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ドドソルニア編
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ロロさんやジークはお酒を飲んでいたが今はまだ昼間である。そのロロさんは早々に酔いを覚まして遊びに行くと言ってどこかに行ってしまった。タフな人だな。
ラーフさんも本屋でゆっくり選びたいからと1人で街に向かった。常に3人一緒にいるわけではないらしく、大きな案件ではないときは分かれて依頼を受けることもあるらしい。ソラレの町では俺との交流を深めるためになるべく一緒にいてくれたようだ。その気遣いが嬉しい。
ジークはソラレの冒険者ギルドのギルマスから魔道具の修理を頼まれているということで、一緒に商業ギルドまで行くことになった。
商業ギルドは見た目は冒険者ギルドとあまり変わらない。ドアを開くと電子音のチャイムが鳴り響く。これはあれだ。青い看板のコンビニの入店音だ。
中に入ると冒険者ギルドとは雰囲気が全く違っていた。基本的にガタイが良くてむさ苦しい冒険者が利用する冒険者ギルドは何というか、空気に圧を感じる。それに比べて商業ギルドはスッキリと軽やかな空気が流れている。働いている従業員も生真面目そうな人が多い。
いくつかある窓口でジークが「魔道具の修理依頼なんだが」と声をかけると椅子とテーブルが並んでいるスペースに案内された。しばらく待っているとドワーフの男性が前に座った。
「久しぶりだね、ジーク。」
「ブリッツ?サリュがいなかったからてっきりアンタも休んでるかと思っていたぞ。」
「いま帰るところだったんだ。妻は家で食事の準備をして待ってくれているよ。ご馳走だと張り切っていたから楽しみだよ。」
穏やかに話す小ドワの男性は優しそうな水色の目を細めて俺たちを見る。もじゃもじゃの長い髪と髭は黒色なのだが、イメージ的にはサンタクロースのような慈愛に満ちた人だった。
「イオ、商業ギルドのギルマスのブリッツだ。」
「始めまして、Bランク冒険者のイオです。カテドアラで活動をしていました。」
「ブリッツ、イオは俺たちのパーティの新メンバーで俺の番だ。」
ブリッツさんは驚いた顔をした。
「番を見つけたのかい?良かったねぇ。確かに一時期番が見つからないとやさぐれていた時より雰囲気が柔らかくなったね。」
「別にやさぐれてねぇよ。」
ムスッとしたジークがそっぽを向いた。随分と気安い関係のようだ。
「さて、魔道具の修理だろう?私がこのまま受け付けるから魔道具を出してみなさい。」
「ああ、これだ。」
ジークは魔法鞄からソフトボールサイズの丸い魔道具を出してゴトリと机に置いた。ボタンが1つ付いているだけのシンプルな造りで、何の魔道具なのか全くわからない。ブリッツさんは魔道具を手に持って〘鑑定〙と呟いた。固有スキルだ。
実はこの世界に魔法があると聞いたときに「異世界転生といったら鑑定だろう」と期待して使えるかどうか試してみたことがある。もちろん使えなかった。
「ああ、これは中の部品が劣化してヒビが入っているね。一旦分解して部品を取り替えたら直るけど、この部品の入荷が明後日だからそれ以降に引き取りにきてもらっても良いかい?」
「ああ、急ぎではないから大丈夫だ。じゃあそれは預けていくよ。」
そう言ってジークと席を立ち、商業ギルドを後にした。
「魔道具の修理は職人がいればどの国でもできるが、ドドソルニアだと部品の質も技術力も段違いだから直してもらった後の持ちが変わってくるんだ。」
「なるほど。でも修理のたびにドドソルニアまで持ってくるのは大変では?」
「ああ、だからほとんどの魔道具は消耗品で壊れたら買い換える。でも今日の魔道具は高額で特殊な物だから持ち込んでまで修理してもらう必要があったんだ。」
だからギルマスが直接ジークに修理依頼をしてきたのか。高額な魔道具は盗難の恐れもあるから強い人にしか頼めないということかな。
その後は色々な店を見て回った。物造りの街というだけあって様々な道具の店があった。魔道具はもちろん家財や装飾品など、どれもが細部まで丁寧に造られている。特に気になったのは鉱石を削って魔獣の形に象られた置物だった。
手のひらに乗せられるサイズなのに魔狼の毛の動き、一角兎の筋肉の動き、蛇王の鱗の滑らかさが完全に再現されている。鉱石によって色が違っていて、どれもとても綺麗だった。しかしかなりいいお値段だったので見るだけに留めた。
*******************************
街のあちこちを見て回ってから宿に戻るとラーフさんとロロさんはすでに帰っていた。
4人で食堂に降りると数組の宿泊客が夕食を取っていた。食事のメニューはその日仕入れた食材を中心とした宿側のお任せ定食だ。足りない場合はおかわりを注文すると別の料理が出てくる。食べられないものは前もって言っておくと避けてくれるとのこと。
宿の夕食もやっぱりお酒を飲むこと前提なので少し濃いめだった。お米が欲しい。この世界にはお米はないのだろうとかとジークに聞くと獣人の国の一部の地域で作られているらしい。いつか絶対に行きたい。
今日1日である程度の観光はできたので明日から依頼を受けようかと話し合って決めた。そんな風に話しながら俺が1人前の定食を食べ終わる頃には3人とも倍以上の量を食べていた。特にロロさんはお酒を飲みながらなのに食べるのが早すぎる。それでも下品に見えないことが不思議だ。
「ゆっくり休んで下さいね。」
というラーフさんの言葉で各自部屋の前で解散した。「ついに明日から依頼だ」と気合が入る。武器と備品の手入れをしてシャワーを浴びて、いつもの魔力を身体に循環させる寝る前のルーティンをこなしているとドアのノック音が聞こえた。扉を開けると髪が濡れたままのジークが入ってきた。
「ジーク、ちゃんと髪を乾かさないと風邪ひくよ?」
慌ててタオルを渡すとジークは乱暴に頭を拭いた。そんな荒っぽくしてふわふわの耳は痛くないのかな?
ジークはエスコートするように俺の手を引き2人でベッドに腰掛ける。そういえば一緒に寝る話になっていたな。じわじわと羞恥が込み上げる。照れくさくて自分の手元ばかりを見ていたら、
「イオ、俺はお前の気持ちを聞かずに自分勝手に関係を進めるところだった。」
「俺の気持ち⋯?ジークのことは好きだけど?」
「ありがとう。でも男同士の行為については知らなかったんだろ?異世界とは常識が異なるとわかっていて確認しなかった俺が悪い。それでな⋯」
ジークは眉間にシワを寄せて口籠る。
「もし⋯もしイオが上の役割⋯つまり"入れたい側"だと言うのなら俺は受け入れるつもりだ。俺が拒否したことによってイオが別の誰かを抱くなんて耐えられない⋯。」
すっごい顔してるな⋯。
正に苦渋の決断といった雰囲気だ。
「ジークは"入れたい側"なの?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうだ。」
耳がっ!耳がぺちゃんこに伏せられていく!なんだこの叱られたワンコみたいな顔は。俺は耐えられずに「ぶはっ!」と笑い声を漏らしてしまった。ジークは不思議そうな顔をして俺を見ているがまだ耳はぺったんこだ。
「正直入れる、入れないは今のところ想像できないかな。でもジークが"入れたい側"だったら俺も受け入れたい気持ちはあるよ。でも時間は欲しい。」
「⋯!もちろんだ!」
「少しずつ段階を踏んでくれたらいいからさ。ほら、明日は依頼を受けるんだからもう寝よう。」
2人でベッドの布団に潜り込む。ジークはやっぱり抱き枕のように俺をがっちり抱き込んできた。
「キスはしていい?」
「もう何度もしてるでしょ。」
ジークはそうだったなと耳と尻尾を振って嬉しそうに「おやすみ」と言ってキスをした。
******************************
翌日は朝から冒険者ギルドに向かう。依頼ボードを見ている冒険者たちはソラレと同じく人族よりも獣人の割合が多く、ドワーフの冒険者は見かけない。物造りに特化したドワーフは冒険者業に就く人は少ないそうだ。
ジークたちを見てザワつく冒険者たちの視線にも大分慣れてきた。すると昨日対応をしてくれた小ドワの職員が受付から出てきた。
「皆さんおはようございます。すみませんが、ギルマスがお呼びなので案内します。」
通された執務室の床には沢山の本が所狭しと積み上げられ、机の上に大量の書類が雑に置かれていた。客を迎えるはずのソファとテーブルは何やら魔獣の毛皮が無造作に置かれている。
何だろうこの既視感は。ギルドマスターとは往々にして整理整頓が苦手なのだろうか?
「お前たち久しぶりだな。すぐ私に会いに来ないとはどういうことだ?」
山積みの本の隙間から出てきた人はとてつもなく綺麗な女性だった。薄く青みがかった銀色の長い髪はゆるく三つ編みで纏められている。モノクルの奥の瞳は鮮やかな水色で、長い耳がしなやかに尖っている。この特徴はエルフだ。
エルフと言えばソラレの町にある薬屋の店主がそうだったが、シワシワのおじいちゃんだったので若いエルフを見るのは初めてだ。本当に綺麗な人だな。年齢も20代前半に見えるがこの年で冒険者ギルドのギルマスになれるんだな。
「昨日来たけどアンタが留守だったんだよ。」
「⋯うむ、そういえばダーリンがお前と番に会ったと言っていたな。そのせいで愛しの旦那様と過ごす時間が少し減って腹立たしくて忘れていたよ。」
そう言いながらギルマスのエルフがスッと手をかざすとソファやテーブルに散乱していた物がふわりと浮かび、部屋の隅の方に纏められていった。空いたソファに促されるとテーブルに紅茶とお菓子が現れた。先ほどから息をするように魔法を使っているが、一体どれほど膨大な魔力と繊細な魔力コントロールをしているのだろうか。
「さて、私にも彼を紹介してくれるかな?」
「俺の番のイオだ。カテドアラで冒険者をしていた落ち人だ。」
「落ち人?なるほど、だからなかなか見つからなかったのか。」
「イオ、このエルフはサリュライア。冒険者ギルドのギルドマスターで一応俺たちの魔法の師匠だ。」
「一応とは何だこの馬鹿弟子が。」
「あと昨日会った商業ギルドマスターのブリッツと夫婦だ。」
「ええ!?」
小ドワのブリッツさんはサンタクロースのような見た目だったこともあり、そこそこ年齢を重ねているように見えた。そして目の前のサリュライアさんの見た目は20代前半。「年の差夫婦⋯?」とついうっかり口を滑らせた。
「ああ、私とダーリンは1000歳差の年の差夫婦だ。姉さん女房ってやつだな!」
そっちが上!?
***********************
ギルドのドア音
冒険者ギルド→◯ァミリーマート
商業ギルド→◯ーソン
医療ギルド(未登場)→◯ブンイレブン
※観光中のジーク
イオが興味を示した物は何でも買ってあげたいが、理由もなく受け取ってはもらえないだろうとは予想済みなので受け取ってもらえる方法を模索中。
ラーフさんも本屋でゆっくり選びたいからと1人で街に向かった。常に3人一緒にいるわけではないらしく、大きな案件ではないときは分かれて依頼を受けることもあるらしい。ソラレの町では俺との交流を深めるためになるべく一緒にいてくれたようだ。その気遣いが嬉しい。
ジークはソラレの冒険者ギルドのギルマスから魔道具の修理を頼まれているということで、一緒に商業ギルドまで行くことになった。
商業ギルドは見た目は冒険者ギルドとあまり変わらない。ドアを開くと電子音のチャイムが鳴り響く。これはあれだ。青い看板のコンビニの入店音だ。
中に入ると冒険者ギルドとは雰囲気が全く違っていた。基本的にガタイが良くてむさ苦しい冒険者が利用する冒険者ギルドは何というか、空気に圧を感じる。それに比べて商業ギルドはスッキリと軽やかな空気が流れている。働いている従業員も生真面目そうな人が多い。
いくつかある窓口でジークが「魔道具の修理依頼なんだが」と声をかけると椅子とテーブルが並んでいるスペースに案内された。しばらく待っているとドワーフの男性が前に座った。
「久しぶりだね、ジーク。」
「ブリッツ?サリュがいなかったからてっきりアンタも休んでるかと思っていたぞ。」
「いま帰るところだったんだ。妻は家で食事の準備をして待ってくれているよ。ご馳走だと張り切っていたから楽しみだよ。」
穏やかに話す小ドワの男性は優しそうな水色の目を細めて俺たちを見る。もじゃもじゃの長い髪と髭は黒色なのだが、イメージ的にはサンタクロースのような慈愛に満ちた人だった。
「イオ、商業ギルドのギルマスのブリッツだ。」
「始めまして、Bランク冒険者のイオです。カテドアラで活動をしていました。」
「ブリッツ、イオは俺たちのパーティの新メンバーで俺の番だ。」
ブリッツさんは驚いた顔をした。
「番を見つけたのかい?良かったねぇ。確かに一時期番が見つからないとやさぐれていた時より雰囲気が柔らかくなったね。」
「別にやさぐれてねぇよ。」
ムスッとしたジークがそっぽを向いた。随分と気安い関係のようだ。
「さて、魔道具の修理だろう?私がこのまま受け付けるから魔道具を出してみなさい。」
「ああ、これだ。」
ジークは魔法鞄からソフトボールサイズの丸い魔道具を出してゴトリと机に置いた。ボタンが1つ付いているだけのシンプルな造りで、何の魔道具なのか全くわからない。ブリッツさんは魔道具を手に持って〘鑑定〙と呟いた。固有スキルだ。
実はこの世界に魔法があると聞いたときに「異世界転生といったら鑑定だろう」と期待して使えるかどうか試してみたことがある。もちろん使えなかった。
「ああ、これは中の部品が劣化してヒビが入っているね。一旦分解して部品を取り替えたら直るけど、この部品の入荷が明後日だからそれ以降に引き取りにきてもらっても良いかい?」
「ああ、急ぎではないから大丈夫だ。じゃあそれは預けていくよ。」
そう言ってジークと席を立ち、商業ギルドを後にした。
「魔道具の修理は職人がいればどの国でもできるが、ドドソルニアだと部品の質も技術力も段違いだから直してもらった後の持ちが変わってくるんだ。」
「なるほど。でも修理のたびにドドソルニアまで持ってくるのは大変では?」
「ああ、だからほとんどの魔道具は消耗品で壊れたら買い換える。でも今日の魔道具は高額で特殊な物だから持ち込んでまで修理してもらう必要があったんだ。」
だからギルマスが直接ジークに修理依頼をしてきたのか。高額な魔道具は盗難の恐れもあるから強い人にしか頼めないということかな。
その後は色々な店を見て回った。物造りの街というだけあって様々な道具の店があった。魔道具はもちろん家財や装飾品など、どれもが細部まで丁寧に造られている。特に気になったのは鉱石を削って魔獣の形に象られた置物だった。
手のひらに乗せられるサイズなのに魔狼の毛の動き、一角兎の筋肉の動き、蛇王の鱗の滑らかさが完全に再現されている。鉱石によって色が違っていて、どれもとても綺麗だった。しかしかなりいいお値段だったので見るだけに留めた。
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街のあちこちを見て回ってから宿に戻るとラーフさんとロロさんはすでに帰っていた。
4人で食堂に降りると数組の宿泊客が夕食を取っていた。食事のメニューはその日仕入れた食材を中心とした宿側のお任せ定食だ。足りない場合はおかわりを注文すると別の料理が出てくる。食べられないものは前もって言っておくと避けてくれるとのこと。
宿の夕食もやっぱりお酒を飲むこと前提なので少し濃いめだった。お米が欲しい。この世界にはお米はないのだろうとかとジークに聞くと獣人の国の一部の地域で作られているらしい。いつか絶対に行きたい。
今日1日である程度の観光はできたので明日から依頼を受けようかと話し合って決めた。そんな風に話しながら俺が1人前の定食を食べ終わる頃には3人とも倍以上の量を食べていた。特にロロさんはお酒を飲みながらなのに食べるのが早すぎる。それでも下品に見えないことが不思議だ。
「ゆっくり休んで下さいね。」
というラーフさんの言葉で各自部屋の前で解散した。「ついに明日から依頼だ」と気合が入る。武器と備品の手入れをしてシャワーを浴びて、いつもの魔力を身体に循環させる寝る前のルーティンをこなしているとドアのノック音が聞こえた。扉を開けると髪が濡れたままのジークが入ってきた。
「ジーク、ちゃんと髪を乾かさないと風邪ひくよ?」
慌ててタオルを渡すとジークは乱暴に頭を拭いた。そんな荒っぽくしてふわふわの耳は痛くないのかな?
ジークはエスコートするように俺の手を引き2人でベッドに腰掛ける。そういえば一緒に寝る話になっていたな。じわじわと羞恥が込み上げる。照れくさくて自分の手元ばかりを見ていたら、
「イオ、俺はお前の気持ちを聞かずに自分勝手に関係を進めるところだった。」
「俺の気持ち⋯?ジークのことは好きだけど?」
「ありがとう。でも男同士の行為については知らなかったんだろ?異世界とは常識が異なるとわかっていて確認しなかった俺が悪い。それでな⋯」
ジークは眉間にシワを寄せて口籠る。
「もし⋯もしイオが上の役割⋯つまり"入れたい側"だと言うのなら俺は受け入れるつもりだ。俺が拒否したことによってイオが別の誰かを抱くなんて耐えられない⋯。」
すっごい顔してるな⋯。
正に苦渋の決断といった雰囲気だ。
「ジークは"入れたい側"なの?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯そうだ。」
耳がっ!耳がぺちゃんこに伏せられていく!なんだこの叱られたワンコみたいな顔は。俺は耐えられずに「ぶはっ!」と笑い声を漏らしてしまった。ジークは不思議そうな顔をして俺を見ているがまだ耳はぺったんこだ。
「正直入れる、入れないは今のところ想像できないかな。でもジークが"入れたい側"だったら俺も受け入れたい気持ちはあるよ。でも時間は欲しい。」
「⋯!もちろんだ!」
「少しずつ段階を踏んでくれたらいいからさ。ほら、明日は依頼を受けるんだからもう寝よう。」
2人でベッドの布団に潜り込む。ジークはやっぱり抱き枕のように俺をがっちり抱き込んできた。
「キスはしていい?」
「もう何度もしてるでしょ。」
ジークはそうだったなと耳と尻尾を振って嬉しそうに「おやすみ」と言ってキスをした。
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翌日は朝から冒険者ギルドに向かう。依頼ボードを見ている冒険者たちはソラレと同じく人族よりも獣人の割合が多く、ドワーフの冒険者は見かけない。物造りに特化したドワーフは冒険者業に就く人は少ないそうだ。
ジークたちを見てザワつく冒険者たちの視線にも大分慣れてきた。すると昨日対応をしてくれた小ドワの職員が受付から出てきた。
「皆さんおはようございます。すみませんが、ギルマスがお呼びなので案内します。」
通された執務室の床には沢山の本が所狭しと積み上げられ、机の上に大量の書類が雑に置かれていた。客を迎えるはずのソファとテーブルは何やら魔獣の毛皮が無造作に置かれている。
何だろうこの既視感は。ギルドマスターとは往々にして整理整頓が苦手なのだろうか?
「お前たち久しぶりだな。すぐ私に会いに来ないとはどういうことだ?」
山積みの本の隙間から出てきた人はとてつもなく綺麗な女性だった。薄く青みがかった銀色の長い髪はゆるく三つ編みで纏められている。モノクルの奥の瞳は鮮やかな水色で、長い耳がしなやかに尖っている。この特徴はエルフだ。
エルフと言えばソラレの町にある薬屋の店主がそうだったが、シワシワのおじいちゃんだったので若いエルフを見るのは初めてだ。本当に綺麗な人だな。年齢も20代前半に見えるがこの年で冒険者ギルドのギルマスになれるんだな。
「昨日来たけどアンタが留守だったんだよ。」
「⋯うむ、そういえばダーリンがお前と番に会ったと言っていたな。そのせいで愛しの旦那様と過ごす時間が少し減って腹立たしくて忘れていたよ。」
そう言いながらギルマスのエルフがスッと手をかざすとソファやテーブルに散乱していた物がふわりと浮かび、部屋の隅の方に纏められていった。空いたソファに促されるとテーブルに紅茶とお菓子が現れた。先ほどから息をするように魔法を使っているが、一体どれほど膨大な魔力と繊細な魔力コントロールをしているのだろうか。
「さて、私にも彼を紹介してくれるかな?」
「俺の番のイオだ。カテドアラで冒険者をしていた落ち人だ。」
「落ち人?なるほど、だからなかなか見つからなかったのか。」
「イオ、このエルフはサリュライア。冒険者ギルドのギルドマスターで一応俺たちの魔法の師匠だ。」
「一応とは何だこの馬鹿弟子が。」
「あと昨日会った商業ギルドマスターのブリッツと夫婦だ。」
「ええ!?」
小ドワのブリッツさんはサンタクロースのような見た目だったこともあり、そこそこ年齢を重ねているように見えた。そして目の前のサリュライアさんの見た目は20代前半。「年の差夫婦⋯?」とついうっかり口を滑らせた。
「ああ、私とダーリンは1000歳差の年の差夫婦だ。姉さん女房ってやつだな!」
そっちが上!?
***********************
ギルドのドア音
冒険者ギルド→◯ァミリーマート
商業ギルド→◯ーソン
医療ギルド(未登場)→◯ブンイレブン
※観光中のジーク
イオが興味を示した物は何でも買ってあげたいが、理由もなく受け取ってはもらえないだろうとは予想済みなので受け取ってもらえる方法を模索中。
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