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第2部 魔法学校編
48 新入生歓迎パーティ
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いつもよりきれいに見えるように化粧して、鮮やかな紫色のドレスを着た。エスコートをしてくれるオスカー様は、私を見るなり固まった。
「ごめんなさい。王太子を挑発するドレスを着たりして」
私は、面倒ごとに巻き込んでしまうオスカー様に謝った。彼は、驚きのあまり呼吸を止めてるみたいだ。
「オスカー様? 大丈夫ですか? やっぱり、私一人で行きます。迷惑をかけられないし」
私は今日、このドレスを着ることで、毒を送った犯人を挑発して、おびき出すつもりだ。もしも、犯人が婚約者候補の関係者だったならば、王族になるのは私よ! って主張しすぎる紫色を着ることで、再び殺意が芽生えるはずだから。
「! いや、絶対に俺がエスコートする!」
オスカー様は、大声を出した。え、でも……。
「無理しなくていいんですよ?」
オスカー様の顔が赤くなっている。このドレスのために起きる厄介ごとを考えたから? それなら、やっぱり巻き込めない。
じっと顔を見つめると、オスカー様はふっと目を逸らせた。
「すごく綺麗だ。似合ってる。でも、その姿は危険だ」
真剣な声で言われる。
私のことをとても心配してくれてる。優しいオスカー様。わたしは、また愚かなことをしてる?
オスカー様の整った顔を見つめ続けた。
しばらくして、オスカー様は、ため息を一つ吐いた。
「はあ、分かった。いいよ。そのかわり、レティは絶対俺の側から離れたらだめだよ」
彼は、本当に優しい。私がどんなに無茶なことをしても、いつも側にいてくれる。ダンジョンにも付き合ってくれるし、私が困らないように、いつも手助けしてくれる。私は、彼に甘えてばかりだ。そんなこと、本当はいけないのに。
「じゃあ、はやく行きましょう! オスカー様、今日は宮廷料理人が作ったおいしいデザートが出るんだって。前から食べてみたかったの」
私は、わざとらしく明るい声を出した。
パーティ会場には、着飾った上級生と新入生がいた。
上級貴族だから、わざと遅く入ったのだけれど、私達が入場すると、ざわめきが静まった。会話を止めて注目されてる。
「レティシア様だわ。こうしてみると、とても綺麗な方ね」
「王家の紫色よ……。紫の瞳を持つ者にだけ許されたドレス。やっぱり王太子妃になる方は紫眼が……」
「元は男爵令嬢だって言うけど、血筋がいいのね。立ち居振る舞いが上品よ」
こそこそささやかれる誉め言葉。もっと言ってもいいよ。わたし、努力したから。でも、王太子妃にはならないけどね。
「無礼よ!」
ほら、さっそくお出ましだ。真っ赤なドレスを着たスカラ・マッキントンだ。黒い髪に赤い目、面長な顔立ちは5歳から変わらない。でも、目つきがますます鋭くなった。真っ赤な瞳がギラギラと私を見ている。
「王族の紫を着るなんて! 王族じゃないのに!」
私の前に赤い扇をつきつけるスカラ。これを待ってたの。
口を開こうとすると、オスカー様が私を背にかばった。
「無礼はどちらかな? マッキントン侯爵令嬢。彼女は公爵令嬢だ。言葉遣いに気を付けた方がいいよ」
「なんですって! その女は元男爵令嬢でしょう? いくら養女になったからって、公爵令嬢とは認めないわ」
「あなたに認めてもらう必要はありません」
私は、オスカー様の背後から出て、隣に立った。
「わたしはもともと、ゴールドウィン公爵家の血筋ですから、伯父の養女になることには何の問題もありません。そして、この紫のドレスは紫眼を持つ者にだけ許された特権です。ゴールドウィン公爵家はそれが許されているんですよ。そんなことも知らないんですか?」
「! なんですって! 生意気な!」
スカラは持っていた扇を振り上げた。まさか、それで私を叩くつもり? オスカー様が私の前に立ち、スカラをぎっとにらんだ。周囲の視線を感じて冷静になったのか、スカラはすっと扇を下した。そして、ふんと鼻で息をした。
「陛下に願われた私と違って、公爵家の権力でむりやりビクトル様の婚約者候補になるなんて、本当に見苦しいわ。ビクトル様はあなたのことを嫌ってるのよ。元男爵令嬢ごときが王太子妃になれるわけないのよ! 王家に身分の低い血が混ざるなんて汚らわしい!」
何を言ってるの? スカラって、実はものすごく頭が悪いんじゃない?
「あら、みなさん、なんの話をしてらっしゃるの?」
タイミングよく、王太子にエスコートされたベアトリス様が、鈴の音のような声をかけて来た。
今さっきの発言が王太子に聞かれてた? なんとなく、ベアトリス様はわざとこのタイミングを選んだ気がする。スカラの失言を待ってた?
「ビクトル様! 聞いてください、この女が生意気なこと言ってるんです!」
周囲の者が、表情をこわばらせて見る中、それに全く気が付かないスカラは王太子に駆け寄った。
「元男爵令嬢が王族をバカにしてるのよ!」
いや、それはおまえだろう。って、多分、ここにいる生徒は全員そう思っている。
「おまえ! さっき、何と言った!」
王太子はスカラを薄い水色の瞳でにらみつけた。
「え? ビクトル様? 私は、あの、あの女がいくら養女になったからった、所詮は男爵令嬢だから王族にはふさわしくないって、言って、あ、きゃあ!」
パンッと音がして、王太子はスカラが伸ばした手を振り払った。
「やっ、な、どうして?! ビクトル様!」
スカラは訳が分からず、呆然と王太子を見た。
「スカラさん。早く謝りなさい」
ベアトリスがあきれたように促す。
「っ、なんで? なんで、ビクトル様はその女をかばうのよ!」
「レティシア様のことじゃないでしょう?」
まだ分からないのか、スカラは首をふる。
「お母様は! お父様と真実の愛で結ばれていたのだ!」
王太子は、スカラではなく私の方を憎々し気ににらんだ。
「悪女オリヴィアが、紫眼の悪女が、お母様の邪魔をしたんだ! おまえのような性悪な女は、俺の婚約者にはふさわしくない!」
王太子が私をどなると、
「そうよ! 元男爵令嬢なんかが婚約者候補になるなんて、ありえないのよ!」
なぜか、スカラまで、王太子に便乗して私を責めだした。
あれ? 失言したのはスカラじゃない? まさか、この子まだ気が付いてないの? 元男爵令嬢から王妃になった人がいるってこと。そして、目の前の王太子が、スカラの言うところの、身分の低い血が王族に交じった産物だってことを。
なんか収集がつかなくなってきたので、とりあえず私も言いたいことは言っておく。
「婚約者候補を決めたのは、陛下と王妃様、王太后様です。私は何度も辞退しています」
私も、公爵家も断ってるんだよ。こっちだって、迷惑なんだよ。実の弟と婚約なんて気持ち悪いんだよ。
その時、
「殿下!!」
悲鳴のような叫び声がして、王太子がテーブルの上の料理の乗った皿を、私に向けて放り投げた。
さっと、目の前に出て私をかばうオスカー様。
私の髪飾りの魔石がそれに反応する。
ぱあーっと周囲が銀色に光って、料理の皿による攻撃を防いだ。
「結界の、聖の魔石?」
眩しそうに目を細めたオスカー様が呟いた。
私の発言は王太子の怒りの火に油をそそいだらしい。
せっかく作った聖の魔石が、こんなことで消耗されちゃったよ。これ作るのに10日もかかったのに、もうっ!
「ごめんなさい。王太子を挑発するドレスを着たりして」
私は、面倒ごとに巻き込んでしまうオスカー様に謝った。彼は、驚きのあまり呼吸を止めてるみたいだ。
「オスカー様? 大丈夫ですか? やっぱり、私一人で行きます。迷惑をかけられないし」
私は今日、このドレスを着ることで、毒を送った犯人を挑発して、おびき出すつもりだ。もしも、犯人が婚約者候補の関係者だったならば、王族になるのは私よ! って主張しすぎる紫色を着ることで、再び殺意が芽生えるはずだから。
「! いや、絶対に俺がエスコートする!」
オスカー様は、大声を出した。え、でも……。
「無理しなくていいんですよ?」
オスカー様の顔が赤くなっている。このドレスのために起きる厄介ごとを考えたから? それなら、やっぱり巻き込めない。
じっと顔を見つめると、オスカー様はふっと目を逸らせた。
「すごく綺麗だ。似合ってる。でも、その姿は危険だ」
真剣な声で言われる。
私のことをとても心配してくれてる。優しいオスカー様。わたしは、また愚かなことをしてる?
オスカー様の整った顔を見つめ続けた。
しばらくして、オスカー様は、ため息を一つ吐いた。
「はあ、分かった。いいよ。そのかわり、レティは絶対俺の側から離れたらだめだよ」
彼は、本当に優しい。私がどんなに無茶なことをしても、いつも側にいてくれる。ダンジョンにも付き合ってくれるし、私が困らないように、いつも手助けしてくれる。私は、彼に甘えてばかりだ。そんなこと、本当はいけないのに。
「じゃあ、はやく行きましょう! オスカー様、今日は宮廷料理人が作ったおいしいデザートが出るんだって。前から食べてみたかったの」
私は、わざとらしく明るい声を出した。
パーティ会場には、着飾った上級生と新入生がいた。
上級貴族だから、わざと遅く入ったのだけれど、私達が入場すると、ざわめきが静まった。会話を止めて注目されてる。
「レティシア様だわ。こうしてみると、とても綺麗な方ね」
「王家の紫色よ……。紫の瞳を持つ者にだけ許されたドレス。やっぱり王太子妃になる方は紫眼が……」
「元は男爵令嬢だって言うけど、血筋がいいのね。立ち居振る舞いが上品よ」
こそこそささやかれる誉め言葉。もっと言ってもいいよ。わたし、努力したから。でも、王太子妃にはならないけどね。
「無礼よ!」
ほら、さっそくお出ましだ。真っ赤なドレスを着たスカラ・マッキントンだ。黒い髪に赤い目、面長な顔立ちは5歳から変わらない。でも、目つきがますます鋭くなった。真っ赤な瞳がギラギラと私を見ている。
「王族の紫を着るなんて! 王族じゃないのに!」
私の前に赤い扇をつきつけるスカラ。これを待ってたの。
口を開こうとすると、オスカー様が私を背にかばった。
「無礼はどちらかな? マッキントン侯爵令嬢。彼女は公爵令嬢だ。言葉遣いに気を付けた方がいいよ」
「なんですって! その女は元男爵令嬢でしょう? いくら養女になったからって、公爵令嬢とは認めないわ」
「あなたに認めてもらう必要はありません」
私は、オスカー様の背後から出て、隣に立った。
「わたしはもともと、ゴールドウィン公爵家の血筋ですから、伯父の養女になることには何の問題もありません。そして、この紫のドレスは紫眼を持つ者にだけ許された特権です。ゴールドウィン公爵家はそれが許されているんですよ。そんなことも知らないんですか?」
「! なんですって! 生意気な!」
スカラは持っていた扇を振り上げた。まさか、それで私を叩くつもり? オスカー様が私の前に立ち、スカラをぎっとにらんだ。周囲の視線を感じて冷静になったのか、スカラはすっと扇を下した。そして、ふんと鼻で息をした。
「陛下に願われた私と違って、公爵家の権力でむりやりビクトル様の婚約者候補になるなんて、本当に見苦しいわ。ビクトル様はあなたのことを嫌ってるのよ。元男爵令嬢ごときが王太子妃になれるわけないのよ! 王家に身分の低い血が混ざるなんて汚らわしい!」
何を言ってるの? スカラって、実はものすごく頭が悪いんじゃない?
「あら、みなさん、なんの話をしてらっしゃるの?」
タイミングよく、王太子にエスコートされたベアトリス様が、鈴の音のような声をかけて来た。
今さっきの発言が王太子に聞かれてた? なんとなく、ベアトリス様はわざとこのタイミングを選んだ気がする。スカラの失言を待ってた?
「ビクトル様! 聞いてください、この女が生意気なこと言ってるんです!」
周囲の者が、表情をこわばらせて見る中、それに全く気が付かないスカラは王太子に駆け寄った。
「元男爵令嬢が王族をバカにしてるのよ!」
いや、それはおまえだろう。って、多分、ここにいる生徒は全員そう思っている。
「おまえ! さっき、何と言った!」
王太子はスカラを薄い水色の瞳でにらみつけた。
「え? ビクトル様? 私は、あの、あの女がいくら養女になったからった、所詮は男爵令嬢だから王族にはふさわしくないって、言って、あ、きゃあ!」
パンッと音がして、王太子はスカラが伸ばした手を振り払った。
「やっ、な、どうして?! ビクトル様!」
スカラは訳が分からず、呆然と王太子を見た。
「スカラさん。早く謝りなさい」
ベアトリスがあきれたように促す。
「っ、なんで? なんで、ビクトル様はその女をかばうのよ!」
「レティシア様のことじゃないでしょう?」
まだ分からないのか、スカラは首をふる。
「お母様は! お父様と真実の愛で結ばれていたのだ!」
王太子は、スカラではなく私の方を憎々し気ににらんだ。
「悪女オリヴィアが、紫眼の悪女が、お母様の邪魔をしたんだ! おまえのような性悪な女は、俺の婚約者にはふさわしくない!」
王太子が私をどなると、
「そうよ! 元男爵令嬢なんかが婚約者候補になるなんて、ありえないのよ!」
なぜか、スカラまで、王太子に便乗して私を責めだした。
あれ? 失言したのはスカラじゃない? まさか、この子まだ気が付いてないの? 元男爵令嬢から王妃になった人がいるってこと。そして、目の前の王太子が、スカラの言うところの、身分の低い血が王族に交じった産物だってことを。
なんか収集がつかなくなってきたので、とりあえず私も言いたいことは言っておく。
「婚約者候補を決めたのは、陛下と王妃様、王太后様です。私は何度も辞退しています」
私も、公爵家も断ってるんだよ。こっちだって、迷惑なんだよ。実の弟と婚約なんて気持ち悪いんだよ。
その時、
「殿下!!」
悲鳴のような叫び声がして、王太子がテーブルの上の料理の乗った皿を、私に向けて放り投げた。
さっと、目の前に出て私をかばうオスカー様。
私の髪飾りの魔石がそれに反応する。
ぱあーっと周囲が銀色に光って、料理の皿による攻撃を防いだ。
「結界の、聖の魔石?」
眩しそうに目を細めたオスカー様が呟いた。
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