初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)

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「えー、この度はご多忙のなか、我が国にお越しいただき、誠にありがとうございます。」

 偉い人らしきおじさまが、ぎこちなくスピーチをしている。
 今日は王太子殿下と同盟国の皇女殿下が婚約を結ばれた、そのお祝いのパーティーだ。
 非常におめでたい宴ということもあり、やはり我が国の皆様も隣国の方々も盛り上がっている。

「とはいえ……どうしようかしら。」

 しかし私にはやっぱり、楽しくおしゃべりできるような相手はいない。
 誰にも声かけが出来ずに困っていたところに…

「いかがですか?ロイヒン男爵令嬢。」

 アーク子爵令息が私の元にまでいらしてくれた。

「アーク子爵令息…不肖ながら、まだまだ皆様とは…」
「……そうですか。」

 彼は私の隣に立つ。

「実は僕も、人ごみの喧騒に疲れていたところでして。よろしければご一緒しませんか?」
「まあ、うふふ……ありがとうございます。」

 私は彼と、たあいない会話を楽しんだ。



 * * *



「フン♩フン♪フ~ン♬」

 一方その頃。
 口うるさいシェリーランから逃げ出して、レオナルドはアリサを探していた。

(ふふふ…僕のアリサはどこに行ったかな?)

 生誕祭で逃げられた過去も忘れて探し回っていたが、ふとその足が止まる。
 彼女がコンラッド・アークと楽しそうに談笑しているところを目撃したからだ。

(なっ…何をやってるんだアリサ!!僕に無断で他の男とふたりきりになるなど、公爵夫人としてあるまじき行いだぞ!)

 頭に血がのぼりカンカンに沸き立ったが、すぐに深呼吸して落ち着きを取り戻す。

(………そうだな。アリサは平民あがりの男爵家の娘。アイツは子爵家。いくら嫌でも断るのには勇気がいるだろう。あの子なりに自分と相手の立場を考えて、行動してるだけだ。)

 レオナルドはフッと微笑んだ。

(公爵夫人たるもの、言い寄ってくる男は自力で跳ね除けられるくらいでなければならないが、今の彼女にそこまで求めるのは酷だろう。まったく、しかたないな。少し手助けしてあげよう。コンラッドの奴に僕とアリサのキスシーンを見せつけて、颯爽と彼女をさらっていけば、あの愚図でもさすがに理解できるだろう。)

 レオナルドはそうと決めると、気配を殺してゆっくりとふたりににじり寄る。

「…ええ、それで…」
「………あ。」

 談笑の最中、目を丸めてアリサの背後を見るコンラッドに、彼女は首を傾げて振り返る。
 すると視界一面に、唇を突き立てたレオナルドの顔面が飛び込んできた。

「いやあっ!!!!」

 ーーーバシィン!!!!








 絹を裂くような悲鳴とビンタ音が響き、パーティーホールは凍りついたように静まり返る。

「あ、わ、わた、くし…」

 顔面蒼白になりながらも、アリサは釈明しようと唇をはくはくと震わせる。
 そんな彼女を、コンラッドが庇った。

「大変申し訳ございません。彼女は少し体調がすぐれないようですので、失礼させていただきます。」

 ふたりはすぐさま会場を去り、後には凍りついたギャラリーと、片頬を赤く腫れあがらせたレオナルドだけが取り残された。
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