初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)

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「父上!ブライデン公爵令息は悪くありません!彼にはきっと特別な事情があるのですよ!」
「……息子よ。二度とあの御方の話はするな。この貴族社会で生き残りたければな。」
「え!?そんな!あの方は…」
「……………」
「…か、かしこまりました。」



 * * *



「ねえ、ちょっと!どういうことなの?学園ではあの男爵令嬢様が、ブライデン公爵令息に関係を迫って暴れただの、しつこく付き纏いをしているだの、色んなウワサが流れてたのに。」
「……さあねー。」
「どうしたのよ?以前はアンタも、あんなに喜んで食いついてきてたのに。」
「……お母様にね、止められたのよ。あの御方の話はもう外でも内でもするなって。」
「……そ、そう。」
「私は最初から怪しいと思っていたわよ!アリサさんはそんなことしないって!」
「へぇー、あなた生誕祭パーティーで彼女に『ブライデン公爵令息に拒まれた心の傷はもう癒えまして?』って皮肉言ってたのに?」
「……」



 * * *



 レオナルドが違和感を覚えたのは、それからしばらく経ってのことだった。
 学園が休みの日には『公爵家の跡取りとしての勉強をしろ』と怒鳴っていた父が、あのときを境に何も言わなくなったことを、今更になって気付く。
 あれだけ妹のように自分の後をくっついてまわり、あれやこれやと口うるさく言っていたシェリーランからも音沙汰がなく、つい先日彼女の誕生日パーティーがあったことを思い出した。

(……なんだ?何かがおかしい。みんなどうしてしまったんだ?)

 鬱陶しいほどうるさかった日常が、あのときから静かに、しかし明らかに一変したことをさとり、レオナルドは得体の知れない事態に空恐ろしくなる。

「バッカモーン!!!」

 そんなときにふと、ブライデン公爵の怒鳴り声が響いた。
 声のした部屋を覗いてみれば、そこでは弟のイエツグが父に勉強を教わっている光景が目に入る。

「これくらいのことも出来ずにいてどうするか!我が公爵家は先祖代々、王家をお支えするために励んできたのだ!」
「はい!」

 言われたこともできず父親にこっぴどく叱られているイエツグを見て、レオナルドはふたりに気付かれない程度に吹き出した。

(うぷぷ!才能のない奴は大変だなあ。)

 なぜ父が自分に勉強をしろと言わなくなったのか。
 弟にここまで厳しい指導をしたことなどなかったのに、なぜ今更になってやり出したのか。
 これまで家族を見てきた人間なら当然のように沸く疑問にも思いつかず、レオナルドは自室に退散した。

「…いいか。レオナルドが家督を継げなくなった今、お前だけが公爵家の希望なのだ。そのことを決して忘れるな。」
「はい!父上!」



 * * *



「…その、アリサさん。」

 貴族学園。
 アリサは他クラスの女子生徒複数人に呼ばれて身を固める。
 よく見れば、学園や生誕祭パーティーで皮肉を投げかけてきた令嬢たちだ。

「…なに、かしら?」
「これまで本当にごめんなさい!」

 女子生徒たちは大声とともに勢いよく頭を下げた。

「あの婚約パーティーでの一件があって、冷静にブライデン公爵令息の周囲の人たちの話を聞いてみて、改めて考え直したの。……あの人とっても偉い公爵家の息子だけど、血筋だけで人柄はあんまり評判よくなかったって。」

 アリサは少しだけ驚いて、微笑んだ。

「そんな、気にしないで。身の程も弁えずあの方に想いを告げたのは本当なのだから。」
「……一体彼と、何があったの?」

 アリサはレオナルドとのこれまでを包み隠さず打ち明ける。

「「「「「……………」」」」」

 みんなは真っ青な顔をして、再び大きく頭を下げた。

「本当にごめんなさい!!そんなことに巻き込まれていたなんて知らず、あなたにあんなひどいことを…!!」
「いいのよ、もう……謝るよりお友達になってくれた方が嬉しいわ。これまでのことでみんなからつまはじきにされて、寂しかったから。」
「……そう、そうなのね。」

 女子生徒たちは顔を上げると、アリサの手を硬く握った。

「今日からわたくしたちは、あなたのお友達よ!」
「ええ。ありがとう、みんな。」
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