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「……婚約破棄?」
後日。
王太子は目を剥いて皇族たちに聞き返した。
「理由はお分かりですね?」
「……はい。」
皇后があえて婚約破棄の理由を告げる。
「以前の婚約記念で、貴国の品格に疑いを抱いてのことです。聞けば彼、貴国でも王家の次に尊い公爵家の御令息でしたのね?それも婚約者に近い相手が他にいるとのことで。」
「っ!……か、彼はわたくしどもにとっても困った人間で…」
国王の弁解に、天皇が毅然とかぶりを振る。
「貴族が貴族としての自覚を持たないというのは、それだけで重罪です。それともそちらでは自然なことなのですか?」
「!?…い、いえ、そのような!」
王太子と国王は項垂れながら、皇族たちの苦情を聞き入れ、婚約破棄を受け入れた。
同盟国とはいえ、大切な娘を慣れない他国に嫁がせる大切な契約だったのだ。
そのお祝いの序盤から、候補とはいえ婚約者のいる男性が、未婚の女性に無断でキスを迫るところを見せてしまった。
大変見苦しい場面でもあるのだが、この状況でそんなことをすれば、それは『結婚すればお前もこう扱うからな』と暗に言っているものと思われても仕方がないのだ。
「……ああ、そんな、僕はいったい、どうすれば。」
話し合いが終了してひとりになり、今にも叫びたいほどの絶望に駆られた王太子のもとに、レオナルドがやってきた。
「タイシ!」
レオナルドは王太子の両手を掴む。
「この度は本当に残念なことになった!僕も胸が痛いよ!まったくアリサときたら、天皇陛下がたがいらっしゃるなかで、あんなにヒステリックに騒ぎ立てるとは!今度会ったときは、僕からアリサにキツく言っておく!だから彼女を罰するのは勘弁してあげてくれ!」
「……………」
その言葉を聞いたとたん、王太子は無言無表情でレオナルドを見つめる。
そして微笑んだ。
「ああ、わかったよ。」
「そうか!ありがとう!」
その様子に安堵したレオナルドは、それだけ言い残してその場を去っていった。
* * *
「…失礼致します。」
また別の日。
アリサは皇女に呼ばれて、とある一室に足を運んだ。
「どうぞおかけになってください。」
「あ、ありがとうございます。」
やはり緊張は拭えないなか、淑女としての振る舞いとしてそれを隠す。
「単刀直入に用件を申しましょう。以前のパーティーで貴女様にキスを迫ったレオナルド・デュン・ブライデン様について。あの方とどういういきさつがあって、あのような事態になったのか、詳しくお聞かせ願えませんか?」
この国にとってマイナスになるのでは?
自分も何かしらの罰を受けるのでは?
懸念はあったが、誠意ある対応として、レオナルドとのこれまでを正直にすべて語った。
「……………」
皇女は真っ青のまま何も言わない。
その様子は現代でいうところの『ドン引き』に近かった。
「わたくしからお話しできることはこれだけなのですが…」
「充分です。ありがとうございました。」
同盟国の官僚から『参考までに話を聞いただけで、国や貴女の評価には関係しない』という説明を受け、アリサは安心して部屋を出て帰路に就く。
その道中レオナルドに鉢合わせた。
「やあ、アリサ。」
「…!」
思わず背筋が凍ったけれど、努めてなんでもない風を装って話を聞く。
「ごきげんよう、ブライデン公爵令息。どうかなさいまして?」
「どうかなさいまして?じゃないよ!まったく君ときたら、皇族の前であんなはしたない振る舞いをして!天皇陛下までカンカンに怒って、タイシの婚約が破棄されたんだぞ!僕のフォローがなければ、いったいどんな罰を受けることになったやら…」
「……………」
アリサはニッコリと微笑んで、深々と頭を下げた。
「ご配慮、感謝いたします。先程わたくしも皇女殿下にお呼び出しされ、事情聴取を受けておりました。その結果わたくしがパーティーでしたはしたない振る舞いについては、お許しいただけるとご報告をいただきました。」
「そ…そうか!それは良かった!」
レオナルドは安心したように微笑むと、アリサの隣に並ぶ。
「家まで送ろう。女性のひとり歩きは危ない。」
「いえ、結構です。」
「殿方のお誘いは素直に受けておくものだよ。」
「はあ…そこまで仰るのでしたら、ご自由に。」
「ふふふ、素直じゃないんだから。」
浮かれきったレオナルドは饒舌に話しかける。
しかしアリサはそれらすべてを、脳に一欠片も残さず聞き流していた。
後日。
王太子は目を剥いて皇族たちに聞き返した。
「理由はお分かりですね?」
「……はい。」
皇后があえて婚約破棄の理由を告げる。
「以前の婚約記念で、貴国の品格に疑いを抱いてのことです。聞けば彼、貴国でも王家の次に尊い公爵家の御令息でしたのね?それも婚約者に近い相手が他にいるとのことで。」
「っ!……か、彼はわたくしどもにとっても困った人間で…」
国王の弁解に、天皇が毅然とかぶりを振る。
「貴族が貴族としての自覚を持たないというのは、それだけで重罪です。それともそちらでは自然なことなのですか?」
「!?…い、いえ、そのような!」
王太子と国王は項垂れながら、皇族たちの苦情を聞き入れ、婚約破棄を受け入れた。
同盟国とはいえ、大切な娘を慣れない他国に嫁がせる大切な契約だったのだ。
そのお祝いの序盤から、候補とはいえ婚約者のいる男性が、未婚の女性に無断でキスを迫るところを見せてしまった。
大変見苦しい場面でもあるのだが、この状況でそんなことをすれば、それは『結婚すればお前もこう扱うからな』と暗に言っているものと思われても仕方がないのだ。
「……ああ、そんな、僕はいったい、どうすれば。」
話し合いが終了してひとりになり、今にも叫びたいほどの絶望に駆られた王太子のもとに、レオナルドがやってきた。
「タイシ!」
レオナルドは王太子の両手を掴む。
「この度は本当に残念なことになった!僕も胸が痛いよ!まったくアリサときたら、天皇陛下がたがいらっしゃるなかで、あんなにヒステリックに騒ぎ立てるとは!今度会ったときは、僕からアリサにキツく言っておく!だから彼女を罰するのは勘弁してあげてくれ!」
「……………」
その言葉を聞いたとたん、王太子は無言無表情でレオナルドを見つめる。
そして微笑んだ。
「ああ、わかったよ。」
「そうか!ありがとう!」
その様子に安堵したレオナルドは、それだけ言い残してその場を去っていった。
* * *
「…失礼致します。」
また別の日。
アリサは皇女に呼ばれて、とある一室に足を運んだ。
「どうぞおかけになってください。」
「あ、ありがとうございます。」
やはり緊張は拭えないなか、淑女としての振る舞いとしてそれを隠す。
「単刀直入に用件を申しましょう。以前のパーティーで貴女様にキスを迫ったレオナルド・デュン・ブライデン様について。あの方とどういういきさつがあって、あのような事態になったのか、詳しくお聞かせ願えませんか?」
この国にとってマイナスになるのでは?
自分も何かしらの罰を受けるのでは?
懸念はあったが、誠意ある対応として、レオナルドとのこれまでを正直にすべて語った。
「……………」
皇女は真っ青のまま何も言わない。
その様子は現代でいうところの『ドン引き』に近かった。
「わたくしからお話しできることはこれだけなのですが…」
「充分です。ありがとうございました。」
同盟国の官僚から『参考までに話を聞いただけで、国や貴女の評価には関係しない』という説明を受け、アリサは安心して部屋を出て帰路に就く。
その道中レオナルドに鉢合わせた。
「やあ、アリサ。」
「…!」
思わず背筋が凍ったけれど、努めてなんでもない風を装って話を聞く。
「ごきげんよう、ブライデン公爵令息。どうかなさいまして?」
「どうかなさいまして?じゃないよ!まったく君ときたら、皇族の前であんなはしたない振る舞いをして!天皇陛下までカンカンに怒って、タイシの婚約が破棄されたんだぞ!僕のフォローがなければ、いったいどんな罰を受けることになったやら…」
「……………」
アリサはニッコリと微笑んで、深々と頭を下げた。
「ご配慮、感謝いたします。先程わたくしも皇女殿下にお呼び出しされ、事情聴取を受けておりました。その結果わたくしがパーティーでしたはしたない振る舞いについては、お許しいただけるとご報告をいただきました。」
「そ…そうか!それは良かった!」
レオナルドは安心したように微笑むと、アリサの隣に並ぶ。
「家まで送ろう。女性のひとり歩きは危ない。」
「いえ、結構です。」
「殿方のお誘いは素直に受けておくものだよ。」
「はあ…そこまで仰るのでしたら、ご自由に。」
「ふふふ、素直じゃないんだから。」
浮かれきったレオナルドは饒舌に話しかける。
しかしアリサはそれらすべてを、脳に一欠片も残さず聞き流していた。
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