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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ショットカード
デイビッドはポケットから小さな懐中時計を取り出し、テーブルの上に置いた。
「こんな物どうするんです?」
「シェルの小型記録装置だよ。魔力無しでも使えるよう改良したら、この大きさになったってんで時計にしてみた。」
「この大きさでも充分小さいですよ。」
「これで“身の潔白”ってのが証明できるだろ?」
壁を閉じると、腰板の隙間から向こうが見える仕掛けになっている。
さて、次は何が始まるだろうか。
「その内人が入ってきて「きゃー助けてー!」って展開になるんでしょうね。」
「最終的に騎士とかが乗り込んで来てしょっ引かれるまでが舞台だな。それまで出られねぇのか、暇だなぁ…」
「あ!デイビッド様、トランプ見つけました!ゲームしましょうよ!!」
「呑気だなぁお前は…」
「何しよう。そうだショット!ショットカードしましょうよ!!」
ショットカードとは、数秒で勝敗が決る簡単なゲームを繰り返し、勝った方が負けた方に質問をする遊戯だ。
聞かれた事には正直に答えなければならないというルールで、酒の席などで良く行われる暴露ゲーム。
どうしても答えたくない時には、代わりにワンショット酒を飲んでパスする。
「何が悲しくてお前とショットカードしなきゃなんねぇんだよ…」
「お酒は無いからパス無しで!」
「ただの尋問じゃねぇか。」
手札は3枚、同時にカードを1枚出し、それぞれの山場から引いた数を足して数が大きい方の勝ち。負けたら相手の山場から1枚引く。同点ならもう1枚引いて数を足す。手持ちが無くなったら山場からまた3枚引く。これを繰り返し、先にカードが無くなった方が勝ちとなる。
「じゃあいきますよ!はいショット!僕の勝ち!それじゃぁ…デイビッドはなんで最初国を出ようと思ったの?」
「いきなり砕けたな。」
「こういうのは雰囲気が大事なんですよ!ほら答えて!?」
「大した理由はねぇけど…単純に嫌気が差したんだな。こっちじゃガキの頃から嫌われてたし、居場所ねぇんじゃ外出るかって感じだった。」
「またショット!うーん、学校とかは行かなかったんですか?」
「数ヶ月アカデミーに通わされてた。で、おかしくなったんで退学してそっから行ってない。」
「ショット、おかしくなったって…?」
「飯が食えなくなって死にかけた。水も受け付けなくなって吐く騒ぎでな、なのにこれっぽっちも痩せねぇから医者が首傾げてたってよ。」
「ショット…なにかの病気で…?!」
「いや?食ったら豚になると真剣に思い込んでただけらしい。今思えばどんだけ馬鹿なガキだったかって話だ」
「ショット…それいくつの時…」
「こっち来てすぐだから…6つだな。」
「ショット!楽しい話しよう!最初の留学先はアデラでしょ?どうだった初めての南国は!?」
「貧富の差が凄すぎて衝撃受けた!アデラも当時まだそこまで発展してなくて、スラムの方が広いくらいでな。初めて行き倒れに遭遇して、市井の現実見せられてショックでまたしばらく食えなくなったりして大変だった。」
「全っ然楽しくないっ!!ショット!そう言えば行方不明になって何年も帰って来なかったなんて話聞いたけど、あれどこまでホントなの?」
「だいたい全部?1度目の時はアデラの王宮から抜け出して、2年くらいスラムで仲間作って井戸掘ったり商売したりしてたんだ。見つかってエラい怒られた。」
「テメェの謎行動力と家出癖の根源はそこかぁっ!!2年てどんだけ周りに迷惑かけたら気が済むんだこのガキは!?」
「今すごい素が出たなぁ…」
頭を抱えるエリックが、なんだか不憫に見えてくる。
「お、ショット。やっと勝てた。けど…質問?んーと…エリックはなんで家に来たんだ?」
「父親から逃げるためだよ。母の元婚家はハルフェン侯爵家で精霊魔法の血統…でもなかなか僕の能力が発現しないから見限られて離婚。で、捨てられた直後に精霊が見えるようになって慌てて頼ったのがデュロック伯爵だったって訳。」
「へぇー……」
「どーでもよさげっ!!」
その後もしばらくゲームは続き、デイビッドはほとんど勝つことなくエリックの勝利で終わった。
「つ…疲れた…」
「ショットの度に叫んでるからだろ?」
「いや、叫ばされてんですって…この短時間で心臓が冷え切りましたよ、どんだけハードな人生送ってんですか?!絶対ループ3回目とかでしょ!?」
「何の話してんだお前?ところで…やけに静かだな。向こうはもっと人が来るのかと思った。」
「ああ、来てますよ?女の子が4人くらい泣いてますね。うるさいから隠蔽かけてんですよ。」
エリックによると、既に部屋の中には次々と若い女性達が送り込まれているそうだ。
転移で落とされたり、入り口が開いて放り込まれたり、逃げ場も無く隅に固まって怯えているらしい。
「放っといていいのか?」
「巻き込まれたくないんで。ただでさえ腸煮えくり返ってる所に余計な面倒持ち込まれたくないんです。どの道いつか救出役が来るんですから、全部終わったら出て行けばいいんですよ。」
バラけたカードを整えると、エリックはもう一度カードを配り始めた。
「まだすんのかよ。」
「当たり前でしょ?向こうが終わらないんだから。」
ノエルパーティーの裏側で、監禁された2人が悠長にカードをしている頃、会場の片隅でも別の騒ぎが起こっていた。
ヴィオラとシェルリアーナのダンスは、特に女性からの人気が凄まじく、演出で妖精に貴公子が騎士の誓いを立てる場面では黄色い歓声が止まなかった。
会場の誰も、ヴィオラがあの夜会で罵倒された少女だとは気付いていないようだ。
拍手に包まれて、2人は控え室へ下がった。
「大成功よヴィオラ!皆があなたを見ていたわ!!」
「そんなことありません!シェル先輩こそ本当にお綺麗でかっこ良くて本物の王子様みたいでした!」
「そろそろ着替えないと…その前にお母様達に挨拶して来ないとだわ…ごめんなさい、少し外すわね。」
「私なら大丈夫です!先に衣装室へ行ってますね!?」
ヴィオラが人混みから離れ衣装室へ向かおうとした時、誰かに後ろから呼び止められた。
「ミス・ヴィオラ!!」
「え?テ…テレンス先輩…?!」
振り向くと、息を切らせてテレンスが走り寄って来る。
「あ、あの…何の御用ですか?!」
「ミス・ヴィオラ、今すぐここを離れて!アイツ等が君を探している!急いで人の居る方へ逃げるんだ!さもないとどんな目に遭わされるか分からない!」
「何を言ってるんですか?!逃げるって…?」
「デイビッド先生が居なくなった。たぶん何処かに連れて行かれたんだと思う。君も狙われている!早く人目のある方に…」
ヴィオラが戸惑っていますいると、テレンスの後ろからもう1人誰かがこちらへやって来るのが見えた。
助かったと思ったのも束の間、テレンスがヴィオラを背中にかばうように身構えた。
「何をしているテレンス。女は見つかったようだな。早く連れて来い。」
「レオニードさん…待って下さい、この子は…」
「奴の婚約者なら仕上げに丁度いいだろう。どうした?さっさと捕えろ!」
ヴィオラはデイビッドの身に何かが起こったことを悟った。
咄嗟に指輪に魔力を流そうとした瞬間、テレンスがレオニードに向かって掴みかかって行った。
「今の内に早く逃げろ!!」
「テレンス、裏切る気か?!」
「僕は生徒会の一員だ!生徒を守る義務がある!!」
しかし、激しい閃光と共にテレンスは弾かれ、床に倒れてしまった。
「こんな物どうするんです?」
「シェルの小型記録装置だよ。魔力無しでも使えるよう改良したら、この大きさになったってんで時計にしてみた。」
「この大きさでも充分小さいですよ。」
「これで“身の潔白”ってのが証明できるだろ?」
壁を閉じると、腰板の隙間から向こうが見える仕掛けになっている。
さて、次は何が始まるだろうか。
「その内人が入ってきて「きゃー助けてー!」って展開になるんでしょうね。」
「最終的に騎士とかが乗り込んで来てしょっ引かれるまでが舞台だな。それまで出られねぇのか、暇だなぁ…」
「あ!デイビッド様、トランプ見つけました!ゲームしましょうよ!!」
「呑気だなぁお前は…」
「何しよう。そうだショット!ショットカードしましょうよ!!」
ショットカードとは、数秒で勝敗が決る簡単なゲームを繰り返し、勝った方が負けた方に質問をする遊戯だ。
聞かれた事には正直に答えなければならないというルールで、酒の席などで良く行われる暴露ゲーム。
どうしても答えたくない時には、代わりにワンショット酒を飲んでパスする。
「何が悲しくてお前とショットカードしなきゃなんねぇんだよ…」
「お酒は無いからパス無しで!」
「ただの尋問じゃねぇか。」
手札は3枚、同時にカードを1枚出し、それぞれの山場から引いた数を足して数が大きい方の勝ち。負けたら相手の山場から1枚引く。同点ならもう1枚引いて数を足す。手持ちが無くなったら山場からまた3枚引く。これを繰り返し、先にカードが無くなった方が勝ちとなる。
「じゃあいきますよ!はいショット!僕の勝ち!それじゃぁ…デイビッドはなんで最初国を出ようと思ったの?」
「いきなり砕けたな。」
「こういうのは雰囲気が大事なんですよ!ほら答えて!?」
「大した理由はねぇけど…単純に嫌気が差したんだな。こっちじゃガキの頃から嫌われてたし、居場所ねぇんじゃ外出るかって感じだった。」
「またショット!うーん、学校とかは行かなかったんですか?」
「数ヶ月アカデミーに通わされてた。で、おかしくなったんで退学してそっから行ってない。」
「ショット、おかしくなったって…?」
「飯が食えなくなって死にかけた。水も受け付けなくなって吐く騒ぎでな、なのにこれっぽっちも痩せねぇから医者が首傾げてたってよ。」
「ショット…なにかの病気で…?!」
「いや?食ったら豚になると真剣に思い込んでただけらしい。今思えばどんだけ馬鹿なガキだったかって話だ」
「ショット…それいくつの時…」
「こっち来てすぐだから…6つだな。」
「ショット!楽しい話しよう!最初の留学先はアデラでしょ?どうだった初めての南国は!?」
「貧富の差が凄すぎて衝撃受けた!アデラも当時まだそこまで発展してなくて、スラムの方が広いくらいでな。初めて行き倒れに遭遇して、市井の現実見せられてショックでまたしばらく食えなくなったりして大変だった。」
「全っ然楽しくないっ!!ショット!そう言えば行方不明になって何年も帰って来なかったなんて話聞いたけど、あれどこまでホントなの?」
「だいたい全部?1度目の時はアデラの王宮から抜け出して、2年くらいスラムで仲間作って井戸掘ったり商売したりしてたんだ。見つかってエラい怒られた。」
「テメェの謎行動力と家出癖の根源はそこかぁっ!!2年てどんだけ周りに迷惑かけたら気が済むんだこのガキは!?」
「今すごい素が出たなぁ…」
頭を抱えるエリックが、なんだか不憫に見えてくる。
「お、ショット。やっと勝てた。けど…質問?んーと…エリックはなんで家に来たんだ?」
「父親から逃げるためだよ。母の元婚家はハルフェン侯爵家で精霊魔法の血統…でもなかなか僕の能力が発現しないから見限られて離婚。で、捨てられた直後に精霊が見えるようになって慌てて頼ったのがデュロック伯爵だったって訳。」
「へぇー……」
「どーでもよさげっ!!」
その後もしばらくゲームは続き、デイビッドはほとんど勝つことなくエリックの勝利で終わった。
「つ…疲れた…」
「ショットの度に叫んでるからだろ?」
「いや、叫ばされてんですって…この短時間で心臓が冷え切りましたよ、どんだけハードな人生送ってんですか?!絶対ループ3回目とかでしょ!?」
「何の話してんだお前?ところで…やけに静かだな。向こうはもっと人が来るのかと思った。」
「ああ、来てますよ?女の子が4人くらい泣いてますね。うるさいから隠蔽かけてんですよ。」
エリックによると、既に部屋の中には次々と若い女性達が送り込まれているそうだ。
転移で落とされたり、入り口が開いて放り込まれたり、逃げ場も無く隅に固まって怯えているらしい。
「放っといていいのか?」
「巻き込まれたくないんで。ただでさえ腸煮えくり返ってる所に余計な面倒持ち込まれたくないんです。どの道いつか救出役が来るんですから、全部終わったら出て行けばいいんですよ。」
バラけたカードを整えると、エリックはもう一度カードを配り始めた。
「まだすんのかよ。」
「当たり前でしょ?向こうが終わらないんだから。」
ノエルパーティーの裏側で、監禁された2人が悠長にカードをしている頃、会場の片隅でも別の騒ぎが起こっていた。
ヴィオラとシェルリアーナのダンスは、特に女性からの人気が凄まじく、演出で妖精に貴公子が騎士の誓いを立てる場面では黄色い歓声が止まなかった。
会場の誰も、ヴィオラがあの夜会で罵倒された少女だとは気付いていないようだ。
拍手に包まれて、2人は控え室へ下がった。
「大成功よヴィオラ!皆があなたを見ていたわ!!」
「そんなことありません!シェル先輩こそ本当にお綺麗でかっこ良くて本物の王子様みたいでした!」
「そろそろ着替えないと…その前にお母様達に挨拶して来ないとだわ…ごめんなさい、少し外すわね。」
「私なら大丈夫です!先に衣装室へ行ってますね!?」
ヴィオラが人混みから離れ衣装室へ向かおうとした時、誰かに後ろから呼び止められた。
「ミス・ヴィオラ!!」
「え?テ…テレンス先輩…?!」
振り向くと、息を切らせてテレンスが走り寄って来る。
「あ、あの…何の御用ですか?!」
「ミス・ヴィオラ、今すぐここを離れて!アイツ等が君を探している!急いで人の居る方へ逃げるんだ!さもないとどんな目に遭わされるか分からない!」
「何を言ってるんですか?!逃げるって…?」
「デイビッド先生が居なくなった。たぶん何処かに連れて行かれたんだと思う。君も狙われている!早く人目のある方に…」
ヴィオラが戸惑っていますいると、テレンスの後ろからもう1人誰かがこちらへやって来るのが見えた。
助かったと思ったのも束の間、テレンスがヴィオラを背中にかばうように身構えた。
「何をしているテレンス。女は見つかったようだな。早く連れて来い。」
「レオニードさん…待って下さい、この子は…」
「奴の婚約者なら仕上げに丁度いいだろう。どうした?さっさと捕えろ!」
ヴィオラはデイビッドの身に何かが起こったことを悟った。
咄嗟に指輪に魔力を流そうとした瞬間、テレンスがレオニードに向かって掴みかかって行った。
「今の内に早く逃げろ!!」
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カクヨムで公開したものに手を入れたものです。