料を探し、魔法薬についても少し本を集めていると、どこかから視線を感じて顔を上げる。
誰かは分からないが敵意は無く、時々感じる謎の違和感。
気にしないようにして本を借り、図書室を後にすると、エリックが追いかけて来た。
「いやー!聞いて下さいよ!あのメルヘン聖女様、既にご自分の信奉者と教会関係者集めて派閥作ってました。あんな性悪でも顔が良いとコロッと行く男の多い事ったら。大丈夫ですかねこの国の次世代!」
「下世話でイキイキすんな!!」
エリックは相変わらずどこで何をしようとブレない。
それが逆に不安を煽る。
いよいよ明後日はノエルパーティー。
デイビッド達教員は授業が終わるってからも忙しく、部屋に戻る暇すら無かった。
鍵はいつでも開けてあるからと言われ、ヴィオラは1人研究室の戸を開けた。
いつも必ず誰か居るはずの研究室はしんと静まり返り、部屋の中に座っていると不思議な気持ちになって来る。
いつもデイビッドが立っているオーブンの前には、使い込まれた鍋と良く研がれたナイフがキレイに収まっている。
ヴィオラは何気なく足元の野菜かごを覗き込んだ。
玉ねぎ、ニンジン、じゃが芋に、キャベツとカボチャと大小のトマト。
(シチューなら作れるかも知れない!)
ヴィオラはデイビッドのマネをしてエプロンをかけると、張り切ってオーブンに火を入れた。
まずは材料の皮を剥き、鍋に入れていく。
何度もナイフが滑り、皮も分厚く細切れになってしまうが、懸命に手を動かした。
(じゃが芋は芽と青い所を切って…ニンジンは撫でるように皮を削いで…)
ひとつひとつ手順を思い出し、野菜を切り終えたら冷蔵庫にあったパンチェッタを切って香草と一緒に鍋に加え火にかける。
肉と根菜に火が通ったら、火を弱くして隣のフライパンにバターを溶かし、一度火から下ろしたら小麦粉を少しずつ加えて滑らかになるまで馴染ませ、そこへ牛乳を注ぐ。
ゆっくり火に当てながら絶え間なく混ぜていると、底の方からとろみがついて来るので塩と砂糖で味を整えたら鍋に移し、良く煮込む。
(味がもう少し欲しい…そうだ、あの瓶!)
デイビッドが夏から色々試行錯誤していた調味料。
ところが、上の棚に置かれた瓶に手を伸ばし、背伸びをしたら手が滑って瓶が落ちてしまった。
「あっ!落ちちゃう!」
「おっと!」
瓶を受け止めようと後ろに仰け反ると、ヴィオラより先にデイビッドの手が瓶を捕まえ、後ろに倒れそうになったヴィオラを体ごと支える。
「わぁ!デイビッド様!」
「これ使うのか?」
「か、勝手にごめんなさい…」
「いいや、後ろから見てたよ。一生懸命作ってるとこ。」
「内緒で作って驚かせようと思って…」
「充分驚いたし、嬉しかった。幸せ過ぎてどうにかなりそうだ。」
いつもとは逆の立ち位置にドキドキしたヴィオラが何か言おうとした時、更に後ろから声がした。
「じゃぁもう少し幸せそうにしたらどうですか?!」
「全然表情に出ないからつまらないわ!」
「お前等が居なかったらな!!」
エリックとシェルリアーナが当然のように部屋にいて、ヴィオラの言葉も引っ込んでしまう。
鍋の味を整え、仕上げに胡椒を挽いたら、ホワイトシチューの完成。
「できました!」
今朝焼いたパンを添えてテーブルに運び、切ったトマトを並べてヴィオラお手製の夕飯の出来上がり。
「美味しいですね。旨味もたっぷりで優しい味がします」
「すごいわヴィオラ!魔法を使うよりずっと素晴らしいことよ?!」
「食うのが早いっつの!なんで人に給仕させて座ってんだ!!」
「う~ん…デイビッド様が作った方がずっと美味しいです…」
「プロの味は流石に再現できませんよ。」
「そうよ。料理人になるワケじゃないんだから、家庭の味だっていいじゃない?」
「なぁ、俺の立場足元から崩そうとしてないか?」
ヴィオラの作った初めてのシチューは好評で、デイビッドが2杯目を食べようとする前に残る事なく鍋はカラになった。
「嘘だろ…?」
「たくさん作ったつもりだったのに、もうなくなっちゃいましたね。」
「ご馳走様!とても美味しかったわ!ついついたくさん食べてしまったの!」
「僕も何度もおかわりしちゃいました!また作って下さいね!」
「いや、嘘だろ?!」
その後はすっかり暗くなったので、シェルリアーナとヴィオラを送りがてら学舎の中を見回り、居残りの生徒がいないか声をかけて回った。
寮の門限はとっくに過ぎていたが、ノエルの前に時間に忠実な生徒も少ない事は寮母も承知で、2人はお咎めもなく無事自室に帰ることができた。
「明日かぁ…」
「ついに明日ですねぇ。」
明日は朝から馬車の迎えが来て、寮生達を乗せて礼拝堂へ向かう手筈になっている。
その前に着替えと化粧とヘアセットを学園が特別に雇ったプロが手掛けてくれるらしい。
デイビッドの元へはウイニー・メイから男性用の衣装が届いたが、今まで着たこともないような凝った意匠にげんなりしてしまう。
「裏方って伝えたはずなんだけどなぁ…」
「いいじゃないですか。ついでに僕のまで用意してもらっちゃってありがたいです!」
何を着てもモデル並みに似合うエリックの隣に並ぶと、更に自信がなくなって気持ちが卑屈になっていく。
エリックは明日の支度を終えるとすぐに眠ってしまった。
その様子を見て、夜中にデイビッドが部屋をそっと出た事には気が付かないまま…
「本当にびっくりしたんですからね?!また逃げ出したのかとか、どっかに連れ去られたのかとか、色々考えちゃって朝ご飯半分も食べられませんでしたよ?!」
「半分は食ってんじゃねぇかよ!?」
「どこ行ってたんですかもーっ!」
「温室にちょっと用があって行ってただけだって!」
「じゃあなんで部屋にいなかったんですか?!」
「…温室で寝てた…」
「もーーーっ!!」
朝早くデイビッドがいないことに気が付き、気が気ではなかったエリックは、デイビッドが戻るなり大騒ぎした。
更に困ったことに、急いで身支度を整えさせ、鏡の前に立たせてはみたが、いまひとつパーティーの雰囲気が出ない。
「ダメだ…どう整えても裏社会の関係者みたいになってしまう…」
「もうなんとでも言え!」
教員用の乗り合い馬車は生徒達の後に出発する。
馬車停めには既にたくさんのドレス姿の令嬢と、エスコートの男性達が集まっていた。
その中からきつい視線がいくつかこちらに向いているのがわかる。
学園の中にいると忘れがちになるが、デイビッドは王都中の貴族から嫌われ、笑い者にされている存在だ。
今日の会場は、正しく敵陣のど真ん中。
気を引き締めないといけない。
47
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています
鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。
伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。
愛のない契約、形式だけの夫婦生活。
それで十分だと、彼女は思っていた。
しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。
襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、
ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。
「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」
財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、
やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。
契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。
白い結婚の裏で繰り広げられる、
“ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる