【完結】悪役令嬢アナスタシアは破滅を嗤う

藤原遊

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第三部 王妃教育と幸福の牢獄

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 ――破滅は、とうとう訪れなかった。

 幾度となく淡い期待を抱いては裏切られ続けた私の人生は、ついにここまで辿り着いてしまった。

 今日、私は王太子ユリウスの妃となる。

***

 結婚式は王国史上でも最大級の盛大さだった。

 神殿は豪奢に飾られ、街は祝賀の装いに包まれ、王宮は貴族と要人たちで埋め尽くされている。

 私の隣には、もちろん王太子ユリウス――未来の国王が微笑んでいる。

 私の背後では、これまで私を包囲し続けた面々がそれぞれの役割で控えていた。

 カイは式典の全体進行を緻密に仕切り、
 レオンは護衛部隊を指揮し、
 シグルドは祝祷の祈りを唱え、
 ユリオは貴族たちの調整に奔走し、
 アベルは儀式書の全監修を担当していた。

 ――完璧すぎる布陣。

 私は静かにため息を落とした。

***

「アナスタシア様!」

 控えの間で、セラフィーナが駆け寄ってくる。
 今日も変わらず太陽のような笑顔だ。

「ついにこの日が来ましたわね! でも、ご無理なさらずに。何かあればすぐに相談してくださいませね?お友だちですもの!」

 私は苦笑いを浮かべて頷いた。

 ――本当に相談できるなら、したいところだけれど。
 『破滅をください』なんて、どう相談すればいいのよ。

***

 荘厳な鐘の音が鳴り響き、神殿の扉が開かれる。

 私は一歩、また一歩と歩みを進めた。

 民衆の歓声、貴族たちの賞賛、神官たちの祝祷、騎士たちの敬礼――
 すべてが私を祝福する音となって降り注ぐ。

 ――もはや、逃げ道などない。

***

 そして、ユリウスの手が私の手をそっと包み込む。

「アナスタシア――ずっと、共に歩もう」

 微笑む彼の目に、一片の迷いもない。
 私はゆっくりと微笑みを返した。

「……ええ、殿下」

 破滅を待ち続けた私の物語は、こうして幸福という名の監禁へと至った。

 ――誰か、本当に断罪してくれてもいいのだけれど。
 ……まあ、もう諦めてはいるけれど。
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