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ドドソルニア編
水晶蜥蜴の討伐依頼
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この世界には「人族、獣人、ドワーフ、エルフ、竜人」の5種類の種族が存在する。それぞれのおおよその平均寿命は人族100歳、獣人200歳、ドワーフ300歳、龍人1000歳、エルフ2000歳~になっていて、それに加えて魔力が強くなるほど寿命が延びる傾向にある。人族以外は自分の能力のピークで成長が止まり、そこから寿命まで緩やかに老いていく。
そして種族が異なる夫婦でも長時間身近で過ごせば寿命が長い方に引っ張られるので、異種間で夫婦関係になることも珍しくはないらしい。そして若い時代が長いので年の差というのもあまり意識はしないそうだ。
ドワーフのブリッツさんに一目惚れしたエルフのサリュライアさんは30年以上猛アタックを繰り返して無事結婚。当時のブリッツさんとしては美しく、魔力も豊富で、魔法の才能にも恵まれたサリュライアさんに自分は相応しくないと断っていた。しかし故郷を離れ完全に街へ移住し冒険者ギルドのギルドマスターにまでなり、自分とこの国で骨を埋める覚悟をした彼女に絆されていった。
という話を惚気を挟みながら延々と語るサリュライアさん。横に座っているロロさんが「あの惚気話は止めようとすると容赦なく攻撃されるんだよね⋯」とコソッと教えてくれた。
タイミングを見計らってうんざりとした顔のジークが「で、本題は?」とすかさず口を挟んだ。
「おっとすまない。実は水晶蜥蜴の討伐依頼についてだ。」
「ええ!?珍しいですね。本物ですか?」
「ああ、1年前に商人が違法取引で検挙されてな。その中の商品の一つだった物だ。」
水晶蜥蜴?図書室の魔獣の本には載っていなかったな。ラーフさんが驚いているのでよほど珍しい魔獣なのだろう。するとサリュライアさんは依頼書と水晶蜥蜴の生態について書かれたメモを机の上に出した。
水晶蜥蜴はドラゴンと言ってもトカゲほどの大きさで、身の危険を感じると自らの体を水晶に変える。その水晶は美しい上にどんな衝撃も熱も魔法でさえ形を変えることはできないほど頑丈になる。コレクターの間ではオークションで出品される度に大きな金額で取引されるそうだ。
今回は商人が盗品を売り捌いていたところを国の騎士団に捕らえられ、盗品を回収しているときに水晶化が解けて逃げ出したという。水晶蜥蜴の水晶化が解けるのは100~200年単位と言われているから油断したのだろう。
「今回はなぜ我々に依頼を?単に水晶蜥蜴の討伐であればBランク冒険者でも可能でしょう?」
「それが水晶蜥蜴が逃げた場所が問題だったんだ。」
水晶蜥蜴が逃げた先はドドソルニア国内の鉱山に接した森の中だった。そこには未発掘の洞窟が多数存在していて、その中の1つに逃げ込んだらしい。水晶蜥蜴には「鉱石を水晶に変える」という不思議な能力があり、約1年経った今ではその洞窟の鉱石は全て水晶に変えられているらしい。これの何が問題かと言うと、水晶蜥蜴は1箇所に留まらず移動をするため、放っておくと他の鉱山の採掘場の鉱石まで水晶に変えられてしまう。そしてこの水晶は量が増えると様々なものを狂わせる性質がある。例えば磁場を乱れさせて方角を示す魔道具が使えなくなったり、魔獣を凶暴化させたりする場合もある。
今回は森の中のさらに未発掘の洞窟ということもあり、発見が遅れたので凶暴化した魔獣が増えてしまい、手に負えなくなってきたのでこのパーティにギルマス自ら依頼をしてきたのだろう。
という話を水晶蜥蜴がいると言われる洞窟に向かいながら聞いた。依頼を受けたその日は準備に費やし、翌日の朝早くから討伐に向けて出発した。
森の中を進むにつれて凶暴化した魔獣との戦闘は避けられなくなっていったが、ジークたちの足止めにもならなかった。
目的の洞窟に着くと一目見て異質な状況だということがわかった。床、壁、天井の半分以上が水晶で埋め尽くされているのだ。ランタンのような魔道具で辺りを照らすと光が乱反射してとても綺麗だ。洞窟の奥は100メートルほどの深さだと聞いている。
「これはどうやって水晶蜥蜴を見つけるんですか?」
「それがこの依頼の難しいところなんですよ。水晶蜥蜴は珍しいのでその生体は謎に包まれています。探すには小さすぎて困難、罠を張るにも餌がわからない、追い込むにも弱点がわからないのです。そこで、イオの魔法を試してみましょう。」
以前ナナバモドキという蟲の採取のときに目に魔力を纏わせて「魔力を見る」という方法を使った。核を持った生き物なら魔力を持っているのでこの方法は有効だろう。さっそく魔力をコントロールする。相手はトカゲなので小さい上に壁や天井に張り付いている可能性もあるので目を凝らして探していった。
ジークたちも俺任せにはせず、水晶の塊を持ち上げたりしながら探していた。連続して魔法を使うと集中力が保たないので、休憩を挟みながら洞窟の真ん中ほどまで進むと、ある違和感に気が付いた。
生き物が全くいないのである。俺の魔力を見る魔法は核を持っていれば小さな虫や動物も見ることができるのでこの洞窟には本当に何もいないのだろう。これもこの水晶の影響なのだろうか。
そろそろ集中力も切れそうだなと思ったころ、目の端に青い光を捉えた。光は壁に刺さっている水晶の合間を縫ってものすごいスピードで動いている。
「見つけました!」
と声を出した瞬間にロロさんが素早く動いた。
「下に移動してます!」
「くそっ!早い!」
「ロロ!どいて下さい!」
ラーフさんが叫んだかと思うとロロさんの一歩手前の地面がズンッ!と円形に沈んだ。
すると平らになった地面の土の中から1匹の赤い目をしたトカゲが飛び出してものすごいスピードで走り、その先の水晶が植物のように大量に生えている場所に逃げ込んだ。先端が尖っている水晶を避けて追いかけるのは難しそうだ。
チラリと見えた水晶蜥蜴はその名の通り、体がまるで水晶のように透き通っていた。
「ラーフ!俺を潰す気!?」
「あれくらい避けられるでしょう?」
改めて更地になった地面を見ると硬そうな水晶もぺちゃんこに砕けていて、避けられなかったらどうなるのかと思うとゾッとした。
「これは何の魔法を使ったんだ?」
「風魔法の応用ですよ。風圧を狭い範囲に留めてぶつけると瞬間的に気圧の塊で対象を押し潰すことができます。」
魔力量に物を言わせた力ずくの魔法だった。とてもじゃないけど真似できない。
「あれでも潰れないとなると生身でもかなり頑丈ですね。」
「洞窟では火は使えないし武器も使い辛いから討伐より捕獲の方が良いな。」
「でも小さいし早すぎて俺でも素手で捕まえるのは難しそう~。」
「網で囲ってしまうのは?」
「水晶が邪魔ですね。」
「となると罠かなぁ。俺たち罠とか作ったことないよー。」
水晶蜥蜴捕獲について話し合う3人。罠か⋯餌が分からないので箱型は使えない。対象が小さいので四足獣用も使えない。となるとネズミ用とか?餌が使えないのは痛いな。何か使えるものはないかと自分の持ち物を確認する。すると「ある物」を手荷物から見つけた。
「これを使えるかもしれません。」
**********************************
携帯食で腹ごしらえを済ませ、魔力も充分に回復した。今度は洞窟奥の行き止まりから出入り口に向かって再び捜索を開始する。
一際水晶が密集している場所で水晶蜥蜴の反応を見つけた。
「ラーフさん!あそこにいました!」
すかさずラーフさんは先ほどの全てをぺちゃんこにする魔法で水晶を潰した。しかしやはり効かないらしく水晶蜥蜴は走って逃げ出した。そのまま姿を見失わないように追いかけて目的の場所まで誘導する。イメージは追い込み漁だ。
水晶蜥蜴がチョロチョロと走る先には罠が仕掛けてある。以前殺人蜂討伐のときに活躍した粘着材を塗り拡げた板を床から壁、天井までぐるりと1周させるように並べている。直接捕まえられないのならばホイホイすれば良いのだ。
もう少しで罠の場所に到着すると思った途端、水晶蜥蜴の動きが止まった。警戒している?しかし動きを止めるならそれはそれで捕まえられる。こちら側には4人の冒険者。さすがにすり抜けされるほど鈍くはない。じりじりと距離を詰めていくと水晶蜥蜴は板に向かって走り出したと思ったらその体からは想像もつかない跳躍力でとんだ。
「逃がすか!」
とジークが素早く動いて宙に舞った水晶蜥蜴を掴んで板の罠を跳び越えて着地⋯したかと思いきや思い切り転んだ。そして地面に密着して完全に動けなくなるジーク。
「何だぁ!?」
「ご、ごめん!板が警戒されたとき用にと思って粘着材を地面に直接撒いていたんだ。」
「あははは!ジークだっせぇ!」
「ロロうるせぇ!」
「ジークを足止めできるなんて強力な粘着材ですねぇ。」
この粘着材は薬草を混ぜて溶かした湯をかけると粘着成分がなくなる。材料は魔法鞄に常備していてすぐに用意できるので、慌てず地面に撒かれた粘着材を避けながらジークに近付く。しっかりと掴まれたジークの手の中にいる水晶蜥蜴を確認するとピクリとも動かず、石のように固まっていた。
「これは身の危険を感じて水晶化したみたいですね。」
水晶蜥蜴の特性の一つだ。ラーフさんの手から渡されて見てみると半透明の体と、赤かった目も同色に水晶化している。パッと見は完全に水晶の置物なのだが、魔力視の魔法を使うとこれはちゃんと魔力を持つ生き物なのだということがわかる。そのことをラーフさんに言うと「それは水晶蜥蜴の置物が偽物かどうかを見分ける目利きができますね」と言われたが利用方法が局地的すぎる。
地べたに這いつくばっているジークのために急いで薬湯を作り、無事に助け出すことができた。罠を回収し一休みしてから街の冒険者ギルドに戻り、そのまま執務室まで案内される。
「確かに水晶蜥蜴だね。洞窟はどうなっていた?」
サリュライアさんに洞窟の中や周辺の魔獣の様子を報告する。魔獣の凶暴化は洞窟の水晶を回収してしまえば落ち着くので、すぐに労働者を派遣するという話になった。かなりの数の魔獣を間引いたので、しばらくの間は道中に危険はないだろう。
「この水晶蜥蜴の扱いはどうなるんだ?」
「お前たちの好きにしていいぞ。おそらく他国からの盗品だから元の持ち主も不明のままだしな。」
ジークは水晶蜥蜴をじっと見たあと、俺の手に置いた。
「イオにやるよ。ラーフとロロもそれでいいか?」
「いいよー。」
「私も構いませんよ。」
「ええ!?本当に良いんですか?価値のある物なんでしょう?」
「俺たち別にお金に困ってるわけじゃないし、置物も興味ないしねー。」
「えと⋯ありがとうございます。」
そんなわけで置物となった水晶蜥蜴は俺の物になり、迷いに迷って宿の窓際に置くことにした。昼間は太陽の光が当たってキラキラしていて、夜は月の光で輝くさまが綺麗で暇があると眺めるようになった。
実は街で見かけた鉱石で作られた魔獣の置物が気になっていたのですごく嬉しい。お金を貯めていつか他の作品も買って並べたいな。
そういえばこの世界で生活に必要なもの以外の「欲しい物」が初めてできたことに気が付いた。
**********************************
イオの収集欲が開花した。
水晶蜥蜴の置物
・爬虫類系もまとめて「魔獣」と呼ばれる。身の危険を察知すると体を水晶化させる性質を持つ。頑丈で火にも強く、魔法も効かない。通常の水晶より透明度が高く、光に当てると輝くように美しくなるのでオークションでは高値で取引される。当然ジークはイオが好きそうだと思った上でイオの手に渡るように提案した。
そして種族が異なる夫婦でも長時間身近で過ごせば寿命が長い方に引っ張られるので、異種間で夫婦関係になることも珍しくはないらしい。そして若い時代が長いので年の差というのもあまり意識はしないそうだ。
ドワーフのブリッツさんに一目惚れしたエルフのサリュライアさんは30年以上猛アタックを繰り返して無事結婚。当時のブリッツさんとしては美しく、魔力も豊富で、魔法の才能にも恵まれたサリュライアさんに自分は相応しくないと断っていた。しかし故郷を離れ完全に街へ移住し冒険者ギルドのギルドマスターにまでなり、自分とこの国で骨を埋める覚悟をした彼女に絆されていった。
という話を惚気を挟みながら延々と語るサリュライアさん。横に座っているロロさんが「あの惚気話は止めようとすると容赦なく攻撃されるんだよね⋯」とコソッと教えてくれた。
タイミングを見計らってうんざりとした顔のジークが「で、本題は?」とすかさず口を挟んだ。
「おっとすまない。実は水晶蜥蜴の討伐依頼についてだ。」
「ええ!?珍しいですね。本物ですか?」
「ああ、1年前に商人が違法取引で検挙されてな。その中の商品の一つだった物だ。」
水晶蜥蜴?図書室の魔獣の本には載っていなかったな。ラーフさんが驚いているのでよほど珍しい魔獣なのだろう。するとサリュライアさんは依頼書と水晶蜥蜴の生態について書かれたメモを机の上に出した。
水晶蜥蜴はドラゴンと言ってもトカゲほどの大きさで、身の危険を感じると自らの体を水晶に変える。その水晶は美しい上にどんな衝撃も熱も魔法でさえ形を変えることはできないほど頑丈になる。コレクターの間ではオークションで出品される度に大きな金額で取引されるそうだ。
今回は商人が盗品を売り捌いていたところを国の騎士団に捕らえられ、盗品を回収しているときに水晶化が解けて逃げ出したという。水晶蜥蜴の水晶化が解けるのは100~200年単位と言われているから油断したのだろう。
「今回はなぜ我々に依頼を?単に水晶蜥蜴の討伐であればBランク冒険者でも可能でしょう?」
「それが水晶蜥蜴が逃げた場所が問題だったんだ。」
水晶蜥蜴が逃げた先はドドソルニア国内の鉱山に接した森の中だった。そこには未発掘の洞窟が多数存在していて、その中の1つに逃げ込んだらしい。水晶蜥蜴には「鉱石を水晶に変える」という不思議な能力があり、約1年経った今ではその洞窟の鉱石は全て水晶に変えられているらしい。これの何が問題かと言うと、水晶蜥蜴は1箇所に留まらず移動をするため、放っておくと他の鉱山の採掘場の鉱石まで水晶に変えられてしまう。そしてこの水晶は量が増えると様々なものを狂わせる性質がある。例えば磁場を乱れさせて方角を示す魔道具が使えなくなったり、魔獣を凶暴化させたりする場合もある。
今回は森の中のさらに未発掘の洞窟ということもあり、発見が遅れたので凶暴化した魔獣が増えてしまい、手に負えなくなってきたのでこのパーティにギルマス自ら依頼をしてきたのだろう。
という話を水晶蜥蜴がいると言われる洞窟に向かいながら聞いた。依頼を受けたその日は準備に費やし、翌日の朝早くから討伐に向けて出発した。
森の中を進むにつれて凶暴化した魔獣との戦闘は避けられなくなっていったが、ジークたちの足止めにもならなかった。
目的の洞窟に着くと一目見て異質な状況だということがわかった。床、壁、天井の半分以上が水晶で埋め尽くされているのだ。ランタンのような魔道具で辺りを照らすと光が乱反射してとても綺麗だ。洞窟の奥は100メートルほどの深さだと聞いている。
「これはどうやって水晶蜥蜴を見つけるんですか?」
「それがこの依頼の難しいところなんですよ。水晶蜥蜴は珍しいのでその生体は謎に包まれています。探すには小さすぎて困難、罠を張るにも餌がわからない、追い込むにも弱点がわからないのです。そこで、イオの魔法を試してみましょう。」
以前ナナバモドキという蟲の採取のときに目に魔力を纏わせて「魔力を見る」という方法を使った。核を持った生き物なら魔力を持っているのでこの方法は有効だろう。さっそく魔力をコントロールする。相手はトカゲなので小さい上に壁や天井に張り付いている可能性もあるので目を凝らして探していった。
ジークたちも俺任せにはせず、水晶の塊を持ち上げたりしながら探していた。連続して魔法を使うと集中力が保たないので、休憩を挟みながら洞窟の真ん中ほどまで進むと、ある違和感に気が付いた。
生き物が全くいないのである。俺の魔力を見る魔法は核を持っていれば小さな虫や動物も見ることができるのでこの洞窟には本当に何もいないのだろう。これもこの水晶の影響なのだろうか。
そろそろ集中力も切れそうだなと思ったころ、目の端に青い光を捉えた。光は壁に刺さっている水晶の合間を縫ってものすごいスピードで動いている。
「見つけました!」
と声を出した瞬間にロロさんが素早く動いた。
「下に移動してます!」
「くそっ!早い!」
「ロロ!どいて下さい!」
ラーフさんが叫んだかと思うとロロさんの一歩手前の地面がズンッ!と円形に沈んだ。
すると平らになった地面の土の中から1匹の赤い目をしたトカゲが飛び出してものすごいスピードで走り、その先の水晶が植物のように大量に生えている場所に逃げ込んだ。先端が尖っている水晶を避けて追いかけるのは難しそうだ。
チラリと見えた水晶蜥蜴はその名の通り、体がまるで水晶のように透き通っていた。
「ラーフ!俺を潰す気!?」
「あれくらい避けられるでしょう?」
改めて更地になった地面を見ると硬そうな水晶もぺちゃんこに砕けていて、避けられなかったらどうなるのかと思うとゾッとした。
「これは何の魔法を使ったんだ?」
「風魔法の応用ですよ。風圧を狭い範囲に留めてぶつけると瞬間的に気圧の塊で対象を押し潰すことができます。」
魔力量に物を言わせた力ずくの魔法だった。とてもじゃないけど真似できない。
「あれでも潰れないとなると生身でもかなり頑丈ですね。」
「洞窟では火は使えないし武器も使い辛いから討伐より捕獲の方が良いな。」
「でも小さいし早すぎて俺でも素手で捕まえるのは難しそう~。」
「網で囲ってしまうのは?」
「水晶が邪魔ですね。」
「となると罠かなぁ。俺たち罠とか作ったことないよー。」
水晶蜥蜴捕獲について話し合う3人。罠か⋯餌が分からないので箱型は使えない。対象が小さいので四足獣用も使えない。となるとネズミ用とか?餌が使えないのは痛いな。何か使えるものはないかと自分の持ち物を確認する。すると「ある物」を手荷物から見つけた。
「これを使えるかもしれません。」
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携帯食で腹ごしらえを済ませ、魔力も充分に回復した。今度は洞窟奥の行き止まりから出入り口に向かって再び捜索を開始する。
一際水晶が密集している場所で水晶蜥蜴の反応を見つけた。
「ラーフさん!あそこにいました!」
すかさずラーフさんは先ほどの全てをぺちゃんこにする魔法で水晶を潰した。しかしやはり効かないらしく水晶蜥蜴は走って逃げ出した。そのまま姿を見失わないように追いかけて目的の場所まで誘導する。イメージは追い込み漁だ。
水晶蜥蜴がチョロチョロと走る先には罠が仕掛けてある。以前殺人蜂討伐のときに活躍した粘着材を塗り拡げた板を床から壁、天井までぐるりと1周させるように並べている。直接捕まえられないのならばホイホイすれば良いのだ。
もう少しで罠の場所に到着すると思った途端、水晶蜥蜴の動きが止まった。警戒している?しかし動きを止めるならそれはそれで捕まえられる。こちら側には4人の冒険者。さすがにすり抜けされるほど鈍くはない。じりじりと距離を詰めていくと水晶蜥蜴は板に向かって走り出したと思ったらその体からは想像もつかない跳躍力でとんだ。
「逃がすか!」
とジークが素早く動いて宙に舞った水晶蜥蜴を掴んで板の罠を跳び越えて着地⋯したかと思いきや思い切り転んだ。そして地面に密着して完全に動けなくなるジーク。
「何だぁ!?」
「ご、ごめん!板が警戒されたとき用にと思って粘着材を地面に直接撒いていたんだ。」
「あははは!ジークだっせぇ!」
「ロロうるせぇ!」
「ジークを足止めできるなんて強力な粘着材ですねぇ。」
この粘着材は薬草を混ぜて溶かした湯をかけると粘着成分がなくなる。材料は魔法鞄に常備していてすぐに用意できるので、慌てず地面に撒かれた粘着材を避けながらジークに近付く。しっかりと掴まれたジークの手の中にいる水晶蜥蜴を確認するとピクリとも動かず、石のように固まっていた。
「これは身の危険を感じて水晶化したみたいですね。」
水晶蜥蜴の特性の一つだ。ラーフさんの手から渡されて見てみると半透明の体と、赤かった目も同色に水晶化している。パッと見は完全に水晶の置物なのだが、魔力視の魔法を使うとこれはちゃんと魔力を持つ生き物なのだということがわかる。そのことをラーフさんに言うと「それは水晶蜥蜴の置物が偽物かどうかを見分ける目利きができますね」と言われたが利用方法が局地的すぎる。
地べたに這いつくばっているジークのために急いで薬湯を作り、無事に助け出すことができた。罠を回収し一休みしてから街の冒険者ギルドに戻り、そのまま執務室まで案内される。
「確かに水晶蜥蜴だね。洞窟はどうなっていた?」
サリュライアさんに洞窟の中や周辺の魔獣の様子を報告する。魔獣の凶暴化は洞窟の水晶を回収してしまえば落ち着くので、すぐに労働者を派遣するという話になった。かなりの数の魔獣を間引いたので、しばらくの間は道中に危険はないだろう。
「この水晶蜥蜴の扱いはどうなるんだ?」
「お前たちの好きにしていいぞ。おそらく他国からの盗品だから元の持ち主も不明のままだしな。」
ジークは水晶蜥蜴をじっと見たあと、俺の手に置いた。
「イオにやるよ。ラーフとロロもそれでいいか?」
「いいよー。」
「私も構いませんよ。」
「ええ!?本当に良いんですか?価値のある物なんでしょう?」
「俺たち別にお金に困ってるわけじゃないし、置物も興味ないしねー。」
「えと⋯ありがとうございます。」
そんなわけで置物となった水晶蜥蜴は俺の物になり、迷いに迷って宿の窓際に置くことにした。昼間は太陽の光が当たってキラキラしていて、夜は月の光で輝くさまが綺麗で暇があると眺めるようになった。
実は街で見かけた鉱石で作られた魔獣の置物が気になっていたのですごく嬉しい。お金を貯めていつか他の作品も買って並べたいな。
そういえばこの世界で生活に必要なもの以外の「欲しい物」が初めてできたことに気が付いた。
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イオの収集欲が開花した。
水晶蜥蜴の置物
・爬虫類系もまとめて「魔獣」と呼ばれる。身の危険を察知すると体を水晶化させる性質を持つ。頑丈で火にも強く、魔法も効かない。通常の水晶より透明度が高く、光に当てると輝くように美しくなるのでオークションでは高値で取引される。当然ジークはイオが好きそうだと思った上でイオの手に渡るように提案した。
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