123 / 411
黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活
ショットカード
しおりを挟む
デイビッドはポケットから小さな懐中時計を取り出し、テーブルの上に置いた。
「こんな物どうするんです?」
「シェルの小型記録装置だよ。魔力無しでも使えるよう改良したら、この大きさになったってんで時計にしてみた。」
「この大きさでも充分小さいですよ。」
「これで“身の潔白”ってのが証明できるだろ?」
壁を閉じると、腰板の隙間から向こうが見える仕掛けになっている。
さて、次は何が始まるだろうか。
「その内人が入ってきて「きゃー助けてー!」って展開になるんでしょうね。」
「最終的に騎士とかが乗り込んで来てしょっ引かれるまでが舞台だな。それまで出られねぇのか、暇だなぁ…」
「あ!デイビッド様、トランプ見つけました!ゲームしましょうよ!!」
「呑気だなぁお前は…」
「何しよう。そうだショット!ショットカードしましょうよ!!」
ショットカードとは、数秒で勝敗が決る簡単なゲームを繰り返し、勝った方が負けた方に質問をする遊戯だ。
聞かれた事には正直に答えなければならないというルールで、酒の席などで良く行われる暴露ゲーム。
どうしても答えたくない時には、代わりにワンショット酒を飲んでパスする。
「何が悲しくてお前とショットカードしなきゃなんねぇんだよ…」
「お酒は無いからパス無しで!」
「ただの尋問じゃねぇか。」
手札は3枚、同時にカードを1枚出し、それぞれの山場から引いた数を足して数が大きい方の勝ち。負けたら相手の山場から1枚引く。同点ならもう1枚引いて数を足す。手持ちが無くなったら山場からまた3枚引く。これを繰り返し、先にカードが無くなった方が勝ちとなる。
「じゃあいきますよ!はいショット!僕の勝ち!それじゃぁ…デイビッドはなんで最初国を出ようと思ったの?」
「いきなり砕けたな。」
「こういうのは雰囲気が大事なんですよ!ほら答えて!?」
「大した理由はねぇけど…単純に嫌気が差したんだな。こっちじゃガキの頃から嫌われてたし、居場所ねぇんじゃ外出るかって感じだった。」
「またショット!うーん、学校とかは行かなかったんですか?」
「数ヶ月アカデミーに通わされてた。で、おかしくなったんで退学してそっから行ってない。」
「ショット、おかしくなったって…?」
「飯が食えなくなって死にかけた。水も受け付けなくなって吐く騒ぎでな、なのにこれっぽっちも痩せねぇから医者が首傾げてたってよ。」
「ショット…なにかの病気で…?!」
「いや?食ったら豚になると真剣に思い込んでただけらしい。今思えばどんだけ馬鹿なガキだったかって話だ」
「ショット…それいくつの時…」
「こっち来てすぐだから…6つだな。」
「ショット!楽しい話しよう!最初の留学先はアデラでしょ?どうだった初めての南国は!?」
「貧富の差が凄すぎて衝撃受けた!アデラも当時まだそこまで発展してなくて、スラムの方が広いくらいでな。初めて行き倒れに遭遇して、市井の現実見せられてショックでまたしばらく食えなくなったりして大変だった。」
「全っ然楽しくないっ!!ショット!そう言えば行方不明になって何年も帰って来なかったなんて話聞いたけど、あれどこまでホントなの?」
「だいたい全部?1度目の時はアデラの王宮から抜け出して、2年くらいスラムで仲間作って井戸掘ったり商売したりしてたんだ。見つかってエラい怒られた。」
「テメェの謎行動力と家出癖の根源はそこかぁっ!!2年てどんだけ周りに迷惑かけたら気が済むんだこのガキは!?」
「今すごい素が出たなぁ…」
頭を抱えるエリックが、なんだか不憫に見えてくる。
「お、ショット。やっと勝てた。けど…質問?んーと…エリックはなんで家に来たんだ?」
「父親から逃げるためだよ。母の元婚家はハルフェン侯爵家で精霊魔法の血統…でもなかなか僕の能力が発現しないから見限られて離婚。で、捨てられた直後に精霊が見えるようになって慌てて頼ったのがデュロック伯爵だったって訳。」
「へぇー……」
「どーでもよさげっ!!」
その後もしばらくゲームは続き、デイビッドはほとんど勝つことなくエリックの勝利で終わった。
「つ…疲れた…」
「ショットの度に叫んでるからだろ?」
「いや、叫ばされてんですって…この短時間で心臓が冷え切りましたよ、どんだけハードな人生送ってんですか?!絶対ループ3回目とかでしょ!?」
「何の話してんだお前?ところで…やけに静かだな。向こうはもっと人が来るのかと思った。」
「ああ、来てますよ?女の子が4人くらい泣いてますね。うるさいから隠蔽かけてんですよ。」
エリックによると、既に部屋の中には次々と若い女性達が送り込まれているそうだ。
転移で落とされたり、入り口が開いて放り込まれたり、逃げ場も無く隅に固まって怯えているらしい。
「放っといていいのか?」
「巻き込まれたくないんで。ただでさえ腸煮えくり返ってる所に余計な面倒持ち込まれたくないんです。どの道いつか救出役が来るんですから、全部終わったら出て行けばいいんですよ。」
バラけたカードを整えると、エリックはもう一度カードを配り始めた。
「まだすんのかよ。」
「当たり前でしょ?向こうが終わらないんだから。」
ノエルパーティーの裏側で、監禁された2人が悠長にカードをしている頃、会場の片隅でも別の騒ぎが起こっていた。
ヴィオラとシェルリアーナのダンスは、特に女性からの人気が凄まじく、演出で妖精に貴公子が騎士の誓いを立てる場面では黄色い歓声が止まなかった。
会場の誰も、ヴィオラがあの夜会で罵倒された少女だとは気付いていないようだ。
拍手に包まれて、2人は控え室へ下がった。
「大成功よヴィオラ!皆があなたを見ていたわ!!」
「そんなことありません!シェル先輩こそ本当にお綺麗でかっこ良くて本物の王子様みたいでした!」
「そろそろ着替えないと…その前にお母様達に挨拶して来ないとだわ…ごめんなさい、少し外すわね。」
「私なら大丈夫です!先に衣装室へ行ってますね!?」
ヴィオラが人混みから離れ衣装室へ向かおうとした時、誰かに後ろから呼び止められた。
「ミス・ヴィオラ!!」
「え?テ…テレンス先輩…?!」
振り向くと、息を切らせてテレンスが走り寄って来る。
「あ、あの…何の御用ですか?!」
「ミス・ヴィオラ、今すぐここを離れて!アイツ等が君を探している!急いで人の居る方へ逃げるんだ!さもないとどんな目に遭わされるか分からない!」
「何を言ってるんですか?!逃げるって…?」
「デイビッド先生が居なくなった。たぶん何処かに連れて行かれたんだと思う。君も狙われている!早く人目のある方に…」
ヴィオラが戸惑っていますいると、テレンスの後ろからもう1人誰かがこちらへやって来るのが見えた。
助かったと思ったのも束の間、テレンスがヴィオラを背中にかばうように身構えた。
「何をしているテレンス。女は見つかったようだな。早く連れて来い。」
「レオニードさん…待って下さい、この子は…」
「奴の婚約者なら仕上げに丁度いいだろう。どうした?さっさと捕えろ!」
ヴィオラはデイビッドの身に何かが起こったことを悟った。
咄嗟に指輪に魔力を流そうとした瞬間、テレンスがレオニードに向かって掴みかかって行った。
「今の内に早く逃げろ!!」
「テレンス、裏切る気か?!」
「僕は生徒会の一員だ!生徒を守る義務がある!!」
しかし、激しい閃光と共にテレンスは弾かれ、床に倒れてしまった。
「こんな物どうするんです?」
「シェルの小型記録装置だよ。魔力無しでも使えるよう改良したら、この大きさになったってんで時計にしてみた。」
「この大きさでも充分小さいですよ。」
「これで“身の潔白”ってのが証明できるだろ?」
壁を閉じると、腰板の隙間から向こうが見える仕掛けになっている。
さて、次は何が始まるだろうか。
「その内人が入ってきて「きゃー助けてー!」って展開になるんでしょうね。」
「最終的に騎士とかが乗り込んで来てしょっ引かれるまでが舞台だな。それまで出られねぇのか、暇だなぁ…」
「あ!デイビッド様、トランプ見つけました!ゲームしましょうよ!!」
「呑気だなぁお前は…」
「何しよう。そうだショット!ショットカードしましょうよ!!」
ショットカードとは、数秒で勝敗が決る簡単なゲームを繰り返し、勝った方が負けた方に質問をする遊戯だ。
聞かれた事には正直に答えなければならないというルールで、酒の席などで良く行われる暴露ゲーム。
どうしても答えたくない時には、代わりにワンショット酒を飲んでパスする。
「何が悲しくてお前とショットカードしなきゃなんねぇんだよ…」
「お酒は無いからパス無しで!」
「ただの尋問じゃねぇか。」
手札は3枚、同時にカードを1枚出し、それぞれの山場から引いた数を足して数が大きい方の勝ち。負けたら相手の山場から1枚引く。同点ならもう1枚引いて数を足す。手持ちが無くなったら山場からまた3枚引く。これを繰り返し、先にカードが無くなった方が勝ちとなる。
「じゃあいきますよ!はいショット!僕の勝ち!それじゃぁ…デイビッドはなんで最初国を出ようと思ったの?」
「いきなり砕けたな。」
「こういうのは雰囲気が大事なんですよ!ほら答えて!?」
「大した理由はねぇけど…単純に嫌気が差したんだな。こっちじゃガキの頃から嫌われてたし、居場所ねぇんじゃ外出るかって感じだった。」
「またショット!うーん、学校とかは行かなかったんですか?」
「数ヶ月アカデミーに通わされてた。で、おかしくなったんで退学してそっから行ってない。」
「ショット、おかしくなったって…?」
「飯が食えなくなって死にかけた。水も受け付けなくなって吐く騒ぎでな、なのにこれっぽっちも痩せねぇから医者が首傾げてたってよ。」
「ショット…なにかの病気で…?!」
「いや?食ったら豚になると真剣に思い込んでただけらしい。今思えばどんだけ馬鹿なガキだったかって話だ」
「ショット…それいくつの時…」
「こっち来てすぐだから…6つだな。」
「ショット!楽しい話しよう!最初の留学先はアデラでしょ?どうだった初めての南国は!?」
「貧富の差が凄すぎて衝撃受けた!アデラも当時まだそこまで発展してなくて、スラムの方が広いくらいでな。初めて行き倒れに遭遇して、市井の現実見せられてショックでまたしばらく食えなくなったりして大変だった。」
「全っ然楽しくないっ!!ショット!そう言えば行方不明になって何年も帰って来なかったなんて話聞いたけど、あれどこまでホントなの?」
「だいたい全部?1度目の時はアデラの王宮から抜け出して、2年くらいスラムで仲間作って井戸掘ったり商売したりしてたんだ。見つかってエラい怒られた。」
「テメェの謎行動力と家出癖の根源はそこかぁっ!!2年てどんだけ周りに迷惑かけたら気が済むんだこのガキは!?」
「今すごい素が出たなぁ…」
頭を抱えるエリックが、なんだか不憫に見えてくる。
「お、ショット。やっと勝てた。けど…質問?んーと…エリックはなんで家に来たんだ?」
「父親から逃げるためだよ。母の元婚家はハルフェン侯爵家で精霊魔法の血統…でもなかなか僕の能力が発現しないから見限られて離婚。で、捨てられた直後に精霊が見えるようになって慌てて頼ったのがデュロック伯爵だったって訳。」
「へぇー……」
「どーでもよさげっ!!」
その後もしばらくゲームは続き、デイビッドはほとんど勝つことなくエリックの勝利で終わった。
「つ…疲れた…」
「ショットの度に叫んでるからだろ?」
「いや、叫ばされてんですって…この短時間で心臓が冷え切りましたよ、どんだけハードな人生送ってんですか?!絶対ループ3回目とかでしょ!?」
「何の話してんだお前?ところで…やけに静かだな。向こうはもっと人が来るのかと思った。」
「ああ、来てますよ?女の子が4人くらい泣いてますね。うるさいから隠蔽かけてんですよ。」
エリックによると、既に部屋の中には次々と若い女性達が送り込まれているそうだ。
転移で落とされたり、入り口が開いて放り込まれたり、逃げ場も無く隅に固まって怯えているらしい。
「放っといていいのか?」
「巻き込まれたくないんで。ただでさえ腸煮えくり返ってる所に余計な面倒持ち込まれたくないんです。どの道いつか救出役が来るんですから、全部終わったら出て行けばいいんですよ。」
バラけたカードを整えると、エリックはもう一度カードを配り始めた。
「まだすんのかよ。」
「当たり前でしょ?向こうが終わらないんだから。」
ノエルパーティーの裏側で、監禁された2人が悠長にカードをしている頃、会場の片隅でも別の騒ぎが起こっていた。
ヴィオラとシェルリアーナのダンスは、特に女性からの人気が凄まじく、演出で妖精に貴公子が騎士の誓いを立てる場面では黄色い歓声が止まなかった。
会場の誰も、ヴィオラがあの夜会で罵倒された少女だとは気付いていないようだ。
拍手に包まれて、2人は控え室へ下がった。
「大成功よヴィオラ!皆があなたを見ていたわ!!」
「そんなことありません!シェル先輩こそ本当にお綺麗でかっこ良くて本物の王子様みたいでした!」
「そろそろ着替えないと…その前にお母様達に挨拶して来ないとだわ…ごめんなさい、少し外すわね。」
「私なら大丈夫です!先に衣装室へ行ってますね!?」
ヴィオラが人混みから離れ衣装室へ向かおうとした時、誰かに後ろから呼び止められた。
「ミス・ヴィオラ!!」
「え?テ…テレンス先輩…?!」
振り向くと、息を切らせてテレンスが走り寄って来る。
「あ、あの…何の御用ですか?!」
「ミス・ヴィオラ、今すぐここを離れて!アイツ等が君を探している!急いで人の居る方へ逃げるんだ!さもないとどんな目に遭わされるか分からない!」
「何を言ってるんですか?!逃げるって…?」
「デイビッド先生が居なくなった。たぶん何処かに連れて行かれたんだと思う。君も狙われている!早く人目のある方に…」
ヴィオラが戸惑っていますいると、テレンスの後ろからもう1人誰かがこちらへやって来るのが見えた。
助かったと思ったのも束の間、テレンスがヴィオラを背中にかばうように身構えた。
「何をしているテレンス。女は見つかったようだな。早く連れて来い。」
「レオニードさん…待って下さい、この子は…」
「奴の婚約者なら仕上げに丁度いいだろう。どうした?さっさと捕えろ!」
ヴィオラはデイビッドの身に何かが起こったことを悟った。
咄嗟に指輪に魔力を流そうとした瞬間、テレンスがレオニードに向かって掴みかかって行った。
「今の内に早く逃げろ!!」
「テレンス、裏切る気か?!」
「僕は生徒会の一員だ!生徒を守る義務がある!!」
しかし、激しい閃光と共にテレンスは弾かれ、床に倒れてしまった。
47
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
傍観している方が面白いのになぁ。
志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」
とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。
その彼らの様子はまるで……
「茶番というか、喜劇ですね兄さま」
「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」
思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。
これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。
「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます
22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。
エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。
悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる