初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)

文字の大きさ
8 / 10

しおりを挟む
「父上!ブライデン公爵令息は悪くありません!彼にはきっと特別な事情があるのですよ!」
「……息子よ。二度とあの御方の話はするな。この貴族社会で生き残りたければな。」
「え!?そんな!あの方は…」
「……………」
「…か、かしこまりました。」



 * * *



「ねえ、ちょっと!どういうことなの?学園ではあの男爵令嬢様が、ブライデン公爵令息に関係を迫って暴れただの、しつこく付き纏いをしているだの、色んなウワサが流れてたのに。」
「……さあねー。」
「どうしたのよ?以前はアンタも、あんなに喜んで食いついてきてたのに。」
「……お母様にね、止められたのよ。あの御方の話はもう外でも内でもするなって。」
「……そ、そう。」
「私は最初から怪しいと思っていたわよ!アリサさんはそんなことしないって!」
「へぇー、あなた生誕祭パーティーで彼女に『ブライデン公爵令息に拒まれた心の傷はもう癒えまして?』って皮肉言ってたのに?」
「……」



 * * *



 レオナルドが違和感を覚えたのは、それからしばらく経ってのことだった。
 学園が休みの日には『公爵家の跡取りとしての勉強をしろ』と怒鳴っていた父が、あのときを境に何も言わなくなったことを、今更になって気付く。
 あれだけ妹のように自分の後をくっついてまわり、あれやこれやと口うるさく言っていたシェリーランからも音沙汰がなく、つい先日彼女の誕生日パーティーがあったことを思い出した。

(……なんだ?何かがおかしい。みんなどうしてしまったんだ?)

 鬱陶しいほどうるさかった日常が、あのときから静かに、しかし明らかに一変したことをさとり、レオナルドは得体の知れない事態に空恐ろしくなる。

「バッカモーン!!!」

 そんなときにふと、ブライデン公爵の怒鳴り声が響いた。
 声のした部屋を覗いてみれば、そこでは弟のイエツグが父に勉強を教わっている光景が目に入る。

「これくらいのことも出来ずにいてどうするか!我が公爵家は先祖代々、王家をお支えするために励んできたのだ!」
「はい!」

 言われたこともできず父親にこっぴどく叱られているイエツグを見て、レオナルドはふたりに気付かれない程度に吹き出した。

(うぷぷ!才能のない奴は大変だなあ。)

 なぜ父が自分に勉強をしろと言わなくなったのか。
 弟にここまで厳しい指導をしたことなどなかったのに、なぜ今更になってやり出したのか。
 これまで家族を見てきた人間なら当然のように沸く疑問にも思いつかず、レオナルドは自室に退散した。

「…いいか。レオナルドが家督を継げなくなった今、お前だけが公爵家の希望なのだ。そのことを決して忘れるな。」
「はい!父上!」



 * * *



「…その、アリサさん。」

 貴族学園。
 アリサは他クラスの女子生徒複数人に呼ばれて身を固める。
 よく見れば、学園や生誕祭パーティーで皮肉を投げかけてきた令嬢たちだ。

「…なに、かしら?」
「これまで本当にごめんなさい!」

 女子生徒たちは大声とともに勢いよく頭を下げた。

「あの婚約パーティーでの一件があって、冷静にブライデン公爵令息の周囲の人たちの話を聞いてみて、改めて考え直したの。……あの人とっても偉い公爵家の息子だけど、血筋だけで人柄はあんまり評判よくなかったって。」

 アリサは少しだけ驚いて、微笑んだ。

「そんな、気にしないで。身の程も弁えずあの方に想いを告げたのは本当なのだから。」
「……一体彼と、何があったの?」

 アリサはレオナルドとのこれまでを包み隠さず打ち明ける。

「「「「「……………」」」」」

 みんなは真っ青な顔をして、再び大きく頭を下げた。

「本当にごめんなさい!!そんなことに巻き込まれていたなんて知らず、あなたにあんなひどいことを…!!」
「いいのよ、もう……謝るよりお友達になってくれた方が嬉しいわ。これまでのことでみんなからつまはじきにされて、寂しかったから。」
「……そう、そうなのね。」

 女子生徒たちは顔を上げると、アリサの手を硬く握った。

「今日からわたくしたちは、あなたのお友達よ!」
「ええ。ありがとう、みんな。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

わたしの婚約者なんですけどね!

キムラましゅろう
恋愛
わたしの婚約者は王宮精霊騎士団所属の精霊騎士。 この度、第二王女殿下付きの騎士を拝命して誉れ高き近衛騎士に 昇進した。 でもそれにより、婚約期間の延長を彼の家から 告げられて……! どうせ待つなら彼の側でとわたしは内緒で精霊魔術師団に 入団した。 そんなわたしが日々目にするのは彼を含めたイケメン騎士たちを 我がもの顔で侍らかす王女殿下の姿ばかり……。 彼はわたしの婚約者なんですけどね! いつもながらの完全ご都合主義、 ノーリアリティのお話です。 少々(?)イライラ事例が発生します。血圧の上昇が心配な方は回れ右をお願いいたします。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

双子の姉に聴覚を奪われました。

浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』 双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。 さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。 三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。

婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!

ささい
恋愛
王城で文官として働くリディア・フィアモントは、冷たい婚約者に評価されず疲弊していた。三度目の「婚約解消してもいい」の言葉に、ついに決断する。自由を得た彼女は、日々の書類仕事に誇りを取り戻し、誰かに頼られることの喜びを実感する。王城の仕事を支えつつ、自分らしい生活と自立を歩み始める物語。 ざまあは後悔する系( ^^) _旦~~ 小説家になろうにも投稿しております。

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢マリオンの婚約者アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

処理中です...