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第2部 魔法学校編

47 Aクラス

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 Aクラスの生徒は私を入れて20人。成績優秀者ばかりだ。
 席次は、魔力学力家柄全てそろった私が1番。その次がベアトリス様にオスカー様と続く。この2人の順位は家柄が関係してるそうだ。

 簡単な自己紹介の後、ペーパーテストがあった。いきなり?!
 どうやら、クラスに不満がある上級貴族が、再テストを行って、クラス替えをするように要求したらしい。Aクラスは全員強制で、他のクラスは希望者のみのテストだ。
 ああ、まったく。

 私は配られた問題用紙にため息をつきながら、解答を出していく。
 この8年間、本当にがんばった。何をかって? 勉強、運動、礼儀作法、その他もろもろ。ものすごく厳しい先生に無理やりやらされましたとも!

 頭の中で声が響く。

「この程度の問題も解けないのなら、僕の契約者として失格だよ」

「その程度の力じゃ、勇者の遺産は手に入らないよ。大丈夫、僕が教えてあげるからね」

「勇者リョウに頼まれたんだ。僕の契約者をしっかり教育してほしいって」

 これらのセリフを言ったのは、絶世の美貌をきらきら輝かせる私の契約精霊。
 どういうこと? なんで勇者は私をレベルアップさせたがるの? そう聞いたら、ルシルはうっとりするような微笑みを見せた。
 なんでも、勇者の遺産を手に入れるためには、勇者のような知力体力魔力が必要だそうだ。

 伯父様が有能な家庭教師を何人もつけてくれた。目の前に勇者の遺産をぶら下げられたら仕方ない。血のにじむような努力をしましたとも。

 だから、私にとって、これぐらいの問題は簡単に解ける。魔法学校に入った目的は、杖をもらうこと。魔道具の杖はここでしか支給されないから。杖さえもらったら、授業には出たくない。

 解答用紙を急いで埋めて、満足のいく結果を出した。
 今日の学校はこれで終わり。


 って、まだ終わってなかった。パーティがあった。
 公爵家に戻った私は、侍女に念入りに支度させられた。
 成人前の生徒たちは、学園のパーティで社交の練習をする。魔法学校は貴族が圧倒的に多いので、貴族の作法について学ぶ場でもある。平民まで参加するのは、将来貴族の元で働くためだ。魔力の高い平民は、王宮や貴族の館で就職する。

 でも、こんなことしてる場合じゃないのに……。

 この8年間、なんの成果もない。ただ、ひたすら血反吐を吐くぐらいに勉強をして、毎日筋トレして体力つけて、ダンジョンで修行に明け暮れる。それだけのことで8年という日々が、あっという間に過ぎてしまった。

 毒のチョコレートを送ってきた犯人も分からない。あの薔薇の形のチョコレートは、初めは貴族学園が依頼して作らせたのだけど、人気があるのでお店で常に販売しているそうだ。うちに送られる少し前にも、貴族学園の薔薇組保護者会で大量注文され、皆に配られたらしい。それ以外でも、毎日のようにたくさんの人が買いに来る。誰が買ったのかは全くつかめなかった。

 だから、私を殺したいと思っている動機のある人の検討をつけた。
 一番怪しいのはマッキントン侯爵家。王太子の婚約者候補でライバルだから。王太后が私を推薦しているのを知っていたようだし、何かと私を嫌ってる。
 それから、ベアトリス様のシルバスター家。今まで一人だけだった王太子妃候補が増えたから。
 そして、もしかして、もしかしたら王妃かも。私が国王の子だって知られた? それなら私を殺す動機はある。真実の愛を邪魔した悪女の娘だからね。私の存在を知れば、殺したいって思うかも。でも、……ここからが手詰まりだ。
 伯父様が公爵家の手の者に調査を命じてるそうだけど、何も進展はない。




「お嬢様、ブラーク辺境伯のご子息がお見えになりました」

 侍女の言葉に、椅子から立ち上がる。オスカー様が迎えに来てくれた。私は、侍女が紫の宝石のペンダントを首にかけてくれる。オスカー様がくれた私の宝物。これをつけていると、まるでリョウ君が側にいてくれるように思える。紫色の宝石はキラキラと光を放っている。

 鏡の中の私は、侍女の努力の成果もあり、変身していた。いつものように、美しいけど地味なんて言わせない。欠点のない地味な顔は、化粧すればかなり美しく化ける。ほら、どこからどう見ても清楚な美少女。って自分で言うのもあれだけど。

「オスカー様、お待たせしました」

「!」

 オスカー様は私をひと目見て、驚きに固まった。

 そうだよね。びっくりするよね。今日の装いは鮮やかな紫色のドレス。私の瞳の色とおんなじだ。つまり、王族の色ってこと。
 ものすごく、王太子に喧嘩売ってる。
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