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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
転移術
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先に到着していた教員の先導で、生徒達は次々と礼拝堂へ入って行く。
まずは家族連れのある者、次にパートナーのいない生徒達、最後に婚約者や特定の相手を連れた生徒が厳かな回廊を進み、煌めくホールへと案内される。
デイビッドは最後尾組で、演奏者達の楽器や衣装の搬入が終わった通路の前で待機する係。
会場内は良く見えないし、人もあまり来ないので気は楽だが退屈ではある。
開会前の学園長の話が始まり、乾杯のグラスが配られると、デイビッドの元へも給仕がトレイを差し出して来た。
フルートグラスの中で淡い金色の泡がパチパチ弾けている。
澄んだガラスのぶつかる音がして、皆がグラスを空ける中、デイビッドは自分のグラスを凝視していた。
その頃ヴィオラは、シェルリアーナのエスコートでダンス組の中で待機していた。
雪の妖精のドレスは注目の的となり、騎士姿のシェルリアーナの隣で本物のお姫様のような扱いを受けている。
「やぁ!これは素敵な組み合わせですね!?皆の視線総取り間違いなしですよ?!」
「ありがとうございますエリック先生。」
「ダンスを楽しみにしていてくれたまえ!きっと上位に入ってみせよう!ところで…」
騎士になりきっていたシェルリアーナが素に戻りエリックを呼び寄せる。
(アレは何してますの?)
(あれ…?)
(ほら、アレ…グラス片手にかれこれ5分以上あのまま動きませんのよ?)
シェルリアーナの指差す方には、グラスを持ったまま硬直しているデイビッドの姿があった。
(…ホントだ。何してんでしょうね?お酒でも配られたのかな?)
(確かに。今日は大人用にお酒も出てますわ。間違って渡されて困ってるのかしら?)
(ちょっと声掛けてきますね。)
エリックは壁沿いで微動だにしないデイビッドの元へ近づいて行った。
「デイビッド様、どうしました?」
「お、エリック!丁度良かった、なんか一服盛られたみたいだからどうなるかお前飲んでみろよ。」
「100%間違った侍従の使い方しないで!!」
デイビッドはエリックを見るなり真顔でグラスを差し出して来た。
「死にゃしないと思うぞ?大変な事にはなりそうだけど。」
「毒って分かっててなんで飲ませる方向に持ってくんですか!?一服盛られた?誰に?何のために?!」
「そこなんだよなぁ…」
フルートグラスをクルクル回しながら、デイビッドは少し前のことを思い出していた。
グラスを満たすシャンパンとは違う香り。
ベルガモット、レモングラス、メリッサ、僅かにバニラとジャスミン。
あの日、生徒会室の前で嗅いだ謎の香りの正体。
資料を読んでいる時に気がついて驚いた。
これらのハーブはドライアドの花の香りを人工的に再現する時に使われる材料だ。
つまり、本物の香りをごまかす時にも使えるレシピ。
その証拠に、全ての香りの奥に、間違えようのないドライアドの花の香りが潜んでいる。
様々な事態に備えようと、昨夜リディアの花蜜を夜中に口にしておいた事で最悪の事態を免れた。
「チートアイテムが役に立った…ヘタしたら飲んでたかもな。いやぁ危ねぇ危ねぇ!」
「で?それ何の毒が入ってるんですか?」
「たぶんだが…媚薬だな。」
「…サイテーですね…」
ベルダが言っていた禁忌のレシピ。
ドライアドの花は、酒精に漬けると強力な媚薬になる。
「さーてどうしたもんか…」
「そうだ!シモンズ先生の所に行きましょ!?あの人王宮では解毒が専門でしたから、詳しいはずですよ?!」
「よし行ってみるか!」
2人は盛り上がる会場を離れ、階段奥の医療室へ向った。
「ハーハッハッハッ!!ドライアドの媚薬だって?!良く気がついたもんだ!しかし悪趣味なもん持ち込まれたな。お前さん命拾いしたね、自分の鼻に感謝しな!?」
「楽しそうにすんなよな…」
「あの~飲んだらどうなるんですか…?」
「そうだね、簡単に言えばぶっ壊れちまうのさ。」
理性を失い幻覚や幻聴と共に天上の夢を見られるらしい。
その代償に、人としての尊厳と持ち得る全ての地位と信頼を失うのだろうが。
王宮でもやはり何度か持ち込まれ、実際被害者も出たことがあるという。
「王弟が盛られた時は、お相手が死にかけた。先代は8人相手にして朝まで元気だったなぁ。」
「笑いながら話す内容じゃねぇよ!」
「考えただけでゾッとしますね…ホントに良く気が付きましたねそんなおっかないの!!」
「ドライアドは解毒ができないから、自然に抜けるのを待つしかない。他に被害者が居ないか心配だ…どれ、中身がどの程度か見てみよう。これに移しな。」
シモンズが机にシリンダを出し、デイビッドがグラスの中身を注ぐ。
そしてグラスが空になった瞬間、手元から金色の魔法陣が展開され、デイビッドと覗き込んでいたエリックの姿が歪み、光の中に吸い込まれるように消えて行った。
残ったのは床に落ちて粉々に砕けたグラスだけ。
「なるほど転移…そうきたか。こりゃ手の込んだ嫌がらせだねぇ…」
シモンズはそう呟くと白衣を脱ぎ、医務室を助手達に任せて何処かへ出ていった。
「うわぁっ!!」
いきなり宙に放り出されたかと思ったら、背中から軟らかい所に落ち、エリックが目を開けると知らないベッドの上だった。
「ここは一体…あれ?デイビッド様?しまった何処か別の場所に…」
「ぐぇっ…」
慌ててベッドから降りようとすると、足元に何かグニャっとした物を踏んだので、見てみると床にデイビッドが倒れていた。
「良かった!そんな所にいたんですね!」
「なんで1回立ってみた!!」
なかなか起き上がらないデイビッドの顔を見ると真っ青になっている。
「あ!そうか、転移ってものすごい高濃度の魔力の渦の中を通って来るようなもんだから!」
「シェーカーに放り込まれてがっつりシェークされたみてぇ…」
魔力抵抗が無いとこういう所で誠に不便だ。
おまけに1人用の転移陣に2人詰め込んで入ってしまったので、軸がズレたのかデイビッドが落ちたのは床の方。
なんとか吐き気と戦いながらズルズル起き上がり、辺りを見渡すと、そこは何処か知らない部屋の中だった。
「ここはなんでしょうね。」
「いわゆる監禁部屋ってヤツだな。」
部屋は一面壁でドアはなく、窓も天井近くにはめ込まれた明かり取りがあるばかり。
あるのはベッド、机と椅子に聖書が一冊、奥に用を足す為の簡易の便器と、棚に空の銀製の水差しとカップがひとつ。
デイビッドはよろけながら背中を壁に当て、部屋を一周回った。
「何してるんですか?」
「死角の無いとこ探してる…この辺か…?」
腰板の装飾に、どこから出したのかナイフを差し込み、力を入れると一部がズレて隙間ができた。
手を差し込み力をかけると、石の擦れる音がして壁が開く。
「すごい!良くわかりましたね!?」
「古い建物で貴族の集まる所には結構残ってる事が多いんだ。監禁部屋と、その監視部屋だな。」
壁の中の部屋に明かりはなく、エリックが魔導式のランプを見つけて灯すと、監禁用の部屋よりは狭いが人が生活できる部屋が現れた。
「こっちには水道もコンロも食器も揃ってますね。」
「向こうは罪人の自害防止も含めて、見てくれは豪華だが監獄と変わらないからな。」
しかしその先は魔法壁で閉ざされていて、解除方法がわからず結局行き止まりだった。
恐らく記号的な魔力を注がないと出られない仕組みなのだろう。
これには流石のエリックもお手上げだ。
まずは家族連れのある者、次にパートナーのいない生徒達、最後に婚約者や特定の相手を連れた生徒が厳かな回廊を進み、煌めくホールへと案内される。
デイビッドは最後尾組で、演奏者達の楽器や衣装の搬入が終わった通路の前で待機する係。
会場内は良く見えないし、人もあまり来ないので気は楽だが退屈ではある。
開会前の学園長の話が始まり、乾杯のグラスが配られると、デイビッドの元へも給仕がトレイを差し出して来た。
フルートグラスの中で淡い金色の泡がパチパチ弾けている。
澄んだガラスのぶつかる音がして、皆がグラスを空ける中、デイビッドは自分のグラスを凝視していた。
その頃ヴィオラは、シェルリアーナのエスコートでダンス組の中で待機していた。
雪の妖精のドレスは注目の的となり、騎士姿のシェルリアーナの隣で本物のお姫様のような扱いを受けている。
「やぁ!これは素敵な組み合わせですね!?皆の視線総取り間違いなしですよ?!」
「ありがとうございますエリック先生。」
「ダンスを楽しみにしていてくれたまえ!きっと上位に入ってみせよう!ところで…」
騎士になりきっていたシェルリアーナが素に戻りエリックを呼び寄せる。
(アレは何してますの?)
(あれ…?)
(ほら、アレ…グラス片手にかれこれ5分以上あのまま動きませんのよ?)
シェルリアーナの指差す方には、グラスを持ったまま硬直しているデイビッドの姿があった。
(…ホントだ。何してんでしょうね?お酒でも配られたのかな?)
(確かに。今日は大人用にお酒も出てますわ。間違って渡されて困ってるのかしら?)
(ちょっと声掛けてきますね。)
エリックは壁沿いで微動だにしないデイビッドの元へ近づいて行った。
「デイビッド様、どうしました?」
「お、エリック!丁度良かった、なんか一服盛られたみたいだからどうなるかお前飲んでみろよ。」
「100%間違った侍従の使い方しないで!!」
デイビッドはエリックを見るなり真顔でグラスを差し出して来た。
「死にゃしないと思うぞ?大変な事にはなりそうだけど。」
「毒って分かっててなんで飲ませる方向に持ってくんですか!?一服盛られた?誰に?何のために?!」
「そこなんだよなぁ…」
フルートグラスをクルクル回しながら、デイビッドは少し前のことを思い出していた。
グラスを満たすシャンパンとは違う香り。
ベルガモット、レモングラス、メリッサ、僅かにバニラとジャスミン。
あの日、生徒会室の前で嗅いだ謎の香りの正体。
資料を読んでいる時に気がついて驚いた。
これらのハーブはドライアドの花の香りを人工的に再現する時に使われる材料だ。
つまり、本物の香りをごまかす時にも使えるレシピ。
その証拠に、全ての香りの奥に、間違えようのないドライアドの花の香りが潜んでいる。
様々な事態に備えようと、昨夜リディアの花蜜を夜中に口にしておいた事で最悪の事態を免れた。
「チートアイテムが役に立った…ヘタしたら飲んでたかもな。いやぁ危ねぇ危ねぇ!」
「で?それ何の毒が入ってるんですか?」
「たぶんだが…媚薬だな。」
「…サイテーですね…」
ベルダが言っていた禁忌のレシピ。
ドライアドの花は、酒精に漬けると強力な媚薬になる。
「さーてどうしたもんか…」
「そうだ!シモンズ先生の所に行きましょ!?あの人王宮では解毒が専門でしたから、詳しいはずですよ?!」
「よし行ってみるか!」
2人は盛り上がる会場を離れ、階段奥の医療室へ向った。
「ハーハッハッハッ!!ドライアドの媚薬だって?!良く気がついたもんだ!しかし悪趣味なもん持ち込まれたな。お前さん命拾いしたね、自分の鼻に感謝しな!?」
「楽しそうにすんなよな…」
「あの~飲んだらどうなるんですか…?」
「そうだね、簡単に言えばぶっ壊れちまうのさ。」
理性を失い幻覚や幻聴と共に天上の夢を見られるらしい。
その代償に、人としての尊厳と持ち得る全ての地位と信頼を失うのだろうが。
王宮でもやはり何度か持ち込まれ、実際被害者も出たことがあるという。
「王弟が盛られた時は、お相手が死にかけた。先代は8人相手にして朝まで元気だったなぁ。」
「笑いながら話す内容じゃねぇよ!」
「考えただけでゾッとしますね…ホントに良く気が付きましたねそんなおっかないの!!」
「ドライアドは解毒ができないから、自然に抜けるのを待つしかない。他に被害者が居ないか心配だ…どれ、中身がどの程度か見てみよう。これに移しな。」
シモンズが机にシリンダを出し、デイビッドがグラスの中身を注ぐ。
そしてグラスが空になった瞬間、手元から金色の魔法陣が展開され、デイビッドと覗き込んでいたエリックの姿が歪み、光の中に吸い込まれるように消えて行った。
残ったのは床に落ちて粉々に砕けたグラスだけ。
「なるほど転移…そうきたか。こりゃ手の込んだ嫌がらせだねぇ…」
シモンズはそう呟くと白衣を脱ぎ、医務室を助手達に任せて何処かへ出ていった。
「うわぁっ!!」
いきなり宙に放り出されたかと思ったら、背中から軟らかい所に落ち、エリックが目を開けると知らないベッドの上だった。
「ここは一体…あれ?デイビッド様?しまった何処か別の場所に…」
「ぐぇっ…」
慌ててベッドから降りようとすると、足元に何かグニャっとした物を踏んだので、見てみると床にデイビッドが倒れていた。
「良かった!そんな所にいたんですね!」
「なんで1回立ってみた!!」
なかなか起き上がらないデイビッドの顔を見ると真っ青になっている。
「あ!そうか、転移ってものすごい高濃度の魔力の渦の中を通って来るようなもんだから!」
「シェーカーに放り込まれてがっつりシェークされたみてぇ…」
魔力抵抗が無いとこういう所で誠に不便だ。
おまけに1人用の転移陣に2人詰め込んで入ってしまったので、軸がズレたのかデイビッドが落ちたのは床の方。
なんとか吐き気と戦いながらズルズル起き上がり、辺りを見渡すと、そこは何処か知らない部屋の中だった。
「ここはなんでしょうね。」
「いわゆる監禁部屋ってヤツだな。」
部屋は一面壁でドアはなく、窓も天井近くにはめ込まれた明かり取りがあるばかり。
あるのはベッド、机と椅子に聖書が一冊、奥に用を足す為の簡易の便器と、棚に空の銀製の水差しとカップがひとつ。
デイビッドはよろけながら背中を壁に当て、部屋を一周回った。
「何してるんですか?」
「死角の無いとこ探してる…この辺か…?」
腰板の装飾に、どこから出したのかナイフを差し込み、力を入れると一部がズレて隙間ができた。
手を差し込み力をかけると、石の擦れる音がして壁が開く。
「すごい!良くわかりましたね!?」
「古い建物で貴族の集まる所には結構残ってる事が多いんだ。監禁部屋と、その監視部屋だな。」
壁の中の部屋に明かりはなく、エリックが魔導式のランプを見つけて灯すと、監禁用の部屋よりは狭いが人が生活できる部屋が現れた。
「こっちには水道もコンロも食器も揃ってますね。」
「向こうは罪人の自害防止も含めて、見てくれは豪華だが監獄と変わらないからな。」
しかしその先は魔法壁で閉ざされていて、解除方法がわからず結局行き止まりだった。
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