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黒豚令息の領地開拓編
森の探索
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食後のハーブティーを飲むエリックが、何か言いたげにこちらを睨んでいるのを無視して、デイビッドは再び森の方へ歩いて行った。
建物を通り過ぎ、川をたどって大岩で塞がれた所までやって来ると、相変わらず水の流れの先は見えなかった。
しかし、先日の様に人を拒む様子がなく、岩の後ろは明るく浅い林とその先に森が見え、動物の気配に満ちている。
巨木があった周辺の森は、ごっそりそれこそ始めから無かったかの様に、繋ぎ目すら残さず無くなっていた。
(本当に切り取ってったんだ…)
恐らくどこかに入り口はあるのだろうが、それこそ人は立ち入るどころか見つける事すら出来ないだろう。
(このままお互いの領域を守ってりゃ平和なんだろうな。)
本来、精霊と人は無闇に関わるべきモノでは無いのだ。
デイビッドは泉の湧き水を小樽に汲むと、また来た道を戻って行った。
(森が浅くなったなら、魔物との距離の取り方も考えなきゃだな。なんかおもしろいの居ねぇかなぁ…)
すると、ガサガサと草むらの中から音がして大きな影がのっそり現れた。
「なっ!グランドシェーブル!?なんでここに?」
岩場近くにいたはずの大型の山羊魔物が、家族単位の群れを率いて突如森の入り口へ現れたので、デイビッドは驚いてその場に隠れた。
大きな角の雄を先頭に雌が3頭、雄が2頭、仔山羊が4頭。
群れはのそのそと草を食みながら、真っ直ぐ草地へ向かって歩んで行く。
デイビッドがこっそりその後ろについて、どうしたものかと考えていると、群れの先頭の雄山羊がぐるりと頭をこちらへ向け、しっかり視界に入ってしまった。
(まずい、バレた!)
デイビッドは身構えたが、山羊達は気にする様子もなくまたのそのそと歩き出した。
(気づかれなかった?イヤ、そんなハズねぇよな…)
恐る恐る距離を詰め、最後尾と並走してみるが、全く気にされる様子も無い。
どんどん前に進み、ついに先頭の真横を一緒に歩きながら、デイビッドはいつものクセで山羊に話しかけた。
「おーい…お前等この先に行くのか?」
「ン゙メ゙ェ゙ェ゙ェ゙!」
「そうか…そっち、俺達の拠点があるんで、人もいるけど大丈夫か?」
「ン゙ン゙メ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙!」
「何言ってんのか全然わかんねぇけど、なんか通じてるような気がする…気のせいだろうけど…」
そのまま山羊と一緒にキャンプまで戻ると、山羊達は好き勝手バラけて草を食べ出した。
「ええ?!アレって魔物じゃないんですか?!」
「魔物だよ。グランドシェーブルだ。」
「あんなに大人しい魔物もいるんですね。」
「いや、家畜用に繁殖したヤツ以外には近づくなよ?」
「近づいてんじゃないですか!思いっ切り近づいて群れごと連れてき来ちゃってんじゃないですか!!」
「うーん…元々どっかの家畜だったんじゃねぇ?」
「またそんな適当な事を…」
訝しむエリックの視線を無視して、デイビッドは汲んで来た水をオーブンの脇の保冷庫にしまい、ゼリーの固まり具合を確認した。
プルンとしたゼリーの中でキラキラと桃や洋梨が揺れている。
一口食べてみると、濃厚な甘みと瑞々しく雑味の無い鮮烈な果実の味わいが広がって、これまで食べてきた果物とは一線を画している事が分かる。
「あ!デイビッド様、摘み食いしてる!」
「ちょっと、ズルいじゃない!私達にも食べさせなさいよ!」
「自分で作ったもんなんだからいいだろ?ちゃんと数はあるから騒ぐなよ!」
窓から身を乗り出したヴィオラとシェルリアーナは、ゼリーの味見をするデイビッドを目ざとく見つけ、自分達にもよこせとねだった。
「ふわぁぁぁ…とろけるぅ…」
「こんなに美味しい桃初めてね!…美味しいだけじゃない気がするのは気のせいかしら?!」
「こっち見んな!諸事情あってもらった果物で作ったヤツだから、同じ材料はもうねぇぞ!?」
「デイビッド様、それ食べたら、ちょーっとお話しがあるので、よろしいですかね?!」
聞こえないフリをしたかったが、ニコニコと迫って来るエリックをかわし切れず、デイビッドは椅子から立とうとして捕まった。
「いつまで見て見ぬ振りしようかなーって思ってたんですけど。」
「はい…」
「あそこに一夜にして現れた大きなモノが、また一夜にして消え去った理由話してくれますよね?!」
「お前…あの樹、見えてたのか…?」
「あったりまえでしょ?!こう見えて精霊血統、シルフ族の末裔舐めないで下さいよ?!」
「は?お前シルフだったのか!?リュタンか何かと思ってた。」
「そんな迷惑かけてます、僕?!」
(かけられてる気がする…)
そこからデイビッドはアリーを森に放ったら、そこで吐き出した種から世界樹が生えてきてしまった話から、妖精が集まって来てしまい、最後は精霊に頼んで現世から切り離してもらった所まで、洗いざらい吐き出させられた。
「ハァ………なんか1人でコソコソやってるなーとは思ってましたけどね?!」
「はい…」
「昨夜はどちらかでずいぶんとお楽しみだったようじゃないですか?」
「誤解を招く言い方すんな!…ルーチェと、少し話しただけだよ…」
「ルーチェだけじゃないでしょう!?昨日の夜は身体がおかしくなって、魂がどっか抜けてっちゃうかと思ったくらい大変だったんですからね?!」
なるべく拠点から離れたつもりだったが、昨夜の出来事は下手したら王国全土に影響を及ぼしたかも知れない程、強力かつ歴史的な瞬間だったそうな。
「デイビッド様はアレですか?密かに国家掌握とか大陸統一とかそういう大それた野望をお持ちとかじゃないんですよね?!」
「ンなこと考えてねぇよ!」
「じゃ、なんでそんな王国の歴史に終止符でも打ち込み兼ねない事態を平然と受け入れちゃったんですか!?精霊と交渉とか千年郷の再来もかくやですよ?!」
そもそも、エリックがここへ来てから寝てばかりいたのも、実は下手に動き回ると身体と精神が分離してしまいそうで大人しくしていたのだとか。
世界樹の影響で抑えが効かず、ずっと抑制剤を飲んで過ごしていたらしい。
「じゃぁ帰れば良かったじゃねぇかよ。」
「帰れなかったんですよ!転移門を通ったら精霊の血の本能がここへ戻りたがって居ても立っても居られなくて…血が騒ぐって正にこういうことなんでしょうねぇ!?流石は世界樹ですよ。」
エリックは昨日、血の中に眠る精霊の本能が世界樹へ引き寄せられ、万物の原初の地へ立ち還ろうと騒ぎ、容れ物である人の身体から抜け出しそうになって一晩中大変だったそうだ。
恐らく国中の精霊血統と妖精血統がその影響を受けたと思って良いらしい。
「薄まった血筋は分かりませんけどね、契約精霊なんかがいる所はもしかしたら解放されちゃったりしてる可能性ありますよ?」
「それってマズイよな…」
「何世代も契約で縛ってた精霊がいなくなれば、落ちぶれる家はあるでしょうね。」
「黙っとくか…」
「原因が貴方とわかったら火炙りくらいされるんじゃないですか?墓場まで持ってくレベルの隠し事ですよ!!」
「理不尽!!」
「そう言うなら日頃から無造作に世界樹の果実なんか机の中にコロコロさせとかないで下さいよ!アレだって近くにいるだけでけっこうな影響あるんですからね!?」
確かに、妖精のルーチェも赤い実が入っているデスク周りがお気に入りだ。
人に近い場所に暮らす妖精達は度々身体を癒すため、精霊の領域などで魔力や霊質を補給する必要があるが、ルーチェは毎日件の樹の実から溢れ出る魔素と霊質を取り込んで、元気いっぱいであの研究室で過ごしている。
「加えてあの笛!また吹いたでしょ?!」
「ルーチェ呼ぶ時に…」
「アレ吹かれると身体の芯が疼くんですよ!!妖精はあの音に無条件で惹き付けられて誘われちゃうんです!うっかりすると踊り出しそうになるからヤメて下さい!!」
「そんな面白いことになんのか…」
「オモシロくねーよ!!」
久々にキレたエリックを目の当たりにしたデイビッドは、事の重さを知って少しだけ反省した。
(なんのお話ししてるんでしょうね?)
(さぁ。でも、ヘタに口出ししない方が良さそうね。また巻き込まれたらたまんないわ!)
シェルリアーナは窓の外で言い合う2人を眺めつつ、馬車の中でヴィオラの課題を見てやりながら冷えた洋梨のコンポートをかじっていた。
建物を通り過ぎ、川をたどって大岩で塞がれた所までやって来ると、相変わらず水の流れの先は見えなかった。
しかし、先日の様に人を拒む様子がなく、岩の後ろは明るく浅い林とその先に森が見え、動物の気配に満ちている。
巨木があった周辺の森は、ごっそりそれこそ始めから無かったかの様に、繋ぎ目すら残さず無くなっていた。
(本当に切り取ってったんだ…)
恐らくどこかに入り口はあるのだろうが、それこそ人は立ち入るどころか見つける事すら出来ないだろう。
(このままお互いの領域を守ってりゃ平和なんだろうな。)
本来、精霊と人は無闇に関わるべきモノでは無いのだ。
デイビッドは泉の湧き水を小樽に汲むと、また来た道を戻って行った。
(森が浅くなったなら、魔物との距離の取り方も考えなきゃだな。なんかおもしろいの居ねぇかなぁ…)
すると、ガサガサと草むらの中から音がして大きな影がのっそり現れた。
「なっ!グランドシェーブル!?なんでここに?」
岩場近くにいたはずの大型の山羊魔物が、家族単位の群れを率いて突如森の入り口へ現れたので、デイビッドは驚いてその場に隠れた。
大きな角の雄を先頭に雌が3頭、雄が2頭、仔山羊が4頭。
群れはのそのそと草を食みながら、真っ直ぐ草地へ向かって歩んで行く。
デイビッドがこっそりその後ろについて、どうしたものかと考えていると、群れの先頭の雄山羊がぐるりと頭をこちらへ向け、しっかり視界に入ってしまった。
(まずい、バレた!)
デイビッドは身構えたが、山羊達は気にする様子もなくまたのそのそと歩き出した。
(気づかれなかった?イヤ、そんなハズねぇよな…)
恐る恐る距離を詰め、最後尾と並走してみるが、全く気にされる様子も無い。
どんどん前に進み、ついに先頭の真横を一緒に歩きながら、デイビッドはいつものクセで山羊に話しかけた。
「おーい…お前等この先に行くのか?」
「ン゙メ゙ェ゙ェ゙ェ゙!」
「そうか…そっち、俺達の拠点があるんで、人もいるけど大丈夫か?」
「ン゙ン゙メ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙!」
「何言ってんのか全然わかんねぇけど、なんか通じてるような気がする…気のせいだろうけど…」
そのまま山羊と一緒にキャンプまで戻ると、山羊達は好き勝手バラけて草を食べ出した。
「ええ?!アレって魔物じゃないんですか?!」
「魔物だよ。グランドシェーブルだ。」
「あんなに大人しい魔物もいるんですね。」
「いや、家畜用に繁殖したヤツ以外には近づくなよ?」
「近づいてんじゃないですか!思いっ切り近づいて群れごと連れてき来ちゃってんじゃないですか!!」
「うーん…元々どっかの家畜だったんじゃねぇ?」
「またそんな適当な事を…」
訝しむエリックの視線を無視して、デイビッドは汲んで来た水をオーブンの脇の保冷庫にしまい、ゼリーの固まり具合を確認した。
プルンとしたゼリーの中でキラキラと桃や洋梨が揺れている。
一口食べてみると、濃厚な甘みと瑞々しく雑味の無い鮮烈な果実の味わいが広がって、これまで食べてきた果物とは一線を画している事が分かる。
「あ!デイビッド様、摘み食いしてる!」
「ちょっと、ズルいじゃない!私達にも食べさせなさいよ!」
「自分で作ったもんなんだからいいだろ?ちゃんと数はあるから騒ぐなよ!」
窓から身を乗り出したヴィオラとシェルリアーナは、ゼリーの味見をするデイビッドを目ざとく見つけ、自分達にもよこせとねだった。
「ふわぁぁぁ…とろけるぅ…」
「こんなに美味しい桃初めてね!…美味しいだけじゃない気がするのは気のせいかしら?!」
「こっち見んな!諸事情あってもらった果物で作ったヤツだから、同じ材料はもうねぇぞ!?」
「デイビッド様、それ食べたら、ちょーっとお話しがあるので、よろしいですかね?!」
聞こえないフリをしたかったが、ニコニコと迫って来るエリックをかわし切れず、デイビッドは椅子から立とうとして捕まった。
「いつまで見て見ぬ振りしようかなーって思ってたんですけど。」
「はい…」
「あそこに一夜にして現れた大きなモノが、また一夜にして消え去った理由話してくれますよね?!」
「お前…あの樹、見えてたのか…?」
「あったりまえでしょ?!こう見えて精霊血統、シルフ族の末裔舐めないで下さいよ?!」
「は?お前シルフだったのか!?リュタンか何かと思ってた。」
「そんな迷惑かけてます、僕?!」
(かけられてる気がする…)
そこからデイビッドはアリーを森に放ったら、そこで吐き出した種から世界樹が生えてきてしまった話から、妖精が集まって来てしまい、最後は精霊に頼んで現世から切り離してもらった所まで、洗いざらい吐き出させられた。
「ハァ………なんか1人でコソコソやってるなーとは思ってましたけどね?!」
「はい…」
「昨夜はどちらかでずいぶんとお楽しみだったようじゃないですか?」
「誤解を招く言い方すんな!…ルーチェと、少し話しただけだよ…」
「ルーチェだけじゃないでしょう!?昨日の夜は身体がおかしくなって、魂がどっか抜けてっちゃうかと思ったくらい大変だったんですからね?!」
なるべく拠点から離れたつもりだったが、昨夜の出来事は下手したら王国全土に影響を及ぼしたかも知れない程、強力かつ歴史的な瞬間だったそうな。
「デイビッド様はアレですか?密かに国家掌握とか大陸統一とかそういう大それた野望をお持ちとかじゃないんですよね?!」
「ンなこと考えてねぇよ!」
「じゃ、なんでそんな王国の歴史に終止符でも打ち込み兼ねない事態を平然と受け入れちゃったんですか!?精霊と交渉とか千年郷の再来もかくやですよ?!」
そもそも、エリックがここへ来てから寝てばかりいたのも、実は下手に動き回ると身体と精神が分離してしまいそうで大人しくしていたのだとか。
世界樹の影響で抑えが効かず、ずっと抑制剤を飲んで過ごしていたらしい。
「じゃぁ帰れば良かったじゃねぇかよ。」
「帰れなかったんですよ!転移門を通ったら精霊の血の本能がここへ戻りたがって居ても立っても居られなくて…血が騒ぐって正にこういうことなんでしょうねぇ!?流石は世界樹ですよ。」
エリックは昨日、血の中に眠る精霊の本能が世界樹へ引き寄せられ、万物の原初の地へ立ち還ろうと騒ぎ、容れ物である人の身体から抜け出しそうになって一晩中大変だったそうだ。
恐らく国中の精霊血統と妖精血統がその影響を受けたと思って良いらしい。
「薄まった血筋は分かりませんけどね、契約精霊なんかがいる所はもしかしたら解放されちゃったりしてる可能性ありますよ?」
「それってマズイよな…」
「何世代も契約で縛ってた精霊がいなくなれば、落ちぶれる家はあるでしょうね。」
「黙っとくか…」
「原因が貴方とわかったら火炙りくらいされるんじゃないですか?墓場まで持ってくレベルの隠し事ですよ!!」
「理不尽!!」
「そう言うなら日頃から無造作に世界樹の果実なんか机の中にコロコロさせとかないで下さいよ!アレだって近くにいるだけでけっこうな影響あるんですからね!?」
確かに、妖精のルーチェも赤い実が入っているデスク周りがお気に入りだ。
人に近い場所に暮らす妖精達は度々身体を癒すため、精霊の領域などで魔力や霊質を補給する必要があるが、ルーチェは毎日件の樹の実から溢れ出る魔素と霊質を取り込んで、元気いっぱいであの研究室で過ごしている。
「加えてあの笛!また吹いたでしょ?!」
「ルーチェ呼ぶ時に…」
「アレ吹かれると身体の芯が疼くんですよ!!妖精はあの音に無条件で惹き付けられて誘われちゃうんです!うっかりすると踊り出しそうになるからヤメて下さい!!」
「そんな面白いことになんのか…」
「オモシロくねーよ!!」
久々にキレたエリックを目の当たりにしたデイビッドは、事の重さを知って少しだけ反省した。
(なんのお話ししてるんでしょうね?)
(さぁ。でも、ヘタに口出ししない方が良さそうね。また巻き込まれたらたまんないわ!)
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
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