21 / 30
ドドソルニア編
上と下
しおりを挟む
ロロさんやジークはお酒を飲んでいたが今はまだ昼間である。そのロロさんは早々に酔いを覚まして遊びに行くと言ってどこかに行ってしまった。タフな人だな。
ラーフさんも本屋でゆっくり選びたいからと1人で街に向かった。常に3人一緒にいるわけではないらしく、大きな案件ではないときは分かれて依頼を受けることもあるらしい。ソラレの町では俺との交流を深めるためになるべく一緒にいてくれたようだ。その気遣いが嬉しい。
ジークはソラレの冒険者ギルドのギルマスから魔道具の修理を頼まれているということで、一緒に商業ギルドまで行くことになった。
商業ギルドは見た目は冒険者ギルドとあまり変わらない。ドアを開くと電子音のチャイムが鳴り響く。これはあれだ。青い看板のコンビニの入店音だ。
中に入ると冒険者ギルドとは雰囲気が全く違っていた。基本的にガタイが良くてむさ苦しい冒険者が利用する冒険者ギルドは何というか、空気に圧を感じる。それに比べて商業ギルドはスッキリと軽やかな空気が流れている。働いている従業員も生真面目そうな人が多い。
いくつかある窓口でジークが「魔道具の修理依頼なんだが」と声をかけると椅子とテーブルが並んでいるスペースに案内された。しばらく待っているとドワーフの男性が前に座った。
「久しぶりだね、ジーク。」
「ブリッツ?サリュがいなかったからてっきりアンタも休んでるかと思っていたぞ。」
「いま帰るところだったんだ。妻は家で食事の準備をして待ってくれているよ。ご馳走だと張り切っていたから楽しみだよ。」
穏やかに話す小ドワの男性は優しそうな水色の目を細めて俺たちを見る。もじゃもじゃの長い髪と髭は黒色なのだが、イメージ的にはサンタクロースのような慈愛に満ちた人だった。
「イオ、商業ギルドのギルマスのブリッツだ。」
「始めまして、Bランク冒険者のイオです。カテドアラで活動をしていました。」
「ブリッツ、イオは俺たちのパーティの新メンバーで俺の番だ。」
ブリッツさんは驚いた顔をした。
「番を見つけたのかい?良かったねぇ。確かに一時期番が見つからないとやさぐれていた時より雰囲気が柔らかくなったね。」
「別にやさぐれてねぇよ。」
ムスッとしたジークがそっぽを向いた。随分と気安い関係のようだ。
「さて、魔道具の修理だろう?私がこのまま受け付けるから魔道具を出してみなさい。」
「ああ、これだ。」
ジークは魔法鞄からソフトボールサイズの丸い魔道具を出してゴトリと机に置いた。ボタンが1つ付いているだけのシンプルな造りで、何の魔道具なのか全くわからない。ブリッツさんは魔道具を手に持って〘鑑定〙と呟いた。固有スキルだ。
実はこの世界に魔法があると聞いたときに「異世界転生といったら鑑定だろう」と期待して使えるかどうか試してみたことがある。もちろん使えなかった。
「ああ、これは中の部品が劣化してヒビが入っているね。一旦分解して部品を取り替えたら直るけど、この部品の入荷が明後日だからそれ以降に引き取りにきてもらっても良いかい?」
「ああ、急ぎではないから大丈夫だ。じゃあそれは預けていくよ。」
そう言ってジークと席を立ち、商業ギルドを後にした。
「魔道具の修理は職人がいればどの国でもできるが、ドドソルニアだと部品の質も技術力も段違いだから直してもらった後の持ちが変わってくるんだ。」
「なるほど。でも修理のたびにドドソルニアまで持ってくるのは大変では?」
「ああ、だからほとんどの魔道具は消耗品で壊れたら買い換える。でも今日の魔道具は高額で特殊な物だから持ち込んでまで修理してもらう必要があったんだ。」
だからギルマスが直接ジークに修理依頼をしてきたのか。高額な魔道具は盗難の恐れもあるから強い人にしか頼めないということかな。
その後は色々な店を見て回った。物造りの街というだけあって様々な道具の店があった。魔道具はもちろん家財や装飾品など、どれもが細部まで丁寧に造られている。特に気になったのは鉱石を削って魔獣の形に象られた置物だった。
手のひらに乗せられるサイズなのに魔狼の毛の動き、一角兎の筋肉の動き、蛇王の鱗の滑らかさが完全に再現されている。鉱石によって色が違っていて、どれもとても綺麗だった。しかしかなりいいお値段だったので見るだけに留めた。
*******************************
街のあちこちを見て回ってから宿に戻るとラーフさんとロロさんはすでに帰っていた。
4人で食堂に降りると数組の宿泊客が夕食を取っていた。食事のメニューはその日仕入れた食材を中心とした宿側のお任せ定食だ。足りない場合はおかわりを注文すると別の料理が出てくる。食べられないものは前もって言っておくと避けてくれるとのこと。
宿の夕食もやっぱりお酒を飲むこと前提なので少し濃いめだった。お米が欲しい。この世界にはお米はないのだろうとかとジークに聞くと獣人の国の一部の地域で作られているらしい。いつか絶対に行きたい。
今日1日である程度の観光はできたので明日から依頼を受けようかと話し合って決めた。そんな風に話しながら俺が1人前の定食を食べ終わる頃には3人とも倍以上の量を食べていた。特にロロさんはお酒を飲みながらなのに食べるのが早すぎる。それでも下品に見えないことが不思議だ。
「ゆっくり休んで下さいね。」
というラーフさんの言葉で各自部屋の前で解散した。「ついに明日から依頼だ」と気合が入る。武器と備品の手入れをしてシャワーを浴びて、いつもの魔力を身体に循環させる寝る前のルーティンをこなしているとドアのノック音が聞こえた。扉を開けると髪が濡れたままのジークが入ってきた。
「ジーク、ちゃんと髪を乾かさないと風邪ひくよ?」
慌ててタオルを渡すとジークは乱暴に頭を拭いた。そんな荒っぽくしてふわふわの耳は痛くないのかな?
ジークはエスコートするように俺の手を引き2人でベッドに腰掛ける。そういえば一緒に寝る話になっていたな。じわじわと羞恥が込み上げる。照れくさくて自分の手元ばかりを見ていたら、
「イオ、俺はお前の気持ちを聞かずに自分勝手に関係を進めるところだった。」
「俺の気持ち⋯?ジークのことは好きだけど?」
「ありがとう。でも男同士の行為については知らなかったんだろ?異世界とは常識が異なるとわかっていて確認しなかった俺が悪い。それでな⋯」
ジークは眉間にシワを寄せて口籠る。
「もし⋯もしイオが上の役割⋯つまり"入れたい側"だと言うのなら俺は受け入れるつもりだ。俺が拒否したことによってイオが別の誰かを抱くなんて耐えられない⋯。」
すっごい顔してるな⋯。
正に苦渋の決断といった雰囲気だ。
「ジークは"入れたい側"なの?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうだ。」
耳がっ!耳がぺちゃんこに伏せられていく!なんだこの叱られたワンコみたいな顔は。俺は耐えられずに「ぶはっ!」と笑い声を漏らしてしまった。ジークは不思議そうな顔をして俺を見ているがまだ耳はぺったんこだ。
「正直入れる、入れないは今のところ想像できないかな。でもジークが"入れたい側"だったら俺も受け入れたい気持ちはあるよ。でも時間は欲しい。」
「⋯!もちろんだ!」
「少しずつ段階を踏んでくれたらいいからさ。ほら、明日は依頼を受けるんだからもう寝よう。」
2人でベッドの布団に潜り込む。ジークはやっぱり抱き枕のように俺をがっちり抱き込んできた。
「キスはしていい?」
「もう何度もしてるでしょ。」
ジークはそうだったなと耳と尻尾を振って嬉しそうに「おやすみ」と言ってキスをした。
******************************
翌日は朝から冒険者ギルドに向かう。依頼ボードを見ている冒険者たちはソラレと同じく人族よりも獣人の割合が多く、ドワーフの冒険者は見かけない。物造りに特化したドワーフは冒険者業に就く人は少ないそうだ。
ジークたちを見てザワつく冒険者たちの視線にも大分慣れてきた。すると昨日対応をしてくれた小ドワの職員が受付から出てきた。
「皆さんおはようございます。すみませんが、ギルマスがお呼びなので案内します。」
通された執務室の床には沢山の本が所狭しと積み上げられ、机の上に大量の書類が雑に置かれていた。客を迎えるはずのソファとテーブルは何やら魔獣の毛皮が無造作に置かれている。
何だろうこの既視感は。ギルドマスターとは往々にして整理整頓が苦手なのだろうか?
「お前たち久しぶりだな。すぐ私に会いに来ないとはどういうことだ?」
山積みの本の隙間から出てきた人はとてつもなく綺麗な女性だった。薄く青みがかった銀色の長い髪はゆるく三つ編みで纏められている。モノクルの奥の瞳は鮮やかな水色で、長い耳がしなやかに尖っている。この特徴はエルフだ。
エルフと言えばソラレの町にある薬屋の店主がそうだったが、シワシワのおじいちゃんだったので若いエルフを見るのは初めてだ。本当に綺麗な人だな。年齢も20代前半に見えるがこの年で冒険者ギルドのギルマスになれるんだな。
「昨日来たけどアンタが留守だったんだよ。」
「⋯うむ、そういえばダーリンがお前と番に会ったと言っていたな。そのせいで愛しの旦那様と過ごす時間が少し減って腹立たしくて忘れていたよ。」
そう言いながらギルマスのエルフがスッと手をかざすとソファやテーブルに散乱していた物がふわりと浮かび、部屋の隅の方に纏められていった。空いたソファに促されるとテーブルに紅茶とお菓子が現れた。先ほどから息をするように魔法を使っているが、一体どれほど膨大な魔力と繊細な魔力コントロールをしているのだろうか。
「さて、私にも彼を紹介してくれるかな?」
「俺の番のイオだ。カテドアラで冒険者をしていた落ち人だ。」
「落ち人?なるほど、だからなかなか見つからなかったのか。」
「イオ、このエルフはサリュライア。冒険者ギルドのギルドマスターで一応俺たちの魔法の師匠だ。」
「一応とは何だこの馬鹿弟子が。」
「あと昨日会った商業ギルドマスターのブリッツと夫婦だ。」
「ええ!?」
小ドワのブリッツさんはサンタクロースのような見た目だったこともあり、そこそこ年齢を重ねているように見えた。そして目の前のサリュライアさんの見た目は20代前半。「年の差夫婦⋯?」とついうっかり口を滑らせた。
「ああ、私とダーリンは1000歳差の年の差夫婦だ。姉さん女房ってやつだな!」
そっちが上!?
***********************
ギルドのドア音
冒険者ギルド→◯ァミリーマート
商業ギルド→◯ーソン
医療ギルド(未登場)→◯ブンイレブン
※観光中のジーク
イオが興味を示した物は何でも買ってあげたいが、理由もなく受け取ってはもらえないだろうとは予想済みなので受け取ってもらえる方法を模索中。
ラーフさんも本屋でゆっくり選びたいからと1人で街に向かった。常に3人一緒にいるわけではないらしく、大きな案件ではないときは分かれて依頼を受けることもあるらしい。ソラレの町では俺との交流を深めるためになるべく一緒にいてくれたようだ。その気遣いが嬉しい。
ジークはソラレの冒険者ギルドのギルマスから魔道具の修理を頼まれているということで、一緒に商業ギルドまで行くことになった。
商業ギルドは見た目は冒険者ギルドとあまり変わらない。ドアを開くと電子音のチャイムが鳴り響く。これはあれだ。青い看板のコンビニの入店音だ。
中に入ると冒険者ギルドとは雰囲気が全く違っていた。基本的にガタイが良くてむさ苦しい冒険者が利用する冒険者ギルドは何というか、空気に圧を感じる。それに比べて商業ギルドはスッキリと軽やかな空気が流れている。働いている従業員も生真面目そうな人が多い。
いくつかある窓口でジークが「魔道具の修理依頼なんだが」と声をかけると椅子とテーブルが並んでいるスペースに案内された。しばらく待っているとドワーフの男性が前に座った。
「久しぶりだね、ジーク。」
「ブリッツ?サリュがいなかったからてっきりアンタも休んでるかと思っていたぞ。」
「いま帰るところだったんだ。妻は家で食事の準備をして待ってくれているよ。ご馳走だと張り切っていたから楽しみだよ。」
穏やかに話す小ドワの男性は優しそうな水色の目を細めて俺たちを見る。もじゃもじゃの長い髪と髭は黒色なのだが、イメージ的にはサンタクロースのような慈愛に満ちた人だった。
「イオ、商業ギルドのギルマスのブリッツだ。」
「始めまして、Bランク冒険者のイオです。カテドアラで活動をしていました。」
「ブリッツ、イオは俺たちのパーティの新メンバーで俺の番だ。」
ブリッツさんは驚いた顔をした。
「番を見つけたのかい?良かったねぇ。確かに一時期番が見つからないとやさぐれていた時より雰囲気が柔らかくなったね。」
「別にやさぐれてねぇよ。」
ムスッとしたジークがそっぽを向いた。随分と気安い関係のようだ。
「さて、魔道具の修理だろう?私がこのまま受け付けるから魔道具を出してみなさい。」
「ああ、これだ。」
ジークは魔法鞄からソフトボールサイズの丸い魔道具を出してゴトリと机に置いた。ボタンが1つ付いているだけのシンプルな造りで、何の魔道具なのか全くわからない。ブリッツさんは魔道具を手に持って〘鑑定〙と呟いた。固有スキルだ。
実はこの世界に魔法があると聞いたときに「異世界転生といったら鑑定だろう」と期待して使えるかどうか試してみたことがある。もちろん使えなかった。
「ああ、これは中の部品が劣化してヒビが入っているね。一旦分解して部品を取り替えたら直るけど、この部品の入荷が明後日だからそれ以降に引き取りにきてもらっても良いかい?」
「ああ、急ぎではないから大丈夫だ。じゃあそれは預けていくよ。」
そう言ってジークと席を立ち、商業ギルドを後にした。
「魔道具の修理は職人がいればどの国でもできるが、ドドソルニアだと部品の質も技術力も段違いだから直してもらった後の持ちが変わってくるんだ。」
「なるほど。でも修理のたびにドドソルニアまで持ってくるのは大変では?」
「ああ、だからほとんどの魔道具は消耗品で壊れたら買い換える。でも今日の魔道具は高額で特殊な物だから持ち込んでまで修理してもらう必要があったんだ。」
だからギルマスが直接ジークに修理依頼をしてきたのか。高額な魔道具は盗難の恐れもあるから強い人にしか頼めないということかな。
その後は色々な店を見て回った。物造りの街というだけあって様々な道具の店があった。魔道具はもちろん家財や装飾品など、どれもが細部まで丁寧に造られている。特に気になったのは鉱石を削って魔獣の形に象られた置物だった。
手のひらに乗せられるサイズなのに魔狼の毛の動き、一角兎の筋肉の動き、蛇王の鱗の滑らかさが完全に再現されている。鉱石によって色が違っていて、どれもとても綺麗だった。しかしかなりいいお値段だったので見るだけに留めた。
*******************************
街のあちこちを見て回ってから宿に戻るとラーフさんとロロさんはすでに帰っていた。
4人で食堂に降りると数組の宿泊客が夕食を取っていた。食事のメニューはその日仕入れた食材を中心とした宿側のお任せ定食だ。足りない場合はおかわりを注文すると別の料理が出てくる。食べられないものは前もって言っておくと避けてくれるとのこと。
宿の夕食もやっぱりお酒を飲むこと前提なので少し濃いめだった。お米が欲しい。この世界にはお米はないのだろうとかとジークに聞くと獣人の国の一部の地域で作られているらしい。いつか絶対に行きたい。
今日1日である程度の観光はできたので明日から依頼を受けようかと話し合って決めた。そんな風に話しながら俺が1人前の定食を食べ終わる頃には3人とも倍以上の量を食べていた。特にロロさんはお酒を飲みながらなのに食べるのが早すぎる。それでも下品に見えないことが不思議だ。
「ゆっくり休んで下さいね。」
というラーフさんの言葉で各自部屋の前で解散した。「ついに明日から依頼だ」と気合が入る。武器と備品の手入れをしてシャワーを浴びて、いつもの魔力を身体に循環させる寝る前のルーティンをこなしているとドアのノック音が聞こえた。扉を開けると髪が濡れたままのジークが入ってきた。
「ジーク、ちゃんと髪を乾かさないと風邪ひくよ?」
慌ててタオルを渡すとジークは乱暴に頭を拭いた。そんな荒っぽくしてふわふわの耳は痛くないのかな?
ジークはエスコートするように俺の手を引き2人でベッドに腰掛ける。そういえば一緒に寝る話になっていたな。じわじわと羞恥が込み上げる。照れくさくて自分の手元ばかりを見ていたら、
「イオ、俺はお前の気持ちを聞かずに自分勝手に関係を進めるところだった。」
「俺の気持ち⋯?ジークのことは好きだけど?」
「ありがとう。でも男同士の行為については知らなかったんだろ?異世界とは常識が異なるとわかっていて確認しなかった俺が悪い。それでな⋯」
ジークは眉間にシワを寄せて口籠る。
「もし⋯もしイオが上の役割⋯つまり"入れたい側"だと言うのなら俺は受け入れるつもりだ。俺が拒否したことによってイオが別の誰かを抱くなんて耐えられない⋯。」
すっごい顔してるな⋯。
正に苦渋の決断といった雰囲気だ。
「ジークは"入れたい側"なの?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうだ。」
耳がっ!耳がぺちゃんこに伏せられていく!なんだこの叱られたワンコみたいな顔は。俺は耐えられずに「ぶはっ!」と笑い声を漏らしてしまった。ジークは不思議そうな顔をして俺を見ているがまだ耳はぺったんこだ。
「正直入れる、入れないは今のところ想像できないかな。でもジークが"入れたい側"だったら俺も受け入れたい気持ちはあるよ。でも時間は欲しい。」
「⋯!もちろんだ!」
「少しずつ段階を踏んでくれたらいいからさ。ほら、明日は依頼を受けるんだからもう寝よう。」
2人でベッドの布団に潜り込む。ジークはやっぱり抱き枕のように俺をがっちり抱き込んできた。
「キスはしていい?」
「もう何度もしてるでしょ。」
ジークはそうだったなと耳と尻尾を振って嬉しそうに「おやすみ」と言ってキスをした。
******************************
翌日は朝から冒険者ギルドに向かう。依頼ボードを見ている冒険者たちはソラレと同じく人族よりも獣人の割合が多く、ドワーフの冒険者は見かけない。物造りに特化したドワーフは冒険者業に就く人は少ないそうだ。
ジークたちを見てザワつく冒険者たちの視線にも大分慣れてきた。すると昨日対応をしてくれた小ドワの職員が受付から出てきた。
「皆さんおはようございます。すみませんが、ギルマスがお呼びなので案内します。」
通された執務室の床には沢山の本が所狭しと積み上げられ、机の上に大量の書類が雑に置かれていた。客を迎えるはずのソファとテーブルは何やら魔獣の毛皮が無造作に置かれている。
何だろうこの既視感は。ギルドマスターとは往々にして整理整頓が苦手なのだろうか?
「お前たち久しぶりだな。すぐ私に会いに来ないとはどういうことだ?」
山積みの本の隙間から出てきた人はとてつもなく綺麗な女性だった。薄く青みがかった銀色の長い髪はゆるく三つ編みで纏められている。モノクルの奥の瞳は鮮やかな水色で、長い耳がしなやかに尖っている。この特徴はエルフだ。
エルフと言えばソラレの町にある薬屋の店主がそうだったが、シワシワのおじいちゃんだったので若いエルフを見るのは初めてだ。本当に綺麗な人だな。年齢も20代前半に見えるがこの年で冒険者ギルドのギルマスになれるんだな。
「昨日来たけどアンタが留守だったんだよ。」
「⋯うむ、そういえばダーリンがお前と番に会ったと言っていたな。そのせいで愛しの旦那様と過ごす時間が少し減って腹立たしくて忘れていたよ。」
そう言いながらギルマスのエルフがスッと手をかざすとソファやテーブルに散乱していた物がふわりと浮かび、部屋の隅の方に纏められていった。空いたソファに促されるとテーブルに紅茶とお菓子が現れた。先ほどから息をするように魔法を使っているが、一体どれほど膨大な魔力と繊細な魔力コントロールをしているのだろうか。
「さて、私にも彼を紹介してくれるかな?」
「俺の番のイオだ。カテドアラで冒険者をしていた落ち人だ。」
「落ち人?なるほど、だからなかなか見つからなかったのか。」
「イオ、このエルフはサリュライア。冒険者ギルドのギルドマスターで一応俺たちの魔法の師匠だ。」
「一応とは何だこの馬鹿弟子が。」
「あと昨日会った商業ギルドマスターのブリッツと夫婦だ。」
「ええ!?」
小ドワのブリッツさんはサンタクロースのような見た目だったこともあり、そこそこ年齢を重ねているように見えた。そして目の前のサリュライアさんの見た目は20代前半。「年の差夫婦⋯?」とついうっかり口を滑らせた。
「ああ、私とダーリンは1000歳差の年の差夫婦だ。姉さん女房ってやつだな!」
そっちが上!?
***********************
ギルドのドア音
冒険者ギルド→◯ァミリーマート
商業ギルド→◯ーソン
医療ギルド(未登場)→◯ブンイレブン
※観光中のジーク
イオが興味を示した物は何でも買ってあげたいが、理由もなく受け取ってはもらえないだろうとは予想済みなので受け取ってもらえる方法を模索中。
522
あなたにおすすめの小説
最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜
なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。
藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!?
「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」
……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。
スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。
それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。
チート×獣耳×ほの甘BL。
転生先、意外と住み心地いいかもしれない。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
紳士オークの保護的な溺愛
こむぎこ7g
BL
■ 世界と舞台の概要
ここはオークの国「トールキン」。
魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。
トールキンのオークたちは、
灰色がかった緑や青の肌
鋭く澄んだ眼差し
鍛え上げられた筋骨隆々の体躯
を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。
異世界から来る存在は非常に珍しい。
しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。
⸻
■ ガスパールというオーク
ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。
薄く灰を帯びた緑の肌、
赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。
分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、
銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。
ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、
貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。
● 彼の性格
• 極めて面倒見がよく、観察力が高い
• 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い
• 責任を引き受けることを当然のように思っている
• 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手
どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。
⸻
■ 過去と喪失 ――愛したオーク
ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。
家柄も立場も違う相手だったが、
彼はその伴侶の、
不器用な優しさ
朝食を焦がしてしまうところ
眠る前に必ず手を探してくる癖
を、何よりも大切にしていた。
しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。
現在ガスパールが暮らしているのは、
貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。
華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。
彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。
それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。
⸻
■ 現在の生活
ガスパールは現在、
街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。
多忙な職務の合間にも、
洗濯、掃除、料理
帳簿の整理
屋敷の修繕
をすべて自分でこなす。
仕事、家事、墓参り。
規則正しく、静かな日々。
――あなたが現れるまでは。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます
水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。
しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。
このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。
そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。
俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。
順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。
家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。
だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる